著者
佐藤 哲彦
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.57-75,157, 1996-02-29 (Released:2016-12-22)

The purpose of this study is to describe the process whereby the continual use of philopon was defined as both a crime and a disease after World War II in Japan. (Philopon is a drug containing Phenylisoproplymethylamin which is called 'speed' in the United States) I use a model advanced by Conrad and Schneider in Deviance and Medicalization (1980/1992) to delineate this process. And this process proceeded as follows: 1 definition: Philopon was abused by those whom the medical profession thought to be immoral, for example, novelists, dancers, standup-comedians, etc. 2 prospecting: Some members of the medical profession discovered the intoxication factors in philopon after the death of a famous standup-comedienne. After her death, many studies about philopon intoxication emerged suddenly. 3 claim-making: The Japan Medical Association claimed that philopon should be controlled by the medical profession, implying that all medicine should be under its control. The Osaka Medical Association claimed that, for reasons of the public health, philopon should be prohibited, implying that the medical profession should be one of the first agencies concerned with public health. Some psychiatrists claimed that the continual use of philopon is a social problem, implying that psychiatrists should have the authority to make judgments about public health. Police claimed that philopon is a cause of many other crimes, implying that they could better maintain the social order if philopon were prohibited. 4 legitimacy: The goverment regarded the problems of continual philopon use as medical problems, so it regulated the traffic of philopon. And the medical profession, especially psychiatrists, were supported by a movement for public health, especially mental health. 5 institutionalization: The law prohibiting philopon was based mostly upon medical intoxication designation after an assault case in Saitama Pref. 6 re-claim-making and re-institutionalization: After a case of assault against a child, the law was reformed to prohibit philopon use more strictly, and the mental health law was also reformed to keep users off the streets. I suggest through the analysis of this process that in Japan (1) the medical profession tends to speak about the area of morality, (2) the medical designation of deviance can set the stage for criminal designation, and (3) legitimacy is achieved in the governmental bureaucracy rather than in the courtrooms or legislatures.
著者
佐藤 哲彦
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.87-101, 2017 (Released:2018-06-30)
参考文献数
36
被引用文献数
2

本論文は逸脱研究における社会構築主義的分析の意義について2つの問いを経由して論じ, とくにディスコース分析を用いることで, 逸脱とそれを一部とするより大きな社会過程の記述が可能であるということを示したものである.問いの1つは, 逸脱の社会学の退潮という現状から, こんにちどのような形で社会学的な逸脱研究が可能かということである. この点についてはとくに1980年代以降の犯罪コントロールや刑罰と社会との関係の変化を踏まえ, 新刑罰学などで中心的に議論されている論点を参考にしつつ, 新たな社会状況とそれに巻き込まれる人びとの姿を記述する方法の必要性を論じた. もう1つの問いは, そのための記述方法として社会構築主義的方法がどのような意義をもつかということである. この点について本論文は, ‹語られたこと/語られなかったこと›の分割をどのように処理するかという最近の構築主義批判に応える形で, とくに語りの遂行性に着目した社会構築主義的な分析方法としてのディスコース分析の意義を, 覚醒剤使用者の告白を題材に論じた. そしてその告白が覚醒剤をめぐる社会状況と結びつけて理解可能であることを示した. 併せてディスコース分析の代表的な技法であるレパトワール分析の意義として, 個別性を超えた記述に接続可能であることを論じ, それを具体的に示すために企業逸脱とされる薬害問題を対象にディスコース分析を行うことで, その意義を明らかにした.
著者
佐藤 哲彦
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.82-95, 2003

本稿は犯罪の質的研究において科学性・合理性を保証する説明方法に関して論じたものである.ここではとくに,シンボリック相互作用論にもとづく薬物使用の質的研究における代表的二研究を取り上げ,そこで採用されたデータ収集と説明の方法が,どのような形で科学性・合理性を保証し得たのか,あるいはし得なかったのかを論じている.そして最後に,科学性・合理性を保証し得なかった方法における問題点を克服するための新たな方法を提案している・具体的にはまず,リンドスミスによる分析的帰納にもとづいた阿片依存の研究を取り上げ,この研究が,調査対象者との会話やインタビュー,医学文献にもとづいた質的な研究であるとはいえ,仮説演繹法を用いたものであることが明らかにされる.そのことにより,科学的な質的研究の方向の一つが示される.次に,ブルーマーらによる記述的な薬物使用者研究を取り上げ,この研究が,同じく調査対象者へのインタビューや彼らとの討論にもとづいたものではあるものの,調査対象者の世界を合理的には説明できていないことが明らかにされる.そして,その問題を乗り越えるために,ディスコース分析の手法を導入することが提案される.
著者
佐藤 哲彦
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.87-101, 2017

<p>本論文は逸脱研究における社会構築主義的分析の意義について2つの問いを経由して論じ, とくにディスコース分析を用いることで, 逸脱とそれを一部とするより大きな社会過程の記述が可能であるということを示したものである.</p><p>問いの1つは, 逸脱の社会学の退潮という現状から, こんにちどのような形で社会学的な逸脱研究が可能かということである. この点についてはとくに1980年代以降の犯罪コントロールや刑罰と社会との関係の変化を踏まえ, 新刑罰学などで中心的に議論されている論点を参考にしつつ, 新たな社会状況とそれに巻き込まれる人びとの姿を記述する方法の必要性を論じた. もう1つの問いは, そのための記述方法として社会構築主義的方法がどのような意義をもつかということである. この点について本論文は, ‹語られたこと/語られなかったこと›の分割をどのように処理するかという最近の構築主義批判に応える形で, とくに語りの遂行性に着目した社会構築主義的な分析方法としてのディスコース分析の意義を, 覚醒剤使用者の告白を題材に論じた. そしてその告白が覚醒剤をめぐる社会状況と結びつけて理解可能であることを示した. 併せてディスコース分析の代表的な技法であるレパトワール分析の意義として, 個別性を超えた記述に接続可能であることを論じ, それを具体的に示すために企業逸脱とされる薬害問題を対象にディスコース分析を行うことで, その意義を明らかにした.</p>
著者
佐藤 哲彦
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.290-301, 2012-09-30 (Released:2013-11-22)
参考文献数
56
被引用文献数
1 1
著者
佐藤 哲彦
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.32-39, 2020-07-31 (Released:2021-08-06)
参考文献数
32
被引用文献数
1

本稿の目的はこれまで保健医療社会学論集が果たしてきた役割について明らかにすることである。そこで本稿は、主として保健医療社会学会名義の諸研究と保健医療社会学論集に掲載された論文を題材として、日本における保健医療社会学というジャンルの成立経緯について考察し、これまで指摘されたことのない日本の保健医療社会学のローカルな発展経過を明らかにした。そしてその発展過程を明らかにする中で、これまで日本でしばしば用いられてきたSociology in MedicineとSociology of Medicineの対立とは別の形で展開したローカルな分割を、あえて保健医療社会学Aおよび保健医療社会学Bと名づけることで浮き彫りにし、その分割の存在それ自体が、多様性と継続性という点から、保健医療社会学論集および保健医療社会学会自体の活性化に果たしてきた役割を論じた。
著者
林 梅 佐藤 哲彦 村島 健司 西村 正男 荻野 昌弘
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、中国辺境地域が、市場経済や国家による開発に組み込まれる過程で、均一的な文化の受容を通して地域社会を変容させながらも、少数民族独自の伝統や文化を継承していく様態を明らかにすることに努めてきた。それは、グローバリゼーション時代において直面せざる得なくなった多文化社会のあるべき方向性を模索する作業で、そこには多重の人為的な「境界」による他者性を生きながらも、そうした「境界」を使い分けている構造があったといえる。
著者
佐藤 哲彦
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.124-137, 2013-10-15 (Released:2017-03-31)

本稿は,欧州連合(EU)において薬物問題対策として採用され,こんにち広く影響を及ぼしている「欧州アプローチ(European Approach)」について,その来歴と概要および実践をアムステルダム市のケースを題材として検討し,その施策の含意について論じている.まずEUにおける薬物政策の成立過程について,EU自体の成立過程やその過程における諸機関との関係を含めて論じたのちに,それらを現行の形として成立させ維持する制度と仕組みについて論じた.そこではとくに補完性の原則が重要な役割を果たしていること,さらに欧州委員会の管轄領域との関係が重要であることなどが指摘されている.次に欧州アプローチの一事例としてアムステルダム市におけるハーム・リダクション施策を具体的に論じ,その施策が現在の福祉政策に影響を受けていること,とくに勤労福祉政策がコミュニティという視点の強調によりハーム・リダクションに組み込まれている最近の傾向を指摘している.最後に,脱犯罪化統制であると同時に社会政策として広がりつつあるハーム・リダクションが「逸脱の経済化」の一つの現れであることを示唆している.
著者
佐藤 哲彦
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.38-48, 2003-08-25 (Released:2016-11-16)

本稿は、医療的相互作用過程の質的分析に関する論争において示唆されたものの、具体的には展開されなかった分析方法を新たな観点から提案し、当の論争において公表された慢性病診察過程のデータを再分析することで、その有効性を検証することを目的としている。特に本稿は、ディスコース分析を用ることで、社会的相互作用論による相互作用過程の分析では明らかにされなかった、医師・患者による個々の発話の意味と文脈の協働的構築過程を明らかにするとともに、ローカルな診察の場で、どのようにして「病の軌跡」がコントロールされるのかを詳細に明らかにした。この作業を通して本稿は、具体的な分析方法を新たに提示するとともに、それが特定の医療的相互作用の特殊性を記述することができることを示した。