著者
伊勢 秀夫 飯塚 成美 小林 勝 立花 継信
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.28, no.319, pp.873-878,938, 1971-11-25 (Released:2010-10-14)
参考文献数
9

レコードの射出成形に適する材料と射出条件を求めるため実験した。材料としては塩化ビニル。酢酸ビニル共重合体, ポリメタクリル酸メチル, 特殊配合ポリスチレンをとりあげ, その流動性を測定し, 各材料の成形加工性をWeirの成形加工性のパラメーターαSTVにより比較した.そのなかでレコード材料として適している塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体について, レコード成形性およびSN比と混変調歪率に対する金型温度と型締力の影響について調べた。各材料の最適加工温度において, 塩化ビニル・酢酸ビニルはαSTVが最も小さい値を示し, 成形加工しにくいことを表わしているが, レコードとしてSN比や耐摩耗性等の音響特性が優れている。射出条件によるレコード成形性の影響をレコードの音溝底半径と音溝縁半径の変化によって調べた。レコード成形性およびSN比に対する金型温度の影響は大きく, 少なくとも40℃ 以上, 型締力も100ton以上を必要とすることがわかった。
著者
上出 健二 河合 徹
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.20, no.220, pp.506-511, 1963-08-25 (Released:2010-10-14)
参考文献数
28
被引用文献数
3 4

固有粘度-分子量関係式 [η] =KmMaの係数aをすぬけ効果の寄与と体積効果の寄与に分離定量する三つの方法を提案した。すでに前報で確立した二つの固有粘度-分子量関係式を利用する粘度式法, 固有粘度と分子量第2ビリアル係数についてのKrigbaumの関係にすぬけ効果を考慮した改良Krigbaum法, およびaとexpansion factor との間のVoeksの関係にすぬけ効果を考慮した改良Voeks法である。これらの方法を実験データに適用した。三つの方法で得られたすぬけ効果の寄与の程度を表わすパラメータは良く一致した。高分子のすぬけ効果の大きさは次の順序で大きくなる。ポリ酢酸ビニル=<アタクチックポリスチレン<イソタクチックポリスチレン<ポリビニルアルコール<ポリアクリロニトリル三硝酸セルロース
著者
吉岡 直範 佐藤 宏
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.26, no.293, pp.644-650, 1969
被引用文献数
2

等温結晶化したポリエチレンテレフタレートの球晶構造を小角光散乱, 光学顕微鏡および密度測定により検討した。試料には結晶化温度および時間を変えたものを用いた。結晶化温度110℃から140℃までの領域では通常の光散乱理論により説明される散乱像を得たが, 140℃以上の領域では四つ葉のクローバー像で代表される典型的な球晶による散乱の他に散漫な散乱や, あるいは新しい散乱像も見られた。結晶化条件, 配向度あるいは分子量およびジエチレングリコール含有率といったポリマー特性によっても散乱像は影響を受けるがポリエチレンテレフタレート球晶の構造は, その散乱像から理解できる。
著者
祖父江 寛 村上 謙吉
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.9, no.92, pp.454-461, 1952
被引用文献数
2

樹脂加工用尿素・ホルムアルデヒド初期縮合物は従来のものは甚だ不安定で, 使用中短期間に混濁, またはゲル化してしまう。しかしながらトリメチロール尿素, テトラメチロール尿素のような高メチロール化物を共存させるとき, 樹脂液は長期間安定性を失わぬ [デュポン社, 英特許 641, 703 (1950)]。<BR>かかる実用的な面からしても, 初期縮合物モノ, ジ, トリ, テトラの4種メチロール化物のおのおのの生成量の比及び状態が反応温度, 反応時間, 触媒量の変化によつて, いかに変化するかを知ることは重要なことである。これに関する報文は第2報以下にゆずり, 第1報にては適当な低温条件下で, モノ, ジの2種のメチロール尿素を生成せる場合の尿素, ホルマリン, モノメチロール尿素間の平衡恒数K1及びモノメチロール尿素, ホルマリン, ジメチロール尿素間の平衡恒数K2の測定に関し, 2種類の異つた測定法を述べこれらと井上・細野氏の測定法とを比較検討した結果について記述する。
著者
根岸 道治 伊東 平八郎
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.9, no.92, pp.426-433, 1952-12-25 (Released:2010-10-14)
参考文献数
19

振子型衝撃試験器を用いて酢酸繊維素繊維の衝撃破壊挙動に及ぼす衝撃速度 (20~130cm/sec) 及び温度 (15℃~160℃) の影響について実験し次の諸結果を得た。(1) 破壊エネルギーは比較的低速範囲では速度増加にほぼ比例して増加し, ある速度において極大に達し, より高速側では減少する。(2) 低速域における破壊エネルギー~速度関係の傾斜は15℃~70℃範囲では温度増加と共に衣第に緩やかになり, 90℃で逆に急となり, 以後昇温に伴って再び緩やかになる。(3) 極大破壊エネルギーの速度位置は昇温に伴って次第に高速側に移行する傾向を示す。(4) 90℃では測定範囲に2つの極大があらわれる。破壊エネルギー~速度間の直線的な関係域に対し既報のごとく, Maxwell要素 (ヤング率E0, 内部粘性係数η) と彈性バネ (ヤング率E∽) の並列系からなる粘彈性模型を考え, かつそのE0>>E∽なる場合への近似 (Voigt要素模型) として得られる次式からηを算出し, その温度依存性について次の結果を得た。破壊エネルギー W=ηv0x1+1/2E∽x12(v0は衝撃初速度, x1は破壊伸長)15℃~160℃において, η~1/T関係は傾きのやや異る不連続な2つの直線で示され, これにAndrade式η=AeE/RTを適用し, A及び流動の活性化ェネルギーEとして, A1=3.04×104, E1=3.6 Kcal/mol (15℃~70℃) 及びA2=1.74×104, E2=5.0 Kcal/mol (90℃~160℃) を得, これは80℃附近に流動単位の変化するある種の転移点が存在するものであり, 流動単位の温度依存性を示すものと考察した。さらに極大破壊エネルギーに対応する速度位置を脆弱破壊の限界速度と考え, これからその見掛けの破壊所要時間x1/v0を算出し, それとηとの関係は15℃~160℃の全範囲に亘って温度に殆んど無関係に次式であらわされることを認めた。η=k (t-α)(t=x1/v0, k及びαは恒数)上式をMaxwell関係式η=Gλに対応せしめて, 剛性率Gに対応するk値として0.34×1010 dyne/cm2, 緩和時間λに対応する (t-α) として10-3 sec程度の値を得た。また90℃にあらわれる脆弱破壊の2つの限界速度はλあるいはη分布の1部を示すものであり, 流動単位の速度依存性を示すものと考察した。
著者
沢田 秀雄
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.20, no.221, pp.561-566, 1963-09-25 (Released:2012-02-20)
参考文献数
13

均一系ラジカル重合において重合度一温度の曲線が, 極大値をとるための条件を求めた。熱重合の場合には, 開始反応の活性化エネルギーEi, 停止反応の活性化エネルギーEt, 生長反応の活性化エネルギーEpおよびモノマーへの連鎖移動の活性化エネルギーEmとの間に次の関係があるとき, 極大値が存在する.〓一定濃度の開始剤を用いるラジカル重合の場合には, Em, Ep, Etおよび開始剤の分解の活性化エネルギーE1との間に次の関係があるとき, 極大値が存在する。〓重合開始速度が重合温度に関係なく一定である場合には次の関係があるとき, 極大値が存在する。〓
著者
柴山 恭一 児玉 峯一
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.20, no.222, pp.591-595, 1963-10-25 (Released:2010-10-14)
参考文献数
6

橋かけ度の異なるエポキシ樹脂硬化物の粘弾性と膨潤の効果を調べた。弾性率-温度曲線の傾斜は橋がけ密度とともにゆるやかになる。膨潤の主な効果は転移温度の低下であって, 膨潤剤のもつ自由体積量によってなかば定量的に説明される。
著者
桜田 一郎 坂口 康義 大隅 行彦 西野 潤
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.19, no.210, pp.620-626, 1962-10-25 (Released:2010-10-14)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

アクリル酸を種々のpH値とモノマー濃度をもつ水溶液中で,(NH4) 2S2O8を開始剤に用いて50℃ で重合させた。得られたポリアクリル酸は電圧滴定挙動および溶解性が相互にかなり異なる。これらの結果は主としてこれらのポリマーの立体的形態の差異に基くものと考えられる。pH7付近の低モノマー濃度の水溶液中で重合されたポリアクリル酸は, よりシンジオタクチックであると考えられる。
著者
甲田 広行
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.23, no.254, pp.464-476, 1966-06-25 (Released:2010-10-14)
参考文献数
10

スクリュー式およびプランジャー式射出成形機を用い, 直径4in., 厚み1/8inの円板についてポリカーボネート (PC) の成形収縮率を調べ次の結果を得た。1) 離型後の収縮過程はPCの金型温度から室温までの温度変化に基く大きな初期収縮過程と, PCの吸湿による膨張に相殺される小さな後収縮過程とに分けられる。2) 肉厚が均一で単純な形状の場合, ±0.02%の精度で成形できる。3) 成形収縮率は成形条件によって46×10-4~114×10-4mm/mmの広い範囲で変化する。4) 成形収縮率 S (mm/mm) は公称保圧Ph (kg/cm2) を変数とするS×104=A1-0.04Phなる式で表わされ, A1はシリンダーの圧力損失特性によって変化する。5) 樹脂温度TS (℃) を変数とすればSはS×104=A2-0.51TSなる式で表わされる。6) 金型温度Tm (℃) を変数とすればSはS×104=A3-0.20Tmなる式で表わされ, その影響は金型の熱膨張による寸法変化に基いている。7) Tsおよび分子量Mvの影響は溶融粘度η (poise) を変数としてS×104=A4+3.8×10-3ηなる関係式で統一的に表現され, これらの影響が主として成形機内の圧力損失と結びつけられることを推論した。8) 保圧時間, および材料の供給量はSに大きな影響を有するが, ノズルの形状, 射出圧および射出速度の影響は認められなかった。9) ポリアセタールについてSと成形条件との関係を調べ, PCとの相違点を明らかにした。
著者
住友 宏 八浜 義和
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.12, no.127, pp.479-482, 1955-11-25 (Released:2010-12-22)
参考文献数
2
被引用文献数
3 7

平均重合度592-8080の未分別ポリアクリル酸エチルを試料としてつぎに掲げる各溶媒中で20-50℃ において粘度を測定した.30℃ において得られた極限粘度数平均重合度関係はつぎの通りである。クロロホルム:[η]=720×10-3Pn0.68, ベンゼン:[η]=6.06×10-3Pn0.67, 酢酸エチル:[η]=5.45×10-3Pn0.66, アセトン:[η]=5.33×10-3Pn0.66, メ々ノール:[η] =6.14×10-3Pn0.55,(100cc'9)。これらの値, Hugginsのk'値およびそれらにおよぼす温度の影響などから溶媒力はつぎの順序に減少することを明らかにした。クロロホルム>ベンゼン>酢酸工チル>アセトン>メタノール。このうち前四者はポリアケリル酸エチルに対して良溶媒であり, メタノールのみ貧溶媒である。
著者
上出 健二 渡部 武
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學
巻号頁・発行日
vol.26, no.291, pp.498-510, 1969
被引用文献数
1

円錐-円板型回転粘度計を利用して, 低ずり速度領域 (ずり速度γ=2.72×10<SUP>-2</SUP>~2.08×10sec<SUP>-1</SUP>) におけるアイノタクチックポリプロピレン溶融物 (250℃) のずり流動特性と, 定常ずり流動停止直後の応力緩和を測定した。試料として分子量範囲6.2×10<SUP>4</SUP>~3.96×10<SUP>5</SUP>の分別区分6種と未分別物1種を利用した。溶融物にずり変形を付加してから比較的短時間のうちは, 場合によっては定常状態におけるずり応力よりも大きなずり応力が発生する。非定常状態におけるずり応力の最大値は, 試料の分子量が大きくかつずり速度が大きいほど大きい。定常状態に達するに要する時間も試料の分子量とずり速度によって著しく影響される。この結果, 毛細管流動の場合でも見かけの粘度に及ぼす非定常流動の寄与が無視できないことが予想された。ニュートン流動から非ニュートン流動に転移するときのずり速度は分子量にほぼ反比例する。ニュートン粘度と分子量との間にはいわゆる3.5乗則が近似的に成立する。定常流停止直後の応力緩和は非線形的である。緩和の速度は分子量が小さいほど, ずり速度が大きいほど大きい。非線形応力緩和の主原因は非フック弾性である。
著者
小菅 詔雄 矢野 彰一郎 金丸 競
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.28, no.317, pp.719-724,769, 1971-09-25 (Released:2010-10-14)
参考文献数
17
被引用文献数
2

ビスフェノールA/ポリアミン型エポキシ樹脂の動的粘弾性をTBA (Torsional Braid Analysis) を用いて測定した。硬化条件の異なる試料の温度分散曲線から樹脂の硬化度を推定し, 硬化反応について検討を加えた。さらにポリアミン硬化剤の分子鎖長を変えて粘弾性の温度特性に対する効果も検討した。その結果, ビスフェノールA型/ポリアミン系エポキシ樹脂の粘弾性の温度特性は硬化条件や測定時の昇温速度によって大きく影響される。とくに不完全硬化樹脂のガラス転移温度 (T0) は硬化温度や硬化時間の増加に比例して上昇する。また完全硬化樹脂のT0は網目構造中のジアミン部分における橋かけ点間のメチレン基数について直線関係が成立した。完全硬化樹脂のゴム状態における剛性率よりTobolskyのゴム弾性の状態式中のフロント係数 (φ) を求めた。φ は硬化剤の分子鎖長が大きくなると減少する傾向にあった。同じ組成の樹脂を鋼の接着剤に用いて, 測定時の温度の影響を知るために引張り強度試験を行なった。完全硬化した接着剤のT0以上の温度領域では接着強度がアレニウス型の温度依存性を示し, みかけの活性化エネルギーは脂肪族ポリアミン系硬化剤を用いたときに18kcal/mol, 芳香族ジアミンでは11kcal/molとなった。
著者
宇野 泰三 吉田 経之助
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.14, no.149, pp.448-454, 1957

塩化ビニル (以下VCと略記) のモノマーに酸素を圧入すると, 一部は容易に単量体過酸化物を形成し, 亜硫酸ソーダ (以下SSと略記), 塩化第一鉄酸性亜硫酸ソーダと容易にレドックス触媒になることを知った。しかし, この場合も遊離の酸素は重合を抑制する, また, 酢酸ビニル (以下VAcと略記) の単量体過酸化物はVCの良い重合触媒となるが, メタアクリル酸メチル (以下MMAと略記) の過酸化物は全然触媒とならない。還元剤はSSが最もよく, トリエタノールアミン, ジメチルアニソンでは重合しないばかりでなく, 重合を完全に抑制する, この点が一般に用いられている過硫酸カリ (以下KPSと略記) や過酸化ベンゾイル (以下BPOと略記) の場合と異なっている。乳化剤はラウリルスルホン酸ソーダ (以下Na-LSと略記) が最もよく, 水重合ではほとんど重合しない。重合速度は添加する酸素の量を変えてもあまり影響がない。KPSと比べると非常にわずかなモル量の酸素を添加するだけで重合する。生成ポリマーの<I>k</I>'(Hugginsの係数) は一般に大きく, ポリマーの分岐が他の重合形式の場合に比べて多いことが考えられる。
著者
桜田 一郎 坂口 康義 細井 君平 福井 節也
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.17, no.177, pp.83-86, 1960

ポリビニルアルコールおよびそのモノクロル酢酸エステルを, モノクル酢酸と水との混合液中で塩酸を触媒として反応を行なった.その結果, エステル化とケン化の両反応の間に可逆平衡が存在して, 1官能分子と同一形式の平衡関係が成立すること, および反応は簡単な可逆2分子式にほぼ従って進行することを認めた。この反応の平衡定数ならびに速度定数は, メタノールのモノクロル酢酸化反応のそれらと同程度である。これらの結果は, ポリ酢酸ビニルのケン化機構に対する従来の考えを支持している。
著者
加倉井 敏夫 帰山 享二 野口 達弥
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.23, no.254, pp.426-432, 1966
被引用文献数
2

約100メッシュのポリプロピレン粉末に水素ふんい気中でテスラ・コイルを用いて放電し, 生成したラジカルを空気と接触させてパーオキサイドにした後, メタクリル酸メチルと加熱してグラフト共重合体を得た。重合条件70℃, 3時間の場合, 放電時間60秒以上ではグラフト率は増加しなかった。放電の際の水素圧とともにグラフト率は変化し, 7.5mmHg付近に最適水素圧が存在する。空気との接触時間とともにグラフト率は減少する。放電管中の放電による温度の上昇, ならびに放電径路の限定を防ぐために冷却, ならびに振りまぜることによりさらに良い結果を得た。低重合率ではグラフト率は重合温度によらないで重合時間とともに上昇する。一方, グラフト効率は重合時間によってあまり変化せず, 重合温度の低い方が大きい。高重合率まで重合するとポプコーン状の生成物ができ, 見かけ上のグラフト率は急激に増大する。
著者
三宅 彰
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.16, no.165, pp.40-44, 1959
被引用文献数
1

実験的に求められる吸収線の2次能率が著しい温度依存をもつのに反してAndersonや久保・富田の理論で与えられるその理論値が, 実際上一定値をもつことの矛盾は、実験で求められる2次能率が理論で要求されるような完全な2次能率の値ではなく, 常に吸収線のすその部分を切断して捨ててしまって得られたもので, そのためにその値は吸収線のmotional narrowingと並行的な温度変化を示すことを認めて解決された。核が軸回転を行なっているときの2次能率を計算するGutowsky-Pakeの近似方法を論じ, それが妥当するのは回転による相関時間が2次能率のrigid valueの平方根を時間に換算したものよりもはるかに短い場合に限られることを示した。
著者
服部 滋 浜島 求女
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.27, no.307, pp.775-784, 1970
被引用文献数
7

分取用ゲルパーミエーションクロマトグラフィー (GPC) を用いてポリスチレン試料 (旭・ダウ, スチロン683-7) の分別を行ない, その実験条件および分別結果について検討した. 温度35℃でテトラヒドラフラン (THF) を溶媒として用いて, 2本の分取用GPCカラム (ボアサイズ3×10<SUP>6</SUP>Aおよび105A) を用いて分別を行なうと, 試料は9区分に分けられる. 最初と最後の区分の量は, 中心区分 (第4区分~第6区分) に比べると非常に少ない. 分析用GPCを用いて測定したそれらの各区分の分子量分布は, 高分子量区分ではかなり狭いが, 低分子量区分では広くなっている. また, 注入試料濃度 (0.5および1.0g/100ml), 流速 (20および30ml/min), および試料注入の回数 (1および15回) の三つの条件を変えた場合, あまり異なる結果は得られなかった.<BR>さらにもう1本のカラム (ポアサイズ10<SUP>4</SUP>A) を加え, 3本のカラムで分別を行なった場合, 分別区分の数は15個になった. 試料注入濃度1.0g/100mlの場合には, 2本のカラムの場合と同様に低分子量区分の分布は広くなるが, しかしそれらは濃度を低くすると狭くなり, 濃度0.2g/100mlの場合には, M<SUB>w</SUB>/M<SUB>n</SUB>の値はすべての区分において1.2~1.4であった. これらの結果から, GPCの濃度依存性について考察した.<BR>また溶媒としてトルエソを用いた場合は, 分別結果はTHFの場合とほとんど同じであるが, メチルエチルケトンを用いた場合は区分のMw/Mnの値も小さく, 他の二つの溶媒の場合よりやや良い結果が得られた. これはメチルエチルケトンが, 他の二つに比べてポリスチレンに対して貧溶媒であるためと考えられる.
著者
田原 省吾
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.23, no.253, pp.303-309, 1966-05-25 (Released:2010-10-14)
参考文献数
12
被引用文献数
1

ポリカーボネートの紫外線照射による劣化機構について, 主として赤外および紫外分光分析法により解析し, その劣化機構に2種の波長依存性が存在することを明らかにした。1) 太陽光にも含まれる約280mμ以上の長波長紫外線を照射すると, 炭酸結合部のC=Oのp電子によるn-π*遷移に相当する約287mμの光吸収が起こり, その励起エネルギーが分子内移動現象により炭酸結合部を構成するエーテル結合を切断し, COまたはCO2の系外離脱が起こるとともに, フェノール, エーテル, エステル, 酸などの助色団を生成して解重合反応が進む。2) 約280mμ以下の短波長紫外線域では258~273mμ付近に微細構造を有するベンゼン核のπ-π*禁制遷移による光吸収が起こり, n-π*励起移動と同様に炭酸結合部の切断が起こるとともに, イソプロピリデン結合部への励起移動現象も現われ, おそらくイソプロペニルやジフェニルエチレンなどの助色団が生成しつつ解重合反応が進む反面, 橋かけ反応も進行して不溶化現象が現われるものと思われる。さらに, 本実験では, 生成ラジカル, または反応中間体の寿命が比較的長いためか, 光照射中断後も経時的なスペクトルの変化が認められ, しかも, 長波長紫外線と短波長紫外線とでは異なった継続現象が観測された。
著者
上出 健二 河合 徹
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.20, no.220, pp.506-511, 1963
被引用文献数
4

固有粘度-分子量関係式 [η] =<I>K<SUB>m</SUB>M<SUP>a</SUP></I>の係数aをすぬけ効果の寄与と体積効果の寄与に分離定量する三つの方法を提案した。すでに前報で確立した二つの固有粘度-分子量関係式を利用する粘度式法, 固有粘度と分子量第2ビリアル係数についてのKrigbaumの関係にすぬけ効果を考慮した改良Krigbaum法, およびaとexpansion factor との間のVoeksの関係にすぬけ効果を考慮した改良Voeks法である。これらの方法を実験データに適用した。三つの方法で得られたすぬけ効果の寄与の程度を表わすパラメータは良く一致した。高分子のすぬけ効果の大きさは次の順序で大きくなる。<BR>ポリ酢酸ビニル=<アタクチックポリスチレン<イソタクチックポリスチレン<ポリビニルアルコール<ポリアクリロニトリル三硝酸セルロース
著者
島崎 昭夫 元起 巌
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.28, no.319, pp.884-887,940, 1971-11-25 (Released:2010-10-14)
参考文献数
5
被引用文献数
5 6

エポキシ樹脂は力学的特性がすぐれているので, 構造用成型品として広く用いられている。しかしその硬化過程における硬化反応と冷却時での樹脂の収縮変化を拘束するような成型品構造とした場合には, 成型品中に大きな内部応力を発生しき裂の発生要因ともなる。これらの基礎となる問題を解くために硬化過程での体積変化, 発生応力に関し, 一つの関係式が得られた。エポキシ樹脂の硬化過程における物理量の変化は, 反応論的には見かけ上1次反応で取り扱うことができ, その主なものは体積収縮率, Tgの変化, Tg以上の熱膨張係数, 弾性率である。