著者
井上 智彰 八杉 健司
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.622-627, 2011-11-30 (Released:2012-02-29)
参考文献数
27

バイオ医薬品では,薬理作用に種特異性が高い場合が多く,安全性評価には薬理作用が認められる動物種を用いることが望まれる.毒性の特徴として,医薬品自体に対する免疫反応の誘導,抗体医薬の一部に認められるサイトカイン放出などがあり,ヒト細胞を用いたin vitro評価法などが検討されている.DDSによるバイオ医薬品の毒性への影響の例として,PEG化による免疫原性の改善,PEG化リポソームにおけるABC現象,徐放性製剤における皮膚刺激性について解説する.
著者
江藤 浩之 中内 啓光
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.553-559, 2008 (Released:2008-12-18)
参考文献数
15

さまざまな出血性疾患や易出血病態において,血小板輸血が唯一の有効な治療法である.しかしながら,血小板は冷蔵保存ができず供給不足状態にある.また,献血者由来血液製剤を介した感染症は近年増加傾向にある.代わって献血者ドナーに頼らない輸血用血液のソースとして,無限に試験管内で増殖可能であるヒト胚性幹細胞(ES細胞)が提唱されている.筆者らはヒトES細胞からの血小板産生培養法を開発した.近年,樹立された誘導性多能性幹(iPS)細胞はES細胞同様の特性を持つため,患者由来iPS細胞からの輸血製剤産生も実現することが期待される.
著者
横山 昌幸
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.615-622, 2006 (Released:2007-03-30)
参考文献数
29

2000年にナノテクノロジーの振興が提唱される以前から, DDSではナノサイズのキャリアが当然のごとく使用されてきた. それは, 1990年代までにナノサイズを用いる意義がDDSで深く認識されてきたことと, ナノサイズのキャリアを作製する技術が得られていたことによる.本稿では, 薬物キャリアがナノサイズである意義と, キャリアの投与経路, そしてキャリアの形態を分類して説明する. 最後の章では, 各キャリア形態の最近の発展を概観するとともに, 関連したトピック (ナノメディスンと分子イメージング) についてまとめる.
著者
山本 雅哉 田畑 泰彦
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.110-117, 2005-03-10 (Released:2008-12-09)
参考文献数
26
被引用文献数
1

現在, 生体組織の再生誘導能を介した治療(外科的再生医療)が試みられている. 一方, 内科的な難治性慢性疾患の一つである線維性疾患における細胞, 生体シグナル, および組織再生修復に関する基礎生物医学が進歩している. そこで, これらの分子メカニズムに基づいた生体組織の再生誘導能を利用した, 線維性慢性疾患の内科的再生誘導治療(再生医療)が可能となっている. たとえば, 線維性組織をドラッグデリバリーシステムを利用して, 効率よく消化分解させる. 消化分解された部位は, その周辺の健康な組織の再生誘導能力により再生修復される. 本稿では, 線維性慢性疾患に対する内科的再生医療のアイデアを具体例を示しながら説明する.
著者
清水 太郎 濱本 英利 石田 竜弘
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.230-238, 2023-07-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
44

イオン液体は、室温で液体の塩であり、水や有機溶媒に続く第3の溶媒として注目されている。イオン液体は有機カチオンと有機・無機アニオンから構成され、その組み合わせを変えることによって無数の物性をもつ溶媒を作製することが可能である。イオン液体は薬物の溶解性や安定性や吸収性を向上させることが可能であるため、近年、イオン液体を医薬品開発に応用する研究が盛んに行われている。経皮投与は非侵襲的で利便性に優れた投与方法である一方で、親油性の低分子にしか適用し難かった。しかし、薬物をイオン液体に溶解する、または薬物自体をイオン液体化することによって、さまざまな薬物を皮膚透過できることが、近年報告されてきた。イオン液体とともに皮膚に適用した薬物は、皮膚局所だけでなく全身にも移行するため、さまざまな疾患治療への応用が期待される。本稿では、外用剤・経皮吸収製剤に用いられるイオン液体の特性および疾患治療への応用について紹介する。
著者
白石 貢一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.122-130, 2022-03-25 (Released:2022-06-25)
参考文献数
34

生体親和性ポリエチレングリコール(PEG)の製剤における有用性は周知の事実であるが、一方でPEGがもたらす生体応答に関心が高まっている。生体親和性を示すPEGの性質とPEGがもたらす抗PEG抗体産生という、一見すると、相反する性質は何によってもたらされているのだろうか。PEGは生体分子と弱いながらも相互作用を示すことが知られてきており、より特異的なPEGと抗PEG抗体という2つの分子の関係に着目すると、特異的相互作用と特異的相互作用に基づく、不可逆的な結合という2つの異なる相互作用に着目する必要がある。本稿では、PEGと抗PEG抗体との関係と、新たなアプローチの紹介を含めて概説する。
著者
櫻井 文教 水口 裕之
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.24-30, 2023-01-25 (Released:2023-04-25)
参考文献数
24

がん細胞特異的に感染し、がん細胞を死滅させることで抗腫瘍効果を示す腫瘍溶解性ウイルスが、次世代の抗がん剤として大きな注目を集めている。2021年には、わが国においても腫瘍溶解性ヘルペスウイルスが承認(条件および期限付き承認)を受けた。一方で腫瘍溶解性ウイルスは、それ自体が自然免疫を活性化させるとともに、がん細胞よりDamage-associated molecular patterns(DAMPs)やがん抗原を放出させることで抗腫瘍免疫を活性化し、それが腫瘍溶解性ウイルスの抗腫瘍効果に大きく寄与することが明らかとなってきた。また、腫瘍溶解性ウイルスと免疫チェックポイント阻害剤などのがん免疫療法との併用が、高い相乗効果を示すことも報告されている。本稿では、腫瘍溶解性ウイルスによる抗腫瘍免疫活性化とがん免疫療法との併用療法について紹介したい。
著者
長崎 幸夫
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.327-335, 2015-09-25 (Released:2015-12-25)
参考文献数
10

近年、活性酸素種(ROS)がさまざまな疾患の原因や重篤化に、大きな影響を与えることがわかってきている。ROSを消去するにはビタミンCやビタミンEなどの天然物や合成抗酸化剤など種々あるものの、多くの臨床結果で「よい」という結果が出たものはない。実は生体内の電子伝達系に代表される反応では、ROSが正常なエネルギーを産生するために必要であり、正常なROSの産生を妨げず、疾病に関与するROSを選択的に消去することが重要なポイントである。非特異的に体内に広がり、正常細胞やミトコンドリア内のレドックス反応を妨害する低分子抗酸化物質は、使用には限界があるのである。我々は、代謝可能な中分子量ポリマーにROS消去能をつくり込み、正常な細胞に入り込むことがなく、疾病に関与するROSを選択的に取り除く、新しいナノメディシンの設計を進めてきた。虚血再灌流障害に対するレドックスナノメディシンの効果を紹介する。

1 0 0 0 OA 純水・超純水

著者
筧 俊昭
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.308-312, 2021-09-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
3
著者
紀ノ岡 正博
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.369-376, 2021-11-25 (Released:2022-02-25)
参考文献数
6

ヒト細胞加工製品の製造は、製造所内外でのさまざまな工程(上工程、下工程、外工程)からなる。その際、種々の固有の特徴を有し、工程の変動つまりは品質の不安定性を導くため、細胞製造性を加味した設計を行うことが必要である。本稿では、ヒト細胞加工製品の製造工程および製品品質の特徴について述べる。さらに、細胞分注凍結工程における品質変動性について理解を深め、システムの変動要因を区別し解析することや、細胞製造固有の工程構築法を体系化することが重要であることを示す。
著者
眞鍋 史乃
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.10-21, 2019-01-25 (Released:2019-04-25)
参考文献数
47

抗体-薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)は、抗体をデリバリーツールとして活性の強い低分子化合物を病変部位へと送達し、安全域を広げるので、次世代抗体医薬として期待されている。本稿においては、より効果的なADCを作製するために各構成分子である抗体、低分子化合物、リンカーそれぞれに求められる事項と最近の話題について概説する。
著者
辻崎 正幸 今井 浩三 本谷 聡 日野田 裕治 谷内 昭
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.8, no.6, pp.425-432, 1993-11-10 (Released:2009-02-23)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Id-anti-Id interaction constitutes an immune network that is involved in the regulation of the immune response. We prepared several anti-Id mAb to anti-CEA mAb MA 208 which was found to recognize the peptide of CEA. These anti-Id mAb were then used for idiotope mapping and for developing anti-anti-Id antibodies to analyze the Id network system relating to CEA. Anti-anti-Id mAb M 7-625 antisera (Ab 3) reacted with purified CEA in binding assay and in Western blot analysis, and competed with Ab1 binding to CEA. It is indicated that Ab2 mimicks the structure of the epitope in CEA which was recognized with Ab1. These serologic findings suggest that anti-Id mAb M 7-625 carries the internal image of the Ag. According to the amino acid sequences of CDR 1, 2, and 3 of the mAb M 7-625 variable region, there exists a homology of amino acid sequences between CDR 2 in the H chain (5 amino acids of 10) and CDR 3 in the L chain (3 amino acids of 9) of mAb M 7-625 and domain III of CEA (545-554). Internal image bearing anti-Id antibodies may be useful for the induction of a host's immune response against tunors.
著者
金田 安史
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.246-256, 2012-09-30 (Released:2012-12-28)
参考文献数
22
被引用文献数
3 2

現在行われている再生治療は、主として体外培養した幹細胞の移植である。これにより従来治療が困難と思われていた難治性疾患の治療の可能性が示されてきた。一方で、体外培養することによる遺伝子発現の変化も否定できない。たとえ有効性が示されたとしても用事調整の細胞では広く治療剤として普及することは難しい。もし体内の幹細胞を損傷部位に集積させて分化させることができれば、最も自然な形での組織再生が可能になるとともに、その誘導因子は再生治療剤として世界中に利用されるであろう。そのような幹細胞の損傷組織への動員や分化を促進する因子の研究も進んでおり、臨床応用に近づいているものもある。その取り組みの現状を紹介する。
著者
波多野 正和 亀井 浩行 岩田 仲生
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.186-193, 2016-07-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

持効性注射剤(LAI)は、2~4週間に1度投与することで安定した血中濃度が得られるように設計されたコントロールドリリース製剤である。長期的な服薬継続が不可欠な統合失調症治療において、LAIは有用な治療戦略の1つである。これまでのLAIは拒薬や病識がない患者に対して強制的に使用されるという負の印象が強かったが、第二世代抗精神病薬のLAIが上市されるとともに外来における維持療法としての役割が期待されている。精神科医療が入院から外来へと移行しつつあるなかで、社会復帰という観点からも服薬の負担から解放されるLAIのメリットは大きい。本稿では、精神科領域におけるLAIの臨床的意義と各薬剤の特徴、今後の課題について概説する。
著者
河合 惇志 平井 敏郎 吉岡 靖雄
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.402-411, 2022-11-25 (Released:2023-02-25)
参考文献数
72

COVID-19に対してかつてない速度でワクチンが普及した背景には、DDS技術の発展が必要不可欠であった。特に、mRNAワクチンにおける脂質ナノ粒子(LNP)の開発は、まさにDDS技術の結集といえよう。一方で、mRNAワクチンを含め、現状のさまざまなワクチンは多くの課題を有しており、より効果的かつ安全なワクチン開発に資する基盤技術の確立が世界的に待望されている。本稿では、ワクチンモダリティの1つである組換えタンパク質ワクチンに焦点を絞り、抗原改変技術からアジュバントの改良に至るまで、ワクチン開発基盤技術の最新知見について紹介する。
著者
中田 隆 西本 典広 荒井 綾子 黒木 大介
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.384-388, 2021-11-25 (Released:2022-02-25)
参考文献数
14

抗体薬物複合体は、選択的かつ効果的にがん細胞を死滅させるとともに、全身毒性の軽減が期待される医薬品である。第一三共では独自技術の研究を進め、カンプトテシン誘導体を活性本体とする薬物リンカー技術を確立し、抗HER2抗体に本技術を適用したトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、本剤)の研究開発を進めた。本剤は、複雑な構成成分に関する難易度の高い品質管理を行い、処方・剤形・容器・包装を選定することで安定した供給に努めている。間質性肺疾患などの重大な副作用を注意深くモニタリングする必要があるものの、新たな治療選択肢としてHER2を発現する乳がん、胃がんに対し承認を取得した。
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.229-238, 2003-05-10 (Released:2009-02-23)
著者
井上 高光 大山 力 羽渕 友則
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.415-420, 2009 (Released:2009-10-30)
参考文献数
25

初診時前立腺がんの約80~90%はアンドロゲン依存性の性質を示す.転移を有する前立腺がん患者に対しては,根治を目指す前立腺全摘術や放射線療法よりもホルモン療法が通常選択される.前立腺がんにおけるホルモン療法の目的は,アンドロゲン受容体へのシグナルを減少させ腫瘍を縮小させるところにある.現在本邦では,外科的去勢術(両側精巣摘除),LH-RHアゴニスト,抗アンドロゲン剤,グルココルチコイドを組み合わせてホルモン療法が行われているが,そのうち特にDDSに関わる事項として,LH-RHアゴニスト徐放製剤の開発について詳説する.この製剤は,精神的身体的負担を伴う精巣摘除術なしに去勢を可能とした.
著者
丹羽 靱負 渡部 誠一郎
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.111-119, 1989-04-10 (Released:2009-02-23)
参考文献数
42

Bovine liposomal-encapsulated superoxide dismutase (L-SOD) which was developed by A. M. Michelson has overcome the pharmacobiochemical problems (disadvantages) of the injection of SOD preparations ; the very short life span of free SOD (6 min) was to considerable extent prolonged (6-7 hr), and weak fixation and penetration (permeability) to the membranes of target cells where oxygen radicals or lipid peroxides are exerting their harms. As previously reported by us, the injection (2.5 mg twice a week) of L-SOD was markedly effective in Kawasaki's disease (mucocutaneous lymph node syndrome), intestinal ulcer of Behçet's disease, Crohn's disease and colitis ulcerosa, and lung fibrosis of progressive systemic sclerosis (PSS) and polymyositis (dermatomyositis). In addition, severe rheumatoid arthritis (RA), Sjögren syndrome and other oxygen radical-or lipid peroxide-related diseases are improved by L-SOD injection. Recently, it has been further found that L-SOD (1.5 mg twice a week) is effective in liver cirrhosis, fibrosis induced by radiation, and schizophrenics. Acute paraquat toxicosis taken for the purpose of suicide which had been completely beyond the treatment was well treated with continuous drip infusion of L-SOD. Skin ulcer lesions were also in shorter period healed and keloid formation was prevented with L-SOD injection. However, not only other free SOD preparations but also L-SOD have various problems and questions in their pharmacologic and biochemical actions in the body to be solved or to be answered. In animal experiment, it was verified that SOD does not work dose-dependently, but the dosis over optimal concentration adversely stimulate and increase inflammation. It has been the great question why only a very small amount of enzyme (1.5 mg twice a week) actually and effectively prevents inflammation ; this dosis is 1/20 to 1/150 of the SOD which usually exists in each tissue or organ in the body. Next, it is also the great question why allogeneic (human) SOD is ineffective in the diseases while heterogeneic (bovine) SOD is effective. Although in part answered by us1, 7) and Michelson, why heterogeneic SOD has shown no severe allergy such as anaphylaxis? Further, regarding the clinical effectiveness of L-SOD in Behçet's disease, why L-SOD is ineffective in ocular type while it is dramatically effective in intestinal type? SOD preparations including L-SOD, although they seem to be actually recommendable for the various inflammatory diseases, there have been several problems to solved, and L-SOD is also still required to be improved, Additionally, it is not unlikely that allogeneic (human) SOD preparations are clinically effective in the diseases.
著者
北島 康雄
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.424-432, 2007 (Released:2007-10-02)
参考文献数
27
被引用文献数
4 2

皮膚の水・空気環境バリア機能に関して最も重要な構造は,角質細胞間にある脂質多重層構造である.これを恒常的に構築する細胞が表皮ケラチノサイトであり,その最終分化細胞の角質細胞は強靱な細胞シート構造を保ち,脂質多重層を柔軟に強く保持している.そのために,ケラチノサイトは細胞内にはケラチン中間径線維とデスモソーム,アドヘレンスジャンクション(Jnc),タイトJnc,ギャップJncなどの細胞接着構造を発達させている.その分子変異や機能異常は角化異常とバリア機能不全をきたす.これらの分子の制御はDDSの制御につながる.