著者
薗田 良一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.60-64, 2017

クレナフィン<sup>&reg;</sup>爪外用液10%は、新規トリアゾール系化合物であるエフィナコナゾールを有効成分とする日本初の外用爪白癬治療薬である。エフィナコナゾールは爪白癬菌の原因真菌(皮膚糸状菌)に対して高い抗真菌活性を有し、ケラチンとの親和性が低く、爪甲での透過性に優れている。そのため、爪表面にエフィナコナゾールを直接塗布することにより、爪甲内、爪床において高い抗真菌活性を発揮することを考え、外用の爪白癬治療薬としてクレナフィン<sup>&reg;</sup>爪外用液10%が開発された。
著者
小野寺 理沙子 田原 耕平 竹内 洋文
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.121-128, 2015-03-25 (Released:2015-06-25)
参考文献数
17

薬物を効率よく送達するために、リポソーム、リピッドエマルション、ポリマーナノパーティクルなどのコロイド薬物キャリアーの活用が有効である。本論文では、リポソームを用いた最近のわれわれのこの分野での研究成果を経口、経肺、点眼投与の各投与ルートに関して説明する。特に、ポリマーによる粒子表面修飾を含むリポソームの粒子設計が、そのキーポイントの1つであることを述べたい。
著者
山下 親正
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.417-425, 2006 (Released:2006-12-15)
参考文献数
60
被引用文献数
2 2

現在, 多くの蛋白質やペプチド性医薬品が主に注射剤として開発されている. これら注射剤は, 患者の立場を考慮した場合, 利便性・安全性, 痛みや注射恐怖症などの面で種々の問題点が指摘されている. 近年, その代替製剤として, 蛋白質やペプチドの吸収部位としての肺に着目した非注射剤である吸入剤の開発が盛んに行われている. このなかでもオゾン層の破壊や地球温暖化に影響を与えない環境にやさしい粉末吸入剤が注目されている.本稿では, 粉末吸入システムにおける現状と未来について述べる.
著者
山下 親正
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.468-476, 2009 (Released:2010-01-08)
参考文献数
55
被引用文献数
1 4

蛋白質やペプチドなどの高分子医薬品に適した新規の粉末吸入システムを構築するために,予め製造工程で経肺投与に適した微粒子を設計するという従来の基本的な製剤設計の既成概念を脱却し,発想の転換を図った.すなわち,不安定な蛋白質やペプチドなどの高分子医薬に適した製造方法である凍結乾燥法と,空気力学的に大変有利な多孔性を有する凍結乾燥ケーキに着目し,凍結乾燥ケーキが吸入時にはじめて微粒子化するという新しい概念の粉末吸入システムOtsuka dry powder inhalation(ODPI)システムを開発した.このODPIシステムは,吸気と同調して空気がデバイス内に導入され,その空気衝撃により,凍結乾燥ケーキが瞬時に経肺投与に適した微粒子になるメカニズムを採用している.このシステムは,製剤としては,微粒子の集合体ではない蜘蛛の巣のように形成されたユニークな多孔性の網目構造を有する凍結乾燥ケーキと,空気の通路と微粒子の排出経路が備わっていれば成立するシンプルな構造の吸入デバイスを使用することを特長とする.
著者
中川 岳志 岡田 直貴 中川 晋作
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.35-44, 2013-01-30 (Released:2013-04-30)
参考文献数
41

養子免疫療法は、癌患者より採取したCD8+ T細胞から腫瘍特異的な細胞傷害性T細胞 (CTL) を分化誘導し、再び患者へと移入することで癌の退縮および転移・再発抑制を図る自己細胞療法である。しかし、癌患者は免疫抑制状態に陥っているため、治療に十分な数の腫瘍特異的CTLを誘導することが困難である。この打開策として、キメラ抗原受容体 (CAR) を発現させたCTLを創製する手法の開発が進められている。CARは、標的分子に特異的に結合する細胞外ドメインとCTL機能を修飾する細胞内シグナル伝達ドメインとを融合した人工蛋白質であり、CTLに標的分子特異的な細胞傷害活性を付与できる。本稿では、CAR研究の動向ならびに筆者らの腫瘍血管特異的CAR発現CTLを用いた次世代養子免疫療法について概説する。
著者
小田 雄介 鈴木 亮 丸山 一雄
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.486-488, 2015-11-25 (Released:2016-02-25)
著者
米澤 淳
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.381-388, 2012-11-30 (Released:2013-02-28)
参考文献数
24

プラチナ系抗がん剤は現在も幅広く臨床使用されている。これらの毒性発現機構は酷似しているにも関わらず、腎毒性をはじめとして異なった特徴を呈する。トランスポータはその基質認識特異性、発現分布、機能特性によって、組織への薬物の輸送を司る。近年の研究により、有機カチオントランスポータOCTとmultidrug and toxin extrusion MATEがプラチナ系抗がん剤のドラッグデリバリーに重要な役割を果たすことが明らかにされてきた。本稿では、トランスポータを介したプラチナ系抗がん剤のデリバリーに焦点を当てて解説する。
著者
村岡 ひとみ 佐藤 陽治
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.207-216, 2014-07-20 (Released:2014-10-21)
参考文献数
2

平成25年、わが国の再生医療・細胞治療の実用化を目的とした3つの重要な法律が成立した。これらの法律では、再生医療・細胞治療の臨床試験や関連する産業に対する規制について、新たな整備が行われている。特に重要な変更点としては、薬事法改正により「再生医療等製品」が「医薬品」や「医療機器」から独立した新しいカテゴリーとして分類され、一部の再生医療等製品については条件及び期限つき承認制度が導入されたことと、再生医療等安全性確保法により、医師が患者から採取した細胞を医療のために加工する作業を外部事業者に委託することが認められたことが挙げられる。本稿では、これらの新たな再生医療等に関する規制について概説するとともに、再生医療の早期実用化に必要なレギュラトリーサイエンス上の課題について解説する。
著者
高原 富弘 向井 陽美
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.205-214, 2013-07-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

細胞障害性薬剤に代表される抗がん剤のDDS研究において、最も有望なアプローチの1つに、従来の抗がん剤に対し製剤的な工夫を施すことで、理想的な薬物動態学的特性へと変化させる方法がある。塩酸ドキソルビシンをリポソームカプセルに封入し、メトキシポリエチレングリコールでコーティングした製剤であるドキシル®は、長時間の血液循環及び腫瘍組織への移行を促進することにより、塩酸ドキソルビシンの毒性プロファイルを改善した。本稿では、ドキシル®の開発経緯並びに再発卵巣癌における臨床データを中心に言及する。
著者
田邉 一仁
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.446-453, 2015-11-25 (Released:2016-02-25)
参考文献数
9

筆者らは、薬剤の副作用の軽減を目標に、X線活性化型のプロドラッグの開発を進めてきた。このプロドラッグとは、化合物そのものは毒性を示さないが、X線照射によって構造が活性な薬剤へと変わり、効果を発現するスマートな薬剤である。薬剤をプロドラッグ化することによってX線照射した病変部でのみ抗がん活性を発現できることから、薬剤が抱える副作用の問題を解決できると考えた。筆者らはアジドメチル基、インドールキノン基、ジスルフィド結合等のX線還元反応を受けて結合開裂を生じる官能基を見出し、各種プロドラッグを設計してきた。本稿では、筆者らが進めてきた低分子抗がん剤、核酸医薬品、および薬剤運搬システムのX線照射による活性制御について、分子設計の視点から解説する。
著者
勝田 毅 落谷 孝広
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.140-151, 2014-03-25 (Released:2014-06-25)
参考文献数
41
被引用文献数
1

エクソソームと呼ばれる細胞分泌小胞が、細胞間相互作用において重要な役割をもつことが明らかとなり、急速に注目を集めている。エクソソームにはタンパク質、microRNA、mRNAなどの分子が含まれ、由来する細胞と類似の機能が備わっていることがわかってきた。そのため、幅広い疾患に対する細胞治療のソースとして注目されている間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)が分泌するエクソソームには、MSCと同様の治療効果が備わっていると期待される。本稿では、最近明らかになってきた、MSC由来のエクソソームが見せるさまざまな疾患に対しての治療効果について最新の知見を紹介する。さらに、MSCのエクソソームを用いた治療戦略と、その実現に向けて解決すべき課題について議論する。
著者
菅原 皓 岡部 弘基 船津 高志
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.354-356, 2014-09-25 (Released:2014-12-25)
著者
中島 進 阪田 功 竹村 健
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.105-110, 1996-03-10 (Released:2009-02-23)
参考文献数
14
被引用文献数
3 10

One of the “dreams” of cancer treatment is missile therapy targeted specifically to cancer tissues. At first, monoclonal antibodies were expected to play primary roles in this therapy and were studied globally at a number of institutions. However, the practical use of monoclonal antibodies is hampered by their poor accumulation in tumor tissues and side effects such as the human antigen-murine antibody reaction (HAMA) phenomenon. Porphyrin derivatives are low-molecular-weight agents that accumulate in tumor tissues and have recently attracted much attention as possible substitutes for monoclonal antibodies We have synthesized about 750 porphyrin-related derivatives since 1980, when we first became interested in the tumor tissue accumulating property of porphyrins, and have studied them in many respects. The mechanisms of tumor tissue accumulation of porphyrins as we speculate at present are followings ; Important factors are the strong affinity of porphyrins to proteins because of their high π electron contents and the amphipathicity to water and oil due to the stacking phenomenon. As for the tumor tissue, active endocytosis associated with enhancement of LDL and transferrin receptor activities and the immaturity or lack of lymphatic tissues in tumor are important factors. The increased permeability of tumor vessels, which has been discussed for years, is also considered to be a factor in tumor tissue accumulation of porphyrins. In this issue, recent knowledge about the mechanism of accumulation of porphyrins in the tumor tissues and the prospects of their application to the diagnosis and treatment of cancer are discussed.
著者
長田 篤史
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.143-148, 2017-03-25 (Released:2017-06-25)
参考文献数
11

薬品開発におけるDrug Delivery System(DDS)の活用は以前から行われており、すでにさまざまな疾患領域で多様なDDS製剤が開発・上市されてきた。オンコロジー領域では、これまでに3剤のAntibody-Drug Conjugate(ADC)が上市され、現在、多くの新規ADCが臨床試験中である。そのほかにも最新のテクノロジーを活用した新たなDDS技術を応用した医薬品が世界中で研究・開発されており、DDS製剤の開発競争は今後も続くであろう。筆者の所属するナノキャリア株式会社ではミセル化ナノ粒子技術を応用した抗がん薬を研究・開発しており、3つの化合物が臨床フェーズに移行している。本稿では筆者のナノキャリア株式会社における臨床開発経験から、新規ミセル製剤の臨床開発における特徴について概説する。
著者
夏井 謙介
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.229-234, 2016-07-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1

シダトレン®は日本初の舌下免疫療法薬であり、日本の国民病ともいえるスギ花粉症に対して、長期寛解または根治が期待できるアレルゲン免疫療法(Allergen Immunotherapy:AIT)薬として2014年に承認を取得した。本剤の特徴は、舌下投与という用法や、アレルギー性の副作用発現の低減を目的として実施される増量期の設定などがあげられる。また、アレルゲンエキスの安定性を保持するための容器材質の選定や、増量期を含めた投与プロトコールを簡便に実施するための容器形状にも特徴がある。一般的にAITは、3~5年間の治療期間が推奨されるが、より多くのスギ花粉症患者がシダトレン®による治療を選択し、根治へ向かう患者が増えることを期待している。
著者
樋田 京子
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.34-39, 2012

がん組織を養う血管を標的としがんを兵糧攻めにできる血管新生阻害療法は全てのがんに共通する血管新生を標的としており、がんの新しい治療法として近年注目されている。本法の標的である腫瘍血管内皮細胞は正常血管内皮とは様々な点で異なる性質を持つことがわかってきた。腫瘍血管内皮細胞の特性を理解することは腫瘍血管新生のメカニズムの解明、新たな血管新生阻害療法の開発に寄与するものと期待される。本章ではわれわれの研究を含め腫瘍血管内皮細胞の特異性についての最近の研究結果を概説する。
著者
青木 伊知男 城 潤一郎 Horacio Cabral Rumiana Bakalova Kevin M. Bennett
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.47-53, 2015-01-25 (Released:2015-04-25)
参考文献数
37
被引用文献数
1

臨床で幅広く利用される生体イメージングであるMRIに対して、ナノDDSはこれまで、標的化による感度の向上、マルチモダリティ化、環境や外部刺激に応答する反応性の造影剤、そして診断と治療の一体化(セラノスティクス)など多様な応用を前臨床研究にもたらした。また、高分子ポリマー、ナノミセル、炭素素材、PEG化リポソームなど各キャリアの優れた特徴や限界も明らかになりつつある。本稿では、MRIに応用するという視点から、急激な発展を遂げたナノDDSの進歩と問題点を議論し、新しい方向性として注目される反応性造影剤(activatable probe)とセラノスティクスへの応用を中心に最近の動向を俯瞰し、将来を展望したい。