著者
加藤 弥寿子 矢上 晶子 松永 佳世子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1427-1429, 2005-12-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
6

キトサンは接合菌類の細胞壁に存在する分子量10^5〜10^6程度の直鎖状多糖類である.血清中性脂肪値, コレステロール値の低下作用, 食物繊維としての作用を持ち, 近年は健康食品として多数販売されている.今回われわれは, キトサン含有健康食品による即時型アレルギーを経験したため文献的考察も含めて報告する.症例は47歳女性でキトサン内服後全身の蕁麻疹と呼吸困難感が発症した.皮膚テスト(プリックテスト, スクラッチパッチテスト)で陽性を示し, 市販のキトサンを用いて再度皮膚テストを行い陽性であった.キトサンによる即時型アレルギーと診断し, キトサンの摂取を回避するよう患者に指導したところ現在まで無症状である.キチン及びキトサンに対するアレルギー反応についてはキトサン含有クリームによる接触皮膚炎が海外で報告されているが, 即時型アレルギー反応は我々が調べえた限り報告されていない.キトサンは蛋白質ではなく多糖類だが, その分子量と一般的な性質により食物アレルゲンとして機能した可能性が考えられた.
著者
堀口 申作 斎藤 洋三
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.16-18,74-75, 1964
被引用文献数
54

我国においては, 諸種の観点から花粉症の存在は予想される所であるが, 現在までの所, アレルゲンの確定せる花粉症の報告は極めて少い.今回我々は, 日光地方において季節性に特に春季に起る鼻腔, 咽頭並びに眼結膜のアレルギー症状を呈する21症例に遭遇し, これらに対し, 各種の臨床的検索を行った.これらの症例の罹病時期は, スギの開花時期と一致し, 更にアレルゲンの検索を行った結果, スギ花粉による乱刺法では71.4%に陽性, アレルゲンエキスによる皮内反応では, スギに対し85.7%に陽性, スギ花粉による結膜反応は85.7%に陽性, 鼻粘膜反応は100%に陽性, 2症例にP-K反応を打って陽性の成績を得た.以上を綜合した結果, 本症がスギ花粉をアレルゲンとする花粉症であることが確認されたので, これをスギ花粉症Japanese Cedar Pollinosisと命名した.
著者
榎本 雅夫 森田 裕司 齋藤 明美 安枝 浩
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.39-44, 2009-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

スギ花粉症の有病率は,日本の「国民病」といえる程に高い.一般的な治療には,マスクやメガネなどを使用したスギ花粉の回避によるセルフケアと第2世代抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬を用いたメディカルケアがある.しかし,医療機関を受診せず,いわゆる健康食品を利用した「セルフメディケーション」を行っている患者も多い.その1つに,スギ花粉をカプセルに詰めたものがある.2007年2月に,そのカプセル服用後に,アナフィラキシーショックを呈した49歳,女性を経験した.この症例の特異的IgE抗体やヒスタミン遊離試験はスギ花粉に対して陽性であった.内容物に含まれる主要抗原のCryj1量は少なかったが,この製品に含まれるスギ花粉以外にアナフィラキシーショックの原因は考えられず,服用後行ったテニスによる運動誘発アナフィラキシーショックと考えるのが妥当と結論した.
著者
清水 麻由 今井 孝成 山崎 さやか 矢川 綾子 宮沢 篤生 中村 俊紀 北條 菜穂 石川 良子 神谷 太郎 板橋 家頭夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.128-133, 2016 (Released:2016-04-16)
参考文献数
20

【目的】インフルエンザ予防接種ガイドラインには,鶏卵完全除去中や鶏卵摂取後にアナフィラキシー歴がある児は専門施設へ紹介するとし,安全性についての記載はない.今回,特に重症な鶏卵アレルギー児を対象に当科でインフルエンザワクチンを接種した後の副反応について検討し,17例のケースシリーズとして報告する.【方法】対象は平成25年度にインフルエンザワクチンを希望し,当該ワクチンの接種歴がなくかつ重症な鶏卵アレルギー児(鶏卵完全除去中かつ卵白またはOvomucoid(OVM)特異的IgE値がスコア4以上である児〔以下完全除去児〕,または鶏卵摂取にてSampson分類でGrade III以上の強いアナフィラキシー症状の既往のある児〔以下アナフィラキシー児〕)とした.接種前に10倍希釈ワクチン液でプリックテストを施行し,2分割接種を行った.主要評価項目は,接種後30分以内,24時間以内の副反応の出現状況とした.【結果】17例(完全除去児9例,アナフィラキシー児8例)を対象に,のべ33回接種を行い,接種後の副反応は,分割接種30分以内,24時間以内とも認めなかった.【結論】重症な鶏卵アレルギーであっても,インフルエンザワクチンは安全に接種できる可能性が高い.
著者
河原 秀俊 森澤 豊 勝沼 俊雄 大矢 幸弘 斎藤 博久 赤澤 晃
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.559-564, 2002-07-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
7

卵白CAP-RAST陽性患児に対するインフルエンザワクチン接種の安全性について検討を行った.Sandwich ELISA法にて今回使用したワクチン中卵白蛋白(OVA)濃度測定を行い,2〜8ng/mlと微量であった.ハイリスク患児(卵白CAP-RASTクラス4以上または卵摂取により何らかの即時型反応の既往のある)36名(44.1±5.0カ月)に対しインフルエンザワクチン接種を行い,副反応として1患児で局所発赤を認めたが,即時型全身副反応をきたした患児は認められなかった.また卵白CAP-RAST陽性群(104患児)と陰性群(98患児)における即時型副反応の頻度は,局所反応が卵白CAP-RAST陽性群で0.5%,陰性群で2.2%であり,有意差は認められなかった.以上より,卵白CAP-RAST陽性患児に対するインフルエンザワクチン接種は,多くの有症状患児に対しても可能と思われる.
著者
脇坂 ちひろ 飯豊 深雪
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.569-571, 2005-06-30 (Released:2017-02-10)

アリルイソプロピルアセチル尿素(以下AIAU)は緩和な睡眠鎮痛作用をもつモノウレイド系の薬剤で多数の一般医薬品に配合されている. 今回我々は月経痛の度に内服していたイブA(R)に含まれていたAIAUによる固定薬疹の一例を経験したので報告する. 症例:46歳, 女性. 初診:2003年8月4日. 既往歴家族歴:薬剤アレルギーはない. 現病歴:約5年前より月経の度に口唇, 陰部, 手指に水疱, びらんが出現. これまで数件皮膚科を受診し単純性疱疹の診断でアシクロビルを投与されていた. また, 月経痛のため月経時にイブA(R), テプレノンを, 鉄欠乏性貧血のため時々クエン酸第一鉄ナトリウムを内服していた. 皮疹が肛囲や四肢にも広がってきたため, 症状出現の約3日後に当科受診. 現症:口唇に水疱, びらんを伴う発赤, 腫脹があり, 陰部, 肛囲, 両手指, 右前腕, 右臀部, 右大腿部後面, 左足関節部にも周囲に紅量を伴う水疱やびらんを認めた. また, 全身倦怠感もみられた. 病理組織像(右大腿部後面の水疱):表皮内に壊死した角化細胞が多数あり真皮表皮境界部は著明な空胞変性のため表皮下水疱を形成していた.