著者
宮原 聡子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.1305-1310, 1995-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
11

オリーブ花粉は, 地中海沿岸地域における主要吸入抗原の一つである. 著者は, 国内有数のオリーブ生産地である小豆島におけるオリーブ花粉の飛散状況と, オリーブ花粉症の有無について免疫血清学的臨床調査を行った. その結果, オリーブ花粉症と考えられる患者 (15名) を認めた. またオリーブ花粉症患者血清においてカモガヤ (イネ科) 花粉との交叉反応が示唆された. オリーブを含むモクセイ科花粉とイネ科花粉との共通抗原性が報告されており, 今回の結果から国内においてもイネ科花粉症患者がモクセイ科花粉によってアレルギー反応が誘発されていると推測された.
著者
大野 修嗣
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.107-114, 1988-02-28 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
1

漢方薬「補中益気湯」の臨床的効果とNK細胞活性について35例の慢性疾患々者で検討した.補中益気湯服用前のNK細胞活性は24.6±13.7%であり, 服用後30.4±14.4%となり危険率5%以下で有意の上昇であった.補中益気湯服用にて臨床症状改善が認められた8例では, 服用前19.6±9.6%であったNK細胞活性は, 服用後38.2±15.4%となり, 危険率1%以下の有意の上昇となった.また服用前NK細胞活性が20%以下と低値群も危険率1%以下で有意の上昇が認められ, NK細胞活性高値群では逆に低下する傾向が認められた.リンパ球自体に対する作用を検討すると, 50-500μg/ml濃度の補中益気湯添加mediumで培養したリンパ球では有意のNK細胞活性上昇が認められている.CD4抗体処理後およびCD8抗体処理後の細胞群による検討では, いずれもNK細胞活性高値群に対して補中益気湯が抑制的に作用していることが示唆された.補中益気湯の臨床的効果と, リンパ球に対する影響がよく一致していると考えられた.
著者
田中 稔彦 亀好 良一 秀 道広
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.134-139, 2006-02-28 (Released:2017-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
9

【背景】蕁麻疹の病態・原因は多様であり,これまでに様々な分類法が用いられてきた.平成17年に日本皮膚科学会より「蕁麻疹・血管性浮腫の治療ガイドライン」が作成され,必要となる検査の内容と意義,治療内容,予後の視点を重視した病型分類が示された.【方法】平成15年から17年に広島大学病院皮膚科外来を受診した260名の蕁麻疹患者をこの分類法に準拠して病型を診断し,その内訳を調査した.【結果】物理性蕁麻疹10.0%,コリン性蕁麻疹6.5%,外来物質による蕁麻疹は6.5%であり,残りの76.9%が明らかな誘因なく生じる特発性の蕁麻疹であった.また38.8%の患者で複数の病型が合併しており,特に慢性蕁麻疹と機械性蕁麻疹あるいは血管性浮腫との合併が多く見られた.【結語】多くの蕁麻疹は丁寧な病歴聴取と簡単な負荷試験により病型を診断することができ,それを踏まえて検査,治療内容の決定および予後の推定を行うべきであると考えられる.
著者
平瀨 敏志 竹尾 直子 中村 政志 佐藤 奈由 松永 佳世子 谷口 裕章 太田 國隆
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.48-52, 2020 (Released:2020-02-12)
参考文献数
13

【背景】コチニール色素は赤色着色を目的に食品添加物として様々な食品に用いられている.一方で即時型アレルギーの原因物質として報告されているが,多くが成人女性発症である.今回,8歳男児にコチニールアレルギーを発症した症例を経験したので報告する.【現病歴・経過】幼少期よりアトピー性皮膚炎・気管支喘息・食物アレルギーがあった.7歳頃より2回原因不明のアナフィラキシーを起こしエピペンⓇを処方されている.8歳時に低アレルゲンコチニール入りのフランクフルトを初めて食べて冷汗・口腔内違和感・呼吸苦・全身に蕁麻疹が出現した.プリックテストではフランクフルトとコチニール色素(色価0.1・0.01)で2+と陽性,Immunoblotではコチニールの主要コンポーネントであるCC38Kに相当する分子量のタンパク質と約80~200kDaの高分子量領域のタンパク質でIgE抗体の結合を認めた.【考察】学童期男児に発症,低アレルゲンコチニールでアナフィラキシーを起こしたという意味で興味深い症例と考え報告した.
著者
海老澤 元宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.24-31, 2015 (Released:2015-07-28)
参考文献数
11
被引用文献数
3
著者
針谷 毅 平尾 哲二 勝山 雅子 市川 秀之 相原 道子 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.463-471, 2000-06-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
15
被引用文献数
4

アトピー性皮膚炎(AD)は心理的, 身体的ストレスによって皮膚症状が悪化することが臨床の場で知られている.本研究ではAD患者の皮膚症状を2週間毎の外来受診時にスコア化して記録すると共に, 皮膚生理指標や常在菌叢, 心理, 気分指標を患者毎に経時的に測定・検査し, それらの関連性について検討した.心理・気分指標としてはPOMS(profile of mood states)を用い, さらに患者には毎日VAS(visual analogue scale)を用いて疲労やストレス度合い, 主観的な肌の状態などを記録させた.同一患者で2ヶ月以上, 上記について検討可能であった患者18名を対象に各指標間の相関性を中心に解析した結果, POMSの抑うつ-落ち込みや緊張-不安の得点と皮膚症状スコア, 角層水分量, 総菌数との相関性が高い傾向にあり, VASによる患者のストレスの程度とかゆみなどの皮膚症状も相関する傾向を示した.以上の検討からAD患者では抑うつや緊張傾向が高まるなどの心理的なストレスや疲労などの身体的なストレスの有無と皮膚炎の増悪寛解とが互いに関連していることが示された.
著者
長谷川 眞紀 大友 守 水城 まさみ 秋山 一男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.112-118, 2009
参考文献数
10
被引用文献数
2

【背景・目的】化学物質過敏症は診断の決め手となるような客観的な検査所見が無く,病歴,QEESI点数,臨床検査(他疾患の除外)等から総合判断として診断している.診断のゴールド・スタンダードは負荷試験であるが,これも自覚症状の変化を判定の目安として使わざるを得ない.そういう制約はあるが,我々の施設ではこれまで化学物質負荷試験を,確定診断の目的で施行してきた.【方法】当院内の負荷ブースを用い,ホルムアルデヒド,あるいはトルエンを負荷した.負荷濃度は最高でも居住環境指針値とした.また負荷方法は従前はオープン試験によったが,最近はシングル・ブラインド試験を施行している.【結果】これまで51名の患者に延べ59回の負荷試験を行った.オープン試験を行った40名のうち,陽性例は18名,陰性例は22名であった.陰性判定理由は症状が誘発されなかった例が11名,実際の負荷が始まる前に(モニター上負荷物質濃度上昇が検出される前に)症状が出た例が11名であった.ブラインド試験は11名に施行し,陽性が4名,陰性が7名であった.【結語】化学物質負荷試験は現時点でもっとも有力な化学物質過敏症の診断法であり,共通のプロトコールを作成し行われるべきである.
著者
藪原 明彦 下島 圭子 保倉 めぐみ 石田 武彦 川合 博
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.494-501, 2004-05-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

1969年にイネ花粉嘱息について報告されたが,現在はイネ花粉のアレルギー発症への関与は少ないと理解されている.8月上旬に喘息または鼻結膜炎症状を認めた小児のアレルゲン感作状況と居住地を検討し,原因抗原として推測されたイネ花粉に対する特異IgEを測定した.対象は気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎/結膜炎の小児88例(男57例,女31例,8.5±2.9歳)で, 8月上旬に症状を認める群(21例)と認めない群(67例)とに分けて比較検討した.症状を認める群ではカモガヤ花粉に対する感作陽性率が高く(81%,P=0.008),水田地帯に居住する症例が多かった(86%,P<0.001).8月上旬はイネ花粉の飛散時期に一致するため,同時期に症状を認めた8例においてイネ花粉特異IgEを測定したところ,全例が陽性であった.また,イネ花粉とカモガヤ花粉を用いたRAST抑制試験からは両者に一部共通抗原性があるものの,イネ花粉に特異な抗原部位が存在することが示唆された.以上から,水田地帯で8月上旬のイネ花粉飛散時期にみられるアレルギー症状の発現に,イネ花粉が原因抗原として関与していると考えられた.
著者
高橋 大輔 檜澤 伸之 前田 由起子 福居 嘉信 西村 正治
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.1071-1078, 2004
被引用文献数
8

喘息における抗原特異的IgE反応性の意義を検討する目的で, 喘息患者275名と非喘息健常者265名を対象とし, 血清総IgE値及び複数の吸入抗原に対する特異的IgE値を測定した. 少なくとも一つ以上の抗原に対する特異的IgEが陽性の場合にアトピーありと定義し, アトピーやそれぞれの抗原に特異的なIgE抗体陽性者の頻度などを比較検討した. 若年齢(41歳未満)及び中高年齢(41歳以上)健常者の76.5%, 35.7%, 喘息患者の92.1%, 53.4%が, それぞれアトピーと判定された. ダニに対する特異的IgE抗体価は喘息患者で有意に高かった. 一方, アトピーのない対象者でも健常人に比べ血清総IgE値は喘息患者が有意に高値であった. ダニなどの抗原に対するIgE応答(アトピー)は喘息発症のリスクと考えられる. しかし, 喘息病態に伴った抗原非特異的なIgE反応性の亢進が, 喘息患者に見られる種々の抗原に対する特異的IgE抗体の上昇に寄与している可能性も考えられた.
著者
坂口 剛正
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.394-395, 2021 (Released:2021-07-17)
参考文献数
15
著者
吉村 彩 武藏 学 金子 壮朗 大西 俊介 折戸 智恵子 川原 由佳子 橋野 聡 森松 正美 今野 哲 有川 二郎 石井 哲也 澤村 正也 上田 一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.1132-1139, 2014-09-01 (Released:2017-02-10)

【目的】北海道大学で発生したマウス咬傷によるアナフィラキシー事例を踏まえ,アレルギー予防対策の構築を目的として,動物実験を実施する学生及び職員の動物アレルギーの感作状況を調査した.【方法】齧歯類等の取扱者で同意を得た555名を対象に問診票と実験動物5種に対する特異的IgE抗体と好酸球数測定によるアレルギー健診を実施した.【結果】特異的IgE抗体陽性率(陽性者数/取扱者数)は,マウス14.1% (62/441名),ラット17.9% (50/279名),ハムスター18.8% (6/32名),モルモット17.4% (4/23名),ウサギ11.3% (12/106名)であった.マウス取扱者においては,動物に接触した時に何らかのアレルギー症状が現れる場合は,抗マウスIgE抗体陽性率が有意に高いことも判明した(38.1% vs 8.8%, p<0.01).【結論】動物取扱者の感作状況を把握するために,特異的IgE抗体検査を含む健診を実施することが有用であることが示された.