著者
鄭 鎭〓 金 泰勲 李 忠和
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.493-502, 1994-10-05 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
3

韓国の赤・黄色森林土壌群,暗赤色森林土壌群の分類体系を確立するために,これらの土壌群の分布が予想される西南海岸に隣接する丘陵地および底海抜山地ならびに中北部および東南部の低山地を対象として217個所の標準調査値を選定し,土壌断面の形態的特徴,土壌の理化学的性質,土壌型別の林木成長を分析した結果,以下のことが明らかになった. 1)赤・黄色森林土壌群は,明赤褐色〜赤褐色のA層と赤褐色のB層をもつ赤色森林土壌亜群および黄褐色〜褐色のA層と黄褐色〜黄橙色のB層からなって赤色森林土壌亜群より黄色味が濃い土色を呈する黄色森林土壌亜群に分類される. 2)暗赤色森林土壌群は,暗赤色のA層と赤褐ないし明赤褐色のB層をもち石灰岩を主な母材にする暗赤色土壌亜群と,暗褐色のA層と暗赤褐色のB層をもち堆積砕屑岩類を主な母材にする暗赤褐色土壌亜群に分類される. 3)赤・黄色森林土壌群および暗赤色森林土壌群は地形条件による水分環境,土壌構造の差異,土壌層位の発達程度,土色の差異によってそれぞれ3土壌型に分類できる. 4)赤・黄色森林土壌群のうち,黄色森林土壌亜群は赤色森林土壌亜群に比べてシルト,液相率,有機物含量,有効態リン酸含量,交換性塩基,塩基飽和度が若干高かった.暗赤色森林土壌群についてみると,暗赤色森林土壌亜群のほうが暗赤褐色森林土壌亜群に比べ,粘土, pH, CEC,交換性塩基含量,塩基飽和度が著しく高かった.また,赤・黄色森林土壌群と暗赤色森林土壌群の間では,砂およびシルト含量,固相率,透水性,有機物含量,交換性イオン含量,塩基飽和度に顕著な差があることがわかった. 5)同じ森林帯での土壌群間の森林の成長量は暗赤色森林土壌群が赤・黄色森林土壌群より良好な成長がみられた.また,同一土壌群の土壌型間でも成長の差が認められた.これらの結果は,森林土壌の土壌群および土壌型の分類が林木の成長予測に有効であることを示すものであった.
著者
塩野 宏之 齋藤 寛 今野 陽一 熊谷 勝巳 永田 修
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.101-109, 2016-04-05 (Released:2017-06-17)
参考文献数
33
被引用文献数
4

In cold regions of Japan, rice straw residues cut and scattered in late autumn are often incorporated into paddy soils the next spring. Generally, emissions of methane (CH4) from such paddy fields are very high owing to rapid anaerobic decomposition of the straw under flooding. We investigated the effects of incorporating straw by shallow tillage in autumn to decompose under aerobic conditions for reducing emissions of the greenhouse gases CH4 and nitrous oxide (N2O). Three plots were prepared: shallow tillage in autumn by plowing at 5–8 cm depth (STA), conventional tillage in autumn by plowing at 18–20 cm depth (CTA), and conventional tillage in the next spring by plowing at 18–20 cm depth (CTS). The study was conducted from 2010 to 2013. In the STA and CTA plots, the straw was incorporated in October, and the plots were plowed the next April. In the CTS plot, the straw was incorporated at plowing in April. All plots were irrigated and rice seedlings were transplanted in late May. CH4 and N2O fluxes were measured by the closed chamber method throughout the cropping period. Tiller number, grain yield, and brown rice quality were also measured. The cumulative CH4 emissions increased in the order of STA (19.9–85.6 g CH4 m-2) < CTA (24.8–107.6 g CH4 m-2) < CTS (45.6–134.1 g CH4 m-2). N2O emissions in all plots were negligible. Tiller number was higher in the STA plot than in the other plots. There were no significant differences in grain yield or brown rice quality. From the time of snowmelt in March to plowing in April, the soil moisture and the concentration of ferrous iron (Fe2+) in soil were lower in the STA plot than in the CTA plot. Consequently, shallow tillage in autumn by plowing at 5–8 cm was the most effective technique for reducing emissions of greenhouse gases from paddy fields with incorporated rice straw in a cold region of Japan.
著者
〓 春明 越田 淳一 森山 典子 王 暁丹 有働 武三 井上 興一 染谷 孝
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.865-874, 2005-12-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
34
被引用文献数
3

九州各地の堆肥化施設23カ所から,牛糞,鶏糞,生ゴミおよび下水汚泥を原料とした堆肥計29点を採取し,糞便汚染指標菌(大腸菌群,大腸菌およびサルモネラ菌)について培養検査した。1)これら堆肥試料のCECは31.4〜79.0cmol_ckg^<-1>の範囲(平均55.4cmol_ckg^<-1>)で,炭素率(C/N比)は7.6〜25.4の範囲(平均15.3)にあり,他の性状と合わせ,多くが完熟堆肥であると判断された。2)デスオキシコーレイト寒天培地により大腸菌群が29点中11点(38%)から検出され10^2〜10^6cfug^<-1> dry matterの菌数レベルであった。大腸菌群陽性堆肥試料4点のうち3点からの分離株は,大腸菌群に属するE. coli, E. vulneris, Pantoea sp., Buttiauxella agrestisと同定された。しかし,Serratia marcescensのみが分離された試料が1点,本菌とE. coliが分離された試料が1点あった。大腸菌群には属さない腸内細菌科の細菌であるS. marcescensは赤色色素を生産するため,分離培地上で大腸菌群の赤いコロニーと誤認されたものと推察された。一方,得られたE. coli5株は,病原大腸菌免疫血清試験ですべて陰性であった。3)堆肥試料12点についてクロモカルト・コリフォーム培地による大腸菌の直接培養検査およびMLCB寒天培地によるサルモネラ菌の検出を試みた結果,大腸菌はいずれの試料からも検出されず,サルモネラ菌は2点(17%)から検出され,その菌数は10^3cfug^<-1> dry matterのレベルにあった。4)堆肥原料(牛糞,鶏糞,生ゴミ等)8点のうち大腸菌群およびサルモネラ菌がいずれも6点(75%)から,大腸菌が5点(63%)から検出され,菌数はいずれも10^2〜10^8cfug^<-1> dry matterであった。5)堆肥製造施設6カ所における堆肥化過程での糞便汚染指標菌の消長を7例について追跡した結果,糞便汚染指標菌が減少して製品中で消失する場合,いったん消失するが製品で再度検出される場合,全く消失しない場合,原料から製品まで検出されない場合の4通りが観察された。発酵温度が高くてもサルモネラ菌などが生残する場合があり,その原因について,再増殖や交叉汚染の可能性を考察した。6)上記の諸結果に基づき,堆肥の製造過程における温度管理や交叉汚染防止などの適切な衛生管理の重要性を指摘した。
著者
江口 定夫 平野 七恵
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.32-46, 2019-02-05 (Released:2019-02-20)
参考文献数
48
被引用文献数
1

食料生産~消費過程(フードチェーン)における環境中への反応性窒素(Nr)排出削減対策は,生産者対象の窒素利用効率(NUE)向上やNr再利用だけでなく,消費者の食生活改善も併せて総合的に進める必要がある.1960~2015年を対象に,国の統計値等に基づき,日本の消費者の食べ過ぎNr, 食品ロスNr, 排出Nr(食のNフットプリント)の実態及び削減可能量を示すと共に,2095年までの総人口減少,少子高齢化及び農地面積減少を考慮し,国連の持続可能な開発目標12に沿って食べ過ぎNr・食品ロスNr発生率を半減期15年とした場合の排出Nrと食料自給率(SSR)を予測した.食品ロスNrは,60年代に急増した食べ過ぎNrが最大かつ一定となった70年代後半から増大した.食生活改善策は,量的には食べ過ぎ・食品ロス削減が健康維持や環境保全(排出Nrを最大33%削減),食料安全保障(2050年の食料SSRが60%)に有効だが,実現には数十年以上かかること,質的には畜産物主体から70年頃の豆類・魚介類主体の食事への回帰が有効(排出Nrを19%削減)であり,量的・質的改善策の同時適用で排出Nrを最大46%削減可能と計算された.また,排出Nrの約40%は食料輸入元の国々で発生し,食料生産の海外依存度増加が結果的に低NUEの食料需給体系をもたらしていた.以上の知見をN循環の駆動力である消費者と共有することがNr排出削減のために最も重要である.
著者
石塚 喜明
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.248-263, 1940-04-25 (Released:2017-06-30)

The author studied the causal nature of the toxic action of copper-ions on the growth of rice plant. The growth of the rice plant compared, in water culture, under the following conditions : - (a) The root is placed in the nutrient solution without copper. (b) The root is placed in the nutrient solution with copper. (c) One half of the root is placed in the solution without copper while the other half with. And the following conclusions are obtained. (1) The rice plant absorbs easily copper-ions in the nutrient solution. (2) The greater part of copper-ions absorbed is fixed in the root. The function of the root, especially its absorptive function, is thereby injured. (3)This injurious effect inhibits the root from absorbing the further amounts of copper-ions which seem to protect itself from the further action of copper. (4) The absorption of nutrients is also inhibited. Then the plant growth does not proceed normally. (5) Though onehalf root is placed in the nutrient solution with copper the plant does not suffer an injurious effect even in the concentration of 100 ppm of copper-ions if the other half is placed in the solution without copper. When the entire root is placed in the nutrient solution containing copper the plant dies in a short time even in the concentration of 50 ppm of copper-ions. (6) The rice plant growth well until the copper content of the top reaches the concentration of 100 gamma per 1 g of air-dried sudstance, regardless of the supply of nutrient solution.
著者
小原 洋 中井 信
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.59-67, 2004-02-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
15
被引用文献数
31

可給態リン酸は,定点調査実施期間において全国的に明瞭な増加を示した.地目別には,施設と茶園が非常に高いレベルにあり,水田と牧草地が低かった.土壌群別では,水田としての利用が多い土壌群と黒ボク土グループが低い含量を示し,樹園地や普通畑に多く使われている岩屑土,非黒ボク土グループの褐色森林土,赤色土,黄色土,褐色低地土,砂丘未熟土が高い含量を示した.地域的には,瀬戸内から中部地域で高い含量を示した.また,地域区分によると中部,東海地域が高い含量を示した.経年的には,地目別,土壌別,地域別などによる区分の多くで1巡目から3巡目までは明瞭な増加傾向が認められた.しかし,3巡目から4巡目には増加率が低いなど,減少傾向を示す区分が多く,水田を中心に可給態リン酸の増加傾向が鈍化していた.これには化成肥料のリン酸投入量にみられるようなリン酸施肥量の減少が貢献していた.改善目標値と比較すると,目標値以下の部分は水田や普通畑では改善されつつあるが,4巡目でもまだ2割程度は不足域にある.一方,目標値の適正域を超える地点は,水田・牧草地では少ないが,その他の地目では10〜78%程度とかなりの割合を占め,増加傾向にある.