著者
中村 隆一 日笠 裕治 村口 美紀
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.317-322, 2003-06-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1

To clarify the relationship between nutrient concentration in heads of broccoli and the occurrence of head rot, N and Ca application experiments were carried out. 1) The increased N application promoted the occurrence of head rot. N concentration was higher in rotted heads compared with healthy ones. Foliar spray of Ca increased Ca concentration in heads and suppressed head rot. 2) Both N and Ca concentration had influence on head rot. The Ca/N ratio of heads had negative correlation with the occurrence of head rot, and with a ratio of more than 0.2, frequency of head rot was less than 10% ; with a ratio of more than 0.3, head rot didn't occur. 3) Split application of N increased Ca amount in heads compared with basal application, and was effective to control head rot. 4) In low land soil, head rot mainly occurred in thin layer or poor drainage land. Based on these results, we concluded that i) concentration of N and Ca have influence on the occurrence of head rot and ii) improving N application method, improvement of soil physical property and Ca foliar spray are effective to control head rot.
著者
結田 康一 駒村 美佐子 小山 雄生
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.165-172, 1990-04-05 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
2

チェルノブイリ原発事故によって我が国にもたらされたI-131のコムギ地上部および土壌汚染に対する降雨の影響について,圃場での測定結果より解析した.1)コムギ地上部のI-131汚染に最も関与するのは,降雨に取りこまれない大気中のI-131である.非降雨期にはコムギ地上部のI-131濃度は経日的に増加していったが,降雨があると減少傾向を示し,とくに日降雨量が10mm以上の場合は前日より7〜35%の減少率を示した.2)土壌のI-131汚染に最も関与するのは,コムギ地上部の汚染の場合と異なり降雨に取り込まれたI-131である.表土中I-131濃度は降雨があると増加(大気中I-131濃度が低下した5月下旬は除く)しており,その増加率は前日比で9〜90%であった.増加率の幅が大きいのは,降雨中I-131濃度×降雨量で決まるI-131降下量に大きな違いがあるためである.一方,非降雨期には大気中I-131濃度が高くても表土中I-131濃度は減少傾向を示した.3)5月8日から10日にかけての表土中I-131濃度の50%もの減少は,表土から大気中へのI-131の揮散が降雨後の快晴,高温という気象条件によって促進されたためと推測された.4)地方面に降下したI-131はかなりの降雨があっても下層へ浸透しにくく,降下が始まった5月3日より48日後の6月20日においても0〜1cmまでの表層に57%が残留し,残り43%も1〜7cmの層に留まっていたCs-137,Cs-134に比べると土壌吸着力が弱く浸透しやすかった.5)コムギ地上部沈着I-131の水洗浄による除去率も同レベルと推測された.6)降雨中のI-131の存在形態はIO_3が主体で,次いでI^-であり安定ヨウ素の存在形態とも近似していた.
著者
山口 千仁 高橋 智紀 加藤 邦彦 新良 力也
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.174-181, 2021-04-05 (Released:2021-04-13)
参考文献数
19

アブラナ科根こぶ病などの土壌病害の防除には弱アルカリ性(pH 7.5程度)への土壌pHの矯正が有効である.土壌によってアルカリ資材添加に応じたpH上昇程度は異なるため,矯正に必要なアルカリ資材添加量の把握は煩雑で,より簡易な推定法が求められる.本研究では,東日本および北海道の水田土壌約230点にアルカリ資材として転炉スラグまたは消石灰を加え,土壌pH緩衝曲線を描いた.そして,この曲線を簡易なシグモイド曲線として数式化し,土壌pH緩衝能の指標である定数部分を,土壌調査によって知ることができるパラメータで表すことを試みた.定数部分を粘土含有量と全炭素含有量で表した回帰式の決定係数は転炉スラグで0.333, 消石灰で0.429だった.両含有量から推定したpH緩衝曲線に資材添加量を代入し算出されるpH値と実測値との関係を調べた.転炉スラグの場合,資材投入量がアルカリ分換算量で0.025~0.25 g/10 g乾土のとき,回帰式の決定係数は0.609–0.810と高く,この時のpHは酸性~弱アルカリ性に相当した.消石灰の場合,回帰式の決定係数が0.5より高いのは資材投入量がアルカリ分換算量で0.025~0.05 g/10 g乾土のときであり,pHは酸性~弱アルカリ性に相当した.このことから,作成した推定式は酸性改良や弱アルカリ性への土壌pH矯正に用いることができると考えられた.
著者
井上 克弘 張 一飛 板井 一好 角田 文男 趙 静
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.223-232, 1995-06-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
35
被引用文献数
7

Seasonal changes of water-insoluble, soluble and gaseous F concentrations of aerosols in day and night times from June, 1988 to April, 1989 in a non-industrial area, were investigated in Morioka, Northeast Japan. The water-insoluble and soluble F concentrations were higher from November to April than from June to October. On the contrary, the gaseous F concentration was high in summer, probably because of influences of the steel industrial area in the Pacific coast region and wind-blown sea salt from the Pacific Ocean. The water-soluble F concentration of aerosols from Changchun, Northeast China in March and July to December, 1991,which are mainly due to coal soot, was extremely high in the winter season and was 116 times higher than that from Morioka. In addition, Holocene, Malan and Lishi Loesses, loess-derived soils, and saline soils from Xinjian Uygur Zizhiqu, the Loess Plateau, and Northeast China, where there is a high incidence of endemic fluorosis, contained a considerable amount of water-soluble F. However, the amount of water-soluble F in loess-derived soils from Korea and Japan was very low, indicating that F was leached out by heavy rainfall. The aerosols collected at Morioka from winter to spring contained a significant amount of coal soot and eolian dust. The F concentration of aerosols in Japan, therefore, could be influenced by coal soot and eolian dust transported from the Asian continent. These airborne particles could affect the water-insoluble and soluble F concentrations of aerosols in Japan.
著者
後藤 英次 宮森 康雄 長谷川 進 稲津 脩
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.191-201, 2004-04-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
41
被引用文献数
11

本試験は北海道立上川農業試験場の細粒褐色低地土水田を用いて,大幅なメタンの発生軽減を目標に稲わらの混和時期と窒素肥料および分解促進資材の添加,水管理(間断灌漑)の有待欧とそれらの組み合わせ効果を検討した.1)稲わらの分解は5℃の低温条件下でも進行し,この温度条件では窒素肥料および微生物由来の有機物分解促進資材の示加により一層分解が促進された.2)8cm程度の浅耕しによる稲わらの秋混和は春混和(秋散布後,地表面に放置)と比較して冬期間の分解が進み,これに窒素肥料および微生物由来の有機物分解促進資材を稲わら秋散布時に添加することでさらに促進された.また,稲わら秋混和は農家慣行に多く見られる稲わら春混和と比較して水田からのメタン発生量を軽減し,窒素肥料および分解促進資材を稲わら秋散布時に添加することでさらに軽減された.3)幼穂形成期前および出穂後の間断灌漑処理は,メタンの発生量を軽減し,中干し処理に近い効果であった.特に幼穂形成期前の間断灌漑処理では,作土の水分がpF 1.8以上になることで効果が高かった.4)稲わらの分解促進処理と水管理の組み合わせ「稲わらの秋混和+窒素肥料と分解促進資材の示加+強程度の間断灌漑」処理は,対照とした稲わらの「稲わら春混和+連続湛水」処理に比べてメタンの発生量を顕著に軽減することができた.
著者
三枝 正彦 松山 信彦 阿部 篤郎
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.423-430, 1993-08-05 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
16

東北各県より代表的耕地黒ボク土393点を入手し,酸性シュウ酸塩可溶アルミニウムに対するピロリン酸可溶アルミニウムの比,酸性シュウ酸塩可溶ケイ酸含量および粘土含量を用いてアロフェン質黒ボク土と非アロフェン質黒ボク土に類型区分することを試みた.さらに,この結果と前報で報告した交換酸度y_1による開拓地土壌の類型区分結果をペドロジスト懇談会作製の土壌図に作図し,火山灰の分布状況,風化に関係する気候要因,火山灰の岩質,火山ガラスの性質を考慮して東北地方における両黒ボク土の分布と分布面積を検討した.アロフェン質黒ボク土は,全黒ボク土の48%,86万haを占め主として完新世テフラが厚く堆積する地域で,降水量が少ない青森県南東部から岩手県北部にかけて,母材が塩基性の岩質あるいは有色火山ガラスを主体とする岩手山,蔵王山周辺,軽石を含む火山灰降下地域と考えられる秋田県北東部,福島県北部に分布していた.これに対して,非アロフェン質黒ボク土は,全黒ボク土の52%,94万haで年降水量の多い日本海側の各地,高標高地あるいは宮城県の内陸部に,また降水量は相対的に少ないが完新世のテフラの降灰の少ない岩手県南部から宮城県北東部に主として分布していた.東北各県における非アロフェン質黒ボク土の分布割合は青森県30%,秋田県80%,岩手県43%,山形県100%,宮城県76%,福島県42%と推定された.
著者
土田 宰 有馬 泰紘
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.20-26, 1993-02-05 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
4

異なる培土処理をしたダイズ植物の生育および根粒形成と窒素固定についてポット試験を行い,植物の生育ステージにそって検討した.標準的な培土方法(高さ10cm)により,植物の生育と窒素集積量は,発芽後98日目でそれぞれ46%および40%の増加を示した.培土をすると多くの根粒が不定根上に形成され,定根と不定根に着生する根粒は重量も個数も増加した.固体当たりの最大の根粒活性(アセチレン還元能)は無培土の植物よりも高くなり,生育にともなう根粒活性の低下の時期も遅れた.培土部分にダイズ根粒菌を接種する方法は,標準培土処理の植物と比較して固体当たりの根粒の重量と個数を増加させた.しかし,定根と不定根に着生する根粒のサイズや重量の平均値は低く,根粒と根の間および根粒間での光合成産物の強い競合があったことを示唆していた.高く(15cm)培土をする方法は地上部と不定根,不定根根粒の生育を促進した.定根の生育およびそこに着生する根粒の量と活性は抑制されていたが,それらは不定根とそこに着生する根粒によって補われ,高く培土された植物の総窒素集積量と根粒活性は,標準培土を行った植物よりも著しく高くなった.