著者
森 静香 藤井 弘志
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.136-142, 2009-04-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
31
被引用文献数
7

ケイ酸溶出量がケイカルよりも高いケイ酸資材を幼形期施用した場合,水稲のケイ酸吸収および収量・品質等にどのような影響があるか慣行的なケイ酸施用法であるケイカルの全層施用と比較して検討した.1)収量は,A幼形区(106)>B幼形区(104)=ケイカル全層区(104)>無施用区(100)の順であった.施用されたケイ酸成分量1gm^<-2>当たりの収量増加量((ケイ酸施用区収量-ケイ酸無施用区収量)/施用したケイ酸成分量)はケイカル全層区で0.67g m^<-2>に対してA幼形区で2.58g m^<-2>,B幼形区で2.17g m^<-2>とケイ酸の幼形期施用で高まる傾向であった.さらに,費用(資材費)対効果(収益)もケイ酸の幼形期施用でケイカル全層施用よりも優った.2)ケイ酸施用による増収要因を収量構成要素からみると,m^2当たり籾数はケイカル全層施用区30,400粒>幼形期施用区30,100粒>ケイ酸無施用区28,900粒で,ケイ酸施用により籾数が増加して,千粒重および精玄米粒数歩合はケイ酸無施用区と同様であった.3)茎葉のケイ酸吸収量は,幼形期施用区65g m^<-2>(ケイ酸無施用区対比110)>ケイカル全層施用区63.5g m^<-2>(107)>ケイ酸無施用区59.3g m^<-2>(100),穂のケイ酸吸収量は幼形期施用区35.3g m^<-2>(ケイ酸無施用区対比116)>ケイカル全層施用区33.2g m^<-2>(109)>ケイ酸無施用区30.4g m^<-2>(100)で,全層施用より施用時期が遅く,施用量が少ない幼形期施用でケイカル全層施用と同等のケイ酸吸収量であった.4)窒素吸収量はケイ酸施用区>ケイ酸無施用区であり,ケイ酸施用(全層施用および幼形期表層施用)により幼形期における追肥窒素利用率が高まることが明らかであった.ケイ酸施用による籾数の増加は幼形期の追肥窒素利用率が高まり,窒素吸収量が多くなったことが影響していると考えられる.
著者
森泉 美穂子 松永 俊朗
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.304-309, 2009-06-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
63
被引用文献数
9
著者
井上 博道 梅宮 善章 中村 ゆり
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.875-880, 2005-12-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
21
被引用文献数
5

ウメ干しの仁中微量元素濃度を分析し,多変量解析手法を用いて日本産と中国産の判別を行った。1)塩蔵ウメ仁中のSr濃度の中央値は,中国産では日本産の10倍以上の値を示し,8.0mgkg^<-1>を簡易基準とすることで93.2%のウメ干しサンプルが日本産と中国産に正しく判別できた。2)ウメ干し仁中の9元素濃度を用いた3成分からなる主成分分析で日本産と中国産は分離した。3)線形判別分析によって93.2%の判別的中率が得られた。KNN法による解析では,判別的中率は94.3%と向上した。
著者
井上 弦 中尾 淳 矢内 純太 佐瀬 隆 小西 茂毅
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.424-432, 2019-12-05 (Released:2019-12-17)
参考文献数
22

茶の覆下栽培(被覆栽培)の発祥時期を明らかにする目的で,京都府宇治市の伝統的茶園,宇治七茗園のうち現存する唯一の茶園(奥の山茶園)において,在来種で古いとされる茶樹直下に試坑を作製し,土壌断面調査とともに,炭素含量,植物珪酸体組成,年代値を調べた.その結果,Bw層(試料no. 8)–AB層(試料no. 7)境界で炭素含量が増加をはじめ,AB層(試料no. 6)–A層境界(試料no. 5)から,土色の黒味が増し,炭素含量も急増した.植物珪酸体組成では,AB層でイネ属起源の植物珪酸体が明瞭に認められるようになり,AB層–A層境界からさらに同植物珪酸体の検出密度が増し,また,自然植生由来の植物珪酸体はAB層からA層への減少が示唆された.加えて,14C年代値は,AB層最上部(no. 6)で較正暦年代(2σ)1341~1396 cal AD(probability=56.9%,中央値AD1369),A層最下部(no. 5)で較正暦年代(2σ)1396~1440 cal AD(probability=90.8%,中央値AD1418)を示した.以上のことから,宇治最古の茶園(奥の山茶園)における覆下栽培は,文献資料が示す16世紀後半からさらに150年は遡り,少なくとも15世紀前半には発生していたと推定された.
著者
山本 幸洋 藤原 伸介 田中 福代 高木 和広 松丸 恒夫
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.15-22, 2007-02-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
28
被引用文献数
2

10種の殺菌剤による土壌中のアンモニア酸化阻害活性を確認するとともに,そのなかで顕著な活性を示したクロロタロニル(テトラクロロイソフタロニトリル)の阻害活性について詳細に検討した.1)供試薬剤のなかでクロロタロニルとチウラムは土壌中のアソモニア酸化阻害活性が最も高かった.これらに比べ,トリフルミゾール,トルクロホスメチル,イプロジオン,フルトラニル,ヘキサコナゾール,イソプロチオラン,ベノミルおよびメタラキシルは,阻害活性が低いか,または認められなかった.2)クロロタロニルによる土壌中のアンモニア酸化阻害は,ジシアンジアミドと比べて長く持続した.また,クロロタロニルによる土壌中のアンモニア酸化阻害活性は,添加量に依存し,添加量が5mg kg^<-1>以上のときに土壌のNH_4-N含量と(NO_2+NO_3)-N含量の両方に影響を及ぼした.3)クロロタロニルの畑土壌における主要分解産物4-ヒドロキシ-2,5,6-トリクロロイソフタロニトリル(TPN-OH)は,土壌中のアンモニア酸化を阻害するが,その活性はクロロタロニルおよびジシアンジアミドと比べて低かった.4)クロロタロニルの類縁化合物テトラクロロテレフタロニトリル(TTPN)による土壌中のアンモニア酸化阻害活性は,クロロタロニルと比べて低かった.他の類縁化合物1,2,3,5-テトラクロロベンゼン(TCB),イソフタロニトリル(IPN),テレフタロニトリル(TePN),フタロニトリル(PN)およびベンゾニトリル(BN)は,いずれも土壌中のアンモニア酸化を阻害しなかった.5)アンモニア酸化細菌集積土壌において,クロロタロニル区(添加量100mg kg^<-1>)のアンモニア酸化細菌数は,クロラムフェニコール区(添加量500mg kg^<-1>)と比べて急激に低下した.以上のことから,クロロタロニルは,土壌中のアンモニア酸化阻害活性が高いこと,構造中のニトリル基と塩素の存在がアンモニア酸化阻害に必須であり,それらの分子内での配置が阻害活性の強度に大きく関与すること,クロラムフェニコールと比べてアンモニア酸化細菌に対して致死的に作用することが明らかとなった.