著者
相山 光太郎 金折 裕司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.7, pp.555-570, 2019-07-15 (Released:2019-09-15)
参考文献数
54

中国地方西部,山口県中央部から島根県中央部にかけて,浅部地震がNE-SW方向に配列することで特徴づけられる山口(やまぐち)-出雲(いずも)地震帯が存在する.地震帯の西部から中央部沿いには,大原湖(おおはらこ)-弥畝山(やうねやま)西(にし)断層系が分布している.断層系を構成する活断層の分布や性状,活動性は,主に約20年前以降の山口大学による精力的な現地調査によって明らかにされてきており,山口県中央部で新たに7条の活断層が認定された.最近,地震帯西端部においても新たに活断層露頭が発見されている.しかし,地震帯東部では未だ活断層が報告されてない区間が存在しており,今後の調査により活断層が新たに認定される可能性もある.露頭で確認された断層破砕帯は,断層ガウジと断層角礫,カタクレーサイトから構成され,P-フォリエーションなど複合面構造を含むこともあり,変位センスを知ることができる.断層破砕帯の外側には,割れ目の発達で特徴づけられる‘プロセスゾーン’が広がっている.本巡検では,断層系西部を構成する活断層の露頭や変位地形を観察するとともに,断層系の特徴や活断層発見の経緯を概観する.さらに,日本人として最初の地域地質図を作成した高島北海の足跡もたどる.
著者
岡村 行信
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.582-591, 2010
被引用文献数
14

日本海東縁で発生した大地震の震源域と地質構造とを比較すると,大部分の震源域は幅15~20 kmの非対称な背斜構造に重なる.傾斜30~45°前後の逆断層が厚さ10~15 kmの上部地殻を切ると,その幅が10~20 kmになることから,日本海東縁に広く分布する同じような幅を持った背斜構造は震源断層を含む逆断層全体の上盤の変形によって形成された可能性が高い.2004年中越地震の震源域では褶曲構造を断層関連褶曲であると仮定して推定した断層形状が,震源断層とよく一致することが示されたが,同じような関係が日本海東縁の他の背斜構造にも適用できるかどうか検討する必要がある.地質構造から震源断層の位置を推定することができれば,将来発生する地震による地震動の推定精度を向上させることができ,地震災害の軽減に貢献できる.