著者
工藤 崇 檀原 徹 岩野 英樹 山下 透 三輪 美智子 平松 力 柳沢 幸夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.5, pp.277-288, 2011
被引用文献数
1 2

新潟堆積盆加茂地域において,中部中新統の七谷層から黒雲母に富むテフラを発見し,駒出川バイオタイト(Kbi)テフラと命名した.本テフラは灰色を呈する層厚9 cmの結晶質中粒~粗粒砂サイズの凝灰岩で,七谷層上部の明灰色泥岩中に挟在する.本テフラの構成鉱物は石英,斜長石(オリゴクレース~ラブラドライト組成),サニディン,黒雲母を主体とし,微量のざくろ石,赤色および無色のジルコンを伴う.本テフラは浮遊性有孔虫化石帯区分のN.9帯,石灰質ナンノ化石帯区分のCN4帯に含まれ,堆積年代は14.2~14.7 Maと見積もられる.本テフラのジルコンFT年代は14.6±0.3 Maであり,微化石層序と良く調和する.記載岩石学的特徴,FT年代,微化石層序の一致から,Kbiテフラ,紀伊半島の室生火砕流堆積物,房総半島木の根層中のKn-1テフラの三者は対比可能であり,熊野酸性岩の形成に関連した広域テフラの可能性が高い.
著者
後藤 和久 小松 吾郎 齋藤 仁
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.10, pp.683-688, 2012-10-15 (Released:2013-02-20)
参考文献数
4
被引用文献数
2 1

A large amount of satellite imagery is now available for the surface of Mars; this imagery has spatial resolutions up to 25 cm/pixel, and a Digital Terrain Model (DTM) has been constructed to allow the analysis of Martian topography. These data are important for studies of geological and geomorphological processes on Mars, and may form the basis of future Mars exploration plans. Nevertheless, the procedures used to obtain these data and to project them using Geographic Information Systems (GIS) is significantly complicated, and this prevents many researchers from initiating geological or geomorphological research on Mars. Here, we introduce the procedures required to obtain Martian satellite imagery and topographic data, the methods used to project these data into GIS systems, and a simple Google Mars-based image analysis methodology. After projection, GIS-based data analytical approaches are similar to those commonly used for Earth-based data; consequently, geologists and geomorphologists who usually focus on terrestrial problems could easily shift their research focus to Mars, significantly improving the state of satellite imagery and topographic data-based Martian research and potentially contributing to future Mars missions.
著者
高橋 浩
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.104, no.2, pp.122-136, 1998-02-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
41
被引用文献数
7 8
著者
木村 克己
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.208-226, 1999-03-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
60
被引用文献数
6 7

犬山地域に分布する美濃-丹波帯のコヒーレントなチャート・砕屑岩ユニット(犬山シーケンス)には, 付加に伴って形成されたさまざまなタイプのスラストが発達している.これらの剪断帯の特徴とスリップ方向を南北3kmの木曽川沿いのルートで検討した.観察したスラストは20本であり, うち19本は断層条線, 残り1つはデュープレックスのファブリックからスリップ軌跡を求め, 非対称変形構造に基づいてスリップセンスを決定した.スラスト以外の縦走系断層として, 左横ずれ断層が認められるが, 断層条線の方位や剪断帯の特徴の相違からスラストと区別できる.スラストのスリップ方向の平均値は, 褶曲・傾動の補正後, N60°E-S60°Wの地層の一般走向に直行するS30°Eを示す.西南日本のアジア大陸からの回転変位と大規模屈曲構造を復元した際に, このスリップ方向は, ジュラ紀最後期~白亜紀最初期にかけてアジア大陸下に直交方向に沈み込んだイザナギプレートの相対運動方向にほぼ平行である.
著者
七山 太 山口 龍彦 中西 利典 辻 智大 池田 倫治 近藤 康生 三輪 美智子 杉山 真二 木村 一成
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.9, pp.493-517, 2020-09-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
93
被引用文献数
3

南海トラフ巨大地震によって沈降が予測されている宿毛臨海低地において沖積コアを採取し,LGMの開析谷を埋積する沖積層の特徴と堆積シークエンスの検討をした.松田川開析谷はLGMに形成され,その後の後氷期海進により,9.8kaに標高-30mに海水が到達し,エスチュアリー環境へと変化した.その後も海水準は上昇し続けて内湾泥底環境となり,7.5kaに最高水深時となった.7.3kaに起こった南九州の鬼界カルデラ噴火により,給源に近い宿毛湾周辺においてもK-Ah火山灰が厚く降灰し,その直後に大規模なラハールが発生した.その結果,水中二次堆積物が急激に堆積した.7.0ka以降にデルタの成長が他の地域に先行して活発化したが,これは大規模なK-Ah火山灰の影響と考えられる.SKMコアから得られた過去1万年間の海面変動情報に基づくならば,宿毛湾地域は南海トラフ巨大地震によって一時的に沈降するものの,長期的に見るとそれらの沈降量は相殺されると理解される.
著者
田切 美智雄 青井 亜紀子 笠井 勝美 天野 一男
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.6, pp.300-313, 2008-06-15 (Released:2009-03-22)
参考文献数
39
被引用文献数
5 6

大子地域に分布する新第三系中新統に産する火山岩類の化学組成とK-Ar放射年代を求めた.火山活動はカルクアルカリ系列および島弧型ソレアイト系列から海洋性ソレアイト系列へと変化した.放射年代は18.0~15.5 Maを得た.大子地域の浮遊性有孔虫化石帯の結果と火山活動の化学的特徴を茂木地域の結果と比較した.大子地域の早期中新統の地層は茂木層に対比されること,男体山火山角礫岩のアイスランダイトは茂木層のアイスランダイトと対比できることが示された.さらに,大子-茂木地域では,日本海拡大に関係する2度の海洋性ソレアイト系列の火山活動があることが示された.
著者
林 慶一 藤田 早紀 小荒井 千人 松川 正樹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.9, pp.747-764, 2017-09-15 (Released:2017-12-25)
参考文献数
53
被引用文献数
3 6

兵庫県に分布する篠山層群について,国際層序基準にしたがって下部を大山下層,上部を沢田層として定義した.篠山盆地に分布する篠山層群の地層は,7つの岩相に基づいて4つの岩相群にまとめられ,砂礫堆堆積物/放棄河道堆積物,流路州堆積物,氾濫原泥質堆積物,堤防決壊堆積物/自然堤防堆積物と解釈される.これらの岩相群の分布から,篠山層群の堆積環境は山間盆地で,周辺部から中央部にかけて河川流路から氾濫原へと移り変わる環境であったこと,堆積の初期には礫質河川の流路が卓越する環境で,その後氾濫原や自然堤防と堤防決壊堆積物の卓越する蛇行河川の環境へと変化したと解釈される.篠山層群を特徴づける赤色岩の粘土鉱物分析の結果,大山下層上部の氾濫原堆積物からカオリン鉱物が検出され,湿潤環境下での土壌化と解釈される.同じ堆積物中には乾燥気候の存在を示すカリーチも挟まれていることから,半湿潤~半乾燥の環境が示される.
著者
檀原 徹 星 博幸 岩野 英樹 山下 透 三田 勲
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.384-389, 2007 (Released:2008-03-29)
参考文献数
44
被引用文献数
3 1

中期中新世前期(15 Ma)テフラの広域対比を提案する.記載岩石学的および放射年代学的分析から,房総半島のKn-1凝灰岩は約400 km離れた紀伊半島の火砕流堆積物と対比される.Kn-1は木の根層中に挟まる約16 m厚の珪長質凝灰岩で,紀伊半島北部の室生火砕流堆積物とそれに対比される火砕流堆積物(玉手山凝灰岩,石仏凝灰岩)と共通した造岩鉱物および火山ガラスをもつ.Kn-1のジルコンのフィッション・トラック年代は約15 Maで,紀伊半島の火砕流堆積物の年代と区別できない.玉手山-石仏-室生火砕流堆積物は熊野酸性岩類や大峯花崗岩類を含む紀伊半島外帯火成活動で起きたカルデラ噴火に由来することから,Kn-1凝灰岩も紀伊半島外帯(おそらく熊野)起源の広域テフラと考えられる.