著者
山口 利勝
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.284-294, 1997-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1

The purpose of this study was to examine the relations between conflicts with the hearing world and deaf identity in college students with hearing impairments. First, 48 college students with hearing impairments were asked to describe conflicts with the hearing world in order to collect questionnaire items. Second, a questionnaire regarding conflicts with the hearing world and deaf identity was administered to 141 college students with hearing impairments. Third, a scale of conflicts with the hearing world and deaf identity scale was constructed. Conflicts with the hearing world were divided into 5 factors: “Nonacceptance of disability”,“Lack of confidence”,“Feeling of alienation”,“Separation from the hearing”,“Conflicts with parents”; and the deaf identity was divided into 3 factors: “Deaf person identity”,“Hearing person identity”,“Integrated identity”. Fourth, relations between conflicts with the hearing world and deaf identity were examined. Multiple regression analyses showed that an integrated identity was the most desirable one.
著者
平井 洋子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.112-122, 2001-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
59
被引用文献数
2
著者
長濱 文与 安永 悟 関田 一彦 甲原 定房
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.24-37, 2009
被引用文献数
1 14

本研究の目的は, 協同作業の認識を測定する尺度を開発し, その信頼性と妥当性を確認することであった。まず研究1において, 大学生と専門学校生1,020名を対象として探索的な因子分析をおこなった。その結果, 協同作業の認識は, 協同効用, 個人志向, 互恵懸念の3因子18項目で構成されていることが示された。確証的因子分析をおこなった結果, 3因子モデルの十分な適合度が示された。そこで, この3因子からなる尺度を協同作業認識尺度とした。研究2では, 大学生と専門学校生2,156名を対象に調査をおこない, 3因子の併存的妥当性を検討した。また, 研究3では, 協同学習を導入した授業を受講した97名の大学生を対象に, 3因子の介入的妥当性と予測的妥当性を検討した。研究2と研究3の結果より, 協同作業認識尺度を構成する3因子の妥当性を確認することができた。最後に, 協同学習の実践場面における協同作業認識尺度の活用法や今後の課題について考察した。
著者
本田 真大 大島 由之 新井 邦二郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.336-348, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
23
被引用文献数
11 3

本研究の目的は集団社会的スキル訓練(以下, CSST)が不適応状態にある生徒に与える効果を検討することであった。訓練対象は6学級の生徒228名であった。ターゲットスキルを決定するにあたり, 教師と生徒にニーズ調査を行い, その結果を生徒対象のオリエンテーションでフィードバックした。ターゲットスキルは「上手な聴き方」と「心があたたかくなる言葉」であり, それぞれ授業(50分)で1回ずつ, 合計2回の訓練が行われた。効果の検討にはターゲットスキルの自己評定, 教師評定, 仲間評定を用いた。分散分析で効果を検討した結果, 不適応状態にある生徒の仲間評定のスキル得点と仲間からの受容得点が増加した。3年生では仲間評定のスキル得点に加えて自己評定のスキル得点も一部増加したが, 教師評定のスキル得点は一部低下した。これらの結果から, ターゲットスキルの決定に生徒のニーズを考慮する実践の有効性, 不適応生徒に対するCSSTの効果の限界, 評定者間の結果の違いに関して考察され, 中学校でCSSTをより効果的に行うための方法が提案された。
著者
須藤 邦彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.171-178, 2018-03-30 (Released:2018-09-14)
参考文献数
40
被引用文献数
3

本研究では,近年の自閉症スペクトラム障害(ASD)における応用行動分析学をベースにした実践研究の動向を明らかにした。2012年から2017年までの国内における応用行動分析に関連した学術雑誌を対象とした。まず,(a)ASDを対象とする,(b)何らかの介入を行った研究などの規準を満たす論文を抽出した。次に,(a)執筆者や支援実施者の特徴,(b)支援の場,(c)支援対象者の人数と年齢,(d)標的行動,(e)維持と般化,(f)研究デザイン,(g)支援の文脈適合性と社会的妥当性,という7つのカテゴリに分類した。その結果,執筆者や支援実施者に教員や保護者のような関係者が含まれている論文が多く,支援の場についても,全体の69%が教育機関,自宅,施設,あるいは地域であった。また,支援の文脈適合性と社会的妥当性による連携を関係者と行っている論文も多かった。標的行動については,対人コミュニケーションや問題行動がどの年代においても多く該当した。ASDの実践研究において,教員や保護者のような関係者と丁寧に連携している研究のエビデンスが蓄積されていく必要性が示唆された。
著者
桜井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.29-35, 1989-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
1

The purpose of this study was to investigate the effects of the instruction of evaluation (Experiment1) and the expectation of extrinsic rewards (Experiment2) on children's intrinsic motivation.In Exp.1, subjects were divided into evaluative and non-evaluative instruction groups.The former group was instructed to add the outcome to their academic achievement.After doing tasks in both groups, the method of free task choice (Sakurai, 1984a) was conducted.Four kinds of tasks were constructed in two dimensions: difficulty (easy-difficult) and curiosity (old-new). Evaluative instruction group preferred new tasks while the other group had a tendency to prefer difficult tasks.Between the groups, there was significant preference in curiosity of tasks but no significant preference in difficulty. In Exp.2, subjects were divided into expected and non-expected reward groups. The former group was instructed to give the performance-contingent rewards during doing tasks.In the situations of free task choice, both groups preferred difficult tasks, and only expected reward group preferred new ones.Between the groups, there was significant preference in curiosity of tasks but no significant preference in difficulty.Most of these results supported the Self Evaluative Motivation (SEM) Model proposed by Sakurai (1984a).
著者
寺尾 敦 楠見 孝
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.461-472, 1998-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
50
被引用文献数
4 2

本レビューは数学的問題解決 (特に代数文章題の解決) における転移を促進する知識の獲得に焦点を当てたものである。数学の問題には「類似」目標課題と呼ばれるある難しい問題のクラスが存在する。どのような知識がこの類似目標課題への転移を促進するのかという問題の検討が本レビューの目的である。研究を整理するために, 獲得される知識の違いに関して,「例題アプローチ」「解法構造アプローチ」「構造生成アプローチ」という類別を用いた。「例題アプローチ」では, 獲得すべき知識は多数の例題とその解法であるとされる。このアプローチは類似問題への転移という問題に答えるものではなかった。「解法構造アプローチ」では, 獲得すべき知識は解法構造すなわち等式の形レベルの抽象的知識であるとされる。このアプローチにはこれを支持する実験的証拠が不足していた。「構造生成アプローチ」では, 獲得すべき知識は等式レベルより抽象的な解法生成のアイデアであるとされる。このアプローチは, まだ実験的証拠が十分でないものの, 最も有望なアプローチであると考えられた。我々は解法生成の知識の獲得に関して今後の研究課題を議論し, 獲得のプロセスを明らかにすることが必要であると主張した。