著者
田村 修一 石隈 利紀
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.291-300, 2002-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

この研究は, 教師の「被援助志向性」と「自尊感情」との関連を明らかにし, 教師への効果的な援助のあり方を検討するために行われた。日本の中学校教師214名から質問紙を回収した。分析の結果, 以下のことが明らかになった。女性教師は, 男性教師に比べ「被援助志向性」が高かった。男性教師は, 女性教師に比べ「自尊感情」が高かった。「被援助志向性」と「自尊感情」は共に, 年齢による差はなかった。また, 45歳以下の男性教師においては, 「自尊感情」が高いほど「被援助志向性」も高い傾向が見られた。一方, 41歳以上の女性教師においては, 「自尊感情」が高いほど「被援助志向性」が低い傾向が見られた。この結果から, 教師へのサポートをどのように供給したらよいかについて考察された。
著者
一柳 智紀
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.361-372, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
20
被引用文献数
5 1

本研究の目的は, 児童による話し合いを中心とした授業における児童の聴き方の特徴が, 学級や教科の課題構造の違いによりどう異なるか明らかにすることである。小学5年生2学級において, 担任教師による児童の聴く力の評価と, 社会科と国語科の授業を対象に直後再生課題を行い, 児童による再生記述について, 学級(2)×評価群(高・中・低)×教科(社会・国語)の3要因分散分析を行った。結果, 1)授業中の発言の有無にかかわらず, 「よく聴くことができる」と教師から認識されている児童は, 能動的に発言内容と発言者に注目し, つながりを意識しながら, 自分の言葉で発言を捉えていること, 2)学習課題の違う教科により, 発言のソースモニタリングや話し合いの流れを捉えるといった児童の聴き方の特徴が異なること, 3)学級により, 2)の教科による聴くという行為の特徴は異なることが示された。これにより, 学級や課題構造に伴う話し合いの展開の違いが, 児童の聴くという行為に影響を与えていることが示唆され, 今後より両者の関連を考察することが課題として示された。
著者
水本 深喜
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.111-126, 2018-06-30 (Released:2018-08-10)
参考文献数
36
被引用文献数
8

本研究では,青年期後期にある子が捉える親との関係について「精神的自立」と「親密性」から捉え,それらの父息子・父娘・母息子・母娘関係の差を明らかにした。首都圏の大学生に質問紙調査を行い,まず「親子関係における精神的自立尺度」および「親への親密性尺度」を作成した(分析Ⅰ)。これらの尺度を用いて親子関係差を分析すると,娘が捉える母親との関係は,他の組み合わせの親子関係と比較して信頼関係が高く,親密性が総じて高かった。加えて,娘は父親とは分離した認識を強く持っていた(分析Ⅱ)。精神的自立と親密性との関連をみると,親子関係の組み合わせにより,親との信頼関係の築き方が異なっていた(分析Ⅲ)。最後に「信頼関係」と「心理的分離」の2軸による親子関係の4類型を用い,親との関係が子の自尊感情,自律性,主体性に与える影響について検討すると,父親との関係においては,心理的に分離することが,子の適応や発達を高めていた。自尊感情において性差が見られ,母親と信頼関係を築かないままに心理的に分離している場合の娘の自尊感情は低かった(分析Ⅳ)。総合考察では,これらの検討から明らかになった親子関係の性差について論じた。