著者
登藤 直弥
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.119-130, 2019-03-30 (Released:2019-09-09)
参考文献数
70
被引用文献数
2

本稿ではまず,この1年間に『教育心理学研究』で発表された29編の論文を対象に,利用された研究法について概観して,『教育心理学研究』に掲載された研究の典型を導き出した。次に,これを踏まえたうえで,これらの研究で実施された測定・評価についても概観し,『教育心理学年報』の「測定・評価・研究法」部門の論文においてなされた提言がそれらに活かされているとは必ずしもいえないことを明らかにした。加えて,日本教育心理学会第60回総会において「測定・評価・研究法」部門の研究として発表されたものに関しても,測定・評価・研究法という観点から現状を概観し,その特徴について,『教育心理学研究』に掲載された論文との違いを明らかにした。最後に,これらの検証結果をふまえて,日本の教育心理学の研究実践に,今後,測定・評価・研究法に関する提言を取り入れていくための方策について,筆者なりの提言を行った。
著者
根建 由美子 田上 不二夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.177-184, 1995-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

Bradburn (1969) indicated that psychopathology focuses too exclusively on the negative affect and psychologists ignore the positive aspects of life. The purpose of the present study was to compare the effects of the psychotherapy in order to increase well-being on subjective well-being modification with one of the psychotherapy so that anxiety would decrease. In the group on increasing well-being, happiness training program (Fordyce, 1977) was used. In the group on decreasing anxiety, the general cognitive behavior therapy was used. The result was obtained for the effects of the cognitive behavior therapy which could increase subjective well-being and could decrease anxiety. But the effects of the happiness training program were not significant.
著者
西出 隆紀 夏野 良司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.456-463, 1997-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
2

In our study, the Family Assessment Inventory was administered to 267 junior high school pupils and their fathers and mothers. Also, the Children's Depression Inventory (CDI) was administered to the pupils. The data were analyzed using covariance structure analysis to examine the two hypotheses about the relationship between each family member's perception of family function and the pupils' depressive mood. The following two hypotheses were tested: 1) The parents' perception of family function with respect to familial communication, satisfaction and cohesion affected the children's perception of family functioning with the same three variables having inverse correlation with the CDI score. 2) The parents' perception of the family flexibility and family rules had an influence on the children's perception of the same two variables having, at the same time, a curvilinear relationship with the CDI score. The path-model based on the first hypothesis was supported by the satisfactory goodness of fit with the covariance matrix. The present study clarified the relationship between the perception of family function and the pupils' depressive mood.
著者
東山 薫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.359-369, 2007-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
39
被引用文献数
8 5

本研究では, Wellman & Liu (2004) の主張する多面的な“心の理論”の発達が, 日本の子どもにおいても同じように見られるかを追試すると共に, 誤答した子どもの説明を分析することによって, より詳細に日本の子どもにおける“心の理論”の発達を検討することにした。すなわち, 誤信念課題において指摘されてきたような通過率の遅れがこの尺度でも見られるか否か, 日本の子どもがWellmanらの結果と同じ順序で段階的に心の理解が進むか否か, 誤答分析によって“心の理論”課題を誤る原因を明らかにすること, を目的とした。3~6歳の子ども120名にWellmanらの多面的な“心の理論”課題を実施したところ, Wellmanらと同様に年齢と共に段階的な発達が見られたが, 誤信念課題において従来指摘されてきたように, 多面的な概念を含む“心の理論”課題においても, 日本の子どもは通過率が低かった。誤答の説明を分析すると, 4, 5歳児の3割近くが信念課題をどのように考えたかうまく説明できない場合と, 理解できていない場合とが含まれていると考えられた。最後に, Wellmanらの課題の可能性と今後の課題について論じた。
著者
大内 晶子 櫻井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.376-388, 2008-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
3 4

本研究の目的は, 2年保育の幼稚園における年少児 (4歳児) の非社会的遊び (沈黙行動ひとり静的行動ひとり動的行動) に注目し, その変化および社会的スキル・問題行動との関連を男女別に明らかにすることであった。そのため, 入園直後(Time 1) とその約半年後 (Time 2) に幼児の非社会的遊びの観察を行い, Time 1, Time 2, および卒園直前 (Time 3) に彼らの社会的スキル・問題行動について担任教師に評定を求めた。その結果, 沈黙行動がTime 1からTime 2にかけて減少することが示された。また, 社会的スキル・問題行動との関連において, 沈黙行動は, 男女共に主張スキルの低い子どもに見られた。ひとり静的行動は, Time 2にその行動が多く見られた場合, 女児は協調スキルが低く不注意・多動傾向にあること, 男児はTime 3における主張スキルの低さを予測することが明らかになった。ひとり動的行動は, 行動が見られた時点ではいずれの関連も有意でなかったが, 男児はTime 1のそれがその後の主張スキルの低さを, 女児はTime 2のそれがTime 3における外在化した問題行動を予測した。
著者
酒井 恵子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.63-74, 2019-03-30 (Released:2019-09-09)
参考文献数
45

パーソナリティ特性を,単純な「数直線」ではなく「多面体」として捉え,多面性・多様性を含んだものと考える立場から,2017年7月から2018年6月までの1年間に『教育心理学研究』に掲載された論文,および,日本教育心理学会第60回総会における発表やシンポジウムを中心に,いくつかのパーソナリティ研究を取り上げ,(a)特性の多面性を意識した研究,(b)尺度項目の多様性を意識した研究,(c)個人内の構造を意識した研究,に大別して論評した。さらに,「パーソナリティ特性にマイナス極が存在するか」という問題についても論じた。