著者
浦上 昌則
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.195-203, 1996-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
32
被引用文献数
4 4

The purpose of this study was to examine the relationships among career decision-making self-efficacy, vocational exploration activities and self-concept crystallization in career exploration processes. Subjects were women's junior college students majoring in infant education (79 students) and liberal arts (107 students). Data were collected on two occasions in the process. At the beginning of job-searching, the career decision-making self-efficacy expectations were measured. After seven months, the questionnaire consisted of two parts, the activity of exploration and the change in crystallization of global/vocational self-concept in their exploration process, was administered to the students. In the case of the students majoring in liberal arts, the career decision-making self-efficacy had a significantly direct effect on exploration activity, and the crystallization of global/vocational self-concept was predicted through exploration activity. On the other hand, the students majoring in infant education did not show that their global/vocational self-concept depended on a vocational exploration activity. Based on these findings, reasons why the two groups of students had different job-searching process were discussed.
著者
木村 真人 梅垣 佑介 水野 治久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.173-186, 2014 (Released:2015-03-27)
参考文献数
29
被引用文献数
2 5

本研究では, 大学生の抑うつおよび自殺念慮の問題に関する学生相談機関への援助要請行動のプロセスに焦点をあて, その特徴を明らかにするとともに, 援助要請行動のプロセスにおける各段階の意思決定に関連する要因を検討した。大学生を対象に, 場面想定法を用いて抑うつおよび自殺念慮の問題を抱えた際の援助要請行動, 問題の深刻度の評価, 援助要請に対する態度, 自尊感情, 精神的健康度, ソーシャル・サポート, デモグラフィック変数について尋ねる質問紙調査を実施し, 758名からの有効回答を得た。ロジスティック回帰分析を実施した結果, 援助要請を検討する段階では性別(女性), ソーシャル・サポート, 問題の深刻度の評価が関連を示した。学生相談機関への援助要請行動の段階では, 問題の深刻度の評価, 援助要請に対する態度が関連を示し, さらに自殺念慮の問題では, 性別(男性)が関連を示した。得られた結果より, 援助要請行動のプロセスの観点からの, 大学生の精神的健康を目指した学生相談機関による介入方法について考察された。
著者
山岸 明子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.97-106, 1976-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
14
被引用文献数
6 3

The purpose of this study is to investigate moral judgement in children and youth based on the theory and the method of Kohlberg, L., and to examine the availability of his method and the validity of stage sequences in Japan whose culture is different from the U. S. A..In this study, moral judgement was analysed from how children and youth understood various moral norms which were imposed on them by adults or society, and what their standards of right-wrong were.Four of the Kohlberg's stories involving moral dilemmas, translated and slightly modified, were given to 19 5 th-, 20 8 th-, 20 11 th-graders and 16 college students. They were asked to answer in writing what one of the characters of each story should do and why, and later, to respond in an interview to additional clarifying questions. Their responses were analysed in detail by issue scoring method which examined what their basic orientation to moral issues was, and classified into one of 5 stages,(stage 5 and 6 were not distinguished). Two scorers' rating 40 Ss independently were in close agreement.The results were as follows;1) Distributions of stages among the subjects were as shown in TABLE 5. It showed age-dependent development of moral judgement and supported the Kohlberg's theory.2) As to sex differences, such tendency was found. that in girls there were more who had stage 3 orien tation (but not statistically sighificant).3) In Japan there were more who belonged to stage 3 than in U. S. A., overall age except among college students.
著者
馬場園 陽一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.27-36, 1979-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
15

本研究の目的は, いくつかのカテゴリーを含むリストの単一試行再生学習において, リハーサルが直後再生と最終一括再生でいかなる効果をおよぼすかを発達的に検討することであった。直後自由再生 (IFR) では再生量と群化量が測定され, 最終一括制限再生 (FCR) ではカテゴリーごとの制限再生が用いられ, 再生量が測定された。被験者は小学3年生 (実験I) と大学生 (実験II) で, Overtリハーサル (O) 群, Covertリハーサル (C) 群およびMinimalリハーサル (M) 群の3条件に割りあてられた。記銘材料は8カテゴリーから選定された事物線画であり, 1リスト20項目に4カテゴリーが含まれた。なお, 実験Iでは2リスト, 実験IIでは4リストが用いられた。主な結果は以下の通りであつた。IFR: 再生量に関してはどの年齢でもO群とC群がM群よりも優れ, O群とC群の間に有意な差はなかつた。しかし, 系列位置でO群とC群を比較すると, 新近位置と初頭位置で発達差がみられた。すなわち, 小学3年生は新近位置でO群がC群より優れ, 初頭位置でその逆の結果を示したが, 大学生のO群とC群はどの位置でも非常に類似した曲線を示した。群化量に関しては, 大学生ではO群とC群がM群より優れていたが, 小学3年生では 3群間に差はみられなかった。また大学生は小学3年生より優れた群化量を示した。FCR: 全ての群の系列位置曲線は初頭位置で最も高く, 新近位置で最も低かった。どの年齢でもO群とC群はM群よりも優れ, O群とC群の間に差はみられなかった。IFRとFCRの再生量を系列位置ごとに比較すると, 小学3年生でIFRよりFCR の中央位置の成績が優れたが, 逆に新近位置ではどの年齢でもIFRの成績が優れ, FCRで負の新近性効果がみられた。これらの結果から以下のことが示唆された。(1) リハーサル活動によってIFRとFCRに初頭性効果がみられた。これはLTSの成分を表している。(2) 大学生はカテゴリー情報を有効に利用する精緻化リハーサルを行うが, 小学3年生は単なる項目の反復にすぎない維持的リハーサルを行う。(3) これまでの無関連語リストで負の新近性効果がみられたのと同様に, カテゴリーを含んだリストの制限再生でもそれが見出された。
著者
宮下 一博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.455-460, 1991-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
28
被引用文献数
2

The purposes of the present paper were to examine the relations of narcissistic personality to Ss' present recollections concerning their parents' earlier attitudes and home environment. The Narcissistic Personality Inventory (NPI) revised by Miyashita and Kamiji (1985), and three other questionnaires measuring mother's and father's attitudes together with the home environment were administered to 270 college students. Correlations were performed between NPI scores and the other three measures. The results showed that in case of females, a significant negative correlation was found between narcissism and the emotional acceptance of the mother: such result supported the theory of narcissism. In the case of male subjects a significant positive correlation was found between narcissism and the father's dominating attitude. With such a result, it was suggested that the father could not be neglected in the theory of narcissism.
著者
尾崎 康子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.96-104, 2003-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
32

週1回開催される親子教室に参加している101名の2, 3歳児が母親から離れて仲間集団に参加する経過を1年間観察し, 母子分離の状況を過分離型, 徐々分離型, 一定分離型, 不分離型の4つのパターンに分類した。これらの各母子分離型における子どもの愛着安定性と気質の特徴を調べ, この時期の母子分離に関わる要因を検討した。母子分離の様相が相反する過分離型と不分離型に分類された子どもは, 共に愛着安定性は低かったが, 過分離型の子どもは新奇場面にしり込みしないのに対して, 不分離型の子どもは新奇場面にしり込みし, 順応性も低かった。このように, 愛着の安定性が低い子どもでも, 子どもの気質により母子分離の状況が異なることが示された。一方, 新奇場面にしり込みをしても, 愛着が安定していた徐々分離型の子どもは, 次第に母子分離しており, 2, 3歳児が仲間集団に参加する際の母子分離は, 愛着安定性と気質が相互に関係して特徴づけられることが示唆された。
著者
萩原 俊彦 櫻井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-13, 2008-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
62
被引用文献数
1 2

本研究の目的は, 大学生の職業選択に関連すると考えられる“やりたいこと探し”の動機を明らかにし, その動機の自己決定性と進路不決断との関連を検討することであった。まず, どの程度自己決定的な動機で職業選択に関わる“やりたいこと探し”をしているかを測定する尺度を作成し, 信頼性と妥当性を検討した。尺度項目の因子分析の結果から, やりたいことを探す動機として, 非自己決定的な「他者追随」, 自己決定性においては中間的な「社会的安定希求」, 自己決定的な「自己充足志向」の3因子が抽出され, 尺度の信頼性と妥当性が確認された。作成された“やりたいこと探し”の動機尺度を用いて, “やりたいこと探し”の動機の個人差と進路不決断との関連を検討したところ, “やりたいこと探し” の動機のうち, 非自己決定的な動機である「他者追随」が相対的に高い非自己決定的動機群は, 進路不決断の面で問題を抱えている可能性が示唆された。本研究で得られた結果は, 現代青年のキャリア意識として広く支持されている“やりたいこと”志向と職業選択との関連を検討する上で意義があると考えられる。
著者
外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.55-62, 2006-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
30
被引用文献数
3 3

本研究の目的は, 中学1年生213名を対象とし, 日頃比較をしている友人の学業成績と学業コンピテンスが, 生徒の学業成績の向上に及ぼす影響を検討することであった。本研究の結果より, 中学1年生においては, 自分よりも幾分優れている同性の友人と学業的遂行の社会的比較を行う傾向のあることがわかった。そして, 中学1年生の学業成績の向上において, 比較をしている友人の学業成績と学業コンピテンスの交互作用の影響が見られ, 日頃学業成績が高い友人と比較をしている人のうち, 学業コンピテンスが高い人は, 学業成績が向上した。一方, 学業成績が高い友人と比較をしている人であっても, 本人の学業コンピテンスが低い人には, 学業成績の向上は見られなかった。そして, 学業成績が低い友人と比較をする人は, 学業コンピテンスの高低にかかわらず, 学業成績の低下が見られることが示された。
著者
大橋 洸太郎 高嶋 幸太
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.95-106, 2018-03-30 (Released:2018-04-18)
参考文献数
19
被引用文献数
4

本研究では,大学教育における第二外国語に対して,学生が何を望んでいるのかの調査,分析をある私立大学内で行った。その際には,大学で中国語,ドイツ語,スペイン語,フランス語,朝鮮語といった第二外国語を履修する62 名の自由記述型の質問項目の回答を用いて,捕獲率による知見の収集率の確認と,得られた知見の吟味,考察を行った。その結果,(a)実用的な授業,(b)学習者にとって困難な点の把握,(c)コース設計に対する考慮の重要性が明らかになった。また,調査用紙のフェイス項目を用いて協力者をサブグループに分類し,より詳細な層ごとに捕獲率を計算した。この試みにより,留学や仕事で外国語の使用を志望していない学生でも実用性を求めていることが確認された。
著者
坂本 真士
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.407-413, 1993-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
1 3

The self-focus theory of depression (Ingram, 1990) predicts that the depressives remain self-focused when the external environment changed as compared with the nondepressives. Fifty-three male students participated in the following experiment. They were administered a self-rating depressive scale. About half of the subjects were heightened self-focused attention whereas the other half of the subjects were not. All subjects were instructed to solve tasks that required much attention. The results generally supported the hypothesis: (a) among subjects who were heightened selffocused attention, the depressives solved less tasks than the nondepressives; and (b) during the task-solving, the depressives focused more attention on themselves than the nondepressives did. On the other hand, among the subjects not showing heightened self-focused attention, the above mentioned differences were not found. The role of the self-focused attention in maintenance of depression was discussed.