- 著者
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中山 明峰
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.119, no.1, pp.14-21, 2016-01-20 (Released:2016-02-06)
- 参考文献数
- 36
近年睡眠医療が急激に発展した背景に, 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSA) の出現がある. OSA が解明され始めた1980年代にはこれといった治療方法はなく, この時期に考案された口蓋垂軟口蓋咽頭形成術 (UPPP) は画期的な治療法であり, 耳鼻咽喉科医が OSA の治療をリードしていた. ところが20世紀の終わり頃, 経鼻的持続陽圧加圧装置 (CPAP) の普及により, 手術症例が激減した. CPAP が普及し始めて10年以上経過し, CPAP アドヒアランスのよくない OSA 患者や, 治療が長期になると CPAP から完全に脱落してしまう患者が多発するというような問題点が討論されるようになった. CPAP を脱落してしまったら無治療と同じである. CPAP 治療が普及し問題点も出てきた今だからこそ, 睡眠医療における手術治療のあり方が再度検討される時期であると考えている. OSA に対して手術を行う耳鼻咽喉科医は, 以下の項目に意識を配って手術に臨んでいただくことが, 過去と同様の過ちに陥ることなく, 外科的治療の有用性を睡眠医に提案でき, 睡眠医に必要とされる外科医になる近道ではないかと考えている. 1. 睡眠医療を熟知し, OSA 以外の睡眠疾患を鑑別することができ, OSA ではないほかの呼吸障 害についても対処できる知識を持つ. 2. リスクに対する認識と対策, 再発時の合併症などを周知して手術を行う. 3. どの科よりも積極的に小児を診断し, 治療をする. 4. OSA 改善目的の手術は, 上気道の粘膜の拡張のみならず顎顔面全体を考慮し, 顎延長術など 他科との連携も配慮する. 睡眠耳鼻咽喉科医はいまだ不足しており, 睡眠医療を熟知しかつ手術も可能な施設は多くない. 現在見直されつつある睡眠医療における外科的治療に, 多くの若手医師が興味を持ってもらえたら幸いに思う.