著者
加藤 明彦 山田 弘之 山田 哲生 石永 一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.45-50, 1997-01-20
参考文献数
9
被引用文献数
12 3

当科において超音波ガイド下吸引細胞診 (FNA) を施行し, 手術により組織学的に確認された甲状腺腫瘍333症例につき検討を行った. 正診率は92.4%, 特異性は100%, 感受性は88.3%であった. またFNA陽性例のうち2回目以降に陽性となった症例が24例 (12.8%) あり, 反復穿刺が重要であると思われた. FNAを手術適応の決定に際し重視することで, 甲状腺手術例における悪性腫瘍の割合が増加し, 不要不急の手術を減少させることが可能になるものと考えられる. 一方, 超音波ガイド下にFNAを行うことで, FNAの診断精度を上げる努力をするとともに, 偽陰性例を見逃さないような総合診断を心がけるべきであると思われた.
著者
武田 元一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
大日本耳鼻咽喉科會會報 (ISSN:2186814X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.72-84, 1925

以上胎兒ニ就テ觀察シ興味アリト思フ所ヲ摘要スルコト左ノ如シ。<br>(一)後鼻中隔動脈ト前及ビ後篩骨動脈トノ間ニハ其大サ及ビ分布域ニ關シテ一定ノ代償的關係存在ス、即兩者ノ内何レカ弱小ナル時ハ他者強大ニシテ之ヲ補フ。此關係ハ亦前及ビ後篩骨動脈間ニモ存在ス。<br>(二)キーセルバッハ氏部位ニ於テハ後方ヨリ後鼻中隔動脈、上方ヨリ前篩骨動脈、下方ヨリ前鼻中隔動脈來リ分枝吻合ス。此部ノ靜脈存在ノ密度ハ鼻中隔上半ニ於ルヨリハ少シ<br>(三)鼻中隔ニ於テ腫脹體ノ存在ヲ認メズ。<br>(四)下甲介ニ於テ著シキ動脈環ヲ認ム。<br>(五)鼻腔粘膜ノ靜脈殊ニ前方大部分ノ靜脈ハ外壁ニ於テ下甲介ノ前端ノ附近ニ集合シ一幹トナリ(鼻顏面靜脈)骨性梨子状孔外縁ヲ迂リテ前顏面靜脈ニ注グ。<br>(六)鼻腔粘膜ニ於ル靜脈ハ中隔ニ於テハ上方ニ密ニ下方ニ粗ナリ。外壁ニ於テハ之ニ反シ上方粗ニシテ下方ニ密ナリ。<br>(七)盲孔ニヨリ、頭蓋腔靜脈ノ鼻腔靜脈トノ直接ノ交通ヲ認メズ、唯外鼻血管トノ交通ヲ認ムルノミ。<br>(八)腫脹體ハ八ケ月半バ以後ノ胎兒ニ之ヲ認ム、腫脹體發生以前ノ胎兒ニ於テ下甲介ニ於テ粗大ナル靜脈ハ矢状ニ前後ニ經過ス。
著者
加藤 直吉
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
大日本耳鼻咽喉科會會報 (ISSN:2186814X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.54-60, 1932

余ノ實驗成績ヲ見ルニ第十七號、第二十三號、第四十四號海〓ニ於ヶルガ如クプ氏反應ガ全ク消失セル海〓ノ聽器病變ニ於テハ出血性素質並ニ骨質變化等ヲ認メ得ベシト云ヘドモ之等ノ變化ト共ニ三頭六耳何レモ強度ノ化膿性中耳炎及ビ内耳炎ヲ併發スルヲ見タリ。然ルニ中耳及ビ内耳ノ化膿性炎ヲ伴ハザル海〓ノ聽器病變ハ入山氏ノ所見トハ全然其趣ヲ異ニシ余ハ小野氏ノ實驗成績ト殆ンド一致スルヲ見タリ。即チ竇驗的バルロー氏病ニ於ケル聽器病變ハ小津氏等ニ依テ聽器以外ノ部位ニ就テナサレタル成績ト略ボ一致シ聽器ニ於テモ亦、外耳、中耳、内耳等ノ諸組織内ニ來ル出血性素質並ニ骨質變化ヲ以テ其主要ナル變化ト思ハレタリ。骨髓ニ於テハ出血及ビ結締織増殖ヲ主ナル變化トナシ淋巴性細胞ハ著シク減少シテ網髓ノ形成ヲ見ル。即チ該部ニ於テハ骨髓ハ淋巴性ヲ失ヒ結締織ガ異常ニ増殖シ來タリ此層ニハ多クハ出血ヲ見タリ。骨膜ノ變化ハ其肥厚、骨膜下結締織増殖並ニ出血ヲ以テ主ナルモノトセリ。<br>入山氏ハ實驗的バルロー氏病ノ聽器病變ハ聽器ノ神經系要素ニノコト來ルガ如ク記述スレドモ余ノ成績ニ於テハ聽器ノ神經系要素ノ侵害サルル場合ハ常ニ海〓ガ内耳ノ化膿性炎ヲ伴フカ或ハ其神經系要素附近ニ出血竈ヲ發見シタルヲ以テ余ハ之等ノ神經系統ノ變化ハバルロー氏病<br>ニヨル出血性素質並ニ骨變化ニ伴フ續發的變化ニアラズヤト思ハレタリ。唯小野氏ノ記載以外ニ余ノ認メタル所見ハ卵圓窓ノ輪状靱帶ノ一部ガ破壞セラレ膿球ガ前庭道内ニ進入シテ内耳ノ化膿性炎症ハ續發的ニ此部ヨリ傳搬セリト思ハルヽ像ヲ見、其他ニ外聽道内並ニ内耳鼓室道内ニ幼若ナル結締織樣組織ノ充滿スルヲ見タルニ過ギズ。<br>熊谷、中村氏等ハ海〓ニ豆腐粕ノ偏倚的食餌ヲ與フレバ後肢ノ運動障碍即チ脚氣樣麻痺ヲ合併シ來ルコトヲ高調シ是レ鳥類及ビ哺乳動物ノ脚氣樣疾患ニ一致スルコトヲ説キ其後入山氏モ亦熊谷氏ト同樣ニ海〓ノ膝關節ニ變化ナキニモ拘ラズ後肢ノ運動障碍ヲ來スモノアルヲ認メ如斯キ後肢ノ運動障碍ハ關節局部ノ病變ニ歸スベキモノナラザルガ如ク記述セリ。然ルニ余ノ實驗成績ニヨレバ戸田、西氏等ノ豆腐粕以外ニ「オリザニン」ヲ補給セル實驗ト同樣ニ海〓ノ後肢殊ニ關節部ノ紡錘状腫脹又ハ其他ノ變化ヲ認メザルニ後肢ノ運動障碍即チ所謂脚氣樣麻痺ヲ合併セシモノハ一頭ダモ認ムル能ハズ。換言スレバ海〓ノ豆腐粕ノ偏倚的飼養ニ於テ余ハ「ビタコトン」B缺乏飼食ニヨル所謂脚氣樣疾患ヲ起セルモノヲ認メズシテ「ビタコトン」C缺乏飼食ニヨル出血性素質並ニ骨變化ニ伴フ運動障碍ヲ惹起スルヲ見タリ。余ハ實驗中プ氏反應ノ消長ニ關シテハ前述セルガ如ク特ニ精細ナル注意ヲ以テ日々之ヲ檢査シタルニ小野氏ノ既ニ記述セルガ如ク海〓ノ多クハブ氏反應ノ減弱スルヲ認メ其減溺ノ度ハ實驗日數ヲ重ヌルニ從ヒ次第ニ増加スルモノ多シト云ヘドモ大多數ニ於テハ關節腫脹、皮下出血、口腔變化高度ニシテ羸痩甚ダシキニモ拘ラズブ氏反應ノ存在スルヲ認ム。余ハ生體固定前持續シテブ氏反應ガ消失セル海〓ハ五十二頭中僅ニ三頭ヲ得タルニ過ギズ。<br>如斯實驗的バルロー氏病ニ於テハ其臨牀上プ氏反應ノ減弱ヲ來タシ然モ聽器ノ種々ノ部位ニ出血及ビ骨質變化ヲ伴フニモ拘ラズプ氏反應ノ全然消失ヲ來タスモノヽ尠キ所以ハ如何ニ。<br>抑々ブ氏反應ハ星野氏ノ實驗ニ依テ明ナルガ如ク音響刺戟ニヨル耳殻ノ純反射運動ナルヲ以テ其消長ニ關シテハ單ニ中耳、内耳等ノ病變ノコトヲ以テ今遁ニ論斷シ得ベカラザレドモ察スルニ實驗的バルロー氏病ニ因テ起ル聽器病變ハ聽器ノ神經系統附近ニ出血ノ存在スル場合カ又ハ海〓ガ内耳ノ化膿性炎ヲ合併スル場合以外ニハ神經節細胞、神經纎維並ニコルチ氏器等ノ神經系統ガ障碍セラルヽコトハ甚ダ稀ナルガ爲ナランカ。依是按之ズルニ實驗的バルロー氏病ニ於テハ外耳、中耳、内耳等ノ種々ノ部位ニ來ル出血性素因、殊ニ外界ト交通スル中耳腔粘膜下ニ好發スルガ爲メニ粘膜ノ汚穢壞死ニ陷ルモノ多ク且海〓ハ「ビタコトン」C缺乏ノ爲メニ身體ノ抵抗減弱シテ高度ノ榮養障碍ニ陷ルガ爲メニ種々ノ細菌ニヨル感染容易ニシテ遂ニ化膿性中耳炎ヲ起シ之レガ爲メニ難聽ノ度ヲ増シ一面ニハ又本病ニヨル骨質變化ニ因テ中耳ノ病變ガハーベル氏管、卵圓窓及ビ正圓窓ノ病的變化部位等ヲ介シ或ハ結締織樣組織ニ因テ餐喰サレタル蝸牛殼骨壁ヲ通ジテ病變ガ内耳ニ波及シテコヽニ甫メテ化膿性内耳炎ヲ起スガ爲メニ神經系統ガ侵害セラレテ高度ノ難聽並ニ聾ヲ來スモノニハアラザランカ、宜ナル哉、余ハ本實驗的研究ニ於テバルロー氏病ニ特有ナル出血性素質並ニ骨質變化等ニ伴フ續發的變化ト惟ハルヽ化膿性内耳炎ヲ併發セル海〓ニ於テノコトブ氏反應ノ消失スルヲ見タリ。
著者
久保 伸夫 中村 晶彦 山下 敏夫
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.98, no.8, pp.1263-1269, 1995-08-20
参考文献数
24
被引用文献数
6

成人178例に対し, 塩酸コカイン200mgとエピネフリン1mgを含んだガーゼタンポンによる表面麻酔下に内視鏡下鼻内手術を行い, 術前および術中の中枢症状, 脈拍, 血圧などの全身症状と術中の出血量, 手術時間を検討した. コカイン麻酔に伴うショック, 妄言, 呼吸抑制などの中枢症状と血圧の変動はなかったが, 毎分20回以上の脈拍の増加を26例で認めたが, 硫酸アトロピンを用いなかった症例では少なかった. 術中出血量は対象群とは有意差はなかったが, 手術時間は有意にコカイン使用群で短かった. コカインは200mg用いて安全であり, 粘膜微小血管からの滲出性出血を抑制することで, 手術時間を短縮すると思われた.
著者
小川 浩司
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.106, no.6, pp.685-691, 2003-06-20
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

滲出性中耳炎55症例に風船を使った自己通気(鼻吹き風船)治療を行い次の結果を得た.<br>1. 中耳換気チューブの既往歴のない小児27例49耳の87%,成人16例23耳の65%が著効以上の成績を示した.鼻吹き風船で治癒した小児の26%,成人の31%が14日以内に,また小児の24%は15日から21日までに治っていた.<br>2. 3年以上治療し換気チューブの既往歴がある小児7例中5例,成人5例中1例が鼻吹き風船によって治癒した.引き続き治療が必要だった6例中2例はアレルギー性鼻炎を合併していて,換気チューブ留置により貯留液が消失しても音響耳管法による耳管開口が認められず,成人2例は喘息,副鼻腔炎を合併した好酸球性中耳炎であった.中耳や耳管粘膜病変が強い場合は受動的換気だけでは治らない.また,他の2例は自己通気を決められた回数どおりに続けられなかった症例で,通気回数と継続が結果を左右するものと考える.<br>3. 風船を膨らませるとき鼻咽腔にかかる圧力は40~48mmHgでポリッツェル送気圧の40~60mmHgやユニット付き送気管の60~100mmHgに比べ低く,より安全なものと思われる.当院ではこれまで圧外傷等の副作用はなかった.
著者
木村 淑志
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.170-190, 1972-02-20 (Released:2010-12-22)
参考文献数
64
被引用文献数
1 1

(研究目的) 聴覚の老化現象は末梢内耳と中枢神経聴覚路の両者の退行性変化に起因することが知られている.著者は各年齢別の男性および女性に, 内耳および中枢性難聴診断のための聴覚検査を行うことにより, 生理的な老化の過程において, 末梢内耳と中枢神経聴覚路における聴覚機能の低下がどのように進行してゆくのかを解明しようと試みた.(方法) 30歳から5歳きざみに79歳までの特に難聴・耳鳴等の積極的な訴えがなく, 耳疾患および音響外傷等の既往のない健康な男女各10名ずつ計200名に対して下記の各種聴覚検査を行った.(1) 気導および骨導純音最小可聴域値検査, (2) 補充現象検査, (3) TTS現象検査, (4) 通常の語音検査, (5) 周波数歪語音検査, (6) 時間歪語音検査, (7) 両耳合成能検査, (8) 方向感検査.(結果) 1) 純音聴力域値検査では気導と骨導との間には殆んど差は認められなかった. 中音域平均聴力損失値は全症例において30dB以内にあったが, 高音域平均聴力損失値は加齢と共にその値の大きな例が増加した.2) 補充現象検査では陽性例は男女ともに50歳代まではあまり多く存在せず, 60歳代, 70歳代になってから増加した. この結果から, 内耳コルチ氏器における加齢変化は高年齢になってから起るものと考えられる. また補充現象陽性例の出現率の男女差については, 男性の方が陽性例の出現率が高かった.3) TTS現象検査では陽性例は全症例中1例も存在しなかった.4) 通常の語音検査では最高明瞭度値の低下する異常例は男女ともに60歳代までは少なかったが, 70歳代になると急激に増加した. しかし, 最高明瞭度値の低下の程度は極めて軽度であった.5) 周波数歪語音検査および時間歪語音検査では最高明瞭度値の低下する異常例は40歳代前半から50歳代前半にかけて増加し半数に達し, 更に加齢と共に増加した. この結果から中枢神経聴覚路における加齢変化は年齢的にかなり早期から起るものと考える.6) 両耳合成能検査では最高明瞭度値の低下する異常例は男性では40歳代後半, 女性では50歳代前半より増加した.7) 方向感検査では異常例はわずかに高年齢者の2例にのみ認められた.以上述べた2) および5) より, 生理的な聴覚の老化の過程においては, 中枢神経聴覚路における変化の方が内耳コルチ氏器における変化よりも早期に起るものと考える.
著者
多久嶋 亮彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.2, pp.97-103, 2017-02-20 (Released:2017-03-23)
参考文献数
20

顔面神経は第二鰓弓由来の末梢神経であり, 顔面神経の運動神経線維が分布する表情筋も, 第二鰓弓由来の組織である. 先天性顔面神経麻痺は原因として神経原性と表情筋原性の両者が考えられるが, その本態は定かではない. 仮に神経原性のものであるならば, 生後間もない時期にはまだ表情筋の萎縮が生じていないことが考えられ, 神経移行術などによる再建方法が考えられる. しかし, 現実的には1歳以下の乳児に対して再建術が行われることはない. したがって, 先天性の顔面神経麻痺に対しては, 既に表情筋が廃用性萎縮に陥った後の陳旧性顔面神経麻痺に対する治療に準じた手術方法が選択される. すなわち, 眉毛, 眼瞼, 頬部など各部位ごとに対する再建術を組み合わせて治療を行う. 一般的に小児期の顔面神経麻痺は, 安静時には麻痺が比較的目立たず, 兎眼など大きな機能障害をもたらす可能性がある症状も軽度であるため, 積極的な治療が行われない場合が多い. しかし, 先天性麻痺では頬部の動きに乏しいことが多く, 笑いの表情を作ることができないことが多々ある. また, 患児が笑うことにより顔の歪みが目立つことを嫌がり, 自ら「笑わなくなること」で表情の乏しい印象を与えることも多い. したがって, 患児の社会性を発達させる上でも顔面神経麻痺の治療, 特に笑いの再建は重要であると考えている. 笑いの再建方法としては, これまでには腓腹神経移植による顔面交叉神経移植術と薄筋移植術を二期的に行ってきた. しかし, この方法は治療期間が長くかかるため, 1990年代後半より広背筋を用いた一期的再建術が主流となっている. さらに最近では, 移植筋の動きがより大きくなるように, 動力源としての神経を2つ選択し, 二重支配を受ける筋肉移植術を行い始めている.
著者
後藤 友佳子
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1192-1201, 1990
被引用文献数
5

The localization of epidermal growth factor (EGF) in human cholesteatoma tissue, normal ear drum and external auditory canal skin was examined immunohistochemically, using avidin-biotin peroxidase complex method.<br>Bouin-fixed tissue was stained for investigation of horny layer in the epidermis, because fixation in Bouin's solution provides better preservation of the antigen. In the horny layer of cholesteatoma tissue, 19 out of 24 cases had EGF-positive immunoreactivity (79%). In 2 cases of normal external auditory canal skin, 4 cases of normal ear drum and a case of postauricular skin, no EGF-immunoreactivity was revealed in the horny layer.<br>EGF was assayed in the debris of cholesteatoma and the horny layer of the normal bony external canal with dot blot immunoassay. EGF content of the debris was higher than that of the horny layer of normal skin.<br>The result of the first report suggests the activity of cholesteatoma exists in the subcutaneous tissue (see the previous paper). In this report EGF content of cholesteatoma in the horny layer was found higher than that of normal external skin. This result demonstrates that EGF in the horny layer plays an important role in accelerating the growth and bony destruction in cholesteatoma.<br>To summarize these two reports, the following conclusion was reached. In the epidermis EGF content is equal in cholesteatoma and normal skin. But in the subcutaneous tissue and the horny layer EGF content of cholesteatoma is higher than that of normal skin. EGF in situ may be strongly related to the growth and bony destruction of cholesteatoma.
著者
井之口 昭 中島 俊之 宮崎 純二
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.87-90, 2008 (Released:2009-06-03)
参考文献数
4

嗅覚障害の診断には従来より静脈性嗅覚検査が用いられてきた. 検査は肘静脈から一定の手技で行うため, 再現性のある一定の匂い刺激になっていると考えられてきた. しかし, 実際に匂い強度を連続的に測定してみると必ずしも一定の匂い刺激ではなかった. 現在の実施方法では, 70%の例では匂い強度が1回だけピークを形成するパターンをとり, 残りの30%の例では複数回の強度ピークを形成することがわかった. そこで一定かつ再現性のある匂い刺激を模索するために注射液の量や注入時間を変化させて最適の注入方法を検討した. すると, アリナミン原液2mlを生理食塩水10mlに希釈し, 全体で12mlの液を40秒かけて注射する方法が全例で1回ピークパターンをとり, 最適の方法であることが判明した. 自覚的な匂い強度もガスセンサで測定した他覚的な匂い強度も原法とほぼ同じであった. 新注射法のもう1つのメリットとして血管痛の副作用が全くないことが挙げられる. アリナミン原液の強酸性が生理食塩水で薄められたためと思われる.嗅覚障害の治療にはステロイド点鼻療法が推奨されてきたが, その投薬コンプライアンスについてはほとんど関心をもたれてこなかった. 特に老人や頸椎疾患患者では懸垂頭位をとることは不可能である. そこで安楽かつ簡便に行える点鼻頭位を検討するため, 屍体頭部をさまざまな角度に倒立させて点鼻液が鼻内のどの部位に到達するか実験を行った. すると懸垂頭位では後屈角を90度ないし100度にしないと嗅裂に点鼻液が到達しないことがわかった. 懸垂頭位で点鼻を行う場合は鼻橋に沿って点鼻すれば後屈角80度でも嗅部に液が到達することもわかった. より患者に負担が少なく, 確実に嗅裂に点鼻液が到達する姿勢として枕なし側臥位を考案した. この頭位・姿勢で点鼻することにより簡便・安楽に投薬コンプライアンスを良好に保つことができた. 嗅覚障害治療にあたっては詳細に点鼻姿勢を指導することが重要である.
著者
東原 和成
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.111, no.6, pp.475-480, 2008 (Released:2009-08-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

生物が匂いを感知するメカニズムは, 嗅覚受容体の発見以来, 嗅神経細胞レベル, 嗅球レベル, 高次脳レベルでの解析が進み, ほぼ全貌が明らかになってきたと考えられている. しかし, 一方で, pptレベルでの匂いの感度と嗅覚受容体の閾値には矛盾があるなどの問題も残されている. また, 基礎学術知見は蓄積されてきている一方で, 産業界や臨床医学現場に役立つ応用科学面の嗅覚研究は若干注目度が低い. 本稿では, 嗅覚受容体遺伝子発見以来の歴史をふまえて, 筆者らの最近の研究から, 特に匂いの閾値の問題と嗅粘液の重要性についての知見を紹介したい.
著者
島田 純 保富 宗城 九鬼 清典 山中 昇 満田 年宏 横田 俊平
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.552-559, 2000-05-20
参考文献数
15
被引用文献数
7

近年,市中においてペニシリン耐性肺炎球菌による上気道感染症が急速に蔓延し治療に難渋する疲例に遭遇する機会が増えてきている.急性中耳炎は鼻咽腔から中耳への細菌の侵入と増殖によって発症するとされているが,耐性菌感染症の病態を考える上では,感染源としての鼻咽腔細菌の状態を把握することは重要である.<br>小児急性中耳炎患児の鼻咽腔より検出された肺炎球菌80株についてPCR法によりペニシリン結合蛋白(penicillin binding protein: PBP)遺伝子の変異を検索したところ,pbp1a, pbp2x, pbp2bの3つの遺伝子すべてが変異した株が30%にみられ,74%が何らかの遺伝子変異を有するものであった.またこれらの遺伝子変異株は1歳児から最も多く検出された.最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)が0.06&mu;g/mL以下を示す菌株群(46株)のうち,セフェム耐性化に関わるpbp2x遺伝子の変異を有する株が43%(20/46)を占めていた.<br>また,急性中耳炎を繰り返した11組のエピソードについて,エピソード毎に鼻咽腔から分離された肺炎球菌の遺伝子型をパルスフィールドゲル電気泳動法を用いて比較したところ9組(82%)において菌株が異なっていた.さらにpbp遺伝子の変異パターンから菌株を識別した場合には,8組(72%)において菌株が異なつておりほぼ同様の結果が得られた.<br>以上のことから,急性中耳炎患児の鼻咽腔においてはpbp遺伝子に変異を有する菌株が大きく関与しており,エピソード毎に異なる菌株によって感染が起こりやすいことが判明した.したがって急性中耳炎においては鼻咽腔検出菌の各種薬剤に対する感受性をエピソード毎に評価していくことが重要である.また,PCR法によるpbp遺伝子検索方法は分離菌の薬剤耐性判定を迅速に行えるだけでなく,個々の菌株を識別する上でも有用であると思われる.
著者
湯田 厚司
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.2, pp.113-117, 2020-02-20 (Released:2020-03-07)
参考文献数
13
被引用文献数
1

スギ花粉の舌下免疫療法は2019年春に発売後5年目の花粉飛散期を迎えた. また, 2018年には11歳以下の小児に適用を有するシダキュア® も発売された. 筆者は2018年末までに730例のスギ花粉舌下免疫療法を行っており, 保険適用以前の臨床研究を加えると1,100例を超える経験がある. 筆者の実臨床経験に基づく舌下免疫療法について概説した. われわれはシダトレン® (2,000JAU) 発売以降で毎年の臨床効果を報告しており, 花粉飛散数にも影響されるが, 効果は既存の薬物治療より高く, 治療年数とともに増強した. 高アレルゲン量を含有する新規のシダキュア® (5,000JAU) でも初年度に69例で検討したが, シダトレン® 治療2年目とほぼ同等の効果があった. また, アレルゲンが高用量になると副反応が若干増えたが, 治療スケジュールに影響する程度ではなく, 全例が最大維持量で治療できた. 舌下免疫療法が低年齢の小児にも適用となったが, シダキュア® で成人と同じプロトコールで治療した小児例において, 成人と副反応発現率は変わらず, 1年目の効果も同等に認めた. スギ花粉症に効果的な舌下免疫療法であるが, ヒノキ花粉への効果はまだ限定的である. ヒノキ花粉症への薬物治療併用などを考慮すべき例も多い. スギ花粉とダニの両方を抗原とするアレルギー性鼻炎例の合併は多く, 両アレルゲンでの併用舌下免疫療法が望まれる. われわれはシダトレン® とミティキュア® を併用した53例の経過を初めて報告し, 安全に併用ができることを示した. その後に, 少数例の前向き試験でも安全性が報告され, さらにはシダキュア® とミティキュア® を併用した104例の多施設共同前向き試験でも安全性が示された. これらのエビデンスにより今後は併用例が増えてくると予想される. 舌下免疫療法の課題はまだ多く, 今後もその克服に重点を置く必要がある. 基礎と臨床を結びつける研究が必要であり, 質の高い検体と患者背景を提供すべく, 多くの医療機関と共同研究を進めている.