著者
松岡 勝彦 佐藤 晋治 武藤 崇 馬場 傑
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.25-34, 2000-09-25 (Released:2017-06-28)

研究の目的 行動コミュニティ心理学による身体障害者用駐車スペースの違法駐車の軽減を実証的に取り扱った研究知見を応用し、点字ブロックに近接して置かれた迷惑車両(自転車とバイク)に対して、注意を促すポスターを掲示することの効果を検討することを目的とした。研究計画 場面間マルチ・ベースライン・デザインを用い、ベースライン、介入、プローブを実施した。場面 A大学図書館、講義棟、研究棟駐輪場付近の点字ブロック周辺であった。対象者 主に上記の場所を利用する学生、職員(教官含む)であった。介入 不適切駐輪の定義とその防止を呼びかける内容のポスターを、図書館と講義棟に掲示した。図書館では北側入口ドアおよび南側入口ドアの2か所に、講義棟では南側入口ドアおよび西側入口ドアの2か所に掲示した。ただし、研究棟(統制用)には掲示しなかった。行動の指標 点字ブロックに近接して置かれた迷惑車両(台数)を従属変数とした。結果 講義棟では、ベースラインにおける不適切駐輪台数は、平均11.6台であった。ポスターを掲示した介入条件での平均台数は7.3台となり、プローブでのそれは平均3.8台であった。介入を行わなかった研究棟(統制条件)では、全期間での平均不適切駐輪台数は4.3台であった。ポスターを掲示した2か所(図書館と講義棟)のうち、講義棟については効果が見られたが、図書館については、さほど効果は見られなかった。結論 不適切駐輪の防止を呼びかけるポスターを掲示することにより、不適切な駐輪台数が減少した。ただし、このことはポスターを貼付した場所(建造物の機能)によって効果が異なっており、今後はより効果的な介入方略について検討する必要がある。
著者
沖中 武 嶋崎 恒雄
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.22-29, 2010-09-23 (Released:2017-06-28)

研究の目的 本研究では、垂直サイン(データ付きポスター)と地面サイン(カラーテープ)が不法駐輪の防止に及ぼす効果を検討した。研究計画 ベースライン1、介入1(垂直サイン)、介入2a(垂直サインに地面サインを付加)、ベースライン2、ベースライン3、介入3(地面サイン)、介入2b(地面サインに垂直サインを付加)、ベースライン4からなるABCAABCAデザインを用いた。場面 大学キャンパス付近の歩道において実施した。参加者 当該の場所に駐輪をした者を対象とした。介入 垂直サイン(当該の場所に駐輪された台数の日々の推移を示す折れ線グラフを記載したポスター)と地面サイン(路上に貼付されたカラーテープ)を用いた。行動の指標 駐輪禁止範囲に駐輪された台数であった。結果 垂直サインと地面サインを併用することで不法駐輪台数が減少した。結論 不法駐輪台数のフィードバックと、カラーテープによる駐輪禁止範囲の明示を併用することの効果が確認された。今後は、より効果的な介入方法を検討するとともに、大学キャンパス全体を対象とするような大規模な介入の効果を検討することも必要である。
著者
内田 善久 伊藤 正人
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1-2, pp.71-87, 1997-06-30 (Released:2017-06-28)

本稿では学際的領域としての採餌行動研究の最近の発展を概観した。最適餌場利用、最適食餌、頻度依存捕食という3つの話題に対してオペラント心理学が培ってきた方法論を適用した研究に主眼がおかれた。行動生態学から導出された最適餌場利用と最適食餌という最適性モデルは、動物は最も効率的に餌を採るという仮定を共通に持つ。最適餌場利用と最適食餌の問題に適用された、強化スケジュールを用いた実験室シミュレーションは、最適性モデルによる予測の検証や移動時間、餌の分布等の採餌行動に及ぼす様々な要因の効果を検討する上で有効な方法論であることが示された。また、頻度依存捕食とは動物が相対頻度の高い餌を過剰に摂食する現象のことを指す。この現象に適用された、並立連鎖スケジュールを用いた実験室シミュレーションの結果は、餌の目立ち易さの要因が頻度依存捕食を生起させる上で重要であることを示した。これらの知見から、実験室シミュレーションが最適性モデルによる予測の検討や採餌行動に影響する要因の探求に際して強力な道具となることが明らかにされた。
著者
山本 淳一 澁谷 尚樹
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.46-70, 2009-03-30 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
3

本論文では、2004年にわが国で制定された「発達障害者支援法」が示している発達障害への支援のありかたについて、応用行動分析学がどのように貢献できるかを概説した。応用行動分析学のもつ「科学性」と「包括性」を整理し、それが、「発達障害者支援法」にうたわれている理念に一致していることを指摘した。次に、「自閉性障害」「注意欠陥/多動性障害」「学習障害」をとりあげて、以下の点についてエビデンスにもとづく支援方法を吟味した。(1)それぞれの発達障害にはどのような特徴があるか?(2)科学的な発達支援方法がどのように明らかにされてきたか?(3)より大きな支援プログラムがどのようにつくられ、その効果が大規模研究によってどのように分析されてきたか?(4)そのような研究を基盤にして、どのように支援ガイドラインが提示されてきたか?(5)様々な特徴をもつ個人に対して、様々な実践現場で活用するために、新たな研究と実践がどのように発展してきたか?その結果、研究成果を受けてガイドラインが提示され、ガイドラインをさまざまなニーズをもつ個人に適用するための方法が開発され、さらに新たな支援成果が蓄積される、という一連の発達支援の発展を抽出した。研究というのは、研究そのもので完結するのではなく、支援そのものの質の向上を促すための必要条件であることを示し、今後の研究課題を討議した。
著者
若林 功
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.5-32, 2009-03-30 (Released:2017-06-28)

発達障害者の就労支援に関する応用行動分析学的な手法を用いた研究に関する文献レビューはわが国ではあまり見られない。本稿では、米国における発達障害者の職業に関するスキル習得の報告を中心に、まず70年代から90年代中盤までの研究の流れを概観した。続いて、1998年以降の応用行動分析学に基づいた発達障害者への就労支援に関する研究について概観し、「作業技能(正確性・効率)」「作業技能(作業の自発的開始・課題従事・終了)」「対人生活技能」「問題行動低減」「就労支援者への指導」に分け内容を述べた。そして、米国の研究報告では、十分にエビデンスレベルが確保されているとは言えないまでも、有効な支援方法を開発しようとする流れが確かにあることを確認した。一方で、軽度発達障害者への取り組みや職業相談・職業評価等に関してはあまり応用行動分析学に基づいた研究が行なわれていないことも示された。また、なぜ応用行動分析学が発達障害者の障害者就労支援に有効なのか考察した。
著者
Chambless D. L. Ollendick T. H. 西村 美佳
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.81-105, 2005

アメリカ合衆国における、証拠に基づく心理療法(evidence-based psychology)の実践を増加させようとする努力の結果、経験的に支持された心理的介入についての情報を明らかにし、同定し、普及させるための特別委員会が組織されるに至った。この論文ではアメリカ合衆国やイギリスなどにおける、経験的に支持された処遇(empirically supported treatment, EST)を展望した特別委員会や他のグループの活動成果と、ESTとして同定された処遇のリストを要約して示すことにする。研究方法論や、外的妥当性や、研究の有用性、そしてEST展望過程の信頼性と透明性を含めた、ESTの同定と普及をめぐる論争についても、展望することにする。
著者
坂上 貴之
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.5-17, 2005-04-25 (Released:2017-06-28)

ヒトを参加者とした研究の倫理基準(American Psychological Association, 1992版)は以下のようにまとめられる。(1)倫理的自己制御とその限界、(2)他者の権利の尊重、(3)より上位の規定や勧告の遵守、(4)強制のない参加の保証、(5)情報操作の禁止、(6)秘密の保持。このうち、はじめの2つのクラスターを除けば、それらは参加者の対抗制御、特に倫理審査機関、説明付き同意(書)、そして倫理的問題の事例の歴史に関するインターネットによる情報の公開を利用した対抗制御と深く関連している。研究参加者による、対抗制御の行使のための環境随伴性の設計が倫理的行動を促進するために必要であるが、ルール支配行動といった、その他の倫理的行動の特性もその設計が計画される際には考慮されなくてはならない。最後に、従来の応用倫理学的なアプローチに対する可能な候補として、行動倫理学を提案することができる。なぜなら、この学は、ルール支配行動と対抗制御についての概念的、実験的、応用的分析を用いることで、倫理的行動の具体的な環境制御を研究することが可能であるからである。
著者
大久保 賢一 月本 彈 大対 香奈子 田中 善大 野田 航 庭山 和貴
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.244-257, 2020-03-20 (Released:2021-03-20)
参考文献数
16

研究の目的 本研究では、SWPBSの第1層支援を実施し、その効果と社会的妥当性を検討することを目的とした。研究計画 ABデザインを用いた。評価尺度については3つの時期に測定し、それぞれの時期の全校児童のスコアの平均を比較した。場面 公立小学校1校において実施した。参加者 対象校の全ての児童と教職員が本研究に参加した。介入 ポジティブ行動マトリクスを作成し、各目標行動の行動支援計画を立案し実行した。行動の指標 目標行動に従事している人数をカウントして得られたデータ、あるいはインターバル・レコーディング法を用いて得られたデータを指標とした。他に質問紙法によって評価尺度のデータや社会的妥当性に関するデータも収集した。結果 介入後に目標行動が増加し、評価尺度のスコアに改善がみられた。また一定の社会的妥当性が示された。結論 本研究において実施したSWPBS第1層支援の効果と社会的妥当性が確認できた。しかし、チームマネジメント、データに基づく第2層支援や第3層支援への移行、データの信頼性など、いくつかの課題が示された。
著者
山本 淳一
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.60-67, 2022-12-07 (Released:2023-12-07)
参考文献数
9

本論文の目的は、精神科臨床領域での事例を、一般論文や実践報告論文として「行動分析学研究」に掲載する意義と方略を明示し、その成果物としての論文の機能を討議することである。まず、臨床現場で経験する事例を論文にする意義について、融合領域の創出、系統的追実践・追研究という点から論述した。次に、論文の機能について、読み手行動への強化、書き手行動への強化、著者と読者との相互作用をどのように増やすかを検討した。その後、論文の構造について、以下のように論述の枠組みをテンプレートにすることで、執筆、通読、査読の効率化を図ることを提案した。疾患・症状・行動、生活歴と環境、行動の機能アセスメント、環境の生態学的アセスメント、支援方法、倫理、従属変数、研究計画、結果、考察。最後に、特集号で掲載される、5件の論文へのコメントを加えた。論文執筆こそが、様々なところで行われている事例検討によって得た経験を読者と共有し、行動ウェルネスを実現する道筋であることを主張した。
著者
遠藤 佑一 大久保 賢一 五味 洋一 野口 美幸 高橋 尚美 竹井 清香 高橋 恵美 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.17-30, 2008-03-30 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
10

研究の目的 本研究では、小学校の清掃場面において相互依存型集団随伴性マネージメントによる介入を行い、学級全体の清掃行動に及ぼす影響について検討することを目的とした。研究計画 ABABデザイン、ABデザイン、そして多層ベースラインデザインを組み合わせて用いた。場面 公立小学校の通常の学級において本研究を実施した。参加者 小学5年生の2つの学級の児童が本研究に参加した。2つの学級の児童数はそれぞれ23名、24名であった。介入 それぞれの清掃場所において、担当している児童を2つのグループに分け、残されていたゴミの数や大きさについて相互に評価を行った。評価得点の高いグループから好きな場所を次の清掃場所として選択することができ、順位に応じてシールが与えられた。さらに、学級全体の獲得得点が基準を超えた場合は、学級全体に対してバックアップ強化子が与えられた。行動の指標 清掃行動に従事していた人数の率、清掃場所の「きれい度」、そしてグループのメンバーが集合するまでの所要時間を測定した。結果 介入条件において清掃行動の従事率が増加し、「きれい度」が高まり、集合するまでの時間が短縮された。また、児童と教師の両方からプログラムに対する肯定的な評価が得られた。結論 通常学級における行動マネージメントに、相互依存型集団随伴性の適用が有効であった。また、手続きの社会的妥当性も示された。
著者
吉岡 昌子
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.106-115, 2007-07-30 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
3

研究の目的 本研究では、自己記録とフィードバックの手続きが、聴覚障害学生に対するノートテイクの基礎的なスキルの獲得に及ぼす効果を比較・検討した。研究計画 2パターンのABCデザインを使用し、ベースライン、自己記録またはフィードバック、自己記録とフィードバックの順に条件を導入した。場面 大学の模擬講義場面で実験を行った。参加者 ノートテイクの経験のない大学生10名。独立変数 採点シートを用いた自己記録、およびグラフによる得点率のフィードバック。行動の指標 (1)正確さ;採点シートの得点率、(2)速さ;1分あたりの入力文字数、(3)ノートテイクの質に関する主観的評価。結果 フィードバックによって速さは上昇したが、正確さはほとんど増加しなかった。自己記録の導入後に正確さは漸増し、全員が達成基準を満たした。結語 結果は、ノートテイクのスキルの改善には、得点率を提示するだけでは不十分であり、自己記録が実質的な効果をもつことを示した。
著者
若松 克則 島宗 理
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.21-29, 2020-08-20 (Released:2021-08-20)
参考文献数
35

研究の目的 会計事務所の顧客が領収書を整理して提出する行動を、少ない手間、短い時間で作業できる領収書綴りを提供することで増やすことができるかどうかを検討した。研究計画 対象顧客を5群に分け、顧客群間の多層ベースライン法を用いた。場面と参加者 口頭で依頼しても領収書を整理して提出してくれなかった顧客24社を対象とした。介入 ひと月1冊とし、日付ごとに見開き1頁を用意して日付をあらかじめ印刷し、発行日の頁に領収書を貼り付けるだけで済むようにした日記型領収書綴りを開発し、顧客に提供した。行動の指標 実験協力者として参加した仕訳スタッフが担当する対象顧客それぞれについて、領収書を整理して提出していたかどうかを毎月記録した。結果 17社が領収書綴りを使い、14社が継続して領収書を整理して提出するようになった。損益分析により、顧客・月あたり3,238円の利益を得たこと、仕訳担当スタッフもその結果に満足していたこと、実験終了後6年後も顧客による標的行動が維持されていたことがわかった。結論 領収書整理に関わる反応エフォートを低減することで顧客の協力的な行動を喚起し、維持できる可能性が示唆された。
著者
伊藤 正人 小林 奈津子 佐伯 大輔
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.122-140, 2002-03-30 (Released:2017-06-28)

本研究は、並立連鎖スケジュールにもとづく同時選択手続きを用いた3つの実験を通して、ラットにおける強化量の選択行動に及ぼす絶対強化量、体重レベル、経済環境の効果を、選択率と需要分析における価格弾力性を測度として検討した。強化量条件としては、相対強化量を1:3として、絶対強化量(1個45mgの餌ペレット数)を1個:3個から4個:12個の範囲の4条件設け、給餌が実験セッション内に限られる封鎖経済環境と実験セッション外給餌のある開放経済環境の下で各被験体に選択させた。また、セッション時間やセッション外給餌量により体重レベルを実験間で操作した。実験lと3では、体重を自由摂食時安定体重の約80%に維持し、実験2では、体重を自由摂食時安定体重の約95%に維持した。その結果、絶対強化量条件間を比べると、開放経済環境における1個:3個条件よりも4個:12個条件の方が高いことが認められた。選択期と結果受容期の反応に需要分析を適用すると、いずれの体重レベルにおいても、開放経済環境において弾力性の高いことが示された。これらの結果は、経済環境の相違が体重レベルやセッション時間ではなく、セッション外給餌の有無に依存することを示唆している。
著者
鎌倉 やよい 坂上 貴之
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.2-13, 1996-05-25 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

本研究は開胸術後の順調な回復のために必要とされる効果的な最大吸気練習プログラムの開発のために計画された。プログラムは被験者間多層ベースライン法でなされ、3つのフェーズからなっていた。ベースラインのフェーズでは、被験者は吸気練習器具であるトリフローの使用法について病棟で与えられる通常の教示を受け、吸気練習を自己記録するように言われた。第1の介入フェーズでは日々の吸気回数と吸気量の結果がグラフでフィードバックされ、もし前日の記録よりも上回っていれば言語的賞賛が与えられた。第2の介入フェーズでは、第1のものに加えて、この練習の手術への役割についての新しい情報が与えられた。吸気回数の目標値はベースラインでは20、第1介入フェーズでは50、第2介入フェーズでは80というようにあげられた。19人中、14人が介入によってベースラインのフェーズから第2介入フェーズヘとその吸気量を増加させた。増加しなかった5人は、ベースライン時においてその吸気量を急激に増加させたため、吸気行動を維持できなかった。
著者
栗林 千聡 中津 昂太朗 佐藤 寛
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.51-60, 2017-08-25 (Released:2018-08-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

研究の目的 高校ラグビー選手におけるプレースキックスキルの行動的コーチングの効果を検討した。研究計画 単一事例実験デザインに基づく参加者間多層ベースラインデザインを用いて、ベースライン期、介入期、ポスト期、フォローアップ期の4つのフェイズを設定した。参加者 高校のラグビー部に所属する男子3名であった。介入 標的行動は、9項目の下位スキルが得られた。行動的コーチングは、チェックリストに基づいた適切なプレースキックの下位スキルの教示、モデリング、行動リハーサル、フィードバックを実施した。行動の指標 参加者は、各セッションにおいてプレースキックの下位スキル正反応率およびキック成功率をそれぞれ測定した。結果 すべての参加者においてプレースキックの下位スキル正反応率およびキック成功率が向上した。結論 行動的コーチングはプレースキックスキルの改善に効果があることが示された。
著者
安生 祐治 山本 淳一
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.3-22, 1991-09-30 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
4

本実験の目的は、4名の公立高校硬式野球部選手のスローイング技能の指導に、通常のコーチングと行動的コーチングを適用し、これらが反応遂行としてのスローイング技能と適切なゾーンに当てるという反応所産に及ぼす効果を分析することだった。ターゲット行動であるスローイング技能は、10の下位技能に分類された。対象選手は27.4m離れた3つのゾーンに向けて送球し、その際のスローイングの反応遂行と、どのゾーンに命中したかという反応所産が測定の対象となった。同部におけるこれまでの指導法によって構成された通常のコーチングと、シェイピング、チェックリストの説明、賞賛、示範、教示、ロールプレイの諸変数を含む行動的コーチングの効果を、選手間多層ベースライン法によって分析した。実験1において、通常のコーチングは反応遂行と反応所産のいずれにも改善をもたらさなかった。一方、行動的コーチングはスローイング技能の改善をもたらしたが、反応所産には一様の正の結果をもたらさなかった。そこで、実験IIにおいて、行動的コーチングの変数であるチェックリストを一部修正し、目標を見るという行動を形成するための変数を新たに導入することによって、スローイング技能だけでなく、反応所産にも正の結果が示された。その結果を行動的コーチングと反応遂行、及び反応所産の測度の関連で考察した。
著者
丹野 貴行
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.111-127, 2021-03-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
76

実験的行動分析と徹底的行動主義の関係性について概念分析を行った。構成は、1)Journal of the Experimental Analysis of Behavior誌の歴史的経緯に基づく実験的行動分析の4つの特徴の整理、2)徹底的行動主義の基本となる3つの軸の整理、3)両者の関係性についての論考、4)こうした概念分析の現代的意義の一例としての、行動分析学と心理学における再現性の危機との関わり、であった。徹底的行動主義とは、単に行動の科学的研究を指すのではなく、心理学の主題とその研究方法論をめぐる主張である。本稿では、実験的行動分析の「基盤」として徹底的行動主義が示され、またその不可分に結びついた関係性が、心理学における再現性の危機への健全性を支えていることが論じられた。