著者
大屋 藍子 武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.30-39, 2016-08-25 (Released:2017-08-25)
参考文献数
19

研究の目的 本研究は、野菜摂取行動に対するパーセンタイルスケジュールが大学生の野菜摂取行動の変動性を増大させるかどうか、また食習慣が改善するかどうか検討した。実験デザイン 参加者間多層ベースラインデザインとABABデザインを組み合わせて用いた。場面 参加者は様々な野菜を摂取するよう教示を受け毎日ウェブアンケートの回答が求められた。参加者 野菜摂取が不足していると感じている7名の大学生がプログラムへ参加した。介入 ベースラインフェイズでは、参加者は毎日その日に摂取した野菜品目名をウェブアンケートへ回答した。介入フェイズでは、ウェブアンケートに加え、パーセンタイルスケジュールが実施された。その日摂取した野菜の種類が直前1週間の野菜摂取を基に算出した基準値より少なかった場合、それを称賛するメッセージが電子メールで送信された。行動の指標 野菜摂取行動に関する異反応数を行動変動性の指標として用いた。またDIHAL.2 (Diagnostic Inventory of Health and Life Habit)と言語報告を食習慣の改善の指標として用いた。結果 一部の参加者において、介入フェイズで異反応数が増大し、食習慣の改善が見られた。結論 野菜摂取行動の拡大においてパーセンタイルスケジュールは明確な効果を示さなかったが一部の参加者に対しては有効であった。
著者
竹内 康二 園山 繁樹
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.88-100, 2007 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
4

これまで様々な自己管理スキルを発達障害児者の問題に適用した研究が行われてきたものの、自己管理の方略を体系的に整理することは十分にはなされていない。そこで本論文では、様々な自己管理スキルを応用行動分析学的観点から体系的に整理し、自己管理を計画、実施、評価、分析、支援するための新たな枠組みとして「自己管理スキル支援システム」を提案することを目的とした。「自己管理スキル支援システム」は、(1)「標的行動の定義」、「弁別刺激の整備」、「自己記録」からなる手続きの段階、(2)「目標やルールの設定」と「自己評価」からなる手続きの段階、(3)「強化子(または弱化子)の選択・準備」と「自己確立操作」、「自己強化(自己弱化)」からなる手続きの段階の3つの段階から構成されるものであり、また競合行動への介入にも焦点を当てるところに特徴がある。この「自己管理スキル支援システム」の利点を「支援付き自己管理」の観点から考察した。
著者
大久保 賢一 井口 貴道 石塚 誠之
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.68-85, 2015-02-25 (Released:2017-06-28)

研究の目的 本研究では、機能的アセスメントにおける情報収集と行動支援計画の立案を標的とした研修プログラムを実施し、その効果を検討した。研究計画 異なった順番で手続きを実施する2グループを設け、事前テスト、中間テスト、事後テスト、維持テストの結果から介入の各要素の効果を明らかにすることを試みた。場面 大学研究室において実施した。参加者 教員養成課程に在籍する6名の大学生が対象であった。介入 行動分析学に関する基礎的な内容、そして機能的アセスメントの実施と行動支援計画の立案に関する「講義」と、チェックリストとフィードバックを用いた「演習」を実施した。行動の指標 架空事例に対して参加者が収集した情報の分析、立案した支援計画における方略の種類と数、および妥当性、行動分析学に関する知識、そして研修プログラムに関する感想に関するデータを収集した。結果 ほぼ、すべての従属変数において改善がみられ、特に「結果事象」に関する情報収集と方略の立案においては事前テストからの大きな変化がみられた。結論 本研究において実施した研修プログラムによって全般的な改善がみられたが、グループ間によって異なる傾向がみられた。以上のことから、妥当性の高い行動支援計画を立案するためには、チェックリストやフィードバックを用いたトレーニングを行うだけでは不十分であり、行動分析学に関する基礎的な知識が前提条件となる可能性が示唆された。
著者
中鹿 直樹
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.137-147, 2005-04-30 (Released:2017-06-28)

研究の目的 : ハトが他個体の反応位置を手がかりにして、2種類の条件性弁別課題を行うことができるかどうかを調べた。またその行動を2羽の他個体に応じて使い分けられるかどうかを検討した。手続き : 被験体(反応ハト)は強化子を得るために、他個体(刺激ハト)の反応位置を弁別刺激として反応することが求められた。2羽の刺激ハトのうち1羽の刺激ハトが提示されたときには、反応ハトは、刺激ハトが反応しているのと同じ側のキーに反応しなければならなかった。一方、別の刺激ハトが提示されたときには、反応ハトは、刺激ハトの反応しているキーの反対側のキーに反応しなければならなかった。被験体 : 2羽のハトを反応ハトとして用いた。さらに3羽のハトを刺激ハトとした。行動の指標 : 反応ハトの正答率と反応数を指標とした。結論 : 反応ハトは、刺激ハトの反応位置を手がかりにして、2種類の条件性弁別課題を行うことができた。また2羽の刺激ハトに応じてその行動を使い分けることができた。
著者
長谷川 芳典
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.164-173, 2008-03-31 (Released:2017-06-28)

過去50年以上に及ぶ「乱数生成行動」研究を概観し、行動変動性研究に関する3論文をコメントし、今後の展望を述べた。乱数生成行動研究は概ね1950年代から始まっているが、「なるべくランダムに」という言語的教示の曖昧さ、被験者が投げやりに振る舞っても対処できないこと、学習要因を考慮に入れていないこと、といった問題点があった。いっぽう行動変動性の研究は、それらの問題点を解消し、「人間が生成した乱数列はどこに問題があるのか」という特性論的な見方から、「オペラント条件づけ手続によってどこまでランダムな乱数列を生成させることが可能か」という、行動変容の視点で新たな可能性を開いた。しかし、一口に行動変動性と言っても、反応のトポグラフィーやIRTに関する微視的な変動性から、ランダムな選択行動や新しい形を作るといった巨視的な変動性までいろいろある。微視的な変動性は分化強化として扱えるが、巨視的な選択行動の変動性は弁別行動として論じるべきである。今後の展望としては、微視的、巨視的という区別に留意しつつ、発達障害児の一部で見られる常同的・反復的な選択行動を改善するための効果的な支援方法の確立といった現実的な課題にさらに取り組む必要がある。さらに長期的なライフスタイルにおける一貫性と変動性をめぐる問題も、行動分析学の課題になりうる。
著者
島宗 理 磯部 康 上住 嘉樹 庄司 和雄
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.46-62, 2000-02-29 (Released:2017-06-28)

都内のある小規模ソフトウェア開発会社において、営業担当者の企画提案を支援する"企画提案思考ツール"を開発し、その効果を検討した。企画提案思考ツールは新聞や雑誌などに掲載された情報処理サービスの記事について以下の質問に答えていくジョブエイドとして開発した。(1)対象となる顧客は誰か、(2)顧客のニーズは何か、(3)ニーズを満足させる技術は何か、(4)これまでの技術と異なるところはどこか、(5)どのように販売しているか。そして、(6)顧客、(7)技術、(8)販売方法のうち、どれか一つを変化させて自分なりの提案を作るように要求された。最初に、5人の営業担当者に対して企画提案思考ツールを導入し、週間営業ミーティングでの口頭発表が向上されることを確認した。その後4か月間、企画提案思考ツールへの適切な記入行動をファックスと電子メールとを使って遠隔より支援した。さらに別の5名の社員に対し、最長は1年間以上にわたり、今度はファックスと電子メールのみを使って遠隔より企画提案思考ツールの正確な使用を訓練し、継続的な利用を促進した。企画提案という複雑な言語行動の自発が比較的簡単なジョブエイドで導くことができること、そしてジョブエイドの継続的な利用を遠隔から支援できることが示された。
著者
山岸 直基
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1-2, pp.2-17, 1998-07-10 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

直前の反応と異なる反応を分化強化するとき手続きが行動の変動性に及ぼす効果を大学生を対象に調べた。実験1と実験2において1反応の単位としてそれぞれ2反応系列と3反応系列を使用した。行動の変動性は、(a)分化強化するために参照される直前の反応の数が系統的に変化する分化強化条件と、(b)分化強化条件と強化率の等しい、被験者内および被験者間の2つのヨークト条件において比較された。その結果、どちらの実験においても、分化強化条件では、行動の高い変動性と直前の反応と異なる反応の出現数が高い頻度で確認され、ヨークト条件では、行動の変動性は低く、直前の反応と異なる反応の出現数も少なかった。また、参照される直前の反応の数が1のときよりもそれ以上のときに、より大きな変動性が観察された。本実験の結果より、直前の反応と異なる反応を分化強化する手続きによって直前の反応と異なる反応の出現数が増加し、その結果として、行動の変動性が増加することが示された。
著者
嶋崎 まゆみ
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1-2, pp.29-40, 1997-06-30 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

セルフコントロールのパラダイムを用いた選択行動の研究は、近年動物や健常者の基礎研究が盛んに行われているが、発達障害児を対象とした研究はきわめて少ない。注意欠陥多動性障害および自閉性障害の子どもたちは、多動性と衝動性を主要な症状として持っている。したがって、そのような子どもたちの衝動性とセルフコントロールに関する実験的な研究は重要であろう。本稿では、それらの研究を次の2つの観点に基づいて概観した。すなわち、(1)衝動性の測定と評価に関する研究、(2)セルフコントロールの研究から得られた訓練手続きに関する研究である。さらに、発達障害児にセルフコントロールのパラダイムを適用する際の問題点について論議した。主な論点は、言語教示に関する問題、強化子の査定、満足の遅延パラダイムとの関係の3点であった。
著者
大河内 浩人
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.118-129, 1997-03-20 (Released:2017-06-28)

17名の大学生を、最少教示-標準FI群、最少教示-修正FI群、正教示-標準FI群、正教示-修正FI群の4群のいずれかにランダムにふりわけ、多元定比率低反応率分化強化(mult FRDRL)スケジュールの後に多元定間隔定間隔強化(mult FIFI)スケジュールを行った。最少教示条件の被験者には反応率に関する教示をしなかった。正教示条件の被験者には、FR成分のときにすばやく反応する、DRL成分のときに間隔をあけて反応するように教示した。標準F1条件の被験者には、mult FIFIで、一定量の強化子を与えたのに対し、修正F1条件の被験者には、インタバル中に自発された反応数に応じて強化量を変えた。Mult FR DRLでは、全被験者がFR成分で高率、DRL成分で低率の反応を示した。最少教示-標準FI群の4名中3名のmult FIFIでは、かつてFRスケジュールと相関のあった刺激下での反応率がDRLと相関のあった刺激下でのそれよりも高かった。このような履歴効果の刺激性制御は、最少教示条件より正教示条件で顕著だった。教示の効果は、反応量と強化量の相関の影響を受けなかった。教示性制御に影響すると考えられる変数について論じた。
著者
中野 良顯
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.172-177, 1996-08-15 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

「実践研究の方法と課題」で論ずべき主題を考察した。実践研究の概念を分析すると、臨床心理学の訓練の理想的範型、サイエンティスト・プラクティショナー・モデルに到達する。このモデルが目指すのは、消費者・評価者・研究者の3役割を統合する生産的研究者、分析的実践家の育成である。個体分析法によって臨床実践の実験科学化を可能にした応用行動分析は、このモデルの使命を実現する最も正当な継承者である。それは実践の科学化を可能にするための7指令に、社会的妥当性と効果的処遇を受ける権利という新しい次元を加え、研究者と実践家の行動指針とした。これらの指令は、研究者はどうすれば実践の問題に関連深い研究を展開できるか、実践家はどうすれば科学的方法論を駆使して伝達可能な情報を生み出せるか、科学に基づく実践を受益者に好かれる実践にするにはどうすればいいか、そして緊急に解決すべき問題を持つ人々が問題の改善に有効な介入を受ける権利をどうずれば保障できるか等の基本的課題への試案的回答として提出された。それらは日々の実践研究において反復検討され、十分吸収活用され、一層発展させられなければならない。
著者
畔上 恭彦
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.154-164, 1996-08-15 (Released:2017-06-28)

臨床において、コミュニケーション場面での子どもの行動の変化を捉えると同時に、その行動の意図、例えば、人に視線を向けたという行動だけなく、子どもの視線の奥の「まなざし」の意図を理解するということが重要な意味を持つ。このような観点からINREALでは、コミュニケーション分析を行い、これを通して、話し手・聞き手はどのように『会話の原則』に従ったかを検討する。今回、自閉的傾向のある発達遅滞児とのプレイ場面において、INREALの『会話の原則』に従ったコミュニケーション指導を行ったところ固執と思われていた行動が、人との関わりの接点となり、大人と子どもとのやり取りへと変化していった。大人が意味のあるコミュニケーションを行うために『会話の原則』を守ることの重要性が示唆された。この『会話の原則』を守っているかどうかは、臨床場面の録画ビデオを検討することで確認できる。
著者
坂上 貴之
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.131-137, 2004-06-30 (Released:2017-06-28)

久保田新ら(2003)による魅力的でずっしりとした教科書は、感覚と知覚から人間の発達にわたる心理学的現象を考察するための、様々な視点を私たちに与えてくれる。この本は、この理由から臨床及び医療分野の学部学生、心理学専攻の大学院生に強く推薦できるが、特に行動分析家へは、自らの徹底的行動主義の哲学的基盤を著者のそれとつきあわせるために推薦できる。随伴性の概念と有名な誤信課題であるサリーとアンの課題の問題が著者の用法に基づいて詳細に議論された。
著者
中島 定彦
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.160-176, 1995-06-15 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

多くの動物(ヒトを含む)研究が見本合わせ手続きまたはその変法を、記憶(想起行動)、注意、概念、刺激等価性の研究法として用いてきた。この論文の前半ではそれらの手続きを、実験者が動物に要求する行動という観点から、選択型見本合わせ、Go/No-Go型見本合わせ、Yes/No型見本合わせの3つに分類した。見本合わせ手続きはまた、第1標準見本刺激と第2テスト比較刺激との対応関係から、同一見本合わせ、象徴見本合わせ、非見本合わせに分類できる。さらに、見本刺激と比較刺激との時間的関係から、同時見本合わせと遅延見本合わせに分類される。論文の後半では、見本合わせ手続きの多くの変法を、この手続き内で生じる出来事の系列に沿って分類した。
著者
瀬口 篤史
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.52-60, 2020-08-20 (Released:2021-08-20)
参考文献数
10

研究の目的 本研究は、加害恐怖を主訴として来院した高齢のクライエントに対して、買い物に関連する行動の生起頻度等を指標として、曝露反応妨害法による介入を行い、その効果を検討することを目的とした。研究計画 行動間マルチベースラインデザインを用いた。場面 精神科クリニックにおけるカウンセリングルームと近隣の店で実施した。参加者 介入開始時72歳の女性で、強迫性障害と診断されていた。介入 セッション中に、コンビニや薬局に入店し、素手で商品を手に取るよう求めた。その後、セッション中に、駐車されてある車のすぐ傍を一人で通るよう求めた。行動の指標 スーパーやコンビニ、薬局等に入店した累積頻度、店内で購入した商品数、新聞を読んだページ数、一人で自宅から店まで徒歩で行った累積頻度、確認の電話をかけた頻度を指標とした。結果 スーパー等に入店した累積頻度、購入した商品の数、新聞を読んだページ数、一人で自宅から店まで徒歩で行った累積頻度はいずれも増加した。また、確認の電話をかけた頻度は減少した。結論 本事例で行った介入が、加害恐怖を訴えるクライエントの行動レパートリーを増やすために有効であることが示された。
著者
青木 康彦 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.2-10, 2020-08-20 (Released:2021-08-20)
参考文献数
16

研究の目的 本研究では、発達障害児2名を対象に80回の随伴ペアリングを実施し、称賛が条件性強化子として成立し、維持するかを検討した。場面 大学のプレイルームで行った。対象児 発達障害のある幼児2名であった。行動の指標 “両手合わせ”、“ハイファイブ”の生起頻度であった。研究計画 “両手合わせ”にABCBデザイン、その後、コメントの条件性強化子成立、維持を検討するため、“ハイファイブ”にABデザインを用いた。介入 標的行動に随伴させて日常生活で聞くことが少ないコメント(中性刺激)を称賛として与え、同時にお菓子(強化子)を対提示した。結果 2名中2名で随伴ペアリング前の称賛期よりも随伴ペアリング後の称賛期において“両手合わせ”の生起頻度が多かった。また、2名中1名において随伴ペアリング期後の称賛期において“両手合わせ”の生起頻度は高頻度で6ブロック維持し、随伴ペアリングを行っていない“ハイファイブ”においても、消去期よりも称賛期において生起頻度が多かった。結論 80回の随伴ペアリングにより2名中2名で称賛コメントが条件性強化子として成立し、2名中1名で称賛コメントの条件性強化子の強化価が維持するものであった。
著者
坂上 貴之
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.92-105, 2002-03-30 (Released:2017-06-28)

行動分析学における行動経済学は、4つの研究の流れ、すなわち摂食行動についての生態学的アプローチ、伝統的経済心理学研究とトークンエコノミーでの経済分析、強化相対性についての量的定義の追求、そしてマッチングの法則の展開、から形成された。それは、強化の有効性についての新しい指標、実験.条件の手続き的理論的区別、選択行動の最適化理論という3つの主要な成果をもたらした。この最後のもっとも影響のある成果は徹底的および理論的行動主義に対する別の選択肢としての目的論的行動主義を促した。が、同時にそれは経済学から限定合理性と不確実性という2つの問題も引き継いだ。実験経済学と進化経済学はこれらの問題を克服しようとする2つの候補であり、両者ともその実験的理論的枠組みとしてゲーム分析的なアプローチを利用している。特に後者は行動分析にとって魅力ある研究領域である。なぜなら、それは限定合理性を含んだ進化ゲームと、生物学的枠組みとは異なる進化過程の多様な概念的アイデアを提供するからである。
著者
河村 優詞
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.71-77, 2019

<p><b>研究の目的</b> 特別支援学級の児童における漢字の筆記学習において、自己評価・他者評価が正確な書字行動に及ぼす影響を検証した。<b>研究計画</b> ABACフォローアップおよびABフォローアップデザインを用いた。<b>場面</b> 小学校内の特別支援学級の教室で授業として実施した。<b>参加者</b> 特別支援学級に在籍する児童(N=5)であった。<b>独立変数の操作</b> 自己評価の有無(介入Ⅰ)、および自己評価・教師評価とその一致に対する評価の有無(介入Ⅱ)であった。<b>行動の指標</b> 薄い灰色の線をなぞって書くトレース課題において、線からはみ出して筆記した画数の割合を算出した。<b>結果</b> 介入Ⅰにおいて教示期でははみ出しの減少が見られなかったが、自己評価期には大きく減少した。しかし自己評価をやめると再度はみ出しが増加し、自己評価が不正確であるケースもあった。介入Ⅱでは自己評価・教師による他者評価を実施したが、1名を除き介入開始後にはみ出しは減少し、介入終了後も増加しなかった。<b>結論</b> 自己・他者評価を含む介入は現場で実践しやすく、正確な書字行動を促しうる方法であると考えられる。ただし、介入効果の小さい児童も存在していたため、教授法のさらなる改善が必要である。</p>