- 著者
-
池邉 一典
- 出版者
- 一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
- 雑誌
- 日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.2, pp.681-686, 2016 (Released:2016-04-26)
- 参考文献数
- 19
高齢者では,健康を維持し,食生活を楽しむためには,咀嚼機能がきわめて重要である.本論文では,高齢者の口のはたらき,すなわち口腔機能が,栄養摂取,さらに健康に与える影響について,これまでのエビデンスを中心に紹介した.まとめると以下の様になる.1.加齢とともに歯数は減少し,個人差も大きくなる.また,咬合力,味覚などの口腔機能が低下する.2.歯の数は,寿命に関係する様々な因子の影響を調整した上でも,長寿と関係がある.その歯と生存期間を結ぶ経路として,口腔機能低下による栄養摂取の変化が考えられる.3.歯を失うと野菜類の摂取量が減少し,抗酸化ビタミンや食物繊維などが不足し易い.また,タンパク質の摂取も減少する.4.要介護高齢者では,咀嚼や嚥下機能は低栄養と関連がある.5.我々の研究より,歯数より咬合力の方が栄養摂取(ビタミン,食物繊維,タンパク質)や運動機能に関連することが示された.