著者
大谷 正人 OTANI Masato
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.13-20, 2015-03-31

自殺予防の精神療法を行う際には、自殺者の9割以上に存在する精神疾患の治療、十分な時間をかけた傾聴、希死念慮の一時性の確認、周囲の人々との絆の回復への支援などが臨床上主要な課題となる。自殺予防の根拠となり得るセラピーの一つとして、フランクルのロゴセラピーがある。フランクルのロゴセラピーは、人々が人生の意味を見出すことを援助することがその本質であるが、自殺防止に役立つ様々な視点も存在している。それは、創造価値、体験価値、態度価値という生きる意味を確認すること、未来への視点をどのような時でも持ち続けること、「生きることから何かを期待できるか」ではなく、「生きることが私たちから何を期待しているか」という自己中心的世界観から世界中心的世界観への変換の必要性、苦悩のもつ意義の確認、愛する者への思いにより救済され得ること、そして自己超越による永遠性という視点である。自殺予防に関わる者にとって、フランクルのロゴセラピーは大きな示唆を与え続けている。
著者
南 学 MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.221-227, 2018-01-04

本研究では、現代の若者がもつ幸福観と価値観との関連から現代の「幸せな若者」像(古市,2013)について明らかにすることを目的として検討を行った。結果は、幸福観によって若者を3 群に分けたところ、「現状満足群」のほうが従来の友人関係を維持することを求めることが示されたが、地元志向に関しては有意な差は見られなかった。また「現状満足群」よりもすべてのことを追求する若者像である「全追求群」のほうが、「主観的幸福感」が高く、友人関係においても「表面的友人関係」、「内面的友人関係」に関しては「全追求群」のほうが高かったことが見出された。これらの結果から、古市(2011;2013)が指摘する「幸せな若者」像はすべての若者にあてはまるものではないこと、その「幸せな若者」群の幸福感がとくに高いわけではないことが見出され、古市(2011;2013)が提唱した若者の価値観の傾向と幸福感を結びつけた「幸せな若者」論は実証性に欠けることがあらためて示唆された。
著者
松本 昭彦 MATSUMOTO Akihiko
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.109-124, 2016-03-22

『枕草子』第九十八段「中納言まゐりたまひて」段は、有名な「海月の骨」の秀句の段であるが、従来この秀句は、隆家の「見たことないほどすばらしい扇の骨だ」との発言に対し、「見たことないなら海月の骨ですね」と清少納言がしゃれを言ったと解釈されてきた。しかし、「海月の骨」とは、長生きすれば見られるかもしれない奇蹟・幸運の意味の成句であり、この場面は、定子が皇子を懐妊もしくは生んだ直後と考えられることから、ここではその皇子の将来の即位を<予祝>する意味を込めたしゃれであると考えるべきである。またこの章段末尾の部分は、この章段の執筆によって、そのような<予祝>にも関わらず若くして亡くなってしまった定子、結局皇位には就けない皇子・敦康親王の悲運を読者に再確認させてしまうことに対する「言い訳」と考える。
著者
須永 進 青木 知史 堀田 典生 SUNAGA Susumu AOKI Satoshi HOTTA Norio
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.137-142, 2017-03-31

基本的生活習慣と社会性の関係では、A群(基本的生活習慣が獲得されている子ども)がそうでないB群の子どもより、社会性の発達の面で各項目ともに上回っていることが、今回のクロス集計で明らかになった。また、精神面における項目においても同様の傾向がみられるなど、子どもの成育と健康度という視点から、幼児期の子どもにとって基本的生活習慣の獲得が不可欠な要因であることが、改めて確認されたといえる。キーワード:子どもの基本的生活習慣、社会性の発達
著者
山田 恵理 田中 伸明 玉城 政和 YAMADA Eri TANAKA Nobuaki TAMASHIRO Masakazu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.395-402, 2018-01-04

これまでの統計教育は、生徒が統計的な知識を学んだ後、技能を身につけるために、データを含んだ課題の分析処理を行わせるものが主流であった。しかし今日、統計教育はより実践的な枠組みへと変革しつつある。すなわち、生徒が自らの身近な問題の解決を目指し、「計画立案、データ収集、分析、実践、総括」という段階を踏む中で、統計的な知識や技能を涵養する実践が注目を浴びているのである。このような統計教育では、その問題解決の中で、しばしばPDCAあるいはPPDACといった「改善サイクル」を周回させる手法が用いられる。しかし、例えば「学校の環境」等の大きな問題解決を扱い、「改善サイクル」を機能させるならば、どうしても、数学の枠組みを超えたものになってしまう。すなわち、「総合的な学習の時間」等との関連を図るなど、かなり「大掛かりなもの」にならざるを得ないのである。本研究は、あくまでも、数学Iの「データの分析」という1単元のなかで、統計的な知識や技能を学び、それを「改善サイクル」に活用することを試みたものである。かなりコンパクトな状況で、「改善サイクル」を3周回機能させるとともに、生徒自らが平均と分散が改善していく過程を見出していくことで、「改善サイクル」が機能したことを評価させ、「改善サイクル」の必要性や良さも実感させた実践例である。
著者
大谷 正人 Otani Masato
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.107-113, 2005

レナード・バーンスタインは20世紀にアメリカが生んだ大指揮者兼作曲家として、世界中で活躍し、多くの人々から愛された。バーンスタインにとって、1970年代の後半を中心とした危機的状況は重要な意味を持つと考えられる。作曲家として後世に残るようなシリアスな名曲を作曲したいという思いのため、1969年にニューヨーク・フィルハーモニックの指揮者を辞任したが、その後に作曲した大曲はいずれも期待したような評価は得られず、熱狂的な歓迎の得られる指揮活動を中心にせざるを得なかった。また1976年から1年近くバーンスタインは、妻のフェリシアと別居し男性の愛人と暮らしていたが、その別居中に発症したと思われる肺癌のため、1978年フェリシアは死去した。その悔恨の思いはバーンスタインの生涯続き、その後の音楽活動にも影響を及ぼした。特に演奏面での変化は著名で、遅い曲でバーンスタインのとるテンポは時々極端に遅くなっていった。
著者
大谷 正人 オオタニ マサト OTANI Masato
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 人文・社会科学 (ISSN:03899241)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.1-10, 2004-03-31

ベートーヴェン、スメタナ、フォーレという3人の大作曲家(3人とも名演奏家でもあった)における聴覚障害の創造への影響を検討した。ベートーヴェンの場合、聴覚障害は名ピアニストとして社交界での寵児でもあった青年期に発症したこともあり、遺書を書くほどの衝撃をもたらしたが、その不屈の精神により、主題の徹底的展開によるソナタ形式の完成をもたらした。スメタナの場合、オペラの指揮者としても活躍していた最盛期に急激に発症し、わずか4ヶ月で完全に聴力を失ったこと、その後には器質性精神障害を伴ったことから、最も悲劇的な様相を呈したが、同時に「わが祖国」や「わが生涯より」のような自伝的な不滅の傑作をもたらした。フォーレの場合、初老期における発症で進行も徐々であったため、その影響は表面的にはまだ穏やかで、声部の中音域化やポリフォニー化などをもたらした。3人に共通しているのは、音楽の深化、凝集化、内省化であった。
著者
乘本 秀樹 Hideki NORIMOTO
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.159-167, 2013-03-31

The author previously reported various types of meanings of the things developing in daily consumption life. In this paper, one more type has been found, on the basis of the implications from the actions of kinder garten children. Through the addition of a meaning type, the understanding of human life will be more deepened.
著者
福森 大輝 松浦 均 Fukumori Daiki Matsuura Hitoshi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Social Science, Education, Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.35-45, 2022-07-29

本研究は,コロナ禍での若者の外出行動について,文化的自己観,同調志向,外出時に感じる罪悪感との関係から検討したものである。大学生160 名を対象に2021 年8 月1 日から同年9 月30 日までの期間でどこかに遊びに行ったり旅行に行った回数及び場所,そこに行く際に感じた罪悪感の程度,コロナ不安,コロナに対する意識,文化的自己観と同調志向を尋ねた。分析の結果,「感染不安」と「外出不安」,「相互独立的自己観」において性差が見られた。また,「日常生活不安」と「部活・サークル不安」から外出に対する罪悪感に影響が見られ,「外出不安」と「部活・サークル不安」から外出回数への影響が見られた。他者との関係性を重要視する人は,コロナに感染する不安よりも「周りの人がどう思っているのか分からない」ことや「他の人が自粛する中で自分だけが遊びに出ていることで他者から白い目で見られないか」という他者評価を気にして罪悪感を喚起していることが推測された。一方,規範やルールを重要視する人は,コロナへの態度や感染防止意識の高さが不安の高さに繋がっており,喚起される罪悪感も自身の不安の大きさに影響を受けていた。部活動やサークル活動参加者は,それに充てていた時間が空白になり,その時間の穴埋めや集団とのつながりや成員同士の関係性を保つため,不安や罪悪感を抱えながらも外出を行っていることが示唆された。
著者
丹保 健一 Tanbo Ken-ichi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 人文・社会科学 (ISSN:03899241)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1-12, 1999-03-01

ヨウダが表すとされる「様態」「推量」「伝聞」「婉曲」の意味について考察し、「様態」的なものと「推量」的なものの比重が「時間的空間的心理的」遠近によっていること、「伝聞」に擬似的なものがあること、「婉曲」と呼ばれるものに推量的なものが混在していること等についての指摘をした。
著者
富田 昌平 田中 伸明 松本 昭彦 杉澤 久美子 河内 純子 辻 彰士 湯田 綾乃 松尾 美保奈 松浦 忍 松岡 ちなみ Tomita Shohei Tanaka Nobuaki Matsumoto Akihiko Sugisawa Kumiko kawachi Junko Tsuji Akihito Yuta Ayano Matsuo Mihona Matsuura Shinobu Matsuoka Chinami
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Humanities, Social Science, Education, Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.493-502, 2020-02-28

本研究では,幼稚園のカリキュラムの中にさりげなく埋め込まれている数学的活動に焦点を当て,幼児教育と数学教育という2つの異なる専門的視点から,幼児による経験や学び,実践の意味について分析し考察した。具体的には,幼稚園のクリスマス行事におけるサンタクロースからの贈り物に見られる幼児の分配行動を観察し,その記録を分析の対象とした。3歳児では1対1対応の分離量の分配,4歳児では集合した分離量の分配,5歳児では連続量の分配が課題として与えられた。新しい幼稚園教育要領(2017年3月改訂,2018年4月施行)のもと,「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」の設定に見られるように,幼児教育と小学校教育との円滑な接続はより一層求められている。本稿で取り上げた数学的活動は,10の姿のうちの「数量や図形,標識や文字などへの関心・感覚」に関わるものであり,そこで見られた幼児の姿は小学校以降の算数教育へとつながっていく姿である。本稿では,小学校教育とは異なる幼児教育の独自性について改めて確認するとともに,今後,こうした具体的な姿を小学校側にいかに伝え,つなげていくかがが議論された。
著者
園部 友里恵 Sonobe Yurie
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Humanities, Social Science, Education, Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.517-529, 2021-02-26

本稿では、インプロを用いたワークショップ型の初任者教員研修をオンライン開催としたとき、研修計画および事前試行ワークショップの過程、及び研修当日に何が起こり、いかなる課題が浮上したのかを記述することを目的とした。その結果、インプロワークショップをオンライン型初任者研修として実施することの課題は、「いま、ここにいないこと」、すなわち、ファシリテーター(講師)及び受講者が同じ空間に集い、身体をつきあわせて空間を共有できないことによって生じていることが見出された。今後もオンライン型研修が継続されるのであれば、「いま、ここにいない」からこそ生まれるおもしろさを探究し、それを研修のなかに組み込んでいく必要性があると指摘した。
著者
牧原 義一 西村 拓真 MAKIHARA Yoshikazu NISHIMURA Takuma
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
no.68, pp.9-12, 2017-03-31

上部に方位磁針を取り付けたスタンプを用いて、紙面上に磁界の向きを矢印として押印する「スタンプ式磁界可視化教材」を開発した。また、この教材を用いて、磁石や電流のまわりの磁界を矢印のパターンとして可視化する実験を行った。本稿では、教材の構造、使用方法、実験結果、および教材の有効性と課題について報告する。
著者
北村 京子 菊池 紀彦 Kitamura Kyoko Kikuchi Toshihiko
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Humanities, Social Science, Education, Educational Practice
巻号頁・発行日
no.70, pp.351-355, 2019-01-04

近年、ICTの普及により、学校現場でのICT機器が身近なものになってきた。特別支援教育の中でも、ICTの活用事例は増えている。ところが、学校現場では、機器の不足、授業に使えるソフトウエアやコンテンツの不足、教員自身のICTスキルが不足しているという実状もある。そこで、筆者は今までに研究してきたワンタップ教材を教員が子どもの実態に応じて簡単に教材作成ができるものとして、アプリの開発に着目した。本研究では、特別支援学校において、対象児の習得状況に応じて課題を設定することができ、子ども自身がワンタップの操作で、選択・決定して正解か不正解かを判別できるワンタップ教材アプリ「どーれかな?」を開発した。ワンタップ教材アプリ「どーれかな?」の特徴は以下の3点である。①iPad で撮った写真を素材にして、課題にすることができること、②対象児の習得状況に応じて2択から6択問題まで、選択肢を変更することができること、③課題の流れは、正解すると「〇」の表示とチャイム、不正解すると「×」の表示とブザー音が出る。不正解すると再度同じ課題に戻り、全問正解するとファンファーレや好きな動画が登場する設定ができること、が挙げられる。そして、授業実践を行い、その教材の有用性を検討した。その結果、対象児は、興味関心があるものを答えることができるようになった。
著者
小倉 義雄 中井 英幸 柳川 眞 川村 壽一 Ogura Yoshio Nakai Hideyuki Yanagawa Makoto Kawamura Juichi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.63-77, 1994-03-10

Urinary calculi, as biocrystals, are grouped into several types and named based on their chemical compositions and the mineralogical features. Among them, calcium that contained calculi showed maximum amount. Mineralogical study on calculi both of the calcium oxalate (partly contained uric acid) and magnesium ammonium phosphate have been described and some genetic process are also discussed. Calcium oxalate samples mainly composed of whewellite and amorphous-like substances, lacking in weddellite. Most of the samples can be divided into crust and based on their in ternal structure which is similar to that of marine manganese nodules. The core zone contains several concentric stripes of light and dark materials, showing so-called colloform and zonal structure. Spherulitic structure which is composed of aggregate of needle whewellite crystals were also observed at the boundary between core and crust. Magnesium ammonium phosphate calculi consists struvite and amorphous-like substances. In cross section, it showed banded structure which is composed of alternate zone of two materials. In both calculi, Ca, Mg, P, C and F were detected by EPMA method. Ca content in generally high with uniformly distribution, and some correlation between Ca and other elements such as Mg and P were observed, locally, in the calcium oxalate samples. In magnesium ammonium phosphate calculi, Mg and P were almost uniformly distributed with high concentration. All elements in calculies probably exist as state of very micro particles.生体結晶として、現在尿路結石にはその種類別にいろいろな構成成分、化学式、鉱物名が与えられている。これらの結石類ではカルシウム系成分が最も多く見出されている。本報文では蓚酸カルシウム(一部尿酸を含む)および燐酸マグネシウム・アンモニウム結石に関する鉱物学的性状を検討し、生成過程についても考察している。蓚酸カルシウム結石は非晶質様物質とwhewellite(1水化物)より構成され、weddellite(2水化物)は特定されない。多くは内部が、内核、外核、外殻部に区分される構造を示し、核部の周りにコロフォーム構造、累帯構造、球顆状構造等が顕著である。燐酸マグネシウム・アンモニウム結石は非晶質様物質とstruviteから構成され、内部にはこれらの互層による多重の帯状構造がみられる。EPMAによる元素分析で、両結石ともCa,Mg,P,O,C,Fが検出される。蓚酸カルシウム結石では試料粒全般にCaが高濃度で均一に分布し、部分的にCaと他のP,Mg,Fが相関関係を示す。また燐酸マグネシウムではMg,P全体に均一に高濃度で分布する。これら結石を構成するすべての元素は極めて微細な粒子として含まれている。
著者
北村 京子 菊池 紀彦 Kitamura Kyoko Kikuchi Toshihiko
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Humanities, Social Science, Education, Educational Practice
巻号頁・発行日
no.71, pp.303-307, 2020-02-28

近年、ICTの普及により、学校現場でのICT機器が身近なものになってきた。特別支援教育の中でも、ICTの活用事例は増えている。ところが、学校現場では、機器の不足、授業に使えるソフトウエアやコンテンツの不足、教員自身のICTスキルが不足しているという実状もある。そこで、筆者は今までに研究してきたワンタップ教材を教員が子どもの実態に応じて簡単に教材作成ができるものとして、アプリの開発に着目した。本研究では、特別支援学校において、対象児の言語理解の習得状況に応じて課題を設定することができ、子ども自身がワンタップの操作で、選択・決定して正解か不正解かを判別できるワンタップ教材アプリ「どーれかな?」を開発した。ワンタップ教材アプリ「どーれかな?」の特徴は以下の3点である。①iPadで撮った写真を素材にして、課題にすることができること、②対象児の言語理解の習得状況に応じて2択から6択問題まで、選択肢を変更することができること、③課題の流れは、正解すると「〇」の表示とチャイム、不正解すると「×」の表示とブザー音が出る。不正解すると再度同じ課題に戻り、全問正解するとファンファーレや好きな動画が登場する設定ができること、が挙げられる。対象児の語彙力が高められるように、物の名前や動作を表す言葉、授業の名前などを扱った課題を作成して授業実践を行い、その教材の有用性を検討した。その結果、2名の対象児は、意欲的に言葉を学び、答えることができるようになった。