著者
山守 一徳 YAMAMORI Kazunori
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.23-30, 2018-01-04

日本では、小学校からプログラミング的思考を取り入れた授業を2020年までに展開するように要請されているが、中学校ではプログラミング教育をどのように実施したら良いか悩ましい問題がある。小学校向けにはScratchを利用したプログラミング教育が多く行われ始めており、筆者は、その題材を提供してきているが、中学生向きにはScratch によるプログラミングでなく、もう少し進んだプログラミングを教えた方が良いと考える。そこで、本論文では、中学生向けのJavaScriptプログラミングを提案する。
著者
桑原 克典 新田 貴士 Kuwahara Katsunori Nitta Takashi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.1-29, 2005-03-31

三重大学の新田と名古屋大学の岡田によって汎関数空間上のFourier変換が定式化されたが、そこでの汎関数はƒ:{a:R→R}→Cというものを考えていた。一方、本論文ではdomainが測度空間(M, <special>μ0</special>)の場合、すなわちƒ:{a:M→R}→Cの場合を考えた。そして汎関数空間上のFourier変換を行うために、新田・岡田の理論にしたがって2回の拡大を用いるが、新田・岡田の2回の拡大がどんな*Nの無限大数よりも大きいような<special>☆(*N)</special>の無限大数の存在を保証するために、特殊なフィルターを用いていたのに対し、ここでは自然数全体の集合上のフレシェ・フィルターを含む超フィルターを用いる一般的な2回の拡大で議論を行った。そしてその結果、新田・岡田の場合と同様の結果が得られた。また、本論文は3つの章から構成されており、第1章では超準解析の議論に必要な事を簡単に述べ、第2章では超準解析の応用として知られているローブ測度空間とルベーグ測度空間の対応について、結果のみ述べる。そして最後の第3章では、本論文の題名にもなっている一般の汎関数空間上のFourier変換、但しdomainが測度空間の場合について述べる。
著者
和田 崇 WADA Takashi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.99-108, 2016-03-22

本稿は、現行の筑摩書房の国語教科書(高校一年生用)に収録された南木佳士の短編小説「急須」を分析した作品論である。同社の作成した『指導書』によると、この小説の主題は、青少年期の苦悩を背景として主人公が「自分の生き方を発見するという成長の物語」であり、それを読み取るためには、作中に登場する「お茶屋の主人」と、彼が愛好する芥川龍之介の小説が象徴する意味を考察する必要がある。しかし、テクストを精緻に分析すると、お茶屋の主人は主人公の「成長」に対しそれほど重要な役割を果たしていないと考えられる。本稿では、テクストに描かれていない主人公の空白の時間を復元し、彼の苦悩の所在を具体化した上で、人称を用いず過去の自己について語る特殊な語り手の機能に着目し、現在と過去との間で二重に交錯する主人公の内面の変化を解析することで、「急須」におけるお茶屋の主人の役割を明らかにした。
著者
脇田 裕久
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
no.36, pp.p149-157, 1985

本実験は、被検者に剣道の中段の構えにおける竹刀保持を橈側手根屈筋群による条件(母指条件)と尺側手根屈筋群による条件(子指条件)の2条件を指示し、光刺激に対してできるだけ素早く一歩踏み込んで打込台を打撃させ、竹刀の保持方法の違いによる打撃動作の影響を比較・検討した。筋電図は、上腕二頭筋、上腕三頭筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋を被検筋として、表面双極導出法を用いて記録し、動作開始時間、振り上げ時間、振り下し時間を計測した。また、打込台には荷重計を設置し、打撃圧の鉛直分力を検出するとともに、被検者の右方から16mm映画撮影法を用いて、動作分析を行った。本実験結果は、次のようである。 1)経験者群における動作開始時間は、母指条件で503ms、小指条件で481ms、振り上げ時間は、それぞれ240msと235ms、振り下し時間は212msと205msであり、母指条件に比較して小指条件の振り下し時間は有意に短縮した値を示した(P<0.05)。未経験者群の値は、それぞれ256msと267ms、301msと354ms、267msと236msであり、振り上げ時間は、母指条件より小指条件が有意に遅延した値を示した(P<0.05)。 2)経験者群における竹刀の打撃速度は、母指条件で16.7m/s、小指条件で16.5m/s、打撃力はそれぞれ36.8kgと38.4kgであり、未経験者群の値は、それぞれ18.7m/sと18.9m/s、63.3kgと58.3kgであり、各群の両条件間にはいずれも有意な差が認められなかった。 3)経験者群の各局面における関節角度は、母指条件に比較して小指条件が、中段の構えで肩関節の屈曲が有意に小さく(P<0.01)、肘関節の屈曲と手関節の内転が有意に大きく(各P<0.01)、竹刀最高位で肩関節の屈曲が有意に小さく(P<0.01)、打撃時で手関節の内転が有意に大きかった(P<0.01)。未経験者の中段の構えと竹刀最高位における関節角度には、両条件間に有意な差は認められなかったが、打撃時では母指条件に比較して小指条件が肩関節の屈曲が有意に大きく(P<0.01)、肘関節の屈曲が有意に小さかった(P<0.05)。 4)経験者群の振り上げ動作における関節角度変化は、母指条件に比較して小指条件では肘・手関節の角度変化が有意に小さく(各P<0.01)、振り下し動作では肩、手関節の角度変化が有意に大きかった(各P<0.01、P<0.05)。未経験者群の振り上げ動作については、母指条件に比較して小指条件では肘関節の角度変化が有意に小さく(P<0.05)、振り下し動作には両条件間に有意な差が認められなかった。 これらの結果は、打撃動作の未熟な未経験者群では、竹刀保持方法の違いにともなう打撃動作への顕著な影響が観察されなかったが、経験者群では、尺側手根屈筋群で竹刀を保持することが、橈側手根屈筋群での竹刀保持に比較して、振り上げ動作を小さくしてその時間を短縮し、大きな振り下し動作を短時間で遂行することによって、竹刀の打撃速度および打撃力の増大に貢献していることを示唆するものである。
著者
正田 良 Showder Rio
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.201-210, 2005-03-31

明治・大正期に義務教育ではないにしても、現在の中等教育の原型とも言えるものが形成される。しかし、数学の幾何に関しては、男女差が甚だしく、不当な性差別が行われていた。その一方で、師範学校女子部では時代を経るにつれて、師範学校男子部との差が軽減されていく。この様子を、時間数や教育内容に関して、教育課程を調べ、また、教科書の緒言などの論調に関しても言及する。この男子に比べて劣るといえる条件の中にも、教科書に見られる教育的な工夫が為される余地があったこと、つまり、新しい工夫の実験の場としての可能性を秘めていたことを指摘する。
著者
佐藤 岬平 大日方 真史 Sato Kohei Obinata Masafumi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = Bulletin of the Faculty of Education, Mie University. Natural Science, Humanities, Social Science, Education, Educational Practice
巻号頁・発行日
vol.70, pp.285-299, 2019-01-04

本稿の目的は、シティズンシップ教育を労働・貧困問題から問い直し、「社会的シティズンシップ教育」というかたちでシティズンシップ教育を再検討することである。シティズンシップ教育(主権者教育)というと多くは「政治的」な問題(模擬投票や模擬裁判など)を扱うものと思われようが、本稿では「社会的」な問題(労働・貧困問題)からシティズンシップ教育を考えてみたい。シティズンシップを歴史的に検討してみると、「政治的シティズンシップ」と「社会的シティズンシップ」に分けることができる。そして、現在では「社会的シティズンシップ」は後景に退き、主権者教育というかたちで「政治的シティズンシップ」が注目されている。しかし、「非正規雇用の拡大」や「子どもの貧困」が問題となるなかで、学校教育においてこれらの問題にいかに取り組んでいくかがいま改めて問われている。本稿では、政治的なシティズンシップ教育とは別の方向性として、「社会的シティズンシップ教育」を示すことにする。この「社会的シティズンシップ教育」として、高校における2つの実践、「アルバイトの雇用契約書をもらってみる」実践と「貧困をテーマにした文化祭」実践を取り上げる。これらは、労働・貧困問題から出発して、その問題を公共性の次元に引き上げながら、政治的に覚醒させる実践となっているのである。
著者
後藤 淳子 廣岡 秀一
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 教育科学 (ISSN:0389925X)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.145-158, 2003

本研究は、1978年に作成されたMHF-scaleを約20年後の大学生に実施することによって現代の大学生の性役割に対する認知を検討し、加えて、約20年間における大学生の性役割態度の変化を検討しようとしたものである。性役割特性語の認知構造を数量化III類を用いて検討したところ、男性性、女性性を弁別する軸と、性的なものと非性的なものを弁別する軸がみられた。また、各特性語を評価次元間の被選択率の差の検定によって、M、H、F項目のいずれと認知されているかを検討したところ、従来Masculinityとみなされていた「指導力のある」、「自己主張できる」、Feminityとされていた「言葉遺いの丁寧な」がHumanitいこ、Humanityとみなされていた「明るい」、「暖かい」、「率直な」がFeminityに移動した。これにより男女の役割が近づき、女性役割は以前よりも社会的に望ましいものへと変化したといえる。大学生の性役割態度は20年前と大きな変化は見られなかった。ただし、女性役割期待の変化に伴い、女子は女性役割を以前よりは受容できるようになってきたと考えられるが、まだまだ周囲からの役割期待との狭間で役割葛藤に陥っている傾向がみられた。また、男性役割期待は女性役割期待に比べて強固なステレオタイプが保たれており、今後は男性も性役割との間で葛藤を感じる可能性が示唆された。論文
著者
鶴原 清志 米川 直樹 日夏 理雄 ツルハラ キヨシ ヨネカワ ナオキ ヒナツ ミチオ TSURUHARA Kiyoshi YONEKAWA Naoki HINATSU Michio
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 教育科学 (ISSN:0389925X)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.23-31, 2003-03-31

An opinion survey was conducted among specialists in sports psychology to determine the relationship between mental training (MT) and sports counseling (SC). One hundred thirty members of the Japanese Society of Sports Psychology were sent questionnaires from the purpose of the survey, from whom 72 completed questionnaires were received - a collection rate of 55.4%. The questionnaires was open ended allowing free responses, such as the question, "What do you think about the relationship between mental training and sports counseling ? ". Responses were classified into five categories and the related content examined. As a result, common understanding among specialists was not obtained about the relationship between MT and SC though the ratio of answers of the category "MT and SC were different" was highest (35. 1%). Thus work may be needed to clarify the role of MT and SC in sports programs, determine their actual utilization, and devise program that enhance mental training of athletes through sports counseling or other means.
著者
伊藤 暢浩 岡野 昇 山本 俊彦 加納 岳拓 Ito Nobuhiro Okano Noboru Yamamoto Toshihiko Kano Takahiro
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.155-166, 2010

本稿では、まず小学校体育における「体力を高める運動」にかかわり、最近の実践報告や研究動向から、「体力を高める運動」の問題を浮き彫りにした。そこでは、「体力を高める運動」の実践報告はきわめて少なく、教材の開発もあまり進められていないことが明らかになった。また、その背景には小学生には受けいれられにくいとされる必要充足機能が強調されており、その内容はトレーニング的で量的な体力を問題にする数値主義に基づき、自己の体力の高まりに着目した個人主義的な立場から「体力を高める運動」が位置づけられていることが明らかになった。加えて、最近の研究では、「体力を高める運動」の運動の特性、学習観、身体観といった枠組みから展開されていることが明らかになったが、実際にどのように運動の内容構成を行っていけばよいのかという教材開発の提示までには至っていないことが浮き彫りとなった。そこで、「体力を高める運動」における、①運動特性の捉え方、②学習観の捉え方、③身体観の捉え方の三点について検討した結果、運動の特性は欲求充足機能を前面に取り上げながら、結果として必要充足機能に結びつけるという表裏一体のものとして捉えることが肝要であると述べた。また、学習観は個人主義的な学習観から関係主義的な学習観へシフトすることが重要であると述べ、身体観は一人称的・三人称的身体から二人称的身体へと転換することで、新たな体育教育をひらく可能性があると考察した。こうした視点を持ちながら、「体力を高める運動」の新たな内容構成に基づく教材開発を行った結果、欲求充足と必要充足の機能の両方を重視しながら教材を作成するために、カード(A6版)形式を採用し、カードの表面には欲求充足の観点が分かるように、「運動の中心的なおもしろさ」をイラストと文章で表記し、カードの裏面には体力の四つの要素(体の柔らかさ・巧みな動き・動きを持続する能力・力強い動きを高めるための運動)のどれと結びついているかという観点で示した。また、仲間と共に楽しみながら行える運動を行うことができるという観点から30の運動を選定し、仲間に働きかけたり、仲間から働きかけられたりすることにより生まれる世界を大切にする二人称的な身体から運動を取り上げた。
著者
上垣 渉 田中 伸明 Uegaki Wataru Tanaka Nobuaki
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.185-196, 2009

In the time after World War II, Japanese Education was under the control of Civil Information & Education Section (CI & E) of General Headquarters / Supreme Commander for the Allied Powers (GHQ / SCAP). The CI & E decided that Japanese new upper secondary education should have a broader focus and comprehensive curriculum. On September 27th 1946, a final tentative curriculum of elementary and secondary education in Japan was agreed upon between the Ministry of Education of Japan (Mombusho) and CI & E. In this plan, mathematics courses of upper secondary level were deemed elective. Wada Yoshinobu (Chief of mathematics course of study committee) was concerned that mathematics was "elective" and claimed that it should be "compulsory". This thesis clarifies the argument for additional years of compulsory mathematics by using GHQ / SCAP's estricted documents.
著者
鏡味 明克 Kagami Akikatsu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 人文・社会科学 (ISSN:03899241)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1-10, 1988-02-27

北勢地方では、その名古屋方面への交通の至便さから名古屋への通勤通学者が激増している。京阪式アクセントの桑名市からアクセント体系の異なる名古屋(東京式アクセント)へ高校通学した青年層のアクセントがどう変化したかを調査した。あわせて隣接の長島町(東京式)から同県内のアクセント体系の異なる桑名市へ通学した場合、長島町から同じアクセント体系の県外名古屋方面へ通学した場合はどうか、の比較を加え、アクセント境界地域で境界を越えて通学する青年層の言語変化の動態をとらえることを目指した。
著者
南 学 MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.171-178, 2015-03-31

本研究では、現代の若者がもつ幸福観と価値観との関連から現代の「幸せな若者」(古市,2011)について明らかにすることを目的として検討を行った。結果は、「主観的幸福感」と「くつろぎ追求」とは有意な相関が見られず、「将来無関心」とも相関はなかった。また、幸福観によって若者を3群に分けたところ、「幸せな若者」像に近い「現状満足群」よりもすべてのことを追求する若者像である「全追求群」のほうが、「主観的幸福感」が高いことが見出された。これらの結果から、「幸せな若者」像はすべての若者にあてはまるものではないこと、「幸せな若者」の幸福感がとくに高いわけではないことが見出され、古市(2011)が提唱した若者の価値観の傾向と幸福感を結びつけた「幸せな若者」論は実証性に欠けることが示唆された。
著者
荻原 彰 人見 久城 OGIHARA Akira HITOMI Hisaki
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.245-255, 2016-03-22

The University of Delaware (UD) is recognized as a center of Problem-Based Learning (PBL) in the U.S.A. Typically, PBL involves three-stage problem solving. Initially, a problem is presented to students, who then discuss along with learning issues, and report the results. The students then discuss the first problem again, and a second problem is presented. The process then proceeds in the same way to a third problem. Good PBL problems are the key to success of PBL. Problems should motivate students to gain a deep understanding, arrive at judgements based on facts and logic, and promote cooperation among students. The First problem should be open-ended and the content objectives should be incorporated into problems. At the UD, ingenious attempts have been made to promote PBL in groups. For example, setting ground rules to prevent "free riders", specifying the roles of group members, systems for mutual evaluation, peer facilitation, and combinations of group discussion and mini-lectures. The success of PBL at the UD is attributable to a bottom-up approach, sound administrative support and faculty development. The tasks remaining for PBL at the UD include how to cope with the extra load on the faculty, and students feel alienated from PBL.