著者
戸田 真紀子 バイセンゲ フォーチュネ
出版者
京都女子大学
雑誌
現代社会研究科論集 = Contemporary society bulletin : 京都女子大学大学院現代社会研究科博士後期課程研究紀要 (ISSN:18820921)
巻号頁・発行日
no.14, pp.29-43, 2020-03

The purpose of this study is to examine whether the high level of women's representation in politics contributes to change the patriarchal values in societies of Rwanda and Japan. There are many works on women's representation in parliament, but most studies focused on the causes of their under-representation. Also, most of the case studies have been conducted inside the Western context. With face to face interviews with female Parliamentarians in Rwanda and Japan, the study revealed positive effects of female political representation on patriarchal values. Although Rwandan society is still patriarchal, the increased number of female MPs in the Lower House contributed to the change in laws underpinning patriarchal norms (especially with regard to women's access and control over property, education and gender-based violence), and changed the community's attitude toward women's ability and leadership skills. As the Japanese society does not have a quota system yet, the presence of women in Lower House is very low and this facilitate the society in maintaining patriarchal values unchanged. Furthermore, the findings of this study demonstrate that state's political commitment and women's political organization in Rwanda have been at the base of these achievements.
著者
Pope Chris G.
出版者
京都女子大学
雑誌
現代社会研究科論集 : 京都女子大学大学院現代社会研究科紀要 (ISSN:18820921)
巻号頁・発行日
no.14, pp.87-113, 2020-03-15

A wide range of research points towards a perfect storm of crises in the global political economy, unprecedented both in scale and urgency, that signals the unravelling of the current neoliberal world order. In its place we see a broad scope of political ideology returning to the fore of mainstream politics, most particularly the extreme-right and Fascism, across developed and developing countries alike. This paper argues that to avoid existential catastrophe, pathologies must be suitably identified, understood and addressed in a post-Recession global settlement. To do so, the article identifies and outlines the points of interconnectivity between three major existential crises in global finance, the global socioecological systems, and international labour/migration. Following this, the article examines the effectiveness of two holistic approaches to addressing these crises: the United Nations Sustainable Development Goals and the Green New Deal, before examining the possible nature of a new global settlement that might scale-up efforts to realizing a sustainable political economy before it is too late to respond. 現在の新自由主義的世界秩序の崩壊に繋がるリスクが複数の危機にあるということは、広範囲で様々な研究に主張されている。加えて、機能不全で不安定な世界政治経済体制における複数のリスクが組み合わせらており、人類文明の生存に対してリスクが高くて不確実な状況が迫りつつある。新自由主義の不正当化により、極右のファシズムといったような、過去にあった非常に危険な政治的イデイォロギーが、世界各地に現れて現状の政治的な主流に挑戦している。崩壊を回避するために、これらの危機に関する適切な診断と処方箋が必要であり、これによって新たな政治経済体制を構築すべきということは本研究の主張である。かくて、本研究は国際金融界、世界の社会・生態的システム及び国際労働と移民における3つの危機間の相互連鎖的な関係を解明し、国連持続可能開発目標(UN Sustainable Development Goals)とグリーン・ニュー・ディール(Green New Deal)である、崩壊を防ぐための総合的な対策の2 つを取り上げて、それぞれの計画の効果性を検討する。すると、持続可能な政治経済システムに対する迅速な転換の実現を加速させるための国際政治経済体制の改革のあり方を講じる。
著者
戸田 真紀子
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

伝統的な家父長制社会において、クオータ制導入による女性議員の増加が社会に与える影響の有無、大小を調査し、社会の価値観に変化がみられる場合はそのメカニズムを明らかにすることが本研究の目的である。事例として、女性議員比率世界一のルワンダと、戦前から女性解放運動がありながら、いまだに家父長制社会が制度的にも肯定され、家制度が温存され、女性議員比率が低迷している日本を比較している。研究2年目となる2018年度は、日本側とルワンダ側双方で研究が進んだ。まず、日本側は研究代表者である戸田による女性議員へのインタビューがルワンダ側と比較できる数まで進んだ。また、資料収集にも進展があった。ルワンダ側も、現地の研究協力者であるプロテスタント人文・社会科学大学のジョセフィン先生とフォーチュネ先生による女性議員へのインタビュー調査が完了した(インタビューにかかる費用が見積もり予算よりはるかに多く、予算内に収めるために、インタビューができた女性議員の数は予定よりも少なくなっている)。戸田が8月にルワンダに渡航し、現地で、両先生から詳細な説明を受け、疑問点についての解説を得た。予算の関係上、日本には1名の先生しか招聘できないが、両先生とも、現地社会の諸問題についても独自に調査をしておられるので、その知見も来年度の学会報告に生かせることに確信が持てた。現地では、2019年度の学会報告に向けての打ち合わせに加えて、1名の先生を日本に招聘するための査証申請の準備も行った。
著者
正木 大貴
出版者
京都女子大学
雑誌
現代社会研究科論集 = Contemporary society bulletin : 京都女子大学大学院現代社会研究科博士後期課程研究紀要 (ISSN:18820921)
巻号頁・発行日
no.13, pp.123-136, 2019-03

The SNS has made a quantum leap of progress, the possibility of connecting people with others has spread. At the same time, we were also faced with difficulties in communication. The purpose of this paper is to clarify how the evolution of SNS and the way of human relations are affected. SNS is also used to maintain existing human relationships in addition to connecting with new people. Unlike a real human relationship, SNS is because we can communicate comfortably without being deeply involved with other parties. Nowadays, a superficial human relationship that avoids the risk of injuring or being hurt the opponent is required. This kind of "safe" relationship has advantages and disadvantages, and SNS has minimized its disadvantages. Because the negative side of SNS is not a strong connection, it is a point that it is necessary to obtain approval over and over again. Since "Like" function complements it, we can recognize each other by exchanging, so to speak, "light" approval. In addition, this "light" approval such as SNS has an influence on the diversified present interpersonal relationship. The "diversity" that we now acknowledge is not something that has been achieved in a deep understanding of each other, but also allows others to feel recognized.
著者
湯沢 質幸 沼本 克明 小倉 肇 清水 史 二戸 麻砂彦 岡島 昭浩 佐々木 勇 肥爪 周二 蒋 垂東
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

成果の中心は次の4点にまとめられる。(1) 既に実験的に研究開発し終えた、日本漢字音データベース(大字音表)の根幹となるソフト及びデータについて、それが実用に十分耐えうるかどうかを実践形式を取り入れて検証したこと。(2)((1)を踏まえて)実用に耐えうるソフトの完成度を高めるとともに、それにのっとって日本漢字音研究における基礎中の基礎となる韻鏡データを実用に耐えうるまでに再構築し、一定の完成度に達したデータベースを作成したこと。(3) 将来における大字音表の発展・拡充を目指した基礎的な調査、研究作業を行うことができたこと。すなわち、近い将来における大字音表への複数資料の字音データ掲載を目指して一部資料について日本漢字音の整理を行えたこと。また、同様に、日本漢字音資料の発掘や調査、及び研究を行えたこと。(4) 国内外の漢字音研究者の研究の便宜を図って、実用に耐えうる『韻鏡』データを載せた日本漢字音データベースをインターネット上に公開したこと。
著者
江口 聡
出版者
京都女子大学
雑誌
現代社会研究科論集 : 京都女子大学大学院現代社会研究科博士後期課程研究紀要 (ISSN:18820921)
巻号頁・発行日
no.8, pp.75-89, 2014-03-15

倫理学における「幸福」をめぐる難問を概観したのちに、2000年代以降心理学・経済学の分野で大きな関心を集めている幸福の心理学から倫理学者は何を学ぶことができるかを考察する。
著者
西尾 久美子
出版者
京都女子大学
雑誌
現代社会研究科論集 = Contemporary society bulletin : 京都女子大学大学院現代社会研究科博士後期課程研究紀要 (ISSN:18820921)
巻号頁・発行日
no.12, pp.107-122, 2018-03

This study is intended as a social scientific investigation for as to why in Japanese-style entertainment industry, Kyoto Geisha districts, The Takarazuka opera and AKB48, have maintained their high quality performances and survived to this day, with a focus on the structure of human resources development and business system. With a view towards examining more heuristic facts based on data, I found three peculiarity common points to those cases. 1. The entertainers of those entertainments have adequate opportunities to prove themselves. 2. Those entertainments have function as to create customer relationship, so that entertainers develop their career through the relationship. 3. Those opportunities work as like as an evaluation information system.
著者
竹安 栄子 春日 雅司 春日 雅司 窪田 好男 竹安 栄子
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.研究目的・なぜ地方議員を研究対象とするのか近年、女性議員の割合が増加してきたとはいえ、諸外国と比較すると極端な女性の政治的過少代表という状況に変わりはない。本研究は、(1)わが国の女性の政治的過少代表を生み出す構造的・制度的要因ならびに環境的・社会的要因を解明すること、(2)女性議員と男性議員の間に差異があるのかどうか、もしあるとすればどのような差異かを実証的に解明することを目的とする。先進諸国では、選挙制度が同じであるとするなら、女性の政治参画は地域政治レベルから国政レベルに進展すると報告されている。しかしわが国では、地方議会レベルの女性議員率が国政レベルよりも低いという状況である。本研究は、女性の政治参画が容易であると想定される地域政治レベルで女性議員の進出が進まない背景には、日本の地域社会特有の要因がある、という仮説の下に地方議員に着目した。2.調査方法とその経過(1)調査対象:全国の都道府県議会・市町村議会・東京23区区議会の議員。(2)調査期間:平成14年2月〜4月(この期間後返送された調査票も有効数に加えた)(3)調査方法:郵送法(議会事務局宛に調査票を送付し、事務局を通じて配布。回答は直接郵便で返送。)(4)発送総数と回収総数(率):発送総数62,025、回収数(率)17,062(27.5%、男性議員92.3%、女性議員7.7%)3.総括全国地方議員調査結果より得られた知見から、男性議員と女性議員の間に様々な差異が存在することが明らかとなった。以下、選挙資源の問題と代表者選出の公平性の2点に絞って記す。(1)政党の遺憾を問わず、男女議員ともに地域社会が集票に大きな役割を果たすと認識していた。男性議員は出生地と選挙区が一致する議員の割合が高いが、女性議員は顕著に少ない。これは男性議員にとっては地域社会との関係が生得的資源として集票に活用されるが、女性議員は自らの能力で支援・支持団体を獲得する必要があった。(2)男性議員と女性議員の間に、政党の違いを超えて、出身階層・学歴・職業・問題関心・政治家としての活動等多数の項目で差異があることが明らかになった。したがって女性の過少代表は、代表者選出の公平性を揺るがす問題であることが実証された。
著者
川本 重雄 福田 美穂 福田 美穂 CHO Jaemo PHAN Thanh Hai
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本の宮殿建築の特徴を、そこで開かれた儀式の歴史的変化やアジアの宮殿儀式との比較により解明することを目的として研究を実施した。日本の宮殿儀式が儀式の性格に応じて、大極殿院、豊楽院、武徳殿、内裏、神泉苑を使い分けていたことにまず特徴があること、一方で内裏にそうした儀式が収斂していく傾向も早くからあり、それが内裏正殿である紫宸殿の空間や清凉殿の使い方に強い影響を与えていることなどが明らかにできた。また、古代の宮殿儀式を見ると、中国の影響はあるものの、韓国王朝やベトナムのグェン王朝とは異なり、日本的な要素が実はかなり強いことが確認できた。
著者
母利 美和 秋元 せき 岩城 卓二 梅田 千尋 笹部 昌利
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近世中後期の上方地域支配において、譜代藩である淀稲葉家が果たした役割について、基礎的研究を進めるため、旧藩士家に伝存する古文書を中心に史料調査・収集をおこなった。そのため、淀藩稲葉家および旧藩士家に関する史料の全体像把握をおこなうとともに、新たに旧淀藩士の上月家文書2180点、高野瀬家文書257点、竹林家文書257点の調査と全史料の目録化をおこなった。これらの成果により、藩政機構の基礎構造、家臣団の軍制・家格・職制の関係分析をおこない、淀藩の負担する京都火消・京都警衛などの幕府軍役の実態などを明らかにした。