著者
伊代田 岳史 本名 英理香
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.113-122, 2017 (Released:2017-11-15)
参考文献数
9
被引用文献数
1

実構造物の炭酸化の進行は,使用するセメントや材料,配(調)合に代表される材料要因および立地環境である温度・湿度や炭酸ガス濃度と雨掛りなどの環境要因が大きく影響することは知られている。本研究では,特に高炉セメントを用いて建設され50年程度経過した構造物の中性化速度を促進中性化試験結果と比較して,環境の影響を整理した。加えて化学分析を使用して高炉コンクリートの炭酸化進行メカニズムについて検討を加えた。その結果,炭酸化の進行には雨掛りの影響が著しく大きいこと,pHと炭酸カルシウムの生成には関係が認められること,環境ごとに炭酸化の進行メカニズムが異なることなどが明らかとなった。
著者
石川 靖晃 伊藤 睦 荒畑 智志 河合 真樹 原 健悟
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.172-180, 2015
被引用文献数
1

打込み直後から補修・補強を含めた供用期間終了までのコンクリート構造物の保有耐荷性能を合理的にシミュレート可能な「コンクリート構造物建設工程シミュレータ」の開発が,LECOM研究会で10年間にわたって行われてきた。本稿では,本シミュレータの開発過程で得られた主な成果を紹介する。本シミュレータでは,従来別々であった初期損傷と保有耐荷力を計算するための解析コードを合理的に融合することに成功している。また,総エネルギー一定則の概念を導入することにより,化学変化による体積変化現象について従来の解析コードよりも汎用的にシミュレート可能である。加えて,パイプクーリング解析機能も従来のものに比べ,より強化されている。
著者
横山 勇気 細田 暁
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.71-78, 2017 (Released:2017-09-15)
参考文献数
13

測定面の角度が表面吸水試験へ及ぼす影響は明らかではなく,コンクリートの表層品質を適切に判定できない可能性がある。そこで本研究では,表面吸水試験の正確な測定を乱す要因の影響を明らかにし,それらの影響を可能な限り排除した条件で角度の影響を検討した。その結果,コンクリートの含水率,水温と試験機材の温度差,吸水カップのゴムスポンジのクリープ変形が正確な測定を乱す要因であることを確認した。これらの要因による影響を可能な限り低減させた条件にて検討した結果,10分時点での表面吸水速度と10分間の総吸水量に着目し,t検定により測定面の角度が表面吸水試験に及ぼす影響はないことを明らかにした。
著者
清水 栄二 安藤 龍彦 北島 崇雄 伊勢 寿一
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.32-39, 1986

瀬戸内海の大型埋立護岸建設工事において, 特殊水中コンクリートの本格的な海上施工を行った。工事は沖合い1km, 水深5~7mの場所に, 長さ86m, 幅8m, 高さ2m, の基礎コンクリートを打設したものである。施工は, 現地の海上にコンクリートポンプとトレミーを取り付けた台船を固定し, 陸上プラントで製造した生コンクリートを生コン車ごとフェリー台船で海上輸送する方法で行った。コンクリートの品質管理はフレッシュコンクリートのフロー値及び水中作製の供試体の硬化後の圧縮強度で行い, 強度及びコンクリートの仕上り天端の平坦性は予定どおりの結果を得た。また, 本工事の施工により次のことが明らかになった。(1)トレミーにコンクリートポンプのホースを直結した打設方式により, コンクリートの打設能率が従来方式の1.5倍になった。(2)ネット型わくの使用により, 現地作業の大幅な工期短縮と, ネット型わくの実用性が証明された。
著者
日下部 昭彦 小野口 博之 吉川 太郎
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.10_41-10_46, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
2
被引用文献数
1

東海道新幹線東京駅高架橋改築工事は営業列車を通常運行させながら,多層多径間ラーメン高架橋の部分的な改築を130mにわたりアンダーピニング工法により実施した工事である。本工事は過去に東海道新幹線で実施されたアンダーピニング工法と比較して最も規模が大きく,かつ難度の高いものであり,平成21年2~3月に鋼製橋脚への仮受替え,平成22年5~6月に本設構造物への受替えを無事実施した。本稿ではその工事内容を報告する。
著者
中島朋子 宮里心一
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学年次大会2017(仙台)
巻号頁・発行日
2017-06-13

近年,耐食性に優れるステンレス鉄筋が注目され始めている。ここで,引張により鋼材に応力が負荷された場合,負荷されていない状態とは腐食特性が異なる可能性も考えられるが,それを検討した事例は少ない。そこで本研究では,3水準の引張履歴が付与された3種類のステンレス鉄筋を対象に,溶液中およびモルタル中における腐食特性を,アノード分極曲線,マクロセル電流密度,およびミクロセル電流密度により評価した。その結果,引張履歴を有するステンレス鉄筋と有さないステンレス鉄筋では同様に,腐食電流が流れにくく,耐食性は高いことを明らかにした。
著者
神田利之 鈴木真 樅山好幸 東山浩士
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学年次大会2017(仙台)
巻号頁・発行日
2017-06-13

上面増厚工法により補修されたRC床版において,既設床版部と増厚床版部との境界層に水平ひび割れが生じ,再劣化した事例が多数報告されている。著者らは,この劣化したRC床版の補修工法として,水平ひび割れ部を洗浄した後,接着材を注入して再一体化を図る工法を開発してきた。本補修工法を実施するにあたり,水平ひび割れ層内の洗浄が不十分な状態のまま接着材を注入する場合も想定される。そこで,すり磨き粉が残存した状態を想定した場合の耐疲労性について検討した結果,疲労試験結果のばらつきや既設床版のコンクリート強度,接着面積率,交通荷重等の影響が疲労寿命の推定に影響することがわかった。
著者
山内守 野口光明 藤井隆史 綾野克紀
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学年次大会2017(仙台)
巻号頁・発行日
2017-06-13

本研究では,高炉スラグ細骨材を用いたコンクリートの凍結融解抵抗性に,蒸気養生,高炉スラグ微粉末および増粘剤が与える影響を検討した。細骨材に高炉スラグ細骨材を用いれば,AE剤を用いることなく高い凍結融解抵抗性が得られるが,製造方法によって高炉スラグ細骨材の効果が異なる。本論文では,普通ポルトランドセメントのみを用いた場合には,蒸気養生によって凍結融解抵抗性が低下し,結合材の一部に高炉スラグ微粉末を用いれば,反対に,蒸気養生によって凍結融解抵抗性が向上することを示した。また,増粘剤を用いることで,短い水中養生期間で高い凍結融解抵抗性が得られることを示した。
著者
渡邉賢三 小林聖 吉田裕麻 細田暁
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学年次大会2017(仙台)
巻号頁・発行日
2017-06-13

コンクリート構造物の表層部分を合理的に評価する手法として目視調査に基づいた評価手法に着目し,この手法を主軸に施工のPDCAサイクルを回して品質向上を図ることを提案している。本手法を約1.8kmのボックスカルバートの施工に導入し,構造物の壁,柱を対象にコンクリート表層品質の改善を継続的に試みた。その結果,目視評価の結果をふまえて具体的な改善を行うことが表層品質の確保,向上に繋がることを実際の施工で実証した。
著者
高畑東志明 橋本和明 林和彦 石田哲也
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学年次大会2017(仙台)
巻号頁・発行日
2017-06-13

本研究では,第三者被害対策として行っている赤外線調査の熱画像データにより,コンクリート構造物である橋梁の劣化特性や進行性に影響を及ぼす因子を把握し,維持管理の効率化に活用することを目的とする。赤外線サーモグラフィ法により得られた熱画像の定量情報に対して生存時間解析による定量分析を行った結果,初期欠陥が存在する箇所はコンクリート表層部の物質移動抵抗性が低いため,健全部とは劣化進行が異なり早期に劣化することを示した。本分析結果は,施工時の品質管理の重要性を示唆するものであり,維持管理においては補修計画策定時の基礎資料として予防保全に寄与するものである。