著者
橋山 富樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.736-738, 1999-11-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
1

国内外で高い評価を得ているカルシウム拮抗薬, ジルチアゼム(ヘルベッサー[○!R])の開発研究の動機と経緯について概説する。さらに, 1, 5-ベンゾチアゼピン誘導体と冠血管拡張作用との構造活性相関について説明する。つぎに, ジルチアゼムの従来の工業的合成法とその問題点について論ずる。問題解決のためには, エポキシドの開裂様式に関して, いままでの常識を打破した反応を開発しなければならなかった。鋭意努力の結果, スズ触媒反応を見いだし, 問題を解決することができ, その反応機構も明らかにすることができた。
著者
高田 泰英
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.774-777, 2001-12-20 (Released:2017-07-11)

「理科離れ」が子供を中心に社会全体に広がっている今日, 理科の教師に課せられた役割の一つに, 理科を通した社会貢献があげられる。兵庫県では, 理科の啓蒙活動をさかんに行っている。その主たるものが, 地元神戸新聞に連載している「理科の散歩道」である。このコラムでは, 身の回りの理科的現象をやさしく解説し, 理科を身近なものにする試みがなされている。また, 理科を好きな中・高校生を育成する目的で, 現在の「青少年のための科学の祭典」を, 中・高校生を中心とした「青少年による科学の祭典」とする取り組みもなされている。
著者
濱島 義隆 山下 賢二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.258-261, 2022-05-20 (Released:2023-05-01)
参考文献数
7

鏡に映った自身の鏡像は,どう回転させても実像とは重ね合わせることができないという性質をキラリティというが,分子の世界にもキラリティは存在する。すなわち,実像の分子構造とは鏡像関係にある分子構造をもった,いわゆる鏡像異性体と呼ばれる分子が存在する。本稿では,キラリティをもつ分子が“くすり”として用いられた際に,そのキラリティの違いが人体にもたらす影響について具体例を交えながら概説する。
著者
野田 徹郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.400-405, 2016-08-20 (Released:2017-02-01)
参考文献数
7

大分県で地熱発電が盛んなのは地熱資源が豊富だからである。地熱資源の化学成分や同位体の組成は,水の起源が天水であり,地下に浸透した天水が火山活動と岩石との反応を被ってもたらされたものであり,その解析により地熱資源の形成過程を知ることができる。この地熱資源の探査にも化学成分は有効であり,地化学温度計は有効な定量的指標の一つである。地熱発電を持続的に行うためにも化学の情報は重要であり,化学的な処理によりトラブルを軽減することができる。また,温泉など環境への影響を回避するための考察にも役立つ。
著者
山本 美桜 日野 志朗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.558-559, 2019-11-20 (Released:2020-11-01)
参考文献数
5

紀元前からある砂糖は,料理やお菓子などに用いられており,人々の生活には必須の存在である。サトウキビやテンサイを原料として砂糖はつくられる。様々な種類の砂糖があるのは日本特有であり,それぞれの特性を活かして様々な料理やスイーツに用いられている。また,砂糖には親水性など様々な機能があり,甘みを出すためだけでなく,防腐目的や口当たりを良くするためにも砂糖は用いられている。
著者
藤田 純之佑
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.652-656, 1993-10-20 (Released:2017-07-13)

宝石は美しさと希少性の故にその価値を高め, 人を惹き, 数々の歴史やロマンを生んできた。一方, その美しさの謎を知りたいという心が学問を生み, 科学者の興味を惹いてきた。錯体化学を専門とする筆者も, 宝石には余り縁はないが, 宝石の組成, 構造, 色の原因には大いに興味をそそられる, 今日の科学は宝石の素性をほぼ明らかにし, 自然が生んだ貴重な鉱物を実験室や工場でつくれるようになった。ここでは, その美しい色の原因を探ってみることにする。
著者
山﨑 勝義
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.424-427, 2021-10-20 (Released:2022-10-01)
参考文献数
7

高等学校「化学」の教科書における化学平衡および平衡定数の記述には,概念的な誤りや国際規準に合致していない定義など,問題点が多い。本稿では,平衡定数の定義,酸・塩基の電離定数,水のイオン積,溶解度積などに関する教科書の記述について,具体的な問題点をリストアップし,誤りの要因や改善点について考察する。
著者
三宅 宗晴
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.552-555, 2014-11-20 (Released:2017-06-16)

近年,有機合成化学の分野においてレアメタル(希少金属)を使用した反応が次々に見いだされている。特にカップリング反応においてはめざましい発展がある。しかしながらカップリング反応に用いるパラジウム触媒は高価で,希少である。本稿ではそのような希少金属の代わりに身近な金属である鉄を使用した有機反応を紹介するとともに,生体必須金属としての鉄の役割についても触れる。
著者
松本 潔
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.12-15, 2022-01-20 (Released:2023-01-01)
参考文献数
6

大気中で雲が発生するメカニズムは中学校の理科や高等学校の地学で学習するが,雲粒の核となる雲粒核や氷晶核はどのような物質なのか,どこから発生するのかなど,わかっていないことも多い。地球温暖化を打ち消す効果も指摘されている雲粒の核について,化学的特徴や発生源などを解説する。
著者
細矢 治夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.782-785, 2000-12-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

電子が発見されたのが百年前だから, 科学者が原子や分子の存在を実証的につかんだのも百年前である。更にその後誕生した量子力学とエレクトロニクスの助けを借りて, 20世紀の化学は大きく発展した。自然科学や社会の中での化学の重要性と役割は, 原子や分子の実体を知らなかった化学の祖ラヴォアジェーが考えていたものよりはるかに大きい。世間の人の化学に対する認識もここまで上げる必要がある。こういう見方で, 化学だけでなく, 20世紀の諸科学や技術の発展を評価することができる。
著者
佐藤 直樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.569-573, 1998-09-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
2
被引用文献数
1

自然科学では量の関係を重んじる。その自然科学の柱の一本をなす化学でも, 物理量や単位などの表記はけっして枝葉末節の問題ではなく, ときには理解の本質に深く関わってくる。おもに「化学IB」の教科書をそんな目で見ると, どんどん使っていくべき国際単位系(SI)への対応が実質的にはほとんど図られていないように思える。ここはぜひ, 単位系の技術的な側面だけにとらわれることなく, むしろその思想や基礎概念について勘案しながら手直しを始める必要があろう。このように考える立場から広い議論が湧くことを期待して, 教科書中で目にとまった気になる表記や記述について, その具体例のいくつかを指摘したい。
著者
太秦 康光 那須 淑子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.726-731,A49, 1963-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

温泉水中のルビジウム,セシウム含量とその分布を調べるため,主として北海道,青森県の温泉について炎光法によって定量を行なった。約80泉源のうち数例を除いてすべての温泉にルビジウム,セシウムはおのおの0.1~10mg/l,0.01~6.2mg/lの濃度範囲で広く分布しており,他のアルカリと同様対数正規分布をしている。一般にアルカリ含量の間にはNa>K>Li>Rb>Csの関係が認められた。ルビジウム,セシウムはナトリウムとは相関性はなく,Rb/Na,Cs/Naの値と泉質との間にも明らかな関係はない。他の天然水と比較すると,温泉水は,海水,油田塩水,河川水などよりこれらの成分に富んでいる。まにRb/Na,Cs/Naの値も海水,油田塩水よりは大きく,河川水や火成岩の値にやや近いことが明らかになった。しかし,これらの元素の温泉水中での行動は,他の微量成分たとえばリチウム,ストロンチウムなどほど特徴が見られない。
著者
竹田 美和
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.362-367, 2019-08-20 (Released:2020-08-01)
参考文献数
11

非常に明るい白色光源は,青色発光ダイオード(青色LED)の青色光とそれによって励起された蛍光体の黄色光の合成による。青色LEDは窒化ガリウム(GaN)を主成分とする単結晶で作られているが,このGaNの高品質結晶の成長は困難を極めた。最大の問題は,サファイアを基板として用いざるを得なかったことである。サファイアとGaNは結晶形が同じで1000 °Cの高温でもアンモニアや水素雰囲気といった過酷な条件に耐えられる。しかし,両者の格子定数は大きく異なり,凹凸の激しい多結晶しかできなかった。これを解決したのが,窒化アルミニウム(AlN)低温緩衝層の導入であった。この上のGaNは初期には微結晶であるが,成長とともに隙間を埋めていき,全面を覆う平坦で方位の揃った単結晶となる。これが後に続くpn接合や青色LEDの始まりである。