著者
山本 嘉則 金澤 朋子 栗田 誠也 青木 茂男 関口 伸雄 板東 剛
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1998, no.3, pp.181-186, 1998

2-アセチル-8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸 (1) と2, 4-ジアセチル-8-ヒドロキシキノリン-5-スルポソ酸 (2) が新規に合成され, どちらもスルホン酸のナトリウム塩として単離された. 25℃ の水溶液中, 紫外・可視吸収スペクトルの測定により, その酸解離定数とCa (II), Mg (II) との錯形成を調べた. フェノール部分のpK<SUB>a</SUB> (イオン強度0.1) は1が7.81, 2は7.45であり, 環窒素のpK<SUB>a</SUB> (Hammettの酸度関数を使用) は1が-0.31, 2は-1.40であった. 1:1錯体の生成定数 (イオン強度0.1) の対数は1-Ca (II) は3.87, 1-Mg (II) は1.48, 2-Ca (II) は3.60, 2-Mg (II) は1.42であった. ここでCa (II) は1, 2の吸収極大波長の位置を明確に長波長側に移動させるのに対し, Mg (II) は全く移動させない. 以上から, Mg(II)-1, 2錯体は水溶液中キレート構造を形成していない; 1, 2はMgに対して弱い単座配位子として作用していると推定した.
著者
古川 功 江原 誠二 橋本 静信
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1990, no.9, pp.949-954, 1990
被引用文献数
1

ジハロトリフェニルポスホランと1-アリ-ル-2-ヒドロキシ-1-アルカノンジメチルアセタール1のi 反応について検討した。ジブモトリフェニルボスホラン2またはジグロロートリフェニルホスホラン3を,アセトニトリル溶媒中ピリジン存在下で1と加熱反応させると短時間で2-アリールカルボン酸エステル4が得られた。4の収率は1の芳香環上の置換基によって影響を受け,電子供与基をもつものはを好収率(94~95%)で与えたが,電子求引基をもつものでは低収率となった。一方,ジョードトリフェニルホスホラシを同条件で反応させると4は得られず,1-アリールー1一メトキシー2一アルカノンが好収率(84~88%)で得られた。以上の結果からジハロトリフェニルホスホランのハロゲンを変えると異なる生成物が得られ,特に2または3を反応試剤とする方法は,4の有効な合成法であることが明らかとなった。
著者
秋鹿 研一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.680-684, 1994

アンモニア合成反応は平衡論(ルシャトリエの法則)の説明の実例として教科書になじみ深い。一方, 化学工業的大量生産の最初の例としても有名である。1913年ハーバー, ボッシュ等により開発されたこの高圧合成プロセスと(鉄)触媒は基本的にはそのまま今日まで用いられてきた。しかし1992年から, はじめて非鉄系のルテニウム触媒が商業生産に用いられはじめ, 新しい考えのプロセスも発表されている。アンモニア合成のブレークスルーとなったルテニウム触媒をはじめて本格的に研究したグループにいた著者が鉄とルテニウムの違いをできる限りやさしく解説した。
著者
谷田部 純 山田 静夫 伊香輪 恒男 影山 俊文
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.5, pp.565-569, 1992-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
2

塩化亜鉛とメタケイ酸ナトリウムを水溶液中で反応させることにより,高純度のZn2SiO4を合成することに成功した。反応は以下に示す反応式によって進行するものと推定される。合成されたケイ酸亜鉛をX線回折,原子吸光分析,熱分析を行った結果Zn2SiO4であることが判明した。
著者
榊原 保正 久木 博 酒井 睦司 内野 規人
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1976, no.12, pp.1893-1898, 1976
被引用文献数
2

2種のニッケル錯体触媒,Ni(acac)2-Al(qH<sub>5</sub>)3CI3-P(C6H<sub>5</sub>)3(触媒1,Ni:Al2:P=1:103)およびNiBr<sub>2</sub>[P(C6H<sub>5</sub>)3]2(触媒豆)による共役ジエン,1,3-ブタジエン(BD),インプレン(IP),2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン(DMBD)のモノエンへの選択的水素化反応について研究した。触媒1は活性が高く,水素化はトルエン中,20atmH<sub>2</sub>,室温で進行するが,競争反応である重合のために,水素化物選択率はBD38%<IP67%<DMBD91%とジエンによる大きな相違が認められた。触媒IIでは,好溶媒エタノール中でも高温(BD75℃~DMBD200℃)を要し,水素化物選択率はBD88%>IP84%>DMBD40%と触媒1の場合と逆の順であった。しかし,すべての場合において,水素化物中のモノエン生成比率は高く,高転化率においてモノエンが90%以上を占めた。実験結果および参考知見に基づいて,触媒1によるDMBDの水素化に対し反応機構を提案するとともに,実験結果,とくに両触媒の活性ならびに3種のジエンの反応性の相違について考察を行なった。
著者
小西 昭夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.1517-1521, 1957-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9
被引用文献数
3

加熱によるPVCの変色を可視部反射率で測定し,色の3色刺戟値のうち明度Yをパラメー一ター一"として変色速度を求めた。窒素存在下ではY変化の速度定数はk=1/t・(100-Y)/(100・Y)であらわされ,120~180GCの温度範囲でK=1.78・1010exp(-26600/RT)Min-1である。変色におよぼす空気の影響,安定剤の作用,変色PVCとラジカル試剤との反応性等から変色PVCの着色構造としてマクロラジカル構造の寄与を考えた。
著者
笠岡 成光 妻木 尚武 喜多村 常功
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1973, no.5, pp.1052-1056, 1973

窒素酸化物の接触還元による浄化プロセスの開発の資とするために,それぞれ50m◎1%酸化物組成の5種の二成分系共沈触媒とGirdler触媒, G 22(バリウムクロム酸銅)による酸化窒素と13種の炭化水素との反応性(NO+rztiSnm. CmHn nym-SN2+ 4-iiSltlftil-n CO2+-4sf Fi.rH20)を,常職法(反応管内径: 12.,O,mm)によって検討した◇触媒は,平均粒径1.Ommの酸化物1,0009を550℃で1時間,水素還元したのち,270~550。C,500,Ncm3(1%NO-0.09~1。2%CmHn-残りN,) minで操作した。その結果,まず,NOとベンゼンの反応に対する触媒の見かけの活性序列としてはCuO-A1208(Cu-A120s)> Fe20slCr20s(Fe-Cr203)> CuO-Cr203(Cu-Cr203)> Co30rA120s(Co-A1203)> Fe203-Al,O,(Fe-A1203)>G22が得られた。つぎにもつとも活性の高いCuO-A1203触媒上のNOに対する炭化水素類の見かけの反応性序列として,アルキルベンゼン類(トルエン,エチルベンゼン,オルト,メタ,パラキシレン,1,2, 4-, 1, 3, 5-トリメチルベンゼン)>ベンゼン>エチレン>π-オクタン>イソオクタン>n-ヘキサン>メタンが得られ,AultらのG22触媒によるアセチレンなど9種の炭化水素に対するデータとあわせて検討考察し,アルキルベンゼン類以外の同族系炭化水素間では,炭素数の多いものほど反応性は大きく,また,炭素数の同じ異族系炭化水素間では,アセチレン系>オレフィン系>芳香族系>パラフィン系の順に飽和度の高いものほど反応性が小さくなることを示唆した。なお,炭化水素の反応性は,低温域では一酸化炭素とくらべて,きわめて劣勢であるが,高温域にいくにしたがい逆に優勢になっていくことなどを,かなり定量的に示した。
著者
遠藤 邦彦 古橋 昭子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1990, no.6, pp.611-614, 1990
被引用文献数
3

cit,trans-亜硝酸午チルの<SUP>13</SUP>C同位体種 (<SUP>13</SUP>CH3CH2ONO, CH3<SUP>13</SUP>CH2ONO) のマイクロ波スペクトルを10から34GHzの領域で測定し,基底状態におけるa型R枝およびb型Q枝遷移を帰属して,つぎの回転定数を得た。<BR>A B C<BR><SUP>13</SUP>CH<SUB>3</SUB>CH<SUB>2</SUB>ONO 18018. 90 ± 0. 08 MHz 2931. 14 ± 0. 01 MHz 2604. 6 81 3 ± 0. 01 MHz<BR>CH<SUB>8</SUB><SUP>13</SUP>CH<SUB>2</SUB>ONO 17868. 37 ± 0. 10 MHz 3008. 28 ± 0. 01 MHz 2662. 09 ± 0. 01 MHz<BR>ノーマル種および上記の<SUP>13</SUP>C同位体種の回転定数の解析から,CiS,trans一亜硝酸エチルのC-C結合0距離としてr6(C-C)=1.517±0.004Åを決定した。ここに得られた亜硝酸エチルのC-C結合距離およびすでに報告されている類似分子のC-C結合距離は,エチル基に結合する原子の電気陰性度が大きくなるにしたがい結合距離は短くなる直線的な傾向がみられる。
著者
村上 雄一 小崎 幸雄 本川 正明 大藪 芳樹 宮本 明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.5, pp.612-618, 1977-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
4 4

各種金属酸化物触媒上でのアンモニア酸化反応を流通法により研究した。アンモニア酸化反応の活性および選択性におよぼす反応温度,入口O2-/NH3比ならびにW/Fの影響を検討した。これらの実験結果を説明するために,NO-NH3反応,NO酸化反応,NO2-NH3反応などを含むNH3酸化反応径路に関するモデルを新たに提出した。このモデルによりNH3酸化反応の選択性をNO-NHs反応活性との関連において合理的に説明できた。また,触媒のNH3酸化活性の大きさは酸化物の禁止帯幅など触媒の酸化力により決定されることも明らかとなった。
著者
幡生 あすか 原田 雅史 高橋 由武 渡辺 俊輔 山下 典之 伊藤 世士洋 岡本 晃典 高木 達也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
情報化学討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.P22-P22, 2011

画像診断の分野で,診断の迅速化および医師の診断支援を目的に,健常者と患者の画像データを統計的に比較する手法が考案されてきた。しかし複数の疾患の可能性を比較,検討し,予測するためには,健常者と患者の判別だけでなく,疾患同士の比較,判別が必要である。そこで,脳血流画像の座標点を脳の機能区分に分け,分類に必要な区分を選択し,サポートベクターマシンによるアルツハイマー病とパーキンソン病の分類に取り組んだ。
著者
伊藤 献一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.658-661, 1994

無重力下でローソクの炎は球形になる。高温の炎は地上では重力の影響で対流を生み出す。しかし, 無重力では自然対流がないため, ローソクの芯の先からロウの蒸気が全周に一様に拡散して球状の炎をつくる。このように, 対流の影響を取り除くと燃焼の本質が見えてくる。また, 無重力状態では, 液体燃料の粒や石炭の粒子を空間に静止させることができ, 粒子から粒子へ火の伝わる状態を正確に観察できる。燃料の燃焼研究や宇宙火炎の研究が今, 落下塔などの無重力環境を利用して行われようとしている。
著者
道家 達將
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.54-58, 1991

天保5年(1834)名古屋生まれの, 実にユニークな, 奇人とまで言われた化学技術者がいる。その名は宇都宮三郎。尾張藩100石取りの武士の三男で, はじめ儒学・武術を学ぶが, 西洋砲術家上田帯刀の門に入ったことから舎密(化学)に興味をもつようになり, ついには23歳のとき尾張藩を脱藩して江戸で兵科舎密にうちこむ。柳河春三, 桂川甫周, 福沢諭吉らと親交を結び, 勝海舟の世話で幕府の蕃書調所精煉方(のち開成所化学)で働く。公的機関に化学の名をつけたのは彼が最初という。明治維新で解雇されるが, 開成学校教師, 工部省技師に再び雇われ, 明治15年(1882)工部大技長となる。我が国最初のセメント・耐火煉瓦・炭酸ソーダの製造, また竈(かまど)づくりや酒造法の科学的改良などに成功。明治35年に没し, 父祖の墓所のある愛知県豊田市の幸福寺に葬られた。今回は, この宇都宮三郎の人と仕事を紹介し, 彼のゆかりの地をたずねる。
著者
田村 定義
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.626-629, 2008-12-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
5

物質の三態変化は相転移の一種と考えることができ,熱力学的観点から解釈することができる。各状態間の平衡関係を,温度,圧力,組成などの状態変数を座標として示した図形を,状態図または相図といい,これには,物質の挙動や性状についての情報が示されている。状態図に関連して,超臨界流体,状態図の具体例として水と二酸化炭素を取り上げて,その特徴を解説した。
著者
有賀 哲也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.322-323, 2019-07-20 (Released:2020-07-01)
参考文献数
4
著者
大石 雅寿
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.4-8, 2002-01-20 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
2

電波天文学の発展に伴い, これまでに発見された星間分子は120ほどにもなる。日本の研究者が発見した星間分子は17であり, 1980年代以降に発見された分子の約半数を見つけたことになる。星間分子は気相におけるイオン分子反応や星間塵表面反応により生成されると考えられ, 数10Kという極低温, また標準状態の1兆分の1程度の極低密度という極限状態に特異な化学を反映した短寿命分子が数多く見られる。しかしそのような環境にも関わらずダイナミックな化学反応が起きており, その研究からは私たちの「常識」を覆(くつがえ)す事実も次々と見出されている。
著者
松浦 和則
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.582-585, 2022-12-20 (Released:2023-12-01)
参考文献数
14

近年,天然ウイルスのタンパク質の殻(キャプシド)を模倣して,ナノカプセルを人工的に構築する研究が注目されている。筆者らは,トマトブッシースタントウイルスの内部骨格の形成に関与するβ-Annulusペプチドを化学合成し,50 nm程度の人工ウイルスキャプシドを構築することに成功した。この人工ウイルスキャプシドの内部には核酸やタンパク質を内包することができ,外部表面にタンパク質や脂質二分子膜(エンベロープ)を修飾した機能性ナノカプセルの創製にも成功した。