著者
栗田 雄喜生 野副 鐵男 久保 昌二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.543-545, 1950-10-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
6
被引用文献数
3

(1)ヒノキチオール及びモノブロム,ヂブロム誘導體の双極子能率をベンゼン溶液中において33°Cで測定した。 値は夫々4.04D, 4.32D, 4.27Dである。 (2)それらの能率の値を種々の共鳴構造を考えることによつて説明し,それ等の化合物においてシクロヘプタトリエン環は平面七角形をなしていると推定した。 (3)ヂブロム化合物における置換基の位置を決定した。 本研究を行うに當り,試料の製造に協力された向井利夫氏,實驗装置に關し便宜を與えられた小寺明博士に對して感謝する。猶本研究は文部省科學研究費によつて行つたものである。 *他の可能性はヂブロム化合物に對して實驗値と一致しない合成能率を與えることも示し得る。
著者
村田 容常
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.90-91, 2019-02-20 (Released:2020-02-01)
参考文献数
3

メイラード反応とは糖とアミノ酸,タンパク質が反応して茶色く変色する一連の反応であり,加熱による色づきと香気の形成に大きく関わっている。パウンドケーキなどの焼いたお菓子では,この反応がおこり,焼き色がつくとともに甘い香りなど様々な香ばしい香りを呈する。糖がメイラード反応により分解して種々のカルボニル化合物が形成され,それらが再びアミノ酸と反応し,色や香りが形成される。
著者
中井 康雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.1629-1633, 1961-12-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
23
被引用文献数
7

xR2O(100-x):B2O3[R=Na,K,Li]モル組成のアルカリ-ホウ酸ガラスを,γ 線照射すると,欠陥中心が生じる。この欠陥中心の性質を調べるため,常磁性共鳴吸収を測定した。測定器 Varzan 型 V 4550 分光器で, 9000Mc/sec の周波数帯を用いて,常温で測定した。試料は粉体で,真空中にアンプルしたものであり,全照射量は約 5×106r である。溶融ホウ酸およびアルカリ-ホウ酸ガラスとも, g=2.0 で A=13.6gauss の等間隔の 4 本の微細構造をもつ ESR を得た。この吸収帯はアル力りの種類にはよらない。したがってこの微細構造はスピン 1=3/2をもつ 11B の原子核と不対電子の相互作用によって生じるものと思われ,その欠陥中心のモデルを推定した。アルカリ-ホウ酸ガラスでは,これ以外に,アルカリに関係すると思われる吸収が存在する。ガラス中の水は ESR の形状に関係があり,ガラス内部の水および吸着水は,γ 線照射によって生ずる磁気的中心の生成を阻止する作用をもつ。また吸着水はホウ酸ガラスの表面を侵し,内部に浸透して,ガラス表面層に密に存在する磁気的中心と,OH-あるいはH2Oの形で反応し,退色を促進する。
著者
篠原 厚
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.120-123, 2017-03-20 (Released:2017-09-01)
参考文献数
3

人類の物質観や自然科学の中で重要な基盤をなしている元素の周期表がどこまで拡張されるかという問いに対しては,元素そしてその周期表とは何か? 周期表の拡張とは何を意味するか? を考える必要がある。ここでは,これらについて概説し,新しい元素の創成の現状と将来について展望する。
著者
花田 真理子 翁長 一夫 香田 弘史 岩本 正和 西口 昌志 小野内 徹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.11, pp.763-772, 2000 (Released:2001-08-31)
参考文献数
6
被引用文献数
3

著者らはすでに住宅用として広く用いられている酸化スズ(IV)系半導体ガスセンサーを基本に,小型かつ安価な,民生用途にも十分耐える高性能,高信頼性二酸化炭素センサーの開発に成功した。まず,それまで半導体式ガスセンサーでは不可能とされていた二酸化炭素濃度の測定が,酸化スズ(IV)素子に希土類元素,特にLaを添加することにより可能となることを見いだした。また,La/SnO2素子の高温高湿度下での長寿命化にYの添加が有効であることを究明した。さらに,妨害ガスの影響をPt担持シリカゲルフィルターの開発により,温度変動の影響を拡散制限孔ディスクの採用により低減した。最後に,本センサーの動作特性を組み込んだ検知ソフトを新たに開発し,検知精度を格段に向上させ,実用化を達成することができた。
著者
大勝 靖一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.210-213, 1998-04-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3

油脂及び油脂関連物質の酸化反応を自動酸化の立場から記述した。油脂の自動酸化は二面性がある。最初にその二面性に共通した, しかも基本的な, 特に油脂に特有な点を強調した立場から酸化反応を解説した。続いて油脂の酸化が必要不可欠であるという分野, 特に塗料における油脂の酸化と乾燥の関係について説明した。一方酸化が好ましくないものとして油脂の酸敗を取り上げ, さらには生体膜の構成成分であるリン脂質の酸化劣化とその防止の生体における重要性を記述した。
著者
村井 不二男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.1324-1326, 1960-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
4

著者らによって単離されたマタタビの有効成分の一つであるマタタビラクトン,C10H16O2(I)の化学構造についてのべる。Iの過マンガン酸カリウム酸化によって2種のネペタリン酸がえられた。またIの加水分解により,一部は相当するオキシ酸(VI)を結晶としてあたえ,このものの閉環によってイソイリドミルメシン(IVb)がえられた。これらの結果からマタタビラクトンはイリドミルメシン(IVa)とイソイリドミルメシン(IVb)の混合物であると推定される。
著者
熊本 卓哉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.70-73, 2013-02-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1

高校の教科書では,同位体どうしは,原子番号が同じであり,同一元素の属する原子であるので,化学的性質はほぼ同じと紹介されている。しかしながら,核種や利用法によって特徴のある性質を示すものがある。一昨年の原発の事故以来,放射性同位体に関する話題が喧し<,何かと悪者にされる同位体であるが,同位体の分類や性質,エネルギー源として以外の利用法について理解を深めることは重要ではないかと考えられる。本稿では,同位体が見つかった経緯と同位体の種類,最近の同位体を用いた研究例について概説する。
著者
力丸 光雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:24326542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.197-201, 1986-06-20 (Released:2017-09-15)

賢治は確かに「原体験」として科(化)学を勉強し, 地質調査・土壤分析の実績もあり, また教師として化学を教えたりもした。彼は「科学」の言葉で詩を書いたと人を驚かせたが, それが単なる言葉だけでなかったのは無論である。「空でひとむらの海綿白金(プラチナムスポンヂ)がちぎれる」と彼がいうとき, それは「反応速度論」をふまえた, 触媒作用をもつ白金(の雲)を意味した。とにかく, 彼の科学ないし化学の知識が, 宗教体験, 自然との交感などと相まって, 彼の宇宙観-即「芸術」といってよかろう-の形成の土台となったことはまちがいない。「詩人」としてよりは「一個のサイエンチスト」として認めて欲しいと語ったことがあるといわれるが, 彼は一介の「サイエンチスト」に留まる器ではなく, 「銀河を包む透明な意志」をもって「われらのすべての生活を一つの巨きな第四次元の芸術に創りあげようではないか……」とうたうのである。
著者
梶山 正明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.440-443, 2017-09-20 (Released:2018-03-01)
参考文献数
6

高校生の多くは,有機化学は覚えるものだと思っている。確かに,教科書には数多くの化合物が並び,その構造や名称を覚えるだけでも精一杯である。しかし,そのために身近な物質が多い有機化合物について,深く学ぶ意欲を失い,人生を豊かにする知識や考え方を得ることができなくなるのは残念である。「化学基礎」で学んだ,共有結合や結合の極性の理論をはじめとする化学の本質でもある電子の振る舞いによって,有機化合物の性質や反応を学ぶことで有機化学の学習のイメージを変え,文字通り「生命」を吹き込みたい。
著者
田代 充
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.296-299, 2013-06-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

核磁気共鳴(NMR)装置は,理工系から生物系に渡る広範な分野で使用されている分析機器のひとつである。画像診断など医学分野で使用されているNMRイメージング(MRI)は,大多数の読者が名前は聞いたことがあるだろう。MRIでは磁場の中に人間が入り,人体中の水分子の水素原子核を観測している。同様の原理で,構造未知の化合物の構造解析にNMRがよく用いられる。NMRは他の分析機器と比べると,価格が1桁高い高額な分析機器であるが,理工・薬学系の大学および製薬会社には,必ずと言っていいほどNMR装置が数台ある。理由は,それだけNMRが便利であり,研究に不可欠だからである。本講座では,NMRの観測対象である原子核について,NMRの観点からその特徴を説明する。
著者
竹上 直史
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.164-165, 2008-04-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
1

中学1年での「光」の授業で,高校化学で学習する「チンダル現象」を取り上げた。「光の直進」を確認することが目的であったが,「目は何を見ているか」「凸レンズで屈折して焦点を通る」なども非常に簡単な準備で目の当たりにすることができた。中学のしかも物理分野で「チンダル現象」を取り扱ったのであるが,中学理科としての学習内容の理解はもちろん,高校化学の考え方へのスムーズな導入にもなったと考えられるので報告する。
著者
斉藤 真二 寺前 紀夫 田中 誠之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.9, pp.1363-1366, 1980-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
5

高速液体ク採マトグラフ(LC)にレーザーラマン分光光度計をオンライン接続した測定系(LC-Raman)を新たに開発し, 共鳴ラマン効果を示す物質に対するその有用性について検討を行なった結果,このLC-Raman法が高感度であり,かつ高度の選択性を併わせもつ新しい検出方法であることが判明した。メタノールを移動相とする逆相クロマトグラフから溶出する種々の置換基をもつ4-ジメチルアミノアゾベンゼン誘導体の検出を,発振波長488nm,出力200 mWのAr+レーザーを励起光源として1406cm-1のラマン散乱光を連続的に測定し,クロマトグラムを記録することにより行なった。2'-クロロ-4-ジメチルアミノアゾベンゼンについて検量線を作成したところ, 260ng/μl付近までの範囲において原点を通る良好な直線が得られ,また,この方法によりng単位の検出を行なうことができた。さらに, 対象とする化合物の保持時間で移動相の流れをいったん止め.共鳴ラマンスペクトルを測定し,おのおのの化合物の示す特徴的なラマン線に着目することにより,逆相クロマトグラフィーでは分離されずに溶出し, また, 多波長吸光度検出法でも区別することのできない2'-クロロ-4-ジメチルアミノアゾベンゼンと3'-メチル-4-ジメチルアミノアゾベンゼンの個々の検出を行なうことができた。
著者
上方 宣政
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.488-491, 1999-07-20 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
1

有機化合物の反応では, 用いる触媒や反応温度が変わると異なった化合物が生成することがしばしばある。では, 触媒や反応温度など反応条件が変わると, どうして異なった化合物が得られるのか?これらの実験事実を説明するためには触媒の役割をふまえた反応機構を理解することが必要不可欠である。本稿では, エタノールを硫酸の存在下に加熱すると, 反応温度の違いによって, どうしてジエチルエーテルとエチレンがそれぞれ生成するのか, その機構について解説する。