著者
西川 純
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.432-435, 2015-09-20 (Released:2017-06-16)

理科は実験方法の検討,実験結果の予想で子どもたちが話し合う場面が多い。また,実験・観察では子どもたちが主体的に学習している。本稿では,『学び合い』という授業によって,理科が国語,英語より優れた言語学習の場になることを紹介する。
著者
秋鹿 研一 小山 建次 山口 寿太郎 尾崎 萃
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.3, pp.394-398, 1976-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
2

200~300℃,全圧600mmHgの条件でもっとも活性の高いアンモニア合成触媒であるRu-AC(活性炭)-Kと,それについで活性の高いOs-AC-Kの製法と活性の関係を検討した。Kは一定量(約1mmol/9-cat)添加後はじめて活性が現われ,KがACにほぼ飽和吸着すると考えられる量,約 1mmol/g-cat,まで活性は直線的に増加する。RuCl3-ACの還元のさい,水素は当量の6倍も消費する。過剰の消費水素はACとの反応およびACへのスピルオーバーによると考えられるが,その量は活性に影響しない。還元にさいしHClが発生するが,一部の壇化物イオンは触媒上に残る。Ru-AC-Kの活性は,Ruの露出表面積に対応すると考えられるRu-ACへのCO化学吸着量にほぼ比例する。Ru塩はRu/ACが約 3wt%まではACによく吸着する。CO化学吸着量も 3wt%まではRu量にほぼ直線的に増加する。しかし3wt%を越えるとRu塩は吸着しにくくなり,Ruの分散性も低下する。Ru(2,3価)またはOs(3,4,6,8価)について酸化数の異なる塩を出発原料とした触媒の間でRuまたはOsの活性は変わらなかった。また活性炭を硝酸,アンモニア水,あるいはその両者により処理した場合も得られるRu触媒のCO化学吸着量に影響なかった。
著者
西川 泰治 平木 敬三 合田 四郎 中川 和実 玉暉 宗夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1975, no.9, pp.1479-1484, 1975
被引用文献数
1

水溶液中の単核鉄(III)錯イオンを多核錯イオンから分離する方法として8-キノリノールークロロホルム抽出法を検討した。またこの方法により抽出される鉄(III)のイオン種が単核錯イ=オンであることを,鉄(III)イオンの加水分解反慈における紫外吸収スペクトルの変化および限外源過法による分子量の分画の結果と対比して考察同定した。鉄(III)の加水分解反応における8-キノリノール抽出鉄量は二次反応速度即こしたがう。この反応について25~40。Cの温度域で速度論的検討を行なった。Arrheiusプロヅトから得られた活性化エネルギーとして39.5kcal/mol,活性化自由エネルギーおよび活性化エントロピーとしてそれぞれ16,4kca1/mol,73e.u。([Fe3]:(1.4±0.1)×104mol/1,pH3.40±0.05)なる値を得た。その結果,鉄(巫)の加水分解反応の初期過程においては次式に示す機構を含む反応で進行するものと推定される。
著者
松井 亨
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.326-329, 2017-07-20 (Released:2018-01-01)
参考文献数
3

筑波大学理工学群化学類で実施される入学試験のうち推薦入試とAO入試を取り上げ,試験の内容・特徴と実施結果,それにより生じた課題を論じる。推薦入試では思考力や発想力に富んだ真面目な学生を,AO入試ではより自主性に富んだ学生が入学する傾向にある。これらの試験によって,通常のペーパーテストでは獲得しにくい層が取り込まれて,本学における多様な人材育成に貢献している。受験者の減少などの問題を抱える一方で,成績調査の結果では化学類においては入学経路に依存した大きな差異は見られないことから,さらなる人材の多様化を目指すためには今後これらの制度を活用した入試形態が望まれる。
著者
須沢 利郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.1072-1075, 1960-06-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
4

羊毛繊維の酸性染料溶液におけるζポテンシァルより,繊維表面の染着量に見合う量として表面電荷密度を計算し,染着量との関係を調べた。解離基1個のorangeIIは解離基2個のorang II Rより大きい表面電荷密度および染着量を示し, ζ ポテンシァルより予測されたorange II R の染着量が, orange IIのそれの少なくとも1/2以下であるということが実証された。染料濃度の増加によって表面電荷密度および染着量の増加がみられた。またpHの小さい方が大きい方より表面電荷密度,染着量ともに大きい値を示し,酸性染料による羊毛染色の機構が裏付けされた。温度の上昇によって表面電荷密度は減少したが,染着量は増加した。さらに塩類による表面電荷密度および染着量の変化を調べ,その結果より塩類が酸性染料による羊毛染色において,繊維表面に及ぼす効果と,繊維内部をも含めた繊維全体に及ぼす効果とは若干異なることが示唆された。
著者
山崎 昶
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.320-321, 1989

英語に限らずヨーロッパの諸言語では, 普通の単語を限られた分野の専門語としても使用することが多い。そのために一部の拝外主義者は, 二言目には「だから日本のアカデミズムは……」などという無責任な言辞を弄(ろう)する。だがデータベースの検索などで多義語の処理に苦労したことのない人間の世迷い言に過ぎない。
著者
堀田 久志 林 敏彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1975, no.9, pp.1572-1576, 1975

ブシモモアヒズ7エノ刃ル樹礁と土ポキジ樹脂からなる組成物の加熱による橋かけ反癒にいて,聖デ竣物質を用い,その反応状況を調べた。アンモ芦アレゾヤルのモデルとして2,4-キシレノールおよびそのヒド冒キシメチル化物をエポキシ樹脂のモデルとして,そのエポキシ基の反応性をみるためにフェニルグリシジルエーテルを,さらにアンモニアレゾール中の含窒素構造物のモデルとして2,4-キシレノールのジベンジルアミノオキサジンを用いてそれぞれの組み合わせにおけるエポキシ基の反応を調べた。<BR>その結果,まずエポキシ基はフェノール水酸基と反応するが,このときヒドロキシメチル基が存在するとその速度はいちじるしく大となる。しかしその反応におけるNMRの変化を観察すると,エポキシ基の開環とフェノール水酸基の反応は確認できるが,エポキシ基とヒドロキシメチル基の反応は認め得ず,ヒドロキシメチル基同志の縮合反応のみ検出される。そこでヒドロキシメチル基の存在はフェノール水酸基との分子内水素結合を形成し,その結果としてフェノール水酸基のプロトン放出が容易となり,エポキシ基の開環を促進するものと考えた。また含窒素化合物の存在もいちじるしい反慈促進効果が認められた。反応温度が高くなるにつれ,消費されるフェニルグリシジルエーテル/キシレノールの比が大になるところから,高温では開環したエポキシ基から生じる活性な水酸基が未反応のエポキシ基を開環させる反応が大になるものと考えられる。
著者
金子 朋子 山田 良吉 山下 寿生 小豆 畑茂
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1996, no.6, pp.572-576, 1996

廃プラスチックの油化技術の開発を目的とし,熱硬化性樹脂の熱分解残分の低減化を検討した。熱分解過程における残分化反応がラジカルの再結合による橋かけ,環化であることに着目し,ラジカル受容体の添加による再結合の抑制を試みた。受容体として,実用性を考慮し,またラジカル化および低分子量化しやすいという点から熱可塑性樹脂を用いた。熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂(EP)を 500℃ で 1 時間熱分解したときの残分生成率は 23wt% であった。 EP に熱可塑性樹脂であるポリエチレン(PE)を, PEIEP=4 (重量比)となるように混合し熱分解すると残分生成率は 5wt% に低減した。しかし,すでに残分となった EP に PE を添加し熱分解しても,さらなる残分の分解は認めちれなかった。熱分解ガスの発生挙動を TG-MS 分析で調べた結果 PE と EP の分子間反応の可能性が示唆され, EP から PE ヘラジカルが転移し EP の残分化が掬制される一方で, PE は EP からラジカルを受容することにより分解が促進されガス化が低温化したと考えられた。
著者
宇根山 健治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.410-413, 2007
参考文献数
3

健康で文化的な日常生活をおくるために深く関わっているフッ素系物質が,私たちの身の回りには意外なほど使われている。しかし,そのユニークな機能とフッ素の役割についてはあまり解説されていない。フッ素原子の三大要素(小さい,硬い,電子を強く引きつける)と炭素-フッ素結合の特徴(強い,分極性1)が小さい)を基にして,フッ素を含む化学物質が何故ユニークな性質を示すのかを解き明かす。
著者
木村 誓 柏谷 景昌 浅原 照三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.1543-1545, 1957-12-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
14

高級パラフィン炭化水素のニトロ化は一般に困難であるが, 今回n - ドデカンを試料として, 最近発展してきた気- 液相ニトロ化を試み,硝酸蒸気で150~190℃の反応温度において容易にニトロ化されることを認めた。本反応によるとモノニトロ化合物とともにポリニトロ化合物, また副反応の酸化生成物が生ずるが, 反応温度, 硝酸の使用量およびその濃度を変化した各条件下に実験を行い, 反応物中の未反応炭化水素, ニトロ化合物, および脂肪酸の生成状況を検討した。かくして濃硝酸( 比重1.38) を炭化水素に対して等モル比で使用し, 180℃で反応させて, モノニトロドデカンを最も収量よくうることが出来た。赤外線吸収スペクトルおよび化学的試験により,生成モノニトロ化合物は少量の第1級ニトロパラフィンを含んだ第2 級ニトロパラフィンの混合物なることを認めた。
著者
栗村 芳実 村上 敬吾 土田 英俊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.1698-1702, 1969-08-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

鉄(III)キレート触媒によるアスコルビン酸の酸素酸化反応をpH1.5~5の水溶液中で,酸素吸収速度を測定することによって研究した。鉄(III)イオンのみが存在する場合には,アスコルビン酸の酸素酸化反応の速度は,比較的小さい。しかし,NTA,EDTAOH,EDTA,CyDTAおよびDTPAなどを配位子とする鉄(III)キレート触媒を用いると,アスコルビン酸の酸化は著しく促進される。これらの鉄(III)キレートの触媒活性は,一般に,キレートの性質,溶液のpHなどによって異なる。アスコルビン酸が鉄キレートに比べ大過剰であるときは,酸素吸収速度は,鉄(III)キレートおよび酸素分圧に関して,それぞれ見かけ上一次になる。鉄(III)キレートの触媒活性は,pH3~5において,Fe(III)NTA<Fe(III)EDTAOH>Fe(III)EDTA>Fe(III)CyDTA>Fe・(III)DTPAであった。鉄(III)キレートのアスコルビン酸酸化における触媒活性の大きさの順序は,これらのキレートを触媒としたときのかフェニレンジアミンの酸化的重合反応における,活性の大きさの順序とよく一致し,鉄(III)キレートの安定度定数がほぼ1020で活性極大に達する。得られた実験結果に基づき,鉄(III)キレートによるアスコルビン酸の接触酸化の機構を推定した。アスコルビン酸過剰の場合には,鉄(III)キレートが速い反応でアスコルビン酸を酸化し,その結果生成した鉄(II)キレートが酸素酸化する段階が律速であることが明らかとなった。鉄(II)キレートの酸素酸化の速さが,鉄(III)キレートの触媒活性を支配する主な因子であり,その段階はいくつかの反応経路を持つことがわかった。