著者
口 武雄 村井 不二男 磯江 幸彦 玄 亟培 林 雄二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.507-528, 1969-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
84
被引用文献数
27

表題のネコ科動物の嗜好植物から著者らは2種の塩基(アクチニジンとボシュニアキン)を,C9-ラクトンとしてボシュニアラクトン,オニクラクトンおよびミツガシワラクトンを,C10-ラクトンとしてイリドミルメシン,イソイリドミルメシン,ジヒドロネペタラクトン,イソジヒドロネペタラクトン,ネオネペタラクトン,`イリドミルメシン,cis,cis-イソイリドミルメシンciscis-ジヒドロネペタラクトンとcis,cis-イソジヒドロネペタラクトンを,cis,cis-ラクトンとしてアクチニジオリドとジヒドロアクチニジオリドを単離した。これらの塩基,ラクトン類はいずれもネコ科動物に対して顕著な興奮作用を持っている。一方,クサカゲ淳ウの一種,ヨッボシクサカゲロウの雄もまたマタタビに強く誘引されることが知られており,著者らは虫果および葉から7種のイリドイドーアルコール類を単離した。これらのアルコ一ルは,ネオマタタピオールではl0-6μgで,マタタピオールおよびデヒドロイリドジオールは10-3μgで,またイリドジオール,5-ヒドロキシマタタピエーテル,7-ヒドロキシジヒドロマタタピエーテル,アロマタタピオールは1μgでそれぞれクサカゲロウを誘引する。著者らは上に述べた活性物質のすべての構造を化学的およびスペクトル的方法により決定し,かつ,それらを立体特異的に,あるいは生合成的経路で合成に成功した。またC11-ラクトン合成の途上ジエンからアレンーアルコールが光増感酸化でえられることを見いだした。C9-モノテルペンの立体化学は,ボシュニアリン酸のすべての異性体を確実に合成することにより確立された。
著者
山本 俊夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.384-388, 1960-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11

同一地方で各季節を通じ採取した海藻 41種, 72 試料について鉄含量を測定した。乾燥体 1g 中に最高 3.410mg, 最低 0.070mg の値を示し, 種類によりかなりの差異がみとめられた。マンガン含有量の多い種類の海藻は, 一般に鉄含有量も多く, 全体の約半数の種類が 3~7 の Fe/Mn 含有原子比を示した。
著者
村松 容一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.398-401, 2011-08-20 (Released:2017-06-30)

環太平洋造山帯に位置する日本に火山性温泉が多いことはよく知られているが,近年温泉ブームを反映して,関東平野等の非火山地域で温泉開発が盛んに行われている。温泉水の多くは天水や化石海水起源であり,温泉水に含まれる溶存成分は起源となる水に由来するほか,地下を流動する過程で火山ガスを溶かし込み,また周辺の岩石と反応して,岩石中の各種物質を溶かし込んでいる。ここでは,地球科学的観点から,温泉に含まれる主要成分及び特殊成分の特徴を,起源と併せて概観する。
著者
藤田 安二 上田 照夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1072-1073, 1965-10-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
4
被引用文献数
1

形態シソ(perilla nankinensis Decne)とまったく同一であるにかかわらずシソ臭を有せず,エゴマ(P. frutescens Brit.)と同じ臭気を有するものがしばしば存在する。 このものの精油を検索すると,收油率生草の0.03~0.05%,油分はマツタケアルコール(1-オクテン-3-オ-ル) 6.8~7.1%,リナロール7.9~8.4%,エルショルチアケトン8.8~10.4%,ツワブキ酸1.5~3.0%,ナギナタケトン48.6~50.8%,その他の成分23.0~23.7%からなることがわかった。 このものはおそらくシソとエゴマとの雑種であろうと考える。
著者
石川 栄一 及川 武夫 萩原 俊男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.673-676, 1959-05-02 (Released:2011-09-02)
参考文献数
6

アルミニウム電解浴に使用する氷晶石は熱分解を受け難いものであると共に,不純分の少ないものが要求される。天然氷晶石は熱分解が少なく不純分の少ない点で好まれている。しかし合成方法も種々研究され良品がえられるようになった。合成氷晶石の不純分のうちケイ素分がとくに問題になるが,ケイ素分の少ない氷晶石を合成するための方法は種々の特許として提案されている。しかしその形態についての詳細な研究は見当らない。著者らはケイ素分の少ない氷晶石を合成するために,まず酸性フッ化アルミニウム法によって合成した氷晶石中に,ケイ素分がどんな化合物として存在するか,どういう混入経過をとるかを化学分析,X線回折によって追求した。その結果,酸性フッ化アルミニウム法によって合成した氷晶石中のケイ素化合物は,ケイフッ化ナトリウム,および非晶質ケイ酸であることを確かめた。また,酸性フッ化アルミニウム溶液に,必要量の60%以上アルカリを添加したときにケイ素分が急増すること,また,非晶質ケイ酸はケイフッ化ナトリウムがアルカリによって解離されて生成することを明らかにした。
著者
今井 泉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.428-431, 2017-09-20 (Released:2018-03-01)
参考文献数
15

現行の中学校理科や高等学校理科の基礎科目「化学基礎」において,「熱量とエネルギーと仕事」を関連させた内容が存在しないことは,基礎を付した科目に続いて学ぶ「化学」の「化学反応とエネルギー」を指導する上で大きな問題である。本稿ではその点を踏まえ,大学の一般化学とのギャップを埋める発展的な内容(エンタルピー変化,エントロピー変化,ギブズエネルギー変化)を含む熱化学指導について提案する。
著者
吉野 彰
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.296-299, 2018-06-20 (Released:2019-06-01)
参考文献数
1

リチウムイオン電池は小型・軽量化を実現した二次電池であり,現在のモバイルIT社会の実現に大きな貢献をしてきた。現在ではほぼすべてのモバイルIT機器の電源として世界中で用いられている。このリチウムイオン電池の市場状況,電池の仕組み,特徴,構成材料,電池構造,電極構造を解説する。こうしたモバイルIT用途分野(小型民生用途)においての25年以上の市場実績により,電池性能の向上,信頼性の向上,コストダウンの実現がなされてきた。こうした市場実績によりリチウムイオン電池は車載用(電気自動車用)という次の転換期を迎えている。
著者
沢辺 大輔 鳥越 宣宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.130-131, 2016-03-20 (Released:2017-06-16)

我が国の漆喰は1500年近くの歴史をもつ水酸化カルシウム(消石灰)を主成分とした建築材料である。住宅様式の変化からその需要が失われた漆喰は,近年,住まいの安全・安心に対する意識の関心の高まりやユーザーのライフスタイルや価値観の多様化から機能性・意匠性の両面から再び注目されている。消石灰と砂だけの西洋の漆喰に対し,我が国では天然由来の有機物を加えて作業性を向上させ,独自の左官技術と文化を構築するに至った。主成分となる消石灰の生成過程や漆喰の硬化,漆喰が住宅環境にもたらす安全性や機能性などについて紹介する。口絵9ページ参照。
著者
太田 直一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:24326542)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.182-188, 1972-06-20 (Released:2017-09-22)

土壌および生物は, 環境問題を考える場合の最も身近なものとして, "汚染"を判断するための基礎となるデータ(バックグラウンドまたは正常値)が望まれている。しかし, 土壌も生物も非常に複雑多様な系なので, たとえ問題を構成元素だけにかぎっても, 有効なバックグラウンド像を得ることはきわめて困難なのが実情である。本項では, 土壌については構成物質と組成について, また生物については構成元素と生物体への元素の蓄積について, それぞれ概要をのべることとする。
著者
梅崎 芳美
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.856-859, 1961-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1

着色水中のケイ酸の比色定量について検討した。試料溶液を硫酸酸性で,常温において過マンガン酸カリウム溶液と処理して有機物を分解し,亜硝酸ナトリウムによって脱色を行なう。この操作によって天然着色水中のフミン酸,また人工着色水たとえばパルプ廃液などもほとんど完全に分解される。以下モリブデン黄法によってケイ酸の比色定量を行なった。常温,過マンガン酸カリウム分解においてはケイ酸の溶存状態がまったく変化しないことを確認した。
著者
齊藤 幸一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.432-435, 2017-09-20 (Released:2018-03-01)
参考文献数
8

原子価殻電子対反発(VSEPR:valence shell electron pair repulsion)モデルは,分子をルイス構造(電子式)で表し,電子対間の反発を考えることにより,分子の形を定性的に簡便に予測できる。この考え方は,化学基礎の教科書にも登場し,大学入試問題にも出題されている。分子の構造を丸暗記に頼らず予測できるVSEPRモデルや,それを考える上で前提となるルイス構造,VSEPRモデルより理論的な背景をもつ混成軌道の概念などを高校現場の経験をふまえ,いつどこまで教えるのか振り返ってみた。