著者
田中 清文 松原 義治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.12, pp.1883-1887, 1976
被引用文献数
6

カリオフィレン[1]とクロロ酢酸類(モノ,ジおよびトリクロロ酢酸)の等モル混合物に水を加えるか,あるいは加えないで室温~100℃で2~32時間かきまぜて水和反応を起こさせた。その結果,4種のアルコール類(収率最高75%)が得られ,物理定数,IR,NMRおよびMSの測定結果からそれらは,β-カリオフィレンアルコール(カリオラン-1-オール)[1a],ジヒドロネオクロベン-4β-オール[1b],ジヒドロカリオフィレン-4-オール[1c]およびジヒド揖クロベン-9β-オール[1d]であることを確認した。通常[1a]が主生成物として得られ,特定の条件下その生成比は72%を示した。[1b],[1c]および[1d]は文献未載の新規セスキテルペンアルコールである。
著者
嵯峨 基生 庄野 利之 新良 宏一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.2225-2228, 1966-11-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
9
被引用文献数
5

シュウ酸アミドラゾンと二塩基酸クロリドの重縮合を検討した。モデル化合物として,シュウ酸アミドラゾンと塩化ベンゾイルの界面あるいは溶液反応でN-ベンゾイル-シュウ酸アミドラゾンを得た。この物質はジクロル酢酸のような強酸中で加熱するとフェニル-1, 3, 4-オキサジアゾール誘導体にすることができる。一方, 減圧下, 300℃ で加熱するとフェニル-1, 2, 4-トリアゾール誘導体に導くことがでぎた。シュウ酸アミドラゾンと種々の二塩基酸クロリドとの界面あるいは溶液中での重縮合で高分子量のポリ-N-アシルアミドラゾンを合成した。これらの方法で得られたポリ-N-アシルアミドラゾンをジクロル酢酸中で加熱すると対応するポリフェニル1, 3, 4-オキサジァゾールとなった。しかしながら, 真空下320℃ で加熱しても脱水環化によりポリフェニル-1,2,4-トリァゾールに誘導するのは困難であった。これらのことから,ポリ-N-アシルアミドラゾンの2次処理では脱アンモニア環化によるポリフェニル-1, 3, 4-オキサジアゾールの生成が脱水環化によるポリフェニル-1, 2, 4-トリアゾールの生成よりもおこりやすいものとおもわれる。
著者
橋本 茂 徳若 博司 永井 敏雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1973, no.12, pp.2384-2388, 1973

α-オレフィンスルホン酸のNMRスペクトルを測定し解析した結果,アルケンスルホン酸,1,3-および1,4-アルカンサルトンを含んでいたが,アルカリ条件下で加水分解したa-オレフィンスルホン酸ナトリウムにみられるようなLアルケンスルホン酸を含有してないことを見いだした。また,5.06,3.43ppmに帰属できないピークがあったが,これらのピークを帰属するためにいろいろ検討した結果このピークはdi-アルケンスルホン酸の生成と密接な関係にあり,アルカリ条件下での加水分解ではアルケンスルホン酸を与えることがわかった。この事実と化学シフト位置などから考え,長鎖a-オレフィンスルホン酸でいまだ見いがされていなかった1,2-アルカンジ-サルトンの>CH-O,-CHズSOゴプロトンによるピークと帰属することができた。この知見はスルポソ化における初期生成物,スルホン化機構の研究に役立つと考えられる。<BR>NMRスペクトルの解析結果に基づぎ,a-オレフィンスルホン酸中のアルケンスルホン酸,アルカンサルトンおよび1,2-アルカンジ-サルトンを簡単に定量分析することができ,この方法は,炭素鎖長分布のあるAOS酸にも適用できる長所を有する。
著者
山本 憲子 中塚 えりか 白井 恒雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.8, pp.1226-1230, 1983-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
2

大気中のアンモニア定量法として,インドフェノール吸光光度法をとりあげ,分析感度および再現性の向上を目的として,最適諸条件を決めた。とくに,発色液の最適pHについて検討を行ない,リン酸緩衝液を用いてpH10.5~11.7に調節することにより,感度および精度ともすぐれたものとなり,大気中アンモニアの測定に適用が可能となった。また,発色温度を通常の室温から40~50℃に上げることにより,発色時間は90分間から30分間となり,分析操作も迅速化された。大気捕集法としてインピンジャー法について検討を加え,大気中濃度レベル(1.0~15.0ppb)においても,インピンジャー2本を用いれば再現性のよい90%以上の捕集効率が得られることが確認された。本法により,横浜市において20箇月間測定をつづけた。アンモニア濃度は夏期には10ppb以上となり,一方,冬期には1~2ppbとほぼ一定した低い値を示した。すなわち,季節によるアンモニア濃度の変動は気温の変化とほぼ同様の動きを示し,このことからもアンモニアはおもに土壌から発生していると思われる。
著者
古川 安
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.274-277, 2007
参考文献数
3
被引用文献数
1

米国デュポン社の化学者ウォーレス・カローザースと彼によるナイロン発明の物語は,わが国でもさまざまなところで広く語り継がれてきた。しかし,そこでは多くの事実に反する記述がひとり歩きしている。本稿では,デュポン社の基礎研究の設立経緯,カローザースの研究目的,ナイロンの語源,ナイロンのキャッチフレーズ,カローザースの自殺などについて,最新の研究成果を踏まえて伝説と真相の違いを明らかにする。
著者
妹尾 学
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.315-319, 1987-08-20 (Released:2017-07-13)

物理・化学の分野でいろいろな記号が用いられている。記号は物理・化学量や単位のシンボルとして使われるものであるから, 容易に連想できる文字が望ましい。しかし改めて記号を見直してみると, その生い立ちがはっきりしないものが意外に多い。現在, 自然科学の分野で国際単位系による記号の統一が進められている。推奨されている記号を中心に, 関連する話題を集めてみた。
著者
高橋 三男 大谷 龍二 大谷 龍二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.252-255, 2006

このたび,早稲田大学の松本和子教授が,日本人として2人目,女性化学者としては初めてIUPAC(International union of Pure and Applied Chemistry : 国際純正・応用化学連合)次期会長に就任が決定しました。本誌編集員が松本教授室を訪ね,IUPACの組織内容,具体的な活動内容について説明いただき,会長の仕事や今後の抱負を伺った。
著者
山西 芳裕
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.66-69, 2019-02-20 (Released:2020-02-01)
参考文献数
10

近年の生命医科学では,遺伝子,タンパク質,化合物,薬物,疾患に関するビッグデータが得られるようになってきた。ビッグデータ解析から新しい医学的発見や新薬開発につなげる研究が期待されている。本稿では,様々な医薬データを機械学習(人工知能の基盤技術)で有効活用した疾患研究や創薬応用を紹介する。特に,既存薬物から新規効能を発見するドラッグリポジショニングに基づく創薬への応用を解説する。
著者
武政 三男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.738-741, 2004-11-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3

近年,ハーブは,健康によい薬草として注目されている。日本におけるスパイスのイメージは刺激物であり,ハーブのイメージは身体によく,香りがあり,かつ食べられる草なのである。しかしスパイスの多くは刺激がな < ,また食用とされる多くのハーブは食品の分類(加工食品)ではスパイスなのである。生活習慣病予防や高齢者社会での食生活などの見地から,スパイスに対する期待は今後ますます高まるものと予想される。スパイスを単なる調味料としてではなく,食品機能面をサイエンスでみてみると面白い効果が数多く認められる。ここではスパイスをどのように活用したらよいか,さらに新たな活用化の可能性について提案してみたい。
著者
藤郷 森 田中 甫 高嵜 裕圭 遠藤 敦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.11, pp.1949-1956, 1989
被引用文献数
1

従来,著者らは鹿沼軽石層から分離分級した非晶質講料が広い比表面積を有することに注目し,化学工業用材料としての活用をはかる目的で検討して来ている。今回,+15μmの粒子径を有する非晶質試料の粒表面および構造特性を明らかにする目的で,0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いるHashimoto-Jacksan法に準じた方法で化学処理し,化学処理した試料は電荷およびイオン径を異にする三種の吸着質を用いる液相吸着法によって,表面特性の変化を検討した。<BR>非晶質試料は団粒構造を形成しているが,化学処理することによって表面特性を異にする最低,二つの部分,すなわち陰イオン類の吸着能に富む粒子表面層と陽イオン類の吸着能に富む粒子内部層とから構成される。粒子表面層は細孔径め細かいアルミニウ4を基質とする物質から構成され,この物質は粒子全体を被羅した状態で団粒構造を支えた状態で存在する。一方,粒子内部層曝メテレンブルーのような大きなイオンをも吸着することから比較的太い細孔を有すること,さらに少量の造岩鋤類を含むことが明らかとなった。吸着質の電荷から判断して,水溶液中では,粒子表面層は正に,粒子内部層は負にそれぞれ帯電しているものと考えられる。<BR>さらに,特性を異にする吸着質を用いる液相吸着法は,非晶質試料などX線粉末回折法などの適用困難な試料の特性変化を解析する手段として有効であることが明らかとなった。
著者
野口 大介
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.254-257, 2019-06-20 (Released:2020-06-01)
参考文献数
10

授業実践の探究的な試みとして,マグネシウムと塩酸の反応で水素を発生させ,水素の物質量をどれだけ正確に求められるかを,ドルトンの分圧の法則を用いて実践した。金属樹を題材とした課題研究では,金属樹が回転運動する現象,次々にちぎれる現象について新規に見いだし,研究指導を通じて一定の成果を上げた。