著者
松浦 紀之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.298-301, 2015-06-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
2

酸化還元反応は,基本的な化学反応の一つであり,この反応を利用した酸化還元滴定は,古くから過マンガン酸カリウム水溶液による鉄(II)化合物の定量などに利用されてきた。高価な装置が不要であり,測定精度が優れているため,現在,様々な化学物質の分析法として広く用いられている。高等学校においても,反応の量的関係を扱う実験として多くの学校で行われている。本稿では,高等学校での「酸化還元反応」の教科書での取扱いや,酸化還元滴定を実施する上での工夫を紹介する。
著者
秋鹿 研一 小山 建次 山口 寿太郎 尾崎 萃
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.3, pp.394-398, 1976
被引用文献数
2

200~300℃,全圧600mmHgの条件でもっとも活性の高いアンモニア合成触媒であるRu-AC(活性炭)-Kと,それについで活性の高いOs-AC-Kの製法と活性の関係を検討した。Kは一定量(約1mmol/9-cat)添加後はじめて活性が現われ,KがACにほぼ飽和吸着すると考えられる量,約 1mmol/g-cat,まで活性は直線的に増加する。RuCl<SUB>3</SUB>-ACの還元のさい,水素は当量の6倍も消費する。過剰の消費水素はACとの反応およびACへのスピルオーバーによると考えられるが,その量は活性に影響しない。還元にさいしHClが発生するが,一部の壇化物イオンは触媒上に残る。<BR>Ru-AC-Kの活性は,Ruの露出表面積に対応すると考えられるRu-ACへのCO化学吸着量にほぼ比例する。Ru塩はRu/ACが約 3wt%まではACによく吸着する。CO化学吸着量も 3wt%まではRu量にほぼ直線的に増加する。しかし3wt%を越えるとRu塩は吸着しにくくなり,Ruの分散性も低下する。Ru(2,3価)またはOs(3,4,6,8価)について酸化数の異なる塩を出発原料とした触媒の間でRuまたはOsの活性は変わらなかった。また活性炭を硝酸,アンモニア水,あるいはその両者により処理した場合も得られるRu触媒のCO化学吸着量に影響なかった。
著者
齋藤 努
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.300-303, 2000-05-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

考古遺物の原料産地の推定は, その生産地とあわせて考えることによって原料の供給と生産, ものや人の移動や交流, 技術や文化の伝播などの状況を解析するのに役立つ。自然科学的な産地推定法の一つとして鉛同位体比法があり, 古代青銅器などの分析に適用されている。ここではその方法の原理とこれまでの成果, 古代銭貨である皇朝十二銭の分析結果について紹介する。
著者
朽津 耕三 田中 充
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.636-640, 1998
参考文献数
10
被引用文献数
1

アボガドロ定数は, 19世紀後半からマクロの物理現象に現れる分子の大きさと単位時間の衝突回数などを用いて推定された。定量的な測定はおもに20世紀に入ってから行われ, 1910年代に, ファラデー定数と電子の電荷の比などに基づいて, およそ6.0×10^<23>mol^<-1>であることがわかった。1940年代には3桁目まで, 最近では6桁目まで正確な数値が得られている。現在の値はおもにケイ素単結晶の格子定数・密度・モル質量の測定に基づくもので, 国際協力のもとにさらに測定の信頼度を向上させる努力が続けられている。もし将来8桁目まで信頼のおける測定値が得られたら, キログラムの国際標準は原子質量で定義され, kg原器は博物館に移される日が来るかも知れない。
著者
吉井 善弘 伊東 昭芳 平嶋 恒亮 真 鍋修
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.1, pp.70-74, 1985-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

フェノールの硫酸によるスルホン化とヒドロキシフェニルスルホニル化を行ない反応温度と配向比の関係を調べた。その結果,スルホン化では高温になるほど動力学的支配による配向比および熱力学的支配匿よる配向比(o/p比)は減少した。一方,スルホニル化では高温になるほど,動力学的支配による配向比(2,4'/4,4比)は減少するが,熱力学的支配による配向比は増加することが判明した。スルン化,スルホニル化の等運温度ばそれぞれ -24,36℃ であった。これらの結果はスルホン化,スルホニル化はともに, o-位, p-位への反応の等速温度が異常に低く実際的な反応は等速温度より高い条件で行なわれていることおよび o-フェノールスルホン酸が p-異牲体より安定であり,ジヒドロキシジフェニルスルホンでは逆に 4,4'-異性体が 2,4-異性体より安定であることに基因することを明らかにした。
著者
谷崎 義衛 小林 映章 安藤 遙
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.445-450, 1959-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
8

ポリビニルアルコール水溶液,およびポリビニルアルコール膜中におけるヨウ素の吸収スペクトル,あるいは2色性をいろいろの条件で測定した・220,290および360mμ 付近の吸収帯は,測定したすべての条件のもとで観測されるが,460と620mμ 付近の吸収帯は特定の条件のもとでのみあらわれる。220mμ の吸収は1-によるものであり,可視部の吸収はかなり長い多ヨウ素鎖(イオン)によるものである。290mμ と360mμ の吸収は,それぞれ別個のヨウ素鎖イオンによるものと推定され,2色性による簡単な解析の結果によれば,これらの長さの比はほぼ2:3である。
著者
池田 光治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.114-115, 2006-02-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4
著者
橋谷 元由
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.300-301, 2018

<p>反応によって化学製品を製造する場合,反応器からは求めようとする製品の他に副生物や未反応の原料が出てくる。したがって,製品を得るためには分離精製が必要になる。分離操作の中で工業的に最も使用されている蒸留について,そのしくみと蒸留塔について概説する。</p>
著者
菅披 和彦 藤井 綾子 加藤 俊作 水口 純
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.1238-1242, 1969-06-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

この研究では黄色亜酸化銅と赤色亜酸化銅の相互転換の可否を確かめ, その結果に基づいて, 黄色亜酸化銅から赤色亜酸化銅の製造条件を明らかにすることを目的とした。赤色亜酸化銅を摩砕すると, 粒子が細かくなるにつれて, その色は黄色に変化した。黄色亜酸化銅を窒素ふん囲気中で900℃に,または蒸留水中で290℃に加熱すると,その色は赤色に変化した。この赤色亜酸化銅は成長した大きな粒子であることが電子顕微鏡観察によって確かめられた。X 線回折の結果, 両者に差異が認められず, 粒子の大きさにのみ差異が認められることから, つぎのように結論された。亜酸化銅の色の相違は粒子の大きさの差異によるものであり,微細粒子は黄色を,粗大粒子は赤色を呈し,相互に転換できることがわかった。各種の水溶液中での加熱の場合,黄色亜酸化銅は蒸留水を用いた場合にのみ赤色亜酸化銅へ転換した。塩化ナトリウムの中性またはアルカリ性水溶液を用いた場合には,亜酸化銅の溶解度が大きいにもかかわらず,赤色亜酸化銅への転換は困難であった。このことは亜酸化銅を溶解した水溶液の紫外吸収スペクトルの測定結果から推察される可溶性錯体の生成と関係があるように思われる。上述の結果に基づいて, 黄色亜酸化銅の水熱処理による赤色亜酸化銅の製造条件について検討し, 加熱温度が高いほど短時間に粒子成長が起こり,赤色亜酸化銅が得られることを明らかにした。

1 0 0 0 OA 蒸留のしくみ

著者
橋谷 元由
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.300-301, 2018-06-20 (Released:2019-06-01)
参考文献数
5

反応によって化学製品を製造する場合,反応器からは求めようとする製品の他に副生物や未反応の原料が出てくる。したがって,製品を得るためには分離精製が必要になる。分離操作の中で工業的に最も使用されている蒸留について,そのしくみと蒸留塔について概説する。
著者
内藤 周弌
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.464-467, 2000-07-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3

高校生に, 簡潔に「触媒作用の本質」を教えるのは難しいため, 高校の教科書では抽象的に「…は, 触媒を用いて合成される」といった記述が目立つ。しかし, 地球規模での環境問題の解決や石油の枯渇に伴う新しいエネルギー資源の創製のために, 将来, 触媒が果たさねばならない役割は益々大きくなっていくであろう。今こそ, 21世紀を担う高校生に是非「触媒の面白さと重要性」を生きたかたちで教えて頂きたいと思う。本稿はそのような目的の一助になればという趣旨で書かれたものである。
著者
瀧本 真徳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.140-143, 2015-03-20 (Released:2017-06-16)

現在では有機化合物の構造確認は核磁気共鳴スペクトル法や赤外吸収スペクトル法,精密質量分析などの機器分析によって行うことが多い。しかし,有機化合物に含まれる官能基の反応性を利用した定性試験や誘導体化による確認法は高価な分析機器を用いずとも簡便に実施することが可能であり,有機化学の実験実習として有用である。本稿ではそのような官能基などの確認法のうち,アミンとカルボン酸に関してよく用いられるものを紹介,解説したい。
著者
長谷 昌紀 羽山 誠 山添 昇 清山 哲郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1633-1637, 1967-10-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
20
被引用文献数
4

X線回折(粉末法)によって硝酸アンモニウムの各結晶相の安定領域および準安定領域における格子定数および熱膨張を測定した。各相の熱膨張の異方性は結晶構造における硝酸イオンの方位と強い関連性を示し,硝酸イオンの回転振動の寄与を考えると理解できる。各安定転移およびIV-II準安定転移は体積変化のとびを伴い1次転移である。一方V-II転移では格子定数(V相はII相の単位格子に対応する準単位格子を用いる)の不連続的変化は認められない。しかしc軸の熱膨張率は不連続的に変わることを明らかにしたので,比熱の測定結果も併せ考えるとV-II転移は2次転移である。実験結果にもとづき硝酸アンモニウムの相転移を水素結合の観点から考察した。
著者
吉野 彰 大塚 健司 中島 孝之 小山 章 中條 聡
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 : 化学と工業化学 = Journal of the Chemical Society of Japan : chemistry and industrial chemistry (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.8, pp.523-534, 2000-08-10
参考文献数
18
被引用文献数
3 2

携帯電話,ノートパソコン,カムコーダー等の電源として広く用いられているリチウムイオン二次電池の開発経緯と技術動向について述べる。導電性高分子ポリアセチレンの研究がこのリチウムイオン二次電池の開発の原点であった。ポリアセチレンを二次電池の負極に用いようとの試みが炭素質材料負極へと展開し,ほぼ同時期に見いだされた正極材料であるリチウムイオン含有金属酸化物LiCoO<SUB>2</SUB>と組み合わされ,現在のリチウムイオン二次電池が完成した。商品化されて以降の電池特性の改良,特に容量の向上は著しく,現在では商品化当初の約2倍になっている。この容量向上は主として負極炭素質材料の改良により達成されてきた。この背景には&pi;電子化学という新しい学問領域の進歩があり,次々に新しい炭素質材料が開発されてきた。<BR>今後,これらの改良開発によりリチウムイオン二次電池の特性はさらに改善されていくものと思われる。