著者
原田 馨
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.422-427, 1998-07-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
12

ベンゼンの環状構造を提出したA.ケクレは才能豊かな努力家であり, 実験家というよりは理論家であった。ベンゼンの構造がどのような過程を経て生まれたかということは必ずしも明かではない。ケクレはベンゼンの環状構造を夢の話と結びつけたので, 彼の構造論の理解には夢の分析が必要となる。本稿では当時の化学理論にケクレが新しく加えた学問的貢献, 芳香族化合物の化学が当時の化学工業とタイミングよく相補的に発展したケクレの幸運と栄光について述べる。また蛇の夢の話について触れると共に, ケクレと同じように有機化学構造論を築こうとした不幸な若き化学者A.S.クーパーについて一言する。
著者
佐々木 和夫 九内 淳堯 妹尾 菊雄 河野 之伴
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.6, pp.966-973, 1980-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19

溶融炭酸塩を反応媒体に用い,二酸化炭素と炭素から一酸化炭素を生成する反応を700℃付近で行なわせることを試みた。それにさき立って数種の炭酸塩と炭素との反応を試みたところ,いずれの塩でも同温度での単純な固/気反応よりはるかに速い速度で一酸化炭素発生がみられた。反応はM2CO3+C=M2O+2COと考えられるが,この反応は熱力学的には自発反応ではない。しかし.炭酸塩そのものの熱分解が既往の熱化学値以上に進行するので,熱分解で生じた二酸化炭素が一酸化炭素に転化する経路をとるものと考えられる。 三元アルカリ金属炭酸塩の融体中に底部から二酸化炭素を供給し融体中に分散している炭素粒と反応させることにより気体二酸化炭素からの連続転化実験も行なった。容易に定常状態が得られるので,単純な速度解析が可能であり,擬一次速度定数を決めることができた。本報の結果は,実用反応としてまだ不十分であるが改善の可能性が大きい。
著者
岩田 久道
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.404-407, 2019-09-20 (Released:2020-09-01)
参考文献数
4

生徒自身が実験プロセスをくみ,それを実践させるにはテーマの選定が重要になる。高校現場ではなかなか行えない単元である高分子分野の最後のまとめとして,生徒に「5種以上の合成高分子を各班で用意し,その判別と分離法を各物質で2種以上行いレポートせよ」という課題を課している。教師が気づかない様々なものを準備し,独自の分離法を提案してくる。その中から得られた新たな発見と,この実験後に生徒がどのような変化を見せるかをここで紹介する。
著者
香田 智則 西岡 昭博
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.488-489, 2019-10-20 (Released:2020-10-01)
参考文献数
5

小麦粉はクッキー,ケーキ,ドーナツなどのスイーツを作るためには欠かせない食材となっている。しかしながら,小麦アレルギーや小麦粉の生地に含まれるグルテンが引き起こす健康上の症状への対応から,小麦を使わないグルテンフリーの食品が注目を集めている。ここでは,我々が提案してきた小麦粉の代替えとして米粉を用いる新たな手法について述べる。小麦粉に比べて粘り気の少ない米粉の生地を使う際には,アルファ化した米粉を用いることが有効である。アルファ化した米粉を考える上で,デンプン分子をほどくことが基本になっていることを概説する。
著者
荘司 隆一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.138-139, 2018-03-20 (Released:2019-03-01)
参考文献数
4
著者
出川 哲朗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.296-297, 2016

<p>曜変天目は世界に3碗しか現存せず,そのすべてが,国宝に指定されている。宋時代に建窯で焼成されたもので,南宋の宮廷でも使われ,日本には室町時代にもたらされ,徳川将軍家にも伝えられた。この曜変天目の釉上に丸い斑文があり,その周囲が青く光り輝くのを特徴としている。この青く見える部分は固有色ではなく,構造色と考えられ,現在その解明が進められている。</p>
著者
平野 誉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.376-379, 2016-08-20 (Released:2017-02-01)
参考文献数
8

化学発光と生物発光は化学反応で光子を生成する。この魅力的な発光反応は分析技術から化学教育まで重要な役割を担っている。様々な分野での発光反応の利用・応用を拡げるには反応機構の理解が不可欠である。本稿では,励起分子を与える化学励起過程を含め,発光反応の特色につながる反応の仕組みについて解説する。
著者
大庭 有二 小門 宏 井上 英一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.7, pp.1209-1212, 1974

さきにも報告のした陽極の還元力を酸化亜鉛の光電導により制御して,電解反応により画像形成を行なわす電概論電子写真法り塩化ニッケル,塩化アンモニウム,チオ硫酸ナトリウムからなる現像液は,中性付近でもっとも高いニッケル析出濃度を示し,酸性側ほどニッケル析出効率が下がった。約pH 6以下では現像液が疲労しやすく,この原因は,申性以上で生成するニッケルアンミン錯体が電解反応に関与するためと推定した。ニッケル析出反応の促進剤であるチオ硫酸ナトリウムは,10-s mol/1までニッケル析出反応を増加させる作用に寄与したが,それ以上の濃度では,アルミニウム基板とニッケルイオンの直接反応を増加させる原因となった。これらの現像液中で測定した酸化亜鉛と接触したアルミニウム基板の電位は主としてアルミニウムとアルミニウムイオンの平衡と,アルミニウムイオンと塩化物イオンの平衡関係によりなり立ち,塩化物イオン濃度の関数であると推定した。この電位の安定性は,アルミニウムと遊離ニッケルイオン(アクア錯体イオン)との直接反応による電荷消費が原因と考えられ,遊離のニッケルイオンの減少により電位は安定化した。
著者
海江田 直子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.426-427, 2018-09-20 (Released:2019-09-01)
参考文献数
6

サリチル酸とその誘導体の実験として,市販薬のアセチルサリチル酸含有の解熱鎮痛剤を出発点とし,途中サリチル酸を経由して,消炎鎮痛剤のサリチル酸メチルを生成する実験1)を紹介する。
著者
三藤 萬衛
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.720-736, 1917-07-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
2

タンニン酸、没食子酸及び焦性没食子酸は同一の原料より系統的に製造せらるゝものにして之れが最良の原料たる五倍子は日本並に支那に於て最も豊富にして産量も亦僅少にあらざるのみならず容易に増加せしめ得べし又以上の三製品は多くの用途の外染料及び醫藥の原料たるを得るが故に是等の製造試驗は誠に興味あるものなるべし然るに我國に於ては原料産出に就きては相當の注意を拂はれたるも製造に關しては只大阪衛生試驗所臨時製藥調査所に於ける研究が大正五年二月四日並に大正五年九月六日の官報にて發表せられ居るに過ぎず故に余は此の問題に就きて少しく試驗し稍見る可き結果を擧げ得たれば以下項を遂ふて其の概略を報告せんとす
著者
横関 健三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.478-482, 1999-07-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
6

グルタミン酸発酵が誕生して約40年が経過した。この間, アミノ酸の製法開発は発酵法と酵素法を中心にめざましい発展を遂げ, 現在ではタンパク質を構成する20種類の天然型アミノ酸はもとより, 非天然型アミノ酸の製造も可能となった。グルタミン酸発酵の生誕以来, 数多くの技術革新に支えられ, アミノ酸の世界市場は1500&acd;2000億円規模を形成するに至った。本稿では, 工業的な観点からの代表的な製造法を紹介する。
著者
広瀬 三夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1244-1247, 1956-11-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
39
著者
太田 道也 大谷 杉郎 飯塚 晋司 沢田 剛 小島 昭
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.6, pp.975-980, 1988

さきに報告した, ピレン, フェチントレン混合物を原料とし, ベンゼンジメタノールのジメチル置換体 (DM) を橋かけ剤とする COPNA 樹脂を用いて, 最高 2500℃ まで加熱し, 炭素化処理した。そのさいの樹脂の構造変化を調べ, DM 系樹脂の炭素化機構を PXG 系の場合と比較検討した。合成した DM 系樹脂は 120℃ で20時間硬化したのち, 200℃ で1時間後硬化し, これを炭素化の出発原料とした。加熱処理は, 窒素気流中で 1400℃ までは 5℃/minの昇温速度で, 1400 から 2500℃ までは 20℃/min で行なった。<BR>DM 系は PXG 系と異なり, 450℃ で完全に液化した。そして, この液相状態がみられる温度域では, 樹脂中に光学的に異方性を示す液晶部分, いわゆるメソフェーズが観察された。2500℃ までの各温度で加熱処理した樹脂炭の文線回折測定の結果, DM 系は典型的な易黒鉛化性挙動 (2500℃ 処理において, d<SUB>(002)</SUB>=0.336nm, Lc=33nm) を示すことがわかった。