著者
中林 誠一郎 曽越 宣仁
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.8-11, 2006
参考文献数
3
被引用文献数
1

液体の水は我々にとってなじみの深い物質であると同時に,地球環境の維持に大切な役割をもっている。水の興味深い物性を決める最も大きな要因は水素結合である。磁性の観点から水を見ると,水は磁場とほとんど相互作用しない平凡な物質である。しかし10Tまでの非常に強い磁場中に水をおいて,精密にその性質を調べると,興味深い磁場への応答性がうかがえた。従来の水の研究について概観しつつ,筆者らの新しい知見について解説する。
著者
高橋 浩 西村 陽一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.138-142, 1969-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
2

結晶度の低いハロイサイトから合成したA型ゼオライトの吸着特性を容量法およびスプリングパランス法によって調べた。ハロイサイトから合成したA型ゼオライト(ゼオライトA')の吸着特性はモレキュラーシープA(M.S.A)の吸着特性と異なる。すなわち,ナトリウム型において,モレキュラーシーブAはn-パラフィン(>C3)を吸着しないのに対して,ナトリウムーゼオライトA'はかなりの量のn-パラフィンを吸着する。またカルシウム型において,モレキュラーシープAはイソパラフィンを吸着しないことが知られているが,カルシウムーゼオライトA'はイソブタンを吸着する。これらの実験結果はゼオライトA'の平均細孔が対応するモレキュラrシープAの細孔より大きいことを示している。化学分析その他の結果から,原料ハロイサイト中に不純物として含まれていた鉄がゼオライト構造中に残っており,ゼオライトA'とモレキュラ-シ-ブAの吸着特性の相違はアルミノケイ酸塩骨格中の鉄の置換によるものと考えられる.
著者
笠野 雅信 松原 義治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1977, no.10, pp.1502-1504, 1977

α-セドレンの四酢酸鉛による酸化を60℃およが80℃で行ない,5-セドラノン[1],5-インセドラノン[2],5-アセトキシー5-セドレン[3],5α-アセトキシー6-セドレン[4],6α-セドラナール[5],13-アセトキシー5-セドレン[6],6β-アセトキシセドラン[7]および5,6-ジアセトキシセドラン[8]の8種の酸化生成物を得た。また,反応温度115℃では[3]~[7]の5種の酸化生成物を得た。これらの反癒生成物の構造をIR,NMRおよびMSスペクトルから明らかにした。
著者
八木 修 清水 駿平
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.1, pp.74-78, 1995-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12

塩化物イオソを含まない,高純度な水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を合成した.オートクレープを用いトリメチルアミンと炭酸ジメチルをメタノール中で反応させ,炭酸テトラメチルアンモニウムメチルを得た.この場合,トリメチルアミンと炭酸ジメチルとのモル比を2としたが,炭酸塩は得られず,1対1付加物である炭酸メチル塩が得られた.この炭酸メチル塩を加水分解し,炭酸水素塩を得た.更にこの炭酸水素塩を,陽イオン交換膜を配した電解層を用いて電気分解し,目的の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を効率良く得た.炭酸水素塩を電気分解した場合,他の塩類,例えばギ酸硫酸,塩化物を電気分解した場合と比べて,電流効率の低下という現象は見られず,効率良く電解生成物が得られた.このような電流効率が良い理由として,炭酸水素塩の場合,他の塩類と異なり,陽極液中に酸性物質が蓄積されないためである,と推察した.このようにして得られた水溶液中の金属イオン濃度は,すべて10ppb以下であった.また,炭酸塩の濃度は10ppm以下であった.
著者
細田 喜六郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1869-1872, 1961-10-01 (Released:2011-09-02)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本報告はPVC混和物成形品の亀裂現象に関する基礎的知見を得るために,極限伸長率と伸長温度の関係ならびに残留歪と亀裂発生温度の関係におよぼす,PVCの平均分子量,可塑剤含有量,加工条件などの影響を検討したものである。極限伸長率はおよそ75~90℃で最大となり,亀裂はこの温度を超えてから発生する。PVCの平均分子量が大きくなれば,極限伸長率は増大し,亀裂発生温度は上昇する。可塑剤含有量が増加するにつれて,亀裂発生温度は低下し,極限伸長率は低温においては著しく増大し,高温においては僅かに減少する。また熱ロールによる混練においては,最大の極限伸長率と最高の亀裂発生温度を与える最適の混練条件がある。
著者
竹内 孝夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.234-235, 2009
参考文献数
2

超伝導線材は電気抵抗ゼロのままで電流を流せて磁場も発生できる。酸化物系線材による超伝導送電の実証試験が開始された。永久電流を利用して定常磁場を発生する核磁気共鳴(NMR)分光分析器等には,当面,金属系線材が使用される。核融合,高エネルギー粒子加速器などの大型応用機器には省エネルギーの観点から超伝導線材の利用が不可欠である。
著者
松本 泰正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.56-59, 2017-02-20 (Released:2017-08-01)
参考文献数
6

洗たく洗剤の開発にLCA(ライフサイクルアセスメント)を取り入れ,洗たくのすすぎを1回にすることで,消費者とともに洗たくに関わる環境負荷低減を実現した。社会の変化を先取りして環境性能,洗浄性能を同時に満足させるイノベーションがどのように生まれたのかを紹介する。
著者
小林 良生
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.240-242, 1988-06-20 (Released:2017-07-13)

和紙と墨は1000年以上の風雪に耐えた記録材料である。実用性からみれば, 近年では冠婚葬祭など特別の行事にしか使用しなくなったが, 芸術のジャンルでは書に活かされている。紙を構成しているセルロースは陸上の植物を鉄筋コンクリートに例えれば鉄筋に相当し, リグニンはコンクリートに当たる。セルロースの中でも最も強靱な靱皮(じんび)繊維を美しく配列して作った紙が和紙である。"どこの国を振り返ってみたとて, こんな味わいの紙には会えない"とは柳宗悦の言葉であるが, この和紙以上の紙は活発な研究開発が行われている新素材を駆使してもできていない。一方, 墨の主要成分である炭素もまた最先端を行く新素材の一つである。白と黒のコントラストのきいたこの二つの記録材料が, なぜ今なおみずみずしい新しさを持ち続けているのか本稿で考えてみよう。
著者
松井 亨
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.326-329, 2017

<p>筑波大学理工学群化学類で実施される入学試験のうち推薦入試とAO入試を取り上げ,試験の内容・特徴と実施結果,それにより生じた課題を論じる。推薦入試では思考力や発想力に富んだ真面目な学生を,AO入試ではより自主性に富んだ学生が入学する傾向にある。これらの試験によって,通常のペーパーテストでは獲得しにくい層が取り込まれて,本学における多様な人材育成に貢献している。受験者の減少などの問題を抱える一方で,成績調査の結果では化学類においては入学経路に依存した大きな差異は見られないことから,さらなる人材の多様化を目指すためには今後これらの制度を活用した入試形態が望まれる。</p>
著者
佐藤 匡 高橋 一生 市川 修治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1984, no.1, pp.119-124, 1984
被引用文献数
1

D-グルコースおよびD-ガラクトースを塩化チタン(IV)存在下メタノール中で光照射するとC5-C6位の結合が選択的に開裂し,相当するペントジアルドース誘導体を与えた。この反応は,1)フラノシド構造への異性化,2)C5,C6一位のヒドロキシル基とチタンによるキレート生成,および,3)このキレート内における電子移動,により進行すると考えられる。本反応の選択性はこの反応が第一級ヒドロキシル基を含む1,2-ジオール系でもっともよく進行するためと考えられる。
著者
大江 孝明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.288-291, 2016-06-20 (Released:2016-12-27)
参考文献数
5

ウメ加工品の食味や香りは原料果実により左右されることから,筆者らは原料の違いと加工品品質との関係について梅酒を中心に調査した。その結果,熟度や大きさ等により食味成分や保健機能にかかわる有用成分量が大きく変動することを明らかにするとともに,これら成分量が多くなる原料果実の選び方や加工方法を明らかにした。
著者
時任 宣博 武田 亘弘
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.618-622, 1999-09-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
5

熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂は, フェノールとホルムアルデヒドから酸触媒または塩基触媒を用いて付加反応と縮合反応を繰り返すことにより合成される。酸触媒では, 付加反応よりも縮合反応が優先してまず直鎖構造のノボラックが生成し, さらに硬化剤と反応させることによりフェノール樹脂が得られる。これに対し塩基触媒では, 縮合反応は遅く付加反応が優先してまずレゾールが生成し, さらに加圧, 加熱することによりフェノール樹脂が合成される。酸触媒を用いた反応と塩基触媒を用いた反応の違いについてその反応機構を解説した。