著者
松浦 一雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.584-589, 1993

ハーバーとボッシュによるアンモニア合成触媒の発見のように, 昔から画期的な触媒の誕生は社会に大きな影響を与えてきた。とくに, 今世紀最大の発見のひとつともいえるチーグラー触媒の誕生により, ポリエチレンのようなプラスチック類が金属や木材など天然素材に代わって登場し, 我々の生活様式は一変した。しかし, 触媒のはたらきは長い間プラックボックスとされてきたのであり, 新触媒の誕生は偶然や意外性に支配されることが多かった。一体, 新触媒はどのような背景で生れ, 育っていったのだろうか?また, それとともに, 工業プロセスはどう移り変わったのだろうか?
著者
早川 典子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.60-63, 2007-02-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

文化財の修復では,古くから使われ,使用方法や使用後の変化について多くの経験が重ねられている材料が「伝統的な材料」として多くの場面で使用されている。このような材料は,勘や経験に基づいて安定して使用されているため,意外にもその化学組成が明確になっていない場合もある。中でも,古糊(ふるのり)と言われる糊は,甕に入れたデンプン糊を十年ほど保存して作られるもので,汎用性の高い他の糊とは異なり,書画の修復においてのみ用いられる特殊な材料である。この古糊の特徴について,近年明らかにできた化学的知見と,それをもとにした類似材料の調製について報告する。
著者
三澤 勝已
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.564-567, 2011-11-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

硫酸は工業薬品の中で重要な酸の一つであり,大量に生産されている。どの学校の実験室にも必ずあり身近な存在である。また,化学実験では何らかの形で登場してくる。それにも関わらず,授業では単に硫黄化合物の一種という程度の扱いでしかない。本稿では化学史上の硫酸を取り上げながら硫酸に対する認識を新たにし,硫酸の重要性や化学実験での役割をより深く考えていきたい。
著者
荘司 隆一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.604-605, 2015-12-20 (Released:2017-06-16)
参考文献数
2
著者
薄井 耕一 今福 繁久 小野 金一 吉川 貞雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.1, pp.34-41, 1983-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9
被引用文献数
2

感圧複写紙用発色剤として広く用いられているクリスタルバィオレットラクトン(CVL)の溶液中における酸または水による発色および減色ないし消色の挙動をUV,VIS,IR吸収スペクトルおよび1HNMR,13C-NMRの測定により検討した。併わせて類似の構造をもつクリスタルパイオレット(CV),マラカイトグリーン(MG),マラカイトグリーンラクトン(MGL)についても比較検討した。その結果,CVLの発色はラクトンの開環に基づくこと,ラクトンの開いたカルボキシル形ともとのラクトン形との問には酸濃度(強度)によって支配される一種の平衡関係が成立し,ある酸強度のところで,カルボキシル形対ラクトン形の比率が最大値を示し,ここで発色濃度は最大になる。さらに酸濃度が大きくなるとラクトン環が開いたまま減色することが認められた。一方,水によるCVL発色体(カルボキシル形)の減色ないし消色は環が閉じラクトン形にもどるためであることが明らかになった。
著者
大西 敦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.34-37, 2004-01-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
7

HPLCによる光学異性体分離,中でもキラル固定相を用いる光学異性体の直接分離技術は光学純度分析の主流であり,キラル化合物を扱う多くの研究者や技術者に役立っている。本稿では,光学異性体及び光学異性体の分析方法について説明した後,HPLCキラル固定相による光学異性体分離の概要と多様な構造を有する不斉識別剤とその特徴について概説する。最後に多糖誘導体系キラル固定相について簡単に紹介する。
著者
米沢 剛至
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.337, 2000-05-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
1

生徒は実験に飲食物がでてくるとたいへん喜び, 後々までよく覚えているので, 筆者としては, コロイドの生徒実験にも取り入れたいと考えている。水酸化鉄のコロイドと色合いが似ているので, 間違わないように注意しなければならない。
著者
武田 文七 山口 文之助
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1897-1904, 1959-12-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
20
被引用文献数
7

ビニル系,ゴム系,セルロース誘導体系,ポリエステル系,ポリアミド系からそれぞれ試料をえらび,水素,酸素,窒素,炭酸ガスの透過係数(P),拡散係数(D),溶解度係数(S)を温度を変え,圧力差77cmHgにて測定した。気体についてPもDも大体H2>CO2>O2>N2であり分子の大きさからのDの予想順位H2>O2>N2>CO2と一致しない。CO2のDの大きいのは,CO2が膜を拡散するとき,その長軸方向に位置をとり易いためである。Sは気体の臨界温度の高いほど大きい。CO2>O2>N2>H2の順序が予想され多くの膜についてそうである。膜からみた場合Pの大小の順序はDの大小の順序と大体一致するがSのそれとは一致しない。PおよびDの大体の順序は測定した膜について次のようである。天然ゴム,エチルセルロース,テフロン,ポリスチレン,ポリエチレン(比重=0.926),ポリプロピレン,ポリエチレン(比重=0.951),ポリ塩化ビニル,トリアセチルセルロース,ジアセチルセルロース,ジニトロセルロース,塩酸ゴム(ライファン),マイラー,ナイロン。後者ほど分子鎖空間がちみつで,熱運動による孔形成の確率が少ない。透過性と膜の構造との関係についてえられた結果を列記する。(1)高圧法ポリエチレン(比重=0.927)ほ低圧法ポリエチレン(比重=0.951)よりP,Dは大きい。(2)ポリエチレンを冷延伸するとP,Dは減る。(3)ポリエチレン膜にスチレンをグラフトさせると,スチレン%の増大によりPはます。(4)DOPにて可塑化したポリ塩化ビニルおよびエチルセルロースはDOP%増加によりDは増し,Sは減じ,Pは最小点をとおり以後増加する。(5)市販ポリ塩化ビニル膜のPも測った。含有可塑剤に影響される。(6)ポリ塩化ビニルー可塑剤系で2次転移点とPの間に特別の関係認められない。(7)天然ゴムを塩酸化するとP,Dは激減する。(8)DOP,ネオプレンの混入は塩酸ゴムのPをます。(9)ニトロセルロースは硝化度の増加とともにPはまし,水蒸気のときの逆である。(10)エチルセルロース>トリアセチルセルロース>ジアセチルセルロース>ニトロセルロースの順にPは減少する。(11)測定した試料の中では,ポリエステル(マイラー)とポリアミド(6-ナイロン)が最もP,Dが小さい。
著者
竹内 健
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.172, 2016-04-20 (Released:2016-12-14)
参考文献数
1
著者
中山 誠二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.372-375, 2018-08-20 (Released:2019-08-01)
参考文献数
9

レプリカ・セム法という新たな分析法を用いて,縄文土器の表面に刻まれた「圧痕」から,当時の人々が利用していた有用植物が数多く発見されるようになった。これらの植物種子の大きさや形態変化を分析した結果,エゴマやダイズ,アズキなどの特定植物が縄文人によって栽培され,日本列島独自に栽培化が進んでいたことが明らかになった。
著者
神谷 信行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.740-744, 1994-11-20 (Released:2017-07-11)

氷に塩を混ぜると温度が下がることは知っているが, どうしてだろうか。道路が凍結したときに道路に撤く融雪剤としての塩化カルシウムの働きは何だろうか。どちらも氷の融解現象をうまく利用したものである。保冷剤の中身はほとんどが水で, 水, 氷の熱容量が大きなこと, 大きな融解熱が使われている。ドライアイスは本当にドライなのか。その生成の秘密は。木枯らしが吹く寒い冬の戸外は絶対零度からすれば灼熱地獄。家の外からエネルギーを取り込むことはたやすいものさ。
著者
足立 吟也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.386-390, 1990-08-20 (Released:2017-07-13)

名画「風と共に去りぬ」といっても, もはや映画ではなくビデオの世界で, テレビと組み合わせたセットで楽しめる。衛星を使って世界の事件やスポーツ中継が私たちの目の前にテレビの画像として届けられてくる。我が国でカラーテレビの放送が始められたのは1960年であるが, それから30年, 今や世界第1位のテレビ受像機の生産国となった。このテレビの仕組み, 特にどのようにして"色"を出しているのかを中心に学んでみよう。
著者
平松 茂樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.136-139, 2015

高等学校段階において,アミノ酸およびタンパク質の検出反応として広く使われているニンヒドリン反応,ビウレット反応,キサントプロテイン反応について,その反応の原理を解説し,高校化学の授業で扱う際の留意点や実験における材料の例などを紹介する。加えて,キサントプロテイン反応において,ペプチド鎖のどのアミノ酸と反応しているのか,という点で,教科書の記載に差が見られた。このことについて検証を行ったところ,多くの高校教科書の説明には疑問があるのではないか,という結果が導かれた。
著者
小野 寿久 長沢 博貴
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.170-171, 2007-04-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3
被引用文献数
2

糖類の学習について,発展的な内容の生徒実験として未知糖類の判別試験を実施した。フェーリング液の還元など定番の反応のほか,バーフォード反応,セリワノフ反応といった,高等学校で扱わない定性反応を利用したが,生徒自身がいろいろと考えて実験に取り組むことができ,また糖類に関する理解も深まるなど利点も大きいことが分かった。