著者
栗原 敏夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.760-761, 1995-12-20 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
1

[工夫した点](1)試験紙を用いることで感覚効果を高めた。(2)希硫酸を陽極に銅板, 陰極に炭素棒を用いることで, 陽極で酸素の発生がなく銅が溶出する。(OH^-よりCuが酸化されやすい)陰極では水素発生の後, Cu^<2+>が還元され銅が析出する。
著者
谷口 彰良
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.212-215, 2007
参考文献数
16

気道粘液はその適度な粘性により気道におけるウイルス・細菌の排除をスムーズにしている。しかし,"かぜ"などの疾患では気道粘液の粘性に変化が現れ,いわゆる"たん"が発生する。その結果,ウイルス・細菌の排除が困難となり,病気の発生や悪化を招く。アミノ酸誘導体の一種であるL-カルボシステインは"たん"の粘性を正常に近づけ,病態を緩和することが知られている。最近の研究により,どのような作用機序で"たん"の粘性を正常に戻すかが明らかになりつつある。そこで,本稿ではこの化合物がどのように生体に作用するかを解き明かす研究の一部を紹介する。
著者
佐々木 茂貴
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.220-223, 2007
参考文献数
4

ゲノムの全塩基配列の解析によって,病気に関連する遺伝子の発見や治療薬の開発が促進されると期待されている。さらに,タンパク質にならないゲノム領域の多彩な機能の発見は生命科学研究に大きな変革をもたらしている。また,遺伝子の化学的本体であるDNA(デオキシリボ核酸)やRNAには一般的な右巻き2本鎖以外の様々な立体構造が含まれており,遺伝子発現の制御に重要な役割を果たしている。本稿では,DNAやRNAの配列や立体構造を区別して作用する新しいくすりの可能性について紹介する。
著者
益子 崇
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.216-219, 2007
参考文献数
3

蛋白質の構成成分であるアミノ酸は,エネルギー源または栄養素として不可欠であるが,脳内においては神経細胞と神経細胞の間の情報伝達を担う物質としての役割も持っている。グルタミン酸は神経伝達物質として働くことで記憶・学習にも関与する。一方で,統合失調症やアルツハイマー病などのさまざまな神経疾患において,脳内のグルタミン酸濃度のバランスが崩れていることが知られている。本稿ではアミノ酸,特にグルタミン酸の脳内における神経伝達物質としての役割を中心に紹介したい。
著者
小笠原 貞夫 高橋 茂行 深井 彰 中田 泰雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.2244-2247, 1969-10-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
6

各種金属酸化物を用いてプロピレンを気相接触酸化し,アセトンの直接合成反応を検討した。原料ガスとしてプロピレン,空気および水を用い,反応は常圧流通式固定床反応管を用いて行なった。アルミナに担持させたMo,Cu,V,Cr,Wの各酸化物の順にアセトン合成活性を認めたが, 特に, MoO3-Al2O3-触媒は選択的にアセトン合成活性を示すことがわかった。シリカやアルミニウムスポンジに含浸させた酸化モリブデンはアセトン合成活性を示さないが,アルミナに担持させると活性は著しく向上し,この触媒は酸化モリブデンとアルミナの二元機能触媒であることが帰納された。原料ガス中の水は燃焼反応を抑制し,生成物中に微量のイソプロピルアルコールや水素が存在することから,この反応はイソプロピルアルコールを経由する酸化脱水素反応であると考えられる。担体アルミナに対し,酸化モリブデン含量は約20wt%以上でほぼ一定の活性となる。最適反応温度は約300℃であり,使用触媒は500℃で空気により再生が可能であった。
著者
土田 英俊 真田 茎 森部 和彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.1449-1452, 1971-07-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
1

N, N, N', N'-テトラメチルエチレンジアミン (TED) と二塩化-p-キシリレン (XDC) の逐次メンシュトキン反応における重合速度を考察した。反応の進行につれ速度は小さくなるが, これは官能基濃度の減少, 生長鎖荷電部が末端アミノ基の窒素弧立電子対を部分的に引き寄せその求核攻撃力を弱めることにより二次反応速度定数が漸減するためと考えられる。溶媒効果を次表に示した。DMSO は ε の関連だけでは説明できない促進作用がある。これは分極している DMSOの δ+性イオウと XDC の塩素とが静電相互作用を及ぼし, C-Cl 結合を弛緩する過程が反応に関与するため TED の求核攻撃を容易にするからと考えられる。
著者
原田 明 蒲池 幹治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.7, pp.587-595, 1994
被引用文献数
1

近年,低分子化合物の分子認識について多くの研究がなされているが,生体系においては高分子による高分子の認識が生命を維持していく上で重要な役割を果たしている。著者らはホスト-ゲスト系による高分子の認識と高分子の認識に伴う超分子構造の構築について検討した。従来,シクロデキストリンの包接に関する研究は低分子化合物の研究に限られていたが,著者らはシクロデキストリンが種々のポリマーを取り込み包接化合物を形成することを見いだした。本報告ではシクロデキストリンと種々の非イオン性の水溶性ポリマーや疎水性のポリマーとの錯体形成について検討した結果を報告したい。特にシクロデキストリンはポリマーの構造や分子量を厳密に認識し,超分子構造を形成する。これらの超分子の構築方法や構造,性質や機能について検討した。またこれらの超分子構造を利用した鋳型反応による新規な化合物,ポリロタクサンの合成方法についてものべる。
著者
白岩 正 谷口 省三 井川 明彦 樫間 裕司 黒川 秀基
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.11, pp.1617-1622, 1983

(±)-α-メチルベンジルアミンの有機酸塩のラセミ体構造を調べ,優先晶出法による光学分割の可能性について検討した。塩形成に用いた有機酸は,ベンゼンスルホン酸(BS),p-メチルベソゼンスルホン酸(MBS),p-エチルベンゼンスルホン酸(EBS),スルファニル酸(SU),p-t-ブチル安息香酸(TBB),フェノキシ酢酸(PA),イソ吉草酸(IVA),ビバル酸(PI),メタクリル酸(MC)および2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(HMP)である。これらの有機酸塩のラセミ体と光学活性体の融点,溶解度および赤外吸収スペクトルの比較によってラセミ体構造を調べた。しかし,これらの方法では(±)-TBB塩のみがラセミ混合物であることが推定できただけで,その他の塩のラセミ体構造を推定することは困難であった。そこで,ラセミ体と光学活性体の融解エンタルピー(ΔHf)を比較し,さらにラセミ化合物の生成自由エネルギー(ΔGφ)を求めた。BS,MBS,EBS,SU,PA,MCおよびHMP塩においてはΔHf(±)>ΔHf(-)になったが,IVAならびにPI塩ではΔHf(±)<ΔHf(-)になった。しかし,これらの塩のΔGφ はすべて負の値を示したことから,その(±)-塩はいずれもラセミ化合物を形成していることがわかった。とくに,PI塩のΔGφ の絶対値はその他の塩のそれらにくらべてきわめて小さいので,(±)-PI塩は安定性の乏しいラセミ化合物であると推定されるTBB塩ではΔHf(±)<ΔHf(-)になり,ΔGφ の値も正の値を示したので,そのラセミ体はラセミ混合物であることが確認された。なお,以上の(±)一塩のラセミ体構造は,融点の二成分系状態図からも確認した。以上の結果から,(±)-TBB塩がラセミ混合物であることがわかったので,テトラヒドロフラン中,20℃で優先晶出法によって光学分割した。その結果,90%以上の光学純度の(-)-TBB塩を分割することができた。
著者
森永 直樹 内ヶ島 美岐子 Mohammad Abdur RAHIM 大西 一聡 高橋 和文 小杉 善雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.3, pp.467-469, 2002 (Released:2004-03-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2

The carboxylation of m-aminophenol with potassium hydrogencarbonate in aqueous solutions has been studied kinetically. The formation of 4-hydroxyanthranilic acid (4HAA) has been found for the first time in the carboxylation of m-aminophenol which gives only p-aminosalicylic acid (pAS) in the usual Kolbe-Schmitt reaction. Since 4HAA was easily decarboxylated, the product was removed from the reaction mixture after the carboxylation for 1 h at 60 °C. This method was repeated three times and 4HAA was obtained as a major product in 30.2% yield.
著者
奈良 賢一 渭東 祥高 真鍋 修
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.12, pp.2449-2451, 1974
被引用文献数
1

1-Amino-7-naphthol and 3, 5-xylidine were prepared by amination of potassium 2-naphthol8-sulfonate and m-xylene-5-sulfonate, respectively.<BR>Potassium 2-naphthol-8-sulfonate was allowed to react with sodium amide in liquid ammonia at 160&deg;C for 16 hours to give 1-amino-7-naphthol in a 84.5% yield, whereas sodium 2-naphthol6-sulfonate did not undergo the amination under these conditions.3, 5-Xylidine was obtained by the amination of potassium m-xylene-5-sulfonate at 155&deg;C for 9 hours in a 82.7% yield.
著者
鷲尾 圭司
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.202-203, 2015-04-20 (Released:2017-06-16)

和食がユネスコの世界文化遺産に登録されたが,わが国の風土と文化を基礎として育まれてきた食文化が健康面や環境との調和の観点から評価されたものである。米を主食として野菜や魚を副菜とした献立は地域性や季節性を織り込み,芸術性も備えた知恵と洗練の結晶ともいえるだろう。その中でも,魚など水産物の利用はわが国ならではの特徴を発揮している。本稿では,料理の基礎となる出汁,健康面とかかわりの深い脂肪,鮮度にかかわる技法を取り上げ,水産物利用にかかわる化学の役割について述べる。
著者
野平 博之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.686-690, 1995-11-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
5

19世紀初頭, 酒石酸や乳酸などの研究から光学異性体の歴史が始まった。光学異性体は有機化合物における立体異性体の一種であり, 光学活性を示す化合物のことである。今日では, 有機化合物の旋光性はその分子の不斉構造に起因していることがわかっている。そして, 光学異性体が関係する医薬・農薬などの生理活性物質や液晶などの機能性化合物においては, 光学異性という性質が重要な意味をもっている。ここでは, 光学異性体の歴史とその基礎化学について述べる。
著者
平島 恒亮 真鍋 修
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1975, no.7, pp.1223-1227, 1975-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
3
被引用文献数
1

排水,廃棄物問題と関連して芳香族ニトロ化合物の還元法を研究した結果,ヒドラジンを還元剤とし触媒に遷移金属(とくに鉄)塩と活性炭との組み合わせを用いると高純度のアミノ化合物が高収率で得られることを見いだした。本還元法によるとヒドラジン水和物還元に通常用いられるPd-C,Pt℃,Raneyニッケルなどの触媒の使用にともなう種々の欠点が除去でき,その上後処理も簡単で廃棄物をほとんど排出するおそれがない。得られるアミノ化合物の純度は非常に高く,ほとんど再結晶を必要とせず,収率も多くの場合80~99%であった。この還元反1芯は次式で示せる。反応中間体としてヒドロキシルアミン(RNHOH)を検出した。
著者
永瀬 茂 小林 郁 工藤 貴子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 : 化学と工業化学 = Journal of the Chemical Society of Japan : chemistry and industrial chemistry (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.3, pp.177-184, 1994-03-10
参考文献数
40

ゲルマニウムを骨格にもつ芳香族化合物,多面体化合物,ラジカルカチオンの特性をab initio分子軌道計算を用いて理論的に研究した.具体的には,(1)ベンゼンと多環式芳香族化合物のナフタレン,アントラセン,ナフタセンおよびペンタセンの骨格炭素をすべてゲルマニウムで置換したときの構造と電子的特性,(2)ゲルマニウムを骨格にもつテトラヘドラン,[n]プリズマン(n=3-10),ドデカヘドランなどの多面体化合物の歪みエネルギー(3)シクロトリゲルマン,ビシクロ[1.1.0]テトラゲルマン,ペンタゲルマ[1.1.1]プロペランおよびヘテロ原子置換体のイオン化による興味深い構造変化を明らかにした.ゲルマニウム骨格の特性を系統的に明らかにするために,対応する炭素,ケイ素,スズおよび鉛化合物とそのラジカルカチオンの同様な計算結果とも比較した.これらより,ゲルマニウムに特有な興味深い物性と新規な構造をいくつか予測した.
著者
櫻井 英樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.5, pp.439-450, 1990
被引用文献数
1

ペルシリル置換π電子系化合物についての最近の著者らの研究を総合的に報告する。ここでのπ電子系化合物としてはアセチレソ,エチレン,アレン,ブタトリエン,トリメチレソメタン,メチレンシクプロペン,シクロブタジェン,フルベン,ベンゼンおよびベンゼンの原子価異性体である。これらのロ化合物の若干の遷移金属錯体についても述べた。シリル基は電子的および立体的に,π 電子系に強い摂動を与えるので,時として異常とも思えるような興味深い性質を示す事がある。例えばテトラキス(トリメチルシリル)エチレンやヘキサキス(トリメチルシリル)ベンゼンは可逆的なサーモクロミズムを示すし,後者は容易に相当するDewarベンゼンやプリズマンへの原子価異性を起こす。ピスシリル置換アセチレソの遷移金属錯体上での容易な1,2-シリル転位も特筆すべきもので,その結果,フルベンやトリメチレンメタン0或いはメチレンシクロプロペンの遷移金属錯体が得られた。特にメチレンシクロプロペン錯体はこれまでに得られていないものである。以上の新規化合物のX線結晶解析による構造解析は興味ある結果をもたらした。これらについて詳述する。