著者
岡本 眞實
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.158-162, 1995-03-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1

人類の争いの源はすべてエネルギー争奪にあったことを受けて, 「地上に太陽を」がこれまでの核融合研究(高温核融合)のうたい文句であった。その意味するところは, 無限のエネルギーを人類にもたらすということである。そのために, これまでに膨大な研究開発投資が先進国を中心になされてきたが, いまだに実用化は見えていない。このような状況の中で登場したのが, 常温核融合である。あまりにも簡単な装置で実験がなされたこともあって, 世界的に多くの研究者が手を染め, 一種のフィーバーとなったが, ことの真偽はどうなっているのだろうか?に答えを求めてみる。
著者
羽田 樹人
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.496-497, 2017-10-20 (Released:2018-04-01)

製薬企業における化学とつながる職業の一つとして,低分子医薬品(化学合成医薬品)の研究現場で活躍する創薬化学者(メディシナルケミスト)がある。本稿では,中学・高校で化学を学んだ筆者がなぜ大学で薬学を学び,企業研究者としてメディシナルケミストを選んだのか,また製薬企業で化学がどのように役立っているかについて自らの体験をもとに述べる。
著者
野崎 文男 市野 正治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.8, pp.1397-1402, 1973-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1

1-ブテンの1,3-ブタジエンへの酸化脱水素反応を酸化ウラン系触媒により行ない,U-Sb-0触媒が選択性にすぐれていることを知った。そしてSb1U原子比5付近が最適触媒組成であること,触媒焼成温度としては800~900℃がよいこと,反応速度はブテン分圧に1次酸素分圧に0次として近似的に整理され,反応の見かけ活性化エネルギーは約13 kcal/mo1であることなどがわかった。またSimonsらもすでに指摘していることではあるが, Mo-Bi-O触媒などではブタジエソへの酸化脱水素反応とともにブテンの二重結合移行の異性化反応が下船的に起こるのに,U-Sb-O触媒ではこの異性化反応をまったくともなわないことを確認した。そしてこの特徴的な接触能はU-Sb-O触媒がいわゆる固体酸的な性質をもたないか,または非常に弱いことと関連があるものと考察した。
著者
深野 哲也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.446-449, 2015-09-20 (Released:2017-06-16)

高等学校で学ぶ混合物の分離・分析法の中で,イオン・pHが関係するものがいくつかある。本稿ではその例として,電気泳動を取り上げる。そしてその有効な活用法の一つとして,タンパク質の電気泳動についての簡単な説明を試みる。また,タンパク質を構成するアミノ酸についても触れる。
著者
田嶋 和夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.390-391, 2009-08-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
7

セッケンの分子は水に親和性のある親水性の部位と油に親和性のある親油性の部位を一つの分子内に持つ両親媒性の構造をした分子で,界面活性剤という。界面活性剤を水に溶かすと,ある濃度以上で分子は60個から80個が集合した「ミセル」を作って溶ける。ミセルの溶液は透明なコロイド溶液である。ミセルはどうしてできるのであろうか。その形成メカニズムを考え,そして,ミセルの性質と働きについても考えてみよう。
著者
弓場 三彩子 荒牧 賢治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.130-133, 2007-03-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
6

界面活性剤は溶液中で様々な分子集合体を形成し,その構造を制御することで高機能材料として用いることができる。界面や分子集合体構造の制御技術は,生活の中の身近にあるもので馴染み深い洗浄剤・化粧品・食品・医薬品などの製剤技術をはじめ,メソポーラス無機材料の鋳型,ナノ粒子の合成などに利用される。本稿では,界面活性剤溶液系で形成されるミセル,リオトロピック液晶のミクロ構造について解説し,さらに界面活性剤溶液の代表的な諸機能のうち,本来混じり合わない液体同士を微細な液滴として分散させたエマルション,および界面活性剤の可溶化力を最大限発揮して多量の油および水を取り込んだマイクロエマルションについて述べる。
著者
南 宗孔
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.1268-1270, 1962-12-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4

Fries反応の速度論的研究のため,反応生成物o一およびかオキシアセトフェノンの水溶液での2,4一ジニトロフェニルヒドラジンDNPによる定量法について,種々実験条件を検討したφかケトンでは,溶液申DNPの過剰量がつねに1×10-3N以上の濃度をたもつ必要がある。ケトンの濃度が約1×10-4以下の場合沈殿が生成されない。塩酸濃慶が2N以上では沈殿速度が急激に低下する。また温溶液からでは沈殿量は不足し,再現性もよくない。一方,o一ケトンではより少ないDNP過剰0.5×;10-3N,低いケトン濃度0.3×10-4Nでも十分定量的沈殿を与える。以上のようなDNP過剰の必要な理由は(とくにかケトンで)ヒドラゾン生成の平衡または反応速度に関するもののみではない。より根本的に,その沈殿生成過程での一つには塩化水素も関与する化学反応機構,また他にそれとからんでとくに微小濃度よりの結晶の成長機構などにも関係することと解するのがより妥当のようである。
著者
田口 誠一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.292-295, 2018-06-20 (Released:2019-06-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

高校の化学実験で電池作成を行うことは多い。電池とは酸化還元反応を利用し電気エネルギーを取り出す装置であり,高校の授業では酸化・還元の授業の延長線上で実験を行うことが考えられる。本稿では,電池作成の歴史や高校でよく行う電池の実験について記述し,授業や実験時の工夫や注意点を中心に説明する。また発展的な内容についても触れたい。高校でよく行う実験については,ダニエル電池やボルタ電池,鉛蓄電池,マンガン乾電池の作成時の工夫や注意点について触れる。発展的な内容については,燃料電池やリチウムイオン電池などについて触れる。
著者
中川 益生 山本 勲 藤原 宜通 光藤 裕之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.10, pp.1609-1614, 1980-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

n型半導体の表面にアクセプター性の準位があるとき表面の負電荷と同数の正電荷が内部に空間電荷層をつくる。半導体膜厚がこの層の厚さ(Debye長さ)より小さいとき,膜面内電導路は空間電荷ポテンシャル障壁によってピンチオフされる。表面準位の種類と密度の変動は,条件によりDebye長さを増して,ピソチオフを強める場合,あるいはその逆の場合を生ぜしめるユニポーラ・トラソジスター作用をひきおこす。この作用を化学吸着により行なわせ,吸着されるべき分子またはイオンを検出するセソサーを吸着効果トラソジスター(AET)とよぶ。湿雰囲気はAET動作に異常をひきおこす。水のドナー吸着によると考えられる電気抵抗の減少のほかに,湿度と印加電圧それぞれの増加にどもなう異常抵抗増が観灘された。一方,n型半導体膜をカソード,白金をアノードとして,精製水中で1Vの直流電圧を加えて電極反応を生ぜしめたとき,半導体の膜抵抗は,その電気化学処理の前にくらべて増大した。これらを説明するために,水の“電気化学吸着”によるアクセプター生成と,水を吸着した表面上におけるイオン電導路形成の仮説を導入した。
著者
宮地 輝光
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.128-131, 2011-03-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
6

低級アルカンの反応性は低い。そのため,低級アルカンを他の化合物に変換することは容易ではない。自然界には,常温常圧条件でアルカンから選択的にアルコールを生成する酵素が多種類存在する。これら酵素はアルカン水酸化酵素と総称され,それら酵素のうち数種類は,低級アルカンから低級アルコールを常温常圧条件で生成することができる。近年,遺伝子組換え技術によって低級アルカンを酸化できないアルカン水酸化酵素に低級アルカン酸化能を付与することができるようになった。さらに,進化分子工学的手法によってアルカン水酸化酵素の活性向上や,生成物選択性の改変も可能となってきた。このような酵素改良技術によってアルカン水酸化酵素を実用化できれば,反応性の乏しい低級アルカンを炭素資源として有効に活用できる。
著者
鈴木 茂 番匠 吉衛
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.706-711, 1969-03-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
22

キナルジンまたはクロルキナルジンとハロゲン化無水フタル酸(クロルー,ブロムー,ヨウ素置換)との縮合によりキノフタロン系の黄色有機顔料の合成を行なった。顔料の性質を検討後,ハロゲン原子と顔料の性質の間につぎのような関係が見い出された。1)フタロイル基のハロゲン原子は顔料の耐光性を著しく向上させる(最高8級),一方,,キノリル基のベンゼン環のハロゲン原子はむしろ低下させた。2)得られた顔料は高度にハロゲンで置換されていても,ある種の高沸点溶媒にはわずかに溶解した。3)一般にスルホン化されたレーキ類は鮮黄色で光,溶媒に対し良い堅ロウ性をもった。特に,Mn-,Caレーキはすぐれた性質を有した。しかしこれらのレーキ類はカセイソーダ溶液中で変色する欠点をもっていた。
著者
安戸 饒 田中 和明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.552-556, 1999-08-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
2

日本の工業用アルコールの原料は澱粉質から始まり, 糖蜜と変遷し, 最近では生産コスト低減と廃液処理の問題から原料転換が種々実施されている。最近の原料別生産量は輸入粗留アルコール58%, 合成法39%, その他国内発酵製品3%である。発酵法については世界的に農産物がまだ主原料である。ここでは生産性を改良するための種々の発酵法について紹介する。合成エタノールについては, 技術的に確立しているエチレンの直接水和法について紹介する。
著者
根来 一夫 八木 三郎 工楽 英司
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.1189-1192, 1961-07-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
5

一般に一定温度において尿素付加物を生成するには,必要な最小限度の炭素鎖の長さがあり,その最小限の炭素数は尿素に付加する反応体の化学的構造と物理的な形状によるものと考えられている。パラフィン系炭化水素の場合には,常温では炭素数6個のヘキサン以上のものが尿素と付加物を生成することが明らかにされているが,ケトン類の場合には,最小の炭素数のアセトンから尿素と付加物を生成するといわれている。しかも, アセトンはメタノールと同じように賦活剤とされているが,アセトン自体も尿素に付加してくるといわれているので,アセトンがどのような挙動をするのか検討を加えた。著者らは固体尿素あるいは尿素飽和水溶液とアセトンとの反応について検討し,尿素1molに対してアセトン5molが存在するときに,アセトン-尿素付加物の収量が最大を示すことを見出した。さらに,Fischer合成油を尿素処理する際に, アセトンが存在すると, アセトン- パラフィン- 尿素付加物を生成し, かつパラフィンの付加は直鎖状パラフィンだけにとどまらず,多量のイソパラフィンが付加してくることを認めた。