著者
荻田 堯 八田 博司 西本 清一 鍵谷 勤
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.5, pp.970-975, 1985-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
25
被引用文献数
2

空気存在下,室温でクロロホルム水溶液にバイコールフィルターを装着した低圧水銀灯の紫外線を照射してもクロロホルムは分解しなかった。この系にH2O2を添加すると,H2O2の光分解によって生成する。OHと反応してクロロホルムは分解し,CO2とHCIを生じた。アルゴン雰囲気においてH2O2水溶液にパイコール透過光を照射すると,H2O2の分解によって生成した,OHからO2を生成した。この系にクロロホルムを添加すると,クロロホルムの添加量とともにO2生成反応の量子収量は減少し,クロロホルム分解反応の量子収量が増大した。また,両反応量子収量の和が一定であったことから,クロロホルム一分子の分解には二分子の・OHが消費されていることが示唆された。プロモジクロロメタン水溶液にH2O2を添加してバイコール透過光を照射すると,H2O2無添加系にくらべて,CO生成量が減少してCO2生成量が増大した。各種トリハロメタン水溶液にH2O2を添加した場合のCOの生成量とCO,生成量の比はトリハロメタンとH2O2に吸収される254nmの光量比に比例した。このことから,・OHとの反応が起こる場合には,トリクロロメタンの塩素を臭素で置換したものもCO2に分解することがわかった。これに関連して,γ 線照射やFenton試薬を用いて含臭素トリハロメタンの反応を調べたところ,COはほとんど生成せず,おもにCO2が生成した。
著者
山本 浩之 岡田 隆 永井 朗 西田 綾子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.10, pp.1771-1773, 1988-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14

Some Trichoptera, so-called net spinning caddis, eject the contents of their silkglands to build a nest for protecting themselves in a rapid stream. The adhesive protein formed by caddis worm Stenopsyche griseipennis McLachlan has been studied to obtain some basic knowledges such as the preparation of fibroin solution, the amino acid analysis, and the bonding strengths on test pieces. The protein was found to have the tensile strengths of the highest 14 kg/cm2 on iron and 7 kg/cm2 on pig bone, and the highest compressive shear strength 12kg/cm2 on iron.A discuss ion is presented that includes results of the bonding strengths of Bombyx mori fibroin.
著者
越野 省三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.26-29, 2014-01-20 (Released:2017-06-16)

硫黄は天然には原油中の硫化水素や二酸化硫黄および各種金属の硫化物,硫酸塩などに存在し,生体内にもタンパク質成分として含まれる。火山国である日本では硫黄泉は人気があり,また「続日本紀」には奈良時代には信濃国からの硫黄の献上が記されているなど,昔からとても身近な存在である。もちろん他国においても錬金術の話にも登場する。そんな硫黄の性質や同素体であるゴム状硫黄の色や様子について,また軟らかいLewis塩基である硫黄と効率のよい資源回収法や生体との関わりなども述べた。
著者
河野 俊哉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.60-63, 2015-02-20 (Released:2017-06-16)

ファラデーは,一般には「科学者」だと考えられているが,彼自身は,「科学者(scientist)」という呼び名を好まなかった。さらに,サンデマン派と呼ばれる信徒が極めて少数の宗派に属していた。これらのことは,彼の自然研究とも密接な関係があるが,一般には知られていない。本稿においては,近年の研究成果をもとに,当時のイギリスの大学における化学教育制度にも言及しながら,彼の自然研究はもとより,彼の経歴にとって不可欠な師デーヴィとの関係をも再考していきたい。
著者
Naoki SUGIMOTO Shu-ichi Nakano
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.398-401, 2003-07-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1

人から人が産まれたり,子供が親に似るのは,形質が遺伝するためである。この遺伝という現象を化学の視点から捉えられるようになったのは,ここ50年のことである。この遺伝の本質を化学的に理解することは,病気の発症や予防などとの関連で注目を集めており,様々な生物に対して遺伝子の解明が進められている。ここでは,遺伝子の本体であるDNAの化学的な性質について説明し,DNAが遺伝物質である理由とその役割について解説する。
著者
桂田 和子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.392-393, 2018-08-20 (Released:2019-08-01)
参考文献数
3
著者
山岡 亮平
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.458-462, 1999-07-20 (Released:2017-07-11)

カイコの摂食に関する諸問題を追求した。今回提示する研究成果は以下の通りである。(1)桑の香気に対して一齢のカイコ幼虫が一斉に頭をもたげ, 香気の発生源を探るような行動があらたに見出された。これがあたかも香気を楽しむような様子に見えるので, 「興奮因子」と名付け, 桑葉より抽出同定しエチルメチルケトンであることを明らかにした。(2)誘引を引き起こす物質について検討を加えた。その結果, 極めて微量で強力な誘引および定着活性を有する数種の物質を桑葉から見出し, 単離, 同定を行い, シス-ジャスモン, 2-フェニールエタノールであることがわかった。
著者
森田 茂
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.1230-1236, 1958-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
37

第1報で報告したように, ブチルベンゼンの異性体を気相空気酸化すると, n-およびsec-プチルベンゼンは安息香酸, 無水マレイン酸のほかに無水フタル酸を生成し, tert-ブチルベンゼンは無水マレイン酸だけを生成する。この特異な反応の機構を調べ, つぎのことがわかった。1. n-ブチルベンゼンは大部分がまず側鎖のC4が酸化されてγ-フェニル酪酸となり, つぎに閉環してテトラロンとなりさらに酸化されて無水フタル酸を生成する。すなわち, 第2報で報告したn-プロピルベンゼンの気相空気酸化機構と同様で, 液相空気酸化や無触媒気相酸化機構と全く異る経路をとるものである。2. tert-ブチルベンゼンは, 反応中ブチル基とベンゼン核とに熱分解するため, 無水マレイン酸だけしか生成しない。3. ブチルフェノン, ベンジルエチルケトンは空気酸化で無水フタル酸を生成しないが, ベンジルアセトン, γ-フェニル酪酸は無水フタル酸を生成する。
著者
角田 康五郎 松本 幸隆
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1555-1559, 1959-10-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1

クメンを直接空気酸化してα-クミルヒドロ過酸化物を製造する際に,ある種の塩基性物質,すなわちアルカリ土類金属酸化物,過酸化物,弱酸のアルカリ金属塩等を加えると酸化が有利に実施出来る。本報では二,三の観点からこれらの塩基性物質(以後酸化添加剤と呼ぶ)の酸化における接触作用を検討した。クメンを空気酸化する時に,酸化の進行につれてα-クミルヒドロ過酸化物以外の酸化に有害な副生物が生成して来るが,上述の酸化添加剤は同一のα-クミルヒドロ過酸化物濃度に対して副生物量を減少させる。これは酸化添加剤が酸特に安息香酸を除去し,α-クミルアルコール,α-メチルスチレンの関与する分解反応を抑制する作用のあるところから,α-クミルヒドロ過酸化物の安定性を高めているためと考えられる。また酸化添加剤は見掛けの酸化速度を向上させるが,これは物理的な作用によるものである。酸化添加剤としては本報では,おもに過酸化バリウムについて検討し,その他の二,三のものとは酸化の物質収支より比較を行なった。
著者
槌間 聡
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.598-601, 2014-12-20 (Released:2017-06-16)

人類が単体として手に入れた金属の中でも特に古くから発見されている金属の一つである「金」。古代文明に始まり現在でも高貴な金属として宝飾品に用いられている。また,貨幣経済を支える重要な金属でもあった。かつて日本は黄金の国「ジパング」と呼ばれ,金は国名ともかかわる金属でもある。金閣寺などの歴史的建造物から大判小判といった金貨にも用いられていた。これらは金のもつ特別な性質によるものである。金の物理的・化学的な性質を他の金属と比較しながら,「金」がなぜこのように広く使われているかをその性質をもとに述べる。
著者
吉田 稔 小沢 竹二郎 小坂 丈予
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.3, pp.575-583, 1972-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
58

薩摩硫黄島火山の高温噴気孔周辺に青色の火山昇華物が見られる。この鉱物は無定形で変質物上にごく薄く付着しているので常法による同定は困難である。著者らはおもにその化学的性質を検討することにより,本鉱物がモリブデンブルー(M。(V)とMo(斑)の混合水湘酸化物)であることを確認した。一方,低温噴気地帯にはモリブデナイトが見いだされ,X線回折法と化学分析により同定した。日本各地の火山の火山ガスと火山岩のMo含量を求めた。薩摩硫黄島の高温の噴気孔ガスは凝縮水1Z中0.3~7,hngMoを含む。低温のものや他の火山のガスにはMoは検出されなかった。火山岩のMo含量はo.5~3.4μ9/9であった。上記のデータと熱力学計算の結果から,これらの鉱物の生成機構をつぎのように推定した。水酸化物かオキシバ冒ゲン化物として高温の火山ガスにより運ばれたMoが出口での温度低下と酸素分圧の増加によりモリブデンブル_として沈積する。また,雨水に溶けて低温地域に運ばれたモリブデンブルーが硫化水素と反応してモリブデナイトを生じる。