著者
杉山 峰崇 笹野 佑 鈴木 俊宏 原島 俊
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.820-826, 2016
被引用文献数
1

<i>Saccharomyces cerevisiae</i>(以下,出芽酵母)は,エタノールや異種生物由来の有用物質の高い生産能力をもつことから,バイオエタノールやプラスチックの原料となる乳酸の発酵生産宿主として利用・検討されている.これらの生産を効率化するためには,高い温度域でも増殖し発酵を行う高温ストレス耐性や乳酸などの有機酸へのストレス耐性が重要となる.本稿では,出芽酵母の高温ストレスや有機酸ストレスへの適応応答について紹介し,われわれが取り組んできた耐性出芽酵母の開発から得られた成果を紹介したい.
著者
加藤 陽二
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.313-318, 2017

<p>食の偽装は世界的にも大きな問題である.産地偽装は今も昔も頻繁に起きており,輸入物を国産品と偽るなど,枚挙に暇がない.違う食材を用いる例も多い.エビの場合,ブラックタイガーを車エビ,バナメイエビを芝エビ,ロブスターを伊勢エビと偽って表示するなど,毎日のように新聞各紙に取り上げられていたことは記憶に新しい.食の偽装を防ぐために,さまざまな取り組みがなされているが,本稿では例として蜂蜜,なかでもマヌカ蜂蜜を主として取り上げ,偽装を防ぐための認証評価法について紹介する.マヌカ蜂蜜に限らず蜂蜜は,加糖(希釈)や加熱,産地のすり替えなど,以前より偽装が疑われる例の多い食材と言える.</p>
著者
片倉 喜範
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.531-537, 2009-08-01 (Released:2011-07-14)
参考文献数
37

老化・寿命制御のメカニズムが明らかにされていくなかで,インスリン/IGF-Iシグナル伝達系とサーチュイン(sirtuin)遺伝子という,ともに進化的によく保存された老化・寿命制御シグナル・因子が同定されてきた.なかでもサーチュインは,老化を遅らせ,寿命を延長しうる唯一確実な方法であるカロリー制限に対する生体応答に必須の因子であることが示されるとともに(1),NAD依存性脱アセチル化酵素活性を有するという性格上,エネルギー代謝と老化を結びつける重要なメディエーターであるとの認識が高まり,最近ではサーチュインをめぐる研究はめまぐるしい進展を見せている.ここでは,老化・寿命制御因子としてのサーチュインのアンチエイジング活性,その発現・機能制御の分子機構,さらにはアンチエイジング創薬ターゲットとしての可能性について紹介する.
著者
田谷 昌仁
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.219-221, 2017

<p>本研究は,日本農芸化学会2016年度大会(開催地:札幌コンベンションセンター)の「ジュニア農芸化学会」で発表されたものである.発表者の研究内容は,鳥類の翼の形態と機能についての仮説を立て,検証することで翼の特定部位の形態が生物生態に関連することを見いだした研究である.飛翔・着地における乱流への対処に対する小翼羽の形状変化,さらにはその変化が鳥類の生態にまで及ぶことを検証したたいへん興味深い研究発表であった.</p>
著者
金子 俊之 河本 高伸 菊池 弘恵 福井 史生 塩田 真夫 弥武 経也 高久 肇 飯野 久和
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1211-1220, 1992-08-01 (Released:2008-11-21)
参考文献数
22
被引用文献数
6 10

イソマルトオリゴ糖の栄養学的特性と消化性について,フラクトオリゴ糖,ショ糖およびマルトースとの比較の下に,各糖質20%添加飼料によるラット35日間飼育試験と,消化管内の条件を想定したin vitro消化性試験とにより検討した. (1) ラヅトの便性状,飼料効率および消化器重量の比較から,イソマルトオリゴ糖の消化性は難消化性糖と易消化性糖との間に位置づけられた.さらに,飼育ラットの体重増加量と摂取エネルギー量の比較から,イソマルトオリゴ糖のエネルギー値は,ショ糖およびマルトースのおよそ80%と推定された. (2) イソマルトオリゴ糖は,ラット血清の中性脂肪と遊離脂肪酸を低下させたが,この作用は難消化性のフラクトオリゴ糖に準じるものであった.また,イソマルトオリゴ糖を長期間連続して多量に摂取しても,空腸粘膜のイソマルターゼ活性は誘導されなかった. (3) イソマルトオリゴ糖は,唾液・膵液アミラーゼおよび胃酸では全く分解されなかった.小腸粘膜酵素ではある程度は消化されるものの,消化性は緩慢でイソマルトースのおよそ半分であった. 以上より,イソマルトオリゴ糖は小腸で部分的に消化されるものの,残る未消化部分は大腸に到達すると考えられた.
著者
朝井 勇宜 星 親一 宮坂 作平 泉田 又藏
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.352-357, 1951 (Released:2008-11-21)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

Among the selected strains of Aspergillus oryzae group, the strain No. 0-9-5 (which of Tokyo) gave excellent anfylase activity for the submerged production.. By using this strain, several resea-rches concerning the cultural environments affecting the amylase production were carried out. It was shown that the optimal initiall pH for incubation lay between 5 and 6 the activity markedly fell down under 4.0 and amylase action was completely inhibited or destroyed under 3.0. The incubation at 30°C was more favorable than at 25°C. When starch and peptone were taken as C and N sources, the optimal concentrations of both of these substrates were about 2 to 3%, NaNO3 and NH4NO3 were suitable inorganic N sources, because these substances played buffer actior during the incubation, viz., they prevented the acidification due to the acid production. As natura; organic N sources, rice bran, wheat bran, dry yeast and stillage showed the excellent results. Amylase production, provided that the cultural conditions were normal, reached to maximun after 3 days' incubation which coincided with the maximum utilization of N by fungus mycelliun and then the activity fell down according to the autolysis and pH rising of the culture medium.
著者
清水 純一 島津 善美 渡辺 正澄
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.203-209, 1979
被引用文献数
1

(1) 国産ワイン(18点)およびドイツワイン(28点)のミネラルおよび有機酸を分析し,両成分の相関および品質との関連について検討した.<br> (2) ドイツワイン中のカリウム,マグネシウムは,それぞれ平均, 1309, 150mg/<i>l</i>で,高級ワインほど多い傾向がみられた.カルシウムは平均109mg/<i>l</i>,ナトリウムで17mg/<i>l</i>であった.また鉄は平均3.0mg/<i>l</i>,マンガンは1.5mg/<i>l</i>で両者とも多く,銅は平均0.3mg/<i>l</i>,亜鉛は平均0.8mg/<i>l</i>で,少なかった.ケイ素は2~30mg/<i>l</i>の範囲であった.<br> ドイツワインの有機酸では,リンゴ酸(M)は平均3.5g/<i>l</i>,酒石酸(T)は平均2.6g/<i>l</i>であり,この2つの酸で全体の80%程度を占めている.また(M)/(T)は,高級ワイン程大きく1~5の範囲であった.<br> (3)国産ワインのカリウムは平均780mg/<i>l</i>,マグネシウム,カルシウムともに平均100mg/<i>l</i>で,いずれもドイツワインに比較してかなり少ない.ナトリウムは平均34mg/<i>l</i>で,ドイツワインの2倍程度多かった.その他,鉄;6.7,銅;0.4,亜鉛;0.2,マンガン;0.8mg/<i>l</i>程度であった.有機酸では,酒石酸が平均2.3g/<i>l</i>,リンゴ酸が1.5g/<i>l</i>であり,また(M)/(T)比は1以下で,ドイツワインに比較してかなり小さい値であった.<br> (4) ミネラル(カリウム,マグネシウム,カルシウム)と主要有機酸との相関を検討した.ドイツワインにおいては,カリウムに対して(M)/(T)が最も高い正の相関(&gamma;=0.770)を示した.酒石酸は高い負の相関(&gamma;=-0.752)を示した.また,リンゴ酸は低い正の相関(&gamma;=0.426)であった.マグネシウムは酒石酸に対し&gamma;=-0.538, (M)/(T)に対し&gamma;=0.585の相関が認められた.カルシウムはリンゴ酸に対してのみ正の相関(&gamma;=0.595)を示した.ドイツワインではとくにカリウム,マグネシウムが有機酸組成と高い相関を示し,ワインの品質に大きく関与していることが確認された.国産ワインでは,カリウムが(M)/(T)に対し, &gamma;=0.458の,カルシウムが(M)/(T)に対し, &gamma;=0.605の相関を示したが,ドイツワインで認められるような高い相関関係は見られなかった.