著者
久保 知義 安積 敬嗣
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.495-500, 1965 (Released:2008-11-21)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

種々の鞣製革の熱変性を知る目的でコラーゲンおよび鞣剤結合コラーゲンをヘビーカーフより各種の鞣剤を用いて調製し,これらの種々のコラーゲンの熱変性を示差熱分析と熱天秤分析による熱重量変化の測定により検討した.乾熱示差熱分析により,原料コラーゲンも各種鞣剤結合コラーゲンも,ともに130°をピークの頂点とする80~200°の範囲にわたって大きな吸熱ピークを示した.しかし,この温度範囲において熱天秤による熱重量変化はほとんど認められず,また,鞣剤の量および種類によっても変らないことより,この吸熱ピークはコラーゲンの結晶部分の融解によるものと考えられる.また,湿熱示差熱分析によって,熱縮温度よりも10~17°低い温度に吸熱ピークが認められた.これはコラーゲンの非結晶部分の水の存在下での変性によるものと考えられ,湿熱変性開始温度を示差熱分析により知ることができた.
著者
長島 善次 内山 正昭 西岡 茂美
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.723-727, 1959 (Released:2008-11-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1

(1)粉わさびの貯蔵温度,水分含量,貯蔵期間と変質との相互の関係について検討した. (2)貯蔵中の変質の原因に二つ考えられる.一つは辛味の母体である辛子油配糖体の減少であり,一つは之に作用する酵素ミロシナーゼの不活性化である.変質は主として後者によることを明かにした. (3)一旦変質して,加水しても辛味を生じなくなった粉わさびでも,之をアスコルビン酸稀水溶液でといてやると著しく辛味を生ずることを見出した. (4)ミロシナーゼはPCMBの如き-SH基阻害剤で阻害され,この阻害はシステイン等で回復する事などを見出し,ミロシナーゼが一種のSH酵素であることを知った. (5)以上(3), (4)の結果より,変質の主原因であるミロシナーゼ不活性化の機構について考察した. (6)粉わさび貯蔵中の変質防止にアスコルビン酸,或いは之とクエン酸の併用等が著しい効果のあることを認めた. (7)粉わさびと黒からし粉との安定性を比べた.
著者
村田 晃 辻正 信 添田 栄一 猿野 琳次郎 桜井 稔三
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.35-44, 1972

<i>L. casei</i>のJ1ファージの増殖機構究明の一手段として,宿主菌のDNA合成を特異的に阻害するマイトマイシンCを阻害剤として用い,この阻害剤のファージ増殖阻害の機作について研究した.まず,マイトマイシンCが, J1ファージの増殖を阻害することを確認した.マイトマイシンCは,遊離ファージを不活性化せず,吸着, DNA注入も阻害しなかった.一方,マイトマイシンC存在下で,ファージDNAの複製, serum-blocking powerを有するファージタンパク質,ファージエンドリジンの合成はみられなかった.放射線生物学的研究,およびマイトマイシンC・パルス実験は,初期の増殖段階がマイトマイシンCにより阻害されることを示した.<br>以上およびその他の実験結果,ならびにマイトマイシンCの一般知見とから,マイトマイシンCのJ1ファージ増殖阻害の機作は,菌細胞内に注入されたファージDNAが,マイトマイシンCの作用を被り,分子内にクロスリンクを形成することに基づくもので,このために子ファージDNA複製のプライマーとしての活性を喪失し,ファージDNAの複製がブロックされるためと考えられた.<br>なお,比較的低濃度のマイトマイシンCを<i>L. casei</i>S-1菌株に作用させると,処理一定時間後に溶菌が誘起されることが示された.電子顕微鏡観察は,溶菌液中にファージ粒子の存在することを示した.さらに,この粒子の感染性も,プラークを形成する感受性菌株を見い出し証明した.これらの結果は, L. casei S-1菌株は溶原菌であることを示し,また溶菌誘起はファージの増殖が,マイトマイシンCによって誘発されたためであることを示した.
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.197-204, 1996-03-25 (Released:2009-05-25)
被引用文献数
7 8
著者
近藤 金助 信濃 榮
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.467-472, 1937

1. 藤の花について一般分析を行ひ含窒素質物量の少なからざることを知つた.<br> 2. 藤の花のうちに含まれでゐる含窒素質物の形態を知らんと欲し2~3の溶媒に對する溶解度を實驗し更に分離した3種の蛋白類似物質について各種の定性試驗並に窒素量を定量した結果によつて藤の花のうちには糖類及び色素類と緩く結合して居る複合蛋白が相當量含有せられて居ることを知つた.<br> 3. 藤の花をヴイタミンの給源として白鼠の飼育試驗を行つた結果によつて藤の花のうちにはヴイタミンA,及びB-複合體並にEの作用を有するものが相當量含有せられて居ることを知つた.然れば藤の花のうちには色素としてCarotin,又はKryptoxanthin及びFlavin等が含まれて居るわけである.
著者
MORITA Kazuyoshi HARA Masako KADA Tsuneo
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
Agricultural and Biological Chemistry (ISSN:00021369)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.1235-1238, 1978
被引用文献数
70

Juice prepared from cabbage, broccoli, green pepper, egg plant, apple, burdock, shallot, ginger, pineapple and mint leaf were found to possess strong capacities of inactivating the mutagenicity of tryptophane pyrolysis products. In addition, radish, sweet potato, grape, Japanese ginger, cauliflower, beefsteak plant, enokidake mushroom and simeji mushroom were moderatly effective. The other forty one samples were inactive. Among the above eleven samples that inactivated the tryptophan pyrolysate efficiently, egg plant, burdock and broccoli showed the widest spectra of inactivating other mutagenic amino acids pyrolysates. The desmutagenic factor of cabbage is sensitive to heating (100&deg;C) and pronase treatment, sug-gesting a nrotein character.
著者
清川 泰志 武内 ゆかり
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.681-688, 2015-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
32

多くの哺乳類は非常に発達した嗅覚をもち,嗅覚を利用して仲間とコミュニケーションをとっていることは古くから知られていた.1991年に,後にノーベル賞が授けられることになった嗅覚受容体の同定が報告されて以来,嗅覚に対する理解は飛躍的に深まり,またその知識を背景として嗅覚を介するコミュニケーションに関しても研究が大いに進展した.その結果,さまざまな不揮発性物質が「フェロモン」としてコミュニケーションに利用されていることが明らかとなったが,揮発性物質を介したコミュニケーションに関する理解は進んでいなかった.本稿では,哺乳類における嗅覚系やフェロモンに関して説明するとともに,筆者らが近年同定したヤギとラットの揮発性フェロモンを紹介する.
著者
前田 安彦 小沢 好夫 宇田 靖
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.261-268, 1979
被引用文献数
2 3

アブラナ科植物,およびその塩漬の風味成分である揮発性イソチオシアナートの分布を明らかにする目的で, 9種類の生鮮野菜,およびその中の5種類の塩漬についてGCおよびGC-MSによる分析を行った.<br> 1. 生鮮野菜のすべてから2-ブチル, 3-ブテニル, 4-ペンテニル, 2-フェネチルおよび5-メチルチオペンチルイソチオシアナートが見出された.<br> 2. アブラナ科植物の生鮮物では揮発性イソチオシアナートの分布に特徴が見られる3群に分けられた.ハクサイ,広島菜は3-ブテニル, 4-ペンテニル, 3-フェネチルイソチオシアナートを主成分とし,とくに4-ペンテニルイソチオシアナートの相対割合が高いこと,アリルイソチオシアナートを欠くことが特徴であった.野沢菜,日野菜カブ,天王寺カブ,金町コカブは3-ブテニル, 2-フェネチルイソチオシアナートを主辛味成分とし,特微的な成分として4-メチルペンチル,および4-メチルチオブチルイソチオシアナートが存在していた.高菜,搾菜,蔵王菜はアリルイソチオシアナートを主辛味成分とし,特徴的成分として<i>n</i>-ペンチルおよび3-メチルチオプロピルイソチオシアナートが存在していた.<br> 3. 塩漬野菜のイソチオシアナートはそれぞれの原料野菜における主要イソチオシアナートと一致していた.しかし塩漬中のイソチオシアナートの安定性が異なるためか,その相対割合は異なり2-フェネチルイソチオシアナートの安定性が高く思われた.<br> 4. 生鮮野菜,塩漬を通じてそれぞれ見出されたイソチオシアナートに相応するニトリルを含んでいた.