著者
河本 宏 桂 義元
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.584-591, 2012-08-01 (Released:2013-08-01)
参考文献数
29

血液細胞や免疫細胞は,細胞分化の研究材料として久しく用いられてきた.にもかかわらず,本質的な問題,すなわち「どのような系列決定を経てつくられるか」という事象に,長い間手が付けられていなかった.最近,ようやく真の姿が浮かび上がってきた.それは,多くの教科書に描かれている仮想的なモデルとは異なるものであった.
著者
畝山 寿之
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.432-441, 2015-06-20 (Released:2016-06-20)
参考文献数
66
被引用文献数
1 1

和食(WASHOKU)は出汁(だし)のうま味を共通の要素として高度にそして多様に発達してきた.日本の食文化がユネスコ無形文化遺産に認定されたことを含め,日本食のもつ健康価値が改めて世界から注目されている.われわれはうま味調味料グルタミン酸ナトリウム(MSG)の生理機能を先端的脳科学と栄養生理学的な研究手法を用いて追及し,うま味物質は「タンパク質摂取のマーカー」として味覚と内臓感覚を介して摂取したタンパク質の消化吸収にかかわるさまざまな生理機能を賦活し,健康な食生活に寄与している可能性を示してきた.本解説では,うま味の生理機能に注目し,日本食がもつ健康価値の可能性について解説していきたい.
著者
長谷川 守文
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.547-552, 2017-07-20 (Released:2018-07-20)
参考文献数
47

フィトアレキシンの単離・構造解析に関する研究は20世紀後半に盛んに行われ,非常に多くの成果が蓄積された.21世紀に入ってからのフィトアレキシン研究はその生合成や誘導機構に関するものが中心になってきており,いわゆる「モノ取り」的な研究はやり尽くされた感があった.しかし,近年イネ科やアブラナ科植物の研究で,従来考えられていたよりも多様な化合物がフィトアレキシンとして機能していることがわかってきた.
著者
山部 こころ 苔口 進 前田 博史
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.463-470, 2010-07-01 (Released:2011-09-07)
参考文献数
18

口腔内に生息するメタン生成古細菌 (Methanobrevibacter) が歯周病(歯槽膿漏)の病態に関与していることが示唆されるようになった.古細菌には,膜脂質や抗原分子において,真正細菌にはない特徴がある.これまで,歯周病の病態はグラム陰性桿菌を主体とした,いわゆる歯周病原細菌の感染とそれらに対する免疫応答から説明されていた.メタン生成古細菌の参戦によって,歯周病の病態がこれまでにはない側面から解明される可能性がでてきた.
著者
寺田 治 大石 一雄 木下 祝郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.166-170, 1960

(1) <i>Trichoderma viride</i>の一菌株がグルコーズ又は澱粉より高収率でクエン酸を生成することが見出された.この菌株は東京上野動物園飼育中の台湾産キョンの糞より分離されたものである.<br> (2) クエン酸の収率は理論値の60~85%に達し,副生酸の生成は認められなかった.又高収率のクエン酸生成には炭酸カルシウムの添加が必須である.<br> (3) 自然界より分離した多数の<i>T. viride</i>についてそのクエン酸生産能を検討した結果,高収率生産菌株がかなり高い頻度で自然界に分布していることが認められた.
著者
竹田 千重乃 檜作 進
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.663-669, 1974 (Released:2008-11-21)
参考文献数
11
被引用文献数
14 10

1. アミラーゼ法では,各種でんぷんとも50~70°Cの範囲内で,ほぼ大部分が糊化されていた. 2. 低温の糊化では,各種でんぷんともアミロース分子の糊化が,全体の糊化に比して著しく悪いことが認められた. 3. ジャガイモ,サツマイモは約80°C,ウルチ米でんぷんでは100°C近くの高温で,ヨード法によりアミロース分子は完全に糊化されたと判定されたが,トウモロコシや小麦でんぷんでは100°C,20分の加熱においても,それぞれ84%,75%の糊化度を示し,糊化されにくいことが認められた. 4. 上述のように,各デンプンのアミロースの熱糊化性の相達が,各デンプンの糊化性の特微の1つとして指摘された.
著者
古屋 晃 池田 庸之助
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.38-44, 1960 (Released:2008-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
5 2

(1) 放線菌No. 62株の生産する溶解酵素の最適pHは7.6であり,熱に対して不安定な酵素であることが明らかとなった. (2) Sacchtaromyces cerevisiaeより細胞膜を機械的方法により分離し,溶解酵素により溶解されることを証明した. (3) 溶菌スペクトルを調べた結果,酵母及び糸状菌に属するかなり多くの菌株に対し溶解能を有すること及び細菌の一部をも溶解することが明らかとなった. (4) 酵素液かなり強いプロアーぜ活性を有し,酵素細胞膜はこのプロテアーゼとそれ以外の酵素との共同作用により溶解されると結論された. (5) Sacc. cerevisiaeのprotoplastが本酵素により容易に調製されることが明らかとなった.
著者
斗ケ沢 宣久 勝又 悌三 川尻 秀雄 小野寺 紀雅
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.461-465, 1966
被引用文献数
4

オニユリの花粉30gから色素I, IIを結晶状に分離した.収量はそれぞれ17mg (0.056%), 11mg (0.036%)であった.色素Iはm.p. 191~193&deg;の淡黄色針状結晶,色素IIはm.p. 179~182&deg;(分解)の黄色針状結晶で,融点, PPCによるR<sub>F</sub>値,呈色反応,紫外線および赤外線吸収スペクトルなどは,それぞれルチンおよびナルシシンと一致する.さらに両色素を加水分解し,得たアグリコンはいずれもm.p. 300&deg;以上の黄色針状結晶で,紫外線吸収スペクトルは,それぞれクエルセチンおよびイソラムネチンと一致し,構成糖は両色素ともグルコース,ラムノースよりなることを認めた.以上から分離した色素Iをルチン,色素IIをナルシシンと同定した.