著者
高田 芳博 園田 武 中村 幹雄 中尾 繁
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.678-686, 2001-07-15
被引用文献数
4 11

島根県宍道湖の2水域(斐川, 玉湯)で, ヤマトシジミCorbicula japonicaの成長と着底稚貝出現状況を検討した。殻表のリングは年齢形質と認められ, リング数は玉湯で6本, 斐川では3本であり, 斐川では0本群が卓越していた。殻長は1本目のリング形成時に斐川側が大きく, その後の平均殻長にも差が認められた。殻成長は春から秋にかけて大きく冬期間は停滞した。一方, 軟体部成長はリング数2本・3本群で6月から9月にかけて多く, 冬は少なかった。着底量に水域間で明瞭な差は認められなかったが, 斐川では着底後の減耗が著しいことが示唆された。
著者
山崎 慎太郎 日向野 純也 渡部 俊広
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.368-373, 2002-05-15
被引用文献数
1 2

貝桁網で漁獲された二枚貝にみられる足部の欠損(舌食い)の発生を低減するため,チョウセンハマグリの舌食いの発生機構について検討した。舌食いの発生率は水温の高い時期に高く水温の低い時期に低くなり,曳網速力の増大と共に高くなった。行動観察から,舌食いは貝が足部を伸張した状態で貝桁網の爪と砂に殼を圧迫されて発生すると考えた。潜砂している貝を引き上げてから底質へ潜入を開始するまでの時間は水温の高い方が短かく,潜砂深度は水温の高い方が大きかった。水温の高い時期には潜砂深度の増大と活発な潜砂行動により舌食いの発生率が高くなると考えた。舌食いの発生を抑えるには,曳網速力の低減が最も有効な方法である。
著者
胡 夫祥 志賀 未知瑠 横田 耕介 塩出 大輔 東海 正 酒井 久治 有元 貴文
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.33-38, 2005-01-15
被引用文献数
4 9

海鳥類の偶発的捕獲の回避を目的として,まぐろ延縄漁船現用の枝縄30数種類を調査し,その内の10種類と,釣元素材,釣元先端へ付加する錘重量を変えた枝縄の投縄後の釣針沈降特性を調べた。現用の枝縄における深度10mまでの釣針平均沈降速度は0.16m/s〜0.23m/sであり,鳥嚇しラインの有効範囲である船尾から150m以内で釣針が深度10m以上に沈むものはなかった。一方,釣針の沈降速度は釣元にフロロカーボンを使用した場合では約1.6倍に,釣元先端に45gwの錘を付加した場合では約2倍に改善された。
著者
清木 徹 伊達 悦二 岡田 光正
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.678-687, 2008-07-15
被引用文献数
1 5

干潟及び沿岸海底の脱窒と窒素固定が環境水中でのN収支に果たす役割を調べる目的で,それらの現場速度や環境因子との関係を検討した。定期的に調査した島しょ部の干潟では両プロセスの物質収支がNソースとなっていたが,不定期測定を行った他の干潟ではNシンクのものの方が多く,干潟により両速度の相対的関係は異なっていた。一方,湾海底は全地点シンク作用を示した。また,両速度とも水温と有意な相関が認められ,脱窒速度は水温以外に水中の硝酸濃度及び底泥中のベントス現存量とも有意な相関を示した。脱窒速度とベントスとの関係は,底泥に棲息しているベントスが脱窒菌に何らかの影響を及ぼし脱窒活性を高めている事を示唆していた。
著者
清家 暁 岡部 正也 佐伯 昭 海野 徹也 大竹 二雄 中川 平介
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.852-858, 2002-11-15
被引用文献数
4 5

高知県伊尾木川および物部川で捕獲されたアユの由来判別を耳石Sr/Ca比を用いて行った。両河川に放流された人工海産アユは発育初期の飼育水の塩分濃度が低く,かつ,淡水への馴致期間も天然魚に比べて短いことから耳石Sr/Ca比により天然,人工海産および湖産アユの判別が可能であった。1998年および1999年の伊尾木川の29個体,1999年度の物部川の56個体について耳石Sr/Ca比と標識痕による由来判別を行った結果,両者の結果が一致しなかったのは全体の12%,わずか10個体であった。この結果は耳石Sr/Ca比によるアユの由来判別が従来の標識方法と同等に有効であることを示唆するものである。
著者
増田 育司 酒匂 貴文 松下 剛 白石 哲朗 切通 淳一郎 神村 祐司 小澤 貴和
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.709-716, 852, 2003-09-15
被引用文献数
5

鹿児島湾産アカカマス1631尾の耳石横断薄層切片をもとに,本種の年齢と成長を検討した結果,縁辺成長率の経月変化および優勢ないし劣勢年級群の経年出現状況から,用いた耳石輪紋(不透明帯内縁)は年輪であることが立証された。6月1日を誕生日と仮定して,輪紋数に応じて個体毎に年齢を割り振り,Bertalanffyの成長式を当てはめた結果,雄はL_t=304.6{1-exp[-0.433(t+3.385)]},雌はL_t=337.5{1-exp[-0.421(t+2.972)]}で表された。両式は有意に異なり,いずれの年齢においても雌は雄より大きい体サイズを示した。最高年齢は雄で11歳,雌で8歳であった。
著者
西川 哲也 堀 豊 長井 敏 宮原 一隆 吉田 陽一 小玉 一哉 酒井 康彦
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.388-394, 2000-05-15
被引用文献数
5 1

播磨灘においてノリ養殖に有害な大型珪藻Coscinodiscus wailesiiについて, 1995,1996,および1997年の3年間における同種の発生と水質, 気象要因等との関係を調べた。C.wailesiiは, 11月から翌年2月頃の比較的低温で日射量が低く, また海水の鉛直安定度の低い時期(鉛直混合期)に出現し, また, DIN(溶存無機態窒素), DIP(溶存無機態リン), DSi(ケイ酸態ケイ素), およびDIN×DIPが高く, DIN : DIP比やTN(全窒素)×TP(全リン) : DIN×DIP比(栄養塩利用強度)の低い水域(年または月)にやや高密度(20-200 cells/l程度)で出現する傾向が強かった。
著者
山羽 悦郎 水野 寿朗 松下 健 長谷部 優
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.709-717, 1999-07-15
被引用文献数
5 17

キンギョの胚操作の指標となる嚢胚期以前の発生段階を, 組織学的, 細胞学的, 発生遺伝学的な視点から検討を加えた。20℃の培養下で同調卵割から非同調卵割への移行(中期胞胚期遷移)は, 9回の同調卵割の後の受精約6時間に起こり, この時期以降を中期胞胚期と定めた。中胚葉分化の指標となるgoosecoidとno tailの発現は受精後8時間に観察され, この時期以降を後期細胚期と定めた。胚盤周囲の卵黄多核層の形成と深層細胞の運動は中期胞胚期に, 胚盤中央部の卵黄多核層の形成と深層細胞の自律的な混合は, 被いかぶせ運動以前の後期胞胚期に観察された。