著者
澤 一雅 工藤 孝也 山岡 耕作
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.999-1005, 2000-11-15
参考文献数
13
被引用文献数
4 2 2

2種類の人工生息場所への放流種苗マダイの蝟集状況を潜水調査した。Aタイプは幅50cm, 高さ15cmの黒色の長方形の網3枚から, BタイプはAタイプの長方形の網1枚と, 底を覆うように設置した50cm四方の網2枚より構成される。1998年7月21日に第一次放流として約3000個体(平均全長25.6mm)を, 7月28日に第二次放流として約1700個体(平均全長69.7mm)を放流した。放流個体は, 特に放流直後に人工生息場所周辺に蝟集し, BタイプをAタイプよりも多くの個体が利用した。これらの傾向は一次放流された小型個体で顕著であった。第二次放流個体に対しては, Bタイプはなわばり形成の基点の機能もはたした。
著者
吉本 洋 藤井 久之 中西 一
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.1057-1064, 2007-11-15
被引用文献数
3 4

紀伊半島西岸域で採捕された稚アユの耳石により,ふ化時期・初期成長を求め,それらと海水温・プランクトン量との関係について検討した。ふ化時期は 11 月中・下旬が中心で,11 月にふ化した稚アユは,12 月の海水温が低く 1 月のプランクトン量が多いほど成長速度が大きくなった。北部海域は南部海域と比較し,ふ化時期が早く,冬期にプランクトン量が多いため成長速度も大きかった。また,稚アユの漁獲尾数(CPUE)が多い年の初期成長は良好であった。以上のことから,稚アユの資源豊度には,プランクトン量,水温,初期成長が関係していることが示唆された。<br>
著者
若尾 卓成 疋田 雄一 常吉 俊宏 梶 真寿 久保田 裕明 久保田 隆之
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.391-399, 1999-05-15
被引用文献数
9 16

日本種シラスウナギの減少に伴い, 種を偽ったシラスが取り引きされている。この不正防止のため, 各種ウナギDNA塩基配列データを基に種のDNA鑑定法を開発した。各試料からDNAを抽出, ミトコンドリア・チトクロムb遺伝子のPCR産物を種特有塩基配列を認識する制限酵素で消化し, 電気泳動で判定した。日本種か否かの判別と共に, 代表6種につき種を判定した。各形状の微量試料から所要8時間, 試薬コスト500円の簡易・迅速・安価な種鑑定法を開発した。
著者
田中 庸介 大河 俊之 山下 洋 田中 克
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.50-57, 2006-01-15
被引用文献数
5 7

長崎から北海道までの12地点でヒラメ稚魚の食物組成および摂餌強度の地域性を検討した。稚魚は主にアミ類,仔稚魚類,エビジャコ類,ヨコエビ類を摂餌し,ヒラメ稚魚の食物組成は主に環境中に多く出現したアミ類で占められていた。環境中のアミ類の出現種および分布量は1〜10種,3.0〜1712.8mg/m^2と変化し,主要種は地点によって変化した。全ての餌に対する胃充満度とアミ類生物量との間に一定の関係は認められなかったが,アミ類のみの胃充満度は生物量約200mg/m^2までは生物量に対応して増加した。アミ類生物量はヒラメ稚魚の食物組成と摂餌強度に影響を与えると考えられた。
著者
米田 佳弘 藤田 種美 中原 紘之 金子 健司 豊原 哲彦
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.45-54, 2008-01-15
被引用文献数
2

大阪湾の人工護岸上の高密度にウニ類が生息している藻場において,3年間にわたりウニ類の密度を人為的に調節した実験区で海藻群落の年間生産量を推定した。ウニ類の現存量が大きくなるほど海藻の全生産量も大きくなり,現在のウニ生息量の約2倍(2000g湿重/m^2,60個体/m^2)でも海藻群落は維持された。このことから,大阪湾の人工護岸上の藻場では,ウニ類の摂食圧が増大すると海藻の生産量も同時に増大し,磯焼けとはならずに,海藻群落を維持しながらウニ類が高密度で共存できることが明らかとなった。
著者
中田 久 中尾 貴尋 荒川 敏久 松山 倫也
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.942-946, 2005-11-15
被引用文献数
1 6

ブリの人工授精による採卵技術の向上を目的として,HCG投与時の卵径と排卵時問,卵量および卵質との関係を調べた。卵径650〜800μmの卵を持つ養成3歳雌魚33尾にHCG(500IU/kg)を投与して排卵を誘導した。その結果,HCG投与時の卵径(D,μm)と排卵までの時間(T,hr)には,T=-0.082D+105.99(R^2=0.51)の式で表わされる負の相関関係が認められた。卵径700〜800μmの個体からは約53万粒/尾の卵が得られ,卵径650〜700μmの個体ではその半数であった。ふ化率はHCG投与時の卵径が大きい個体ほど高かった。
著者
百瀬 修 武井 史郎 前川 陽一 内田 誠 宗宮 弘明
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.933-939, 2003-11-15
被引用文献数
2 3

表層性の魚食魚であるシイラの遠近調節糸と視神経細胞の分布を調べた。シイラは発達した水晶体筋を持ち,水晶体筋はバンド状の筋成分で虹彩に結び付けられていた。水晶体筋は約240本の有髄神経線維によって支配されていた。中心野は網膜側頭部,視軸は前方,視精度は約8.3cycles/degreeであった。視精度の優れた視野は水平方向に広がっていた。シイラは表層で広く水平方向を見渡し,発達した遠近調節能力を駆使して餌生物をねらう視覚捕食者であることが裏付けられた。
著者
仲島 淑子 松岡 達郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.728-737, 2004-09-15
被引用文献数
7 19

逸失底刺網のゴーストフィッシング(GF)の経時的変化と死亡数の定量的評価を試みた。模擬逸失網の連続2日の潜水観察で網羅魚/日を調べる実験を当初は毎日,以後は間隔をおいて最長1,689日間,計3回行った。網周辺の魚類相の定常性を確認し,夜網数の変化は網のGF能力の変化を代表すると考えた。GF能力低下をその短期・長期的要因による2項の和で近似し,GF継続期間(GF能力が当初の5%になるまで)を142日,総死亡数を455尾と推定した。マダイ,ムロアジはおもに初期の短期間,カワハギは長期間網羅が生じた。
著者
片野 修 中村 智幸 山本 祥一郎 阿部 信一郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.902-909, 2004-11-15
被引用文献数
4 9

浦野川において魚類の種組成,個体密度,成長率および食物関係について調査した。合計で14種,7,052個体の魚類が採集された。オイカワがもっとも優占し40%以上の個体数を占め,ついでドジョウ,ウグイ,カマツカが多かった。これらの魚種は6月から8月にかけて正の成長を示した。大半の魚はユスリカなどの水生昆虫を捕食していたが,オイカワだけは底生藻類を主食としていた。浦野川の調査区においてはナマズなどの魚食性魚類がほとんど生息しておらず,その生態的地位が空白となっている。したがって,オオクチバスなどの外来魚食魚の侵入が危惧される。
著者
宮嶋 俊明 岩尾 敦志 柳下 直己 山崎 淳
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.8-17, 2007-01-15
被引用文献数
3 4

京都府沖合海域において,駆け廻し式底曳網に仕切網と選別網(目合600mm)を取り付け,ズワイガニを網外に排出し,カレイ類を漁獲するための漁具の開発を行った。漁獲物とズワイガニの分離は選別網で行い,効率的な分離を行うためには,底網から選別網までの高さを維持することが重要であった。本漁具を用いた試験操業では,ズワイガニの74〜98%を網外に排出し,アカガレイの67〜88%,ヒレグロの57〜70%を漁獲することができた。本綱は甲幅100mm以下のズワイガニの分離に対して有効であった。
著者
小金 隆之 浜崎 活幸 野上 欣也
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.161-164, 2005-03-15
被引用文献数
7 14

ズワイガニ幼生の適正飼育水温を明らかにする目的で,ふ化幼生を 1L ビーカーに収容し,水温 10, 12, 14, 16℃ で飼育した。第 2 齢ゾエアまでの生残率は各水温区とも 90% 程度の値を示したが,16℃ 区ではそれ以降に大量減耗がみられた。第 1 齢稚ガニまでの生残率は 14℃ で最も高い値を示した。各齢期までの発育日数は水温の上昇にともない指数関数的に減少し,発育日数の変動係数は 14℃ 区で小さい傾向があった。以上のことから,ズワイガニ幼生の適正飼育水温を 14℃ 程度と結論付けた。<br>