著者
陳 昭能 竹内 俊郎 高橋 隆行 友田 努 小磯 雅彦 桑田 博
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.542-547, 2004-07-15
被引用文献数
13 41

タウリンで強化したワムシをふ化から20日齢までマダイに給餌することにより, タウリンの有効性を検討した。マダイ仔魚中のタウリン含量は対照区, タウリン強化区でそれぞれ37,252mg/100gとなり, 6.8倍の差となった。マダイの成長をみると, 20日齢では対照区, タウリン強化区でそれぞれ全長6.26, 6.99mmとなり, 有意差が認められた。飢餓耐性試験においても差が認められ, タウリン強化区が優れていた。本研究結果からマダイ仔魚に対してタウリンが有効であることが明らかとなった。
著者
境 正 中村 康宏
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.213-215, 2008-03-15
被引用文献数
2 1

市販の水産練り製品であるかまぼこ,ちくわ,おびてんおよびはんぺんの脂質過酸化由来有毒アルデヒド,4-ヒドロキシヘキセナール(HHE)含量および脂質過酸化の指標としてマロンアルデヒド(MA)含量を測定した。測定した半数以上のかまぼこにHHEは検出されなかった。ちくわのHHE含量は製品間に差が認められた。イワシを含む製品中のMA含量は含まないものに比べ高かった。エビを添加したおびてんのHHE含量は他つもりに比べ低かった。病人食として製造・販売されているはんぺんにHHEは検出されなかった。
著者
石橋 泰典 小澤 勝 平田 八郎 熊井 英水
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.36-43, 2003-01-15
参考文献数
59
被引用文献数
8 13

マダイ仔稚魚に24時間の高水温,低水温,高塩分,低塩分およびアンモニアストレスをそれぞれ負荷し,半数致死レベルを求めて魚の発育に伴う各種環境ストレス耐性の変動様式を調べた。ストレス耐性は,どのストレスでもふ化直後は高く,ふ化後14から21日目の脊索屈曲期前後に有意に低下した。稚魚期(28日令)以降は,水温およびアンモニア耐性に明らかな回復がみられ,塩分耐性にも緩やかな回復が示された。以上の結果,マダイ仔稚魚のストレス耐性は,いずれも変態期に低下する様相を示し,この時期にみられる活動余地の低下が,各種環境ストレス耐性の低下原因の一つであることを示唆した。また,各種ストレスの24時間半数致死レベルが,ストレステストの負荷条件として利用できることを示唆した。
著者
堂本 信彦 王 鏗智 森 徹 木村 郁夫 郡山 剛 阿部 宏喜
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.1103-1109, 2001-11-15
参考文献数
36
被引用文献数
12 13

ホキ, ミナミマグロ, ヤリイカをミンチし, 加熱殺菌後, 麹菌, 食塩, 水, 乳酸菌を添加しもろみを調製した。発酵中に酵母を添加し, 発酵調味料(魚醤油)を製造し, 6ヵ月間の熟成中の成分変化および最終品の品質について検討した。新規発酵調味料のpHは4.8∿5.0と穀醤油に近く, 全窒素分は1.78∿1.86%と従来の魚醤油(ニョク・マム)に近い値となった。また, 遊離アミノ酸ではグルタミン酸, アラニン, ロイシン, リシンの量が多かった。官能評価の結果, ニョク・マムを対照とした不快臭の強さは3種の試料すべてで低く, 従来の魚醤油の臭いが軽減された発酵調味料が得られた。また, 味の面では塩かどがなく, まろやかなことが特徴であった。
著者
町田 益己 藤富 正毅 長谷川 健一 工藤 孝浩 甲斐 正信 小林 智彦 上出 貴士
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.755-756, 1999-07-15
参考文献数
5
被引用文献数
6 15

1997年に発生した渦鞭毛藻, Ceratium furcaの赤潮は, 和歌山県から茨城県にかけての太平洋沿岸において極めて広い範囲で認められ, その発生期間は3月下旬から7月下旬までの約4ヶ月間に及んだ。特に, 遠州灘から駿河湾にかけての海域に赤潮が約2ヶ月間継続し, 水産業に多大な影響を与えた。赤潮被害は伊豆半島東部の静岡県網代地区で5月23∿24日に強い低気圧の通過にともなう北東風によって本種細胞が集積し, 養殖していたブリ, マダイ, カンパチ等が斃死する事故が発生した。斃死の原因は細胞の集積とその後の死滅にともなう低酸素化現象と考えられた。本赤潮は発生範囲の規模と持続期間を考えれば, 過去に例のない大規模で特異的な現象であった。
著者
伊藤 正木 安井 港 津久井 文夫 多部田 修
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.175-181, 1999-03-15
被引用文献数
7 7

遠州灘で索餌期に漁獲されるトラフグ成魚の移動・回遊を解明するため1994∿96年に遠州灘で索餌期に行われた成魚の標識放流結果を分析した。その結果, トラフグ成魚は, 伊勢湾口から御前崎周辺を回遊範囲とし, 4,5月に伊勢湾口へ産卵回遊すると推測された。特に, 他の海域のトラフグより移動範囲が狭いことが特徴であった。この海域で行われた未成魚や産卵群の標識放流結果とあわせると, 遠州灘に分布するトラフグは, この海域で生活史を完結する独立した群であると考えられる。
著者
黒川 忠英 鈴木 徹 岡内 正典 三輪 理 永井 清仁 中村 弘二 本城 凡夫 中島 員洋 芦田 勝朗 船越 将二
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.241-251, 1999-03-15
被引用文献数
32 22

アコヤガイの閉殻筋の赤変化を伴う大量へい死現象の人為的再現手法と, その病理組織学的診断手法の開発を行った。赤変異常貝の外套膜片の健常貝への移植および健常貝と赤変異常貝との同居飼育により, 赤変異常が再現された。よって, 赤変異常は感染症による可能性が極めて強い。また, 外套膜と閉殻筋の病変が, その病理組織学的診断指標として有効と判断された。
著者
中村 智幸 片野 修 山本 祥一郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.745-749, 2004-09-15
被引用文献数
3 2

コクチバスとオオクチバスの成長に対する流水と水温の影響を実験的に検討した。給餌下では,両種ともに流水池と止水池との間で成長率に有意差は認められなかった。しかし,オオクチバスに対するコクチバスの成長比は,水温の低い時期に大きかった。無給餌下では,オオクチバスの体重の減少率は止水池に比べて流水池において大きかったが,コクチバスでは両池の間で体重の減少率に有意差は認められなかった。以上の結果は,コクチバスのほうがオオクチバスに比べて,流水と低水温に対する適応能力において優れていることを示している。
著者
針生 仁
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.710-713, 2002-09-15
被引用文献数
2 2

世界一の長寿国となった日本人の伝統食である和食が健康に良いと見直されている。近年、和食の代表的素材である魚の油脂成分に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)の生理機能が究明され、医薬品や健康食品素材として実用化が進展している。健康なタンパク質源のイメージを持つ魚の健康効果の一端が明らかにされたが、そのタンパク質部分についてはどうであろうか。食品の有する生理機能"食効"が科学的に実証され、厚生労働省許可の下に、パッケージに一定の範囲で効能表示ができる特定保健用食品が販売されている。ACEは、不活性なアンジオテンシンIを強力な昇圧物質であるアンジオテンシンIIに変えるとともに、動脈弛緩、血圧降下作用を示すブラジキニンを不活性化する。そのためACE阻害剤は、強力な降圧効果を示す。昨今、高血圧の臨床において、カプトプリル等のACE阻害薬やロサルタン等のアンジオテンシンIIアンタゴニストが主要薬として使用されている。かつお節やイワシの魚タンパクに由来するペプチドが、「血圧が高めの方の食品」として実用化されているのは、魚の新たな健康機能の発見であり、その実像を少し掘り下げてみたい。
著者
小山 法希 松川 雅仁 島田 昌彦 佐藤 良一
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.1068-1074, 2008-11-15
被引用文献数
2 3

冷凍バナメイエビを解凍後に0℃〜55℃の温度で貯蔵し,筋肉中のATP関連化合物の変化を調べた。10℃未満あるいは55℃の貯蔵では,AMPが減少しIMPと(HxR+Hx)がほぼ同じ割合で生成した。20℃〜40℃の貯蔵では,IMPが(HxR+Hx)より割合的に多く生成し,IMPは最高で70%にも達した。生のバナメイエビを氷殺後に7℃と22℃で貯蔵した場合,IMPの生成は7℃よりも22℃の方が多く,22℃で貯蔵したエビのうま味は有意に強くなった。遊離アミノ酸はいずれの貯蔵温度でも変化しなかった。
著者
北川 忠生 沖田 智昭 伴野 雄次 杉山 俊介 岡崎 登志夫 吉岡 基 柏木 正章
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.805-811, 2000-09-15
被引用文献数
6 5

オオクチバスはノーザンバスとフロリダバスの2亜種からなり, 現在日本に広く生息しているのは前者であると考えられている。奈良県の池原貯水池には, 1988年にそれまで生息していたノーザンバスに加えてフロリダバスが移殖された記録がある。池原貯水池を含む全国各地の14集団についてmtDNAのPCR-RFLP分析を行った結果, 池原貯水池の水系から他の水系には認められない遺伝子型が多数検出された。既知の遺伝子型との比較により, これらがフロリダバスに由来するものであることが明らかになった。
著者
丸山 俊朗 鈴木 祥広 佐藤 大輔 神田 猛 道下 保
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.818-825, 1999-09-15
参考文献数
24
被引用文献数
14 15

閉鎖循環式の泡沫分離・硝化システムと従来の流水式システムでヒラメを飼育し, 閉鎖循環式養殖の可能性を検討した。本閉鎖循環式システムは, 飼育水槽, 空気自吸式エアーレーターを設置した気液接触・泡沫分離槽, 硝化・固液分離槽, およびpH・水温調整槽からなる。ヒラメ幼魚200尾を収容(初期収容率2.8%)し, 90日間の飼育実験(実験終了時収容率5.0%)を行った。本閉鎖循環式システムと流水式システムを比較すると, 生残率はそれぞれ93.5%と98%であり, また, 飼料効率は, それぞれ117%と110%であった。本閉鎖循環式システムによって, 飼育水をほぼ完全に排水することなしに, 高密度飼育することができた。
著者
田子 泰彦
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.144-150, 2002-03-15
参考文献数
15
被引用文献数
14 8

富山湾奥部の砂浜海岸の砕波帯では,アユ仔魚は10〜1月(盛期は11月)に出現し,その平均標準体長は10月に12.1±1.8mm,11月に18.3±3.0mm,12月に22.0±4.9mmおよび1月に23.3±2.7mmであった。砕波帯の沖側に隣接する水深4m以浅の浅海域では平均標準体長36.1±3.8mmの大型仔魚が1〜2月に採集された。水中観察では11〜3月にかけて砕波帯およびそれに隣接する浅海域において仔魚の群れが確認された。富山湾では10〜12月まで砕波帯を中心に生息していたアユ仔魚は,仔魚の成長や水温の低下などに伴い,2月頃までにはその沖側に隣接する浅海域へ主な生息場を移すものと考えられた。
著者
松村 清治
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.250-255, 2007-03-15
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

有明海において1991〜1995および2000〜2002年に放流した23群のトラフグ標識魚の11月1目の推定全長を目的変数とし,放流時期,放流サイズ,放流場所,種苗性,資源量指数および水温(7〜8月と9〜10月)を説明変数として重回帰分析を行った。解析の結果,漁獲サイズの変動には放流サイズ,放流時期,放流場所,資源量指数および水温が影響していることが判明した。偏回帰係数から,諌早湾および湾奥において大きいサイズで早期に放流することにより,より大型の漁獲加人魚が得られることが判った。
著者
林田 文郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.212-220, 2000-03-15
参考文献数
41
被引用文献数
5 3

岩地湾のアマモは, 水深3∿11mの範囲に生育し, 生育下限の水深12mでの相対照度は11%であった。現存量および葉面積指数は, 7月に最大となり, それぞれ888g。生重量/m^2(水深7m), 約3(水深10m)を示した。生殖株の出現率は6月で最も高く, 水深7mでは36%であった。岩地湾のアマモは, 7∿10mの深所で生育が良く, その主な理由としては, 透明度が極めて高く, また日照時間と日射量のいずれも, 他府県とくらべて高い値を示すという, 自然環境特性によるものと推察される。
著者
篠原 直哉 後川 龍男 深川 敦平 秋本 恒基 上田 京子 木村 太郎 黒田 理恵子 赤尾 哲之
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.70-76, 2009-01-15

福岡県で未利用であったアカモクについて成熟状況と加工品の品質との関係について報告する。福岡県大島地先で2005年12月から2006年4月の間に採取した原藻を時期別に加工し,出来た加工品の色調,粘性,フコイダン含量を成熟段階で比較した。その結果,粘性及びフコイダン含量は成熟と共に増加し,色調は未成熟のアカモクを用いた加工品では鮮やかな緑色をしているが,成熟に伴い緑色から褐色へと変化することが明らかになった。よって,成熟直前の藻体が加工原料として有用であることが示唆された。
著者
張 成年
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.979-981, 2008-09-15
被引用文献数
2
著者
厚地 伸 増田 育司 赤毛 宏 伊折 克生
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.714-721, 2004-09-15
被引用文献数
11 17

鹿児島県近海で漁獲された計1,009個体の耳石横断薄層切片をもとに,本種の年齢と成長を検討した。輪紋(不透明帯内縁)は年1回,12〜4月に形成され,主産卵期の1〜3月とほぼ同時期であった。誕生日を2月1日と仮定し,von Bertalanffyの成長式を当てはめた結果,雄の成長はL_t = 547.0 {1 - exp [-0.524(t+0.742)]},雌はL_t = 844.0{1 - exp [-0.284(t+0.789)]}で表され,1歳時を除いて雌は雄よりも大きい体サイズを示した。雌雄共に天然魚と放流魚間では成長に有意差はみられず,観察された雄の最高齢は18歳,雌は13歳であった。