著者
原田 真美 東海 正 内田 圭一 清水 詢道
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.894-904, 2006-09-15
被引用文献数
2 3

東京湾内湾域におけるマアナゴとのヌタウナギ分布を検討するために,あなご筒漁船の漁獲操業日誌(1994〜2002年)から漁区別CPUE(漁獲量kg/筒1本)の月別分布図を作成した。マアナゴは,春季に来遊,着底した後,呼称めそあなご(全長35cm未満のマアナゴ)として内湾域の千葉県寄りの漁場で8月頃から混獲され始め,全長35cmに達したものが11月頃から銘柄あなごとして水揚げされ,内湾域全域に分布を広げる。ヌダウナギは,主に内湾域南西部の中ノ瀬周辺の水深30m以深に分布した。これらの分布や季節変化に影響する要因についても考察した。
著者
戸嶋 孝 荒井 修亮
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.25-32, 2000-01-15
参考文献数
18
被引用文献数
1

対馬暖流域5漁場におけるマダイ1歳魚の耳石断面のストロンチウム濃度を, 波長分散型EPMAで分析した。その結果, 耳石断面のストロンチウムの相対的な濃度の変動には, 変動幅が小さくほぼ一定の値で推移する場合と, 耳石の成長過程において一時的に顕著な増加を示す場合の概ね2つのパターンが確認された。長崎県沿岸では, 前者の変動パターンを持つマダイのみが確認されたが, 秋田県沿岸のマダイでは, 両方の変動パターンがそれぞれ同数出現した。さらに後者の変動パターンについては, 秋田県沿岸だけでなく, 京都府沿岸や石川県沿岸で漁獲されたマダイでも確認された。
著者
舩津 保浩 砂子 良治 小長谷 史郎 今井 徹 川崎 賢一 竹島 文雄
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.1036-1045, 2000-11-15
被引用文献数
18 25

マルソウダから調製した魚醤油(FMS)の呈味成分を, 国内産魚醤油(しょっつる(S), いかいしる, いわしいしる(IS))および大豆こいくち醤油(SS)と比較した。その結果, FMSは遊離アミノ酸やオリゴペプチド態アミノ酸総量が, 比較した全試料の中で最も多く, SSのそれらよりも多かった。全試料で, AMP, IMPおよびGMPは検出されなかった。FMSとSSで有機酸の総量は極めて高いが, その大部分は乳酸であった。FMSとSSはKとP含量が高く, Naが比較的少なかった。官能評価では, SとISでは塩味が強いが, FMSとSSでは, 塩味は強いとは感じられず, まろやかで味のバランスがとれていた。
著者
高田 久美代 妹尾 正登 東久保 靖 高辻 英之 高山 晴義 小川 博美
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.598-606, 2004-07-15
被引用文献数
5 5

マガキ, ホタテガイおよびムラサキイガイにおける麻痺性貝毒の蓄積と減毒過程の差異を明らかにするため, 原因プランクトン<i>Alexandrium tamarense</i> の消長とこれら貝類の毒力と毒組成の推移を調べた。毒力の推移は貝種によって大きく異なり, マガキは<i>A. tamarense</i> が消滅すると1~2週間後に毒力が不検出となり, ホタテガイやムラサキイガイに比べて毒の低下が早く, 蓄積する毒力も最も低かった。毒組成の推移も貝種によって異なった。貝種による毒化と減毒の差異には毒組成の違いが関与していると考えられた。
著者
片野 修 中村 智幸 山本 祥一郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.733-737, 852, 2003-09-15
被引用文献数
2 5

水槽内でブルーギルに捕食されるモツゴの個体数および最大体長を調べた。初期標準体長が2.5〜7.9cmの生きたモツゴ15個体と,標準体長5.7〜14.3cmのブルーギル1個体を水槽に収容し,ブルーギルによるモツゴの捕食を10日間調べた。体長5.7cmの1個体を除くすべてのブルーギルがモツゴを捕食した。ブルーギルに捕食されたモツゴの最大体長および総重量はブルーギルの体長と相関し,1個体のブルーギルは最大で1日あたり5.8g(ブルーギルの体重の5.6%)のモツゴを捕食した。
著者
三宅 琢也 中島 淳 鬼倉 徳雄 古丸 明 河村 功一
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.1060-1067, 2008-11-15
被引用文献数
3 7

九州産ニッポンバラタナゴ(RoK)の保護に向けた知見を収集するため,遺伝子と形態分析によりRoKの分布の把握を試みた。RoKのmtDNAは46集団中41集団で見られたが,13集団においてはタイリクバラタナゴ(RoO)のmtDNAも確認された。RoKは九州中北部に広く分布していたもののRoOによる遺伝子浸透は多所的に生じていた。平均側線有孔鱗数とRoOのmtDNAの頻度の間には正の相関が認められた。RoKの識別において側線有孔鱗数は,腹鰭前縁部の白色帯よりも優れた形質であると言える。
著者
北川 えみ 北川 忠生 能宗 斉正 吉谷 圭介 細谷 和海
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.146-150, 2005-03-15
被引用文献数
5 2

1988 年にオオクチバスフロリダ半島産亜種が放流された池原貯水池では,1996, 1997 年の遺伝学的調査においてフロリダ半島産亜種由来のミトコンドリア DNA(mtDNA)をもつ個体の割合は 56.8% であった。今回(2003 年)再調査を行った結果,本亜種由来の mtDNA をもつ個体は全体の 86.7% となり,前回調査より有意な増加がみとめられた。また,近畿地方の池原貯水池とは別水系の湖沼(津風呂湖,宝ヶ池,深泥池)からも本亜種由来の mtDNA をもつ個体が検出された。<br>
著者
塚正 泰之 萩原 智和 安藤 正史 牧之段 保夫 川合 哲夫
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.787-795, 853, 2003-09-15
被引用文献数
1

市販かまぼこの部位による物性の違いを破断試験で測定した。直径0.3cmのプランジャーを用いて0.7cm間隔で測定した場合,周りの測定痕が物性値にほとんど影響しないことを確認した。かまぼこの部位による物性の違いを7種類の市販かまぼこで測定した結果,全てのかまぼこでスライス面の上下方向で,多くの物性値に有意差が認められ,左右方向,スライス片間では,数種のかまぼこに特徴的な差が認められた。かまぼこ間の物性の違いを主成分分析で比較した結果,第1主成分は破断時の物性,第2主成分は噛み始めの物性を示した。
著者
宮城 美加代 川村 軍蔵
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.195-199, 2000-03-15
被引用文献数
4 5

S電位のL型反応を指標にした海産魚のUV感覚と, 錐体細胞の種類との関係を調べた。15魚種の供試魚の内11種から安定したL型反応が得られた。ホウボウ等5種で337nmと368nm両方のUV刺激に対してUV応答が得られ(Aグループ), マダイとヘダイでは368nmのみにUV応答があり(Bグループ), コノシロ等4種でUV応答がなかった(Cグループ)。いずれのグループでも錐体モザイクにはsmall accessory corner coneを欠き, A, Bグループでは錐体モザイクにcentral single coneが規則的に存在し, Cグループではcentral single coneが全体的に低密度でまばらに存在した。このことより, 本研究の供試魚のUV錐体はcentral single coneであると推定された。
著者
今田 千秋 西本 真一郎 原 三郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.85-89, 2001-01-15
参考文献数
17
被引用文献数
2 3

海洋細菌Alteromonas sp. B-10-31株が生産するプロテアーゼインヒビター(PI)の魚肉粗プロテアーゼに対する阻害効果を調べた。その結果, マイワシ由来のすり身に高い阻害効果が認められたがスルメイカには認められなかった。他の市販PIをマイワシ由来のものに添加しその併用効果を調べた結果, 放線菌由来のロイペプチンが最も効果的であった。海洋細菌由来のPIをDEAE-cellulofineカラムクロマトグラフィーで分画し, 二つの活性画分を得, その各々をマイワシすり身に添加してその効果を調べたところ, 後から溶出する画分(糖タンパク質)にすり身のゼリー強度と弾力性を増加させる効果があったことから魚肉すり身への応用が期待される。
著者
大河内 裕之 山根 幸伸 有瀧 真人
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.389-394, 2008-05-15
被引用文献数
1 9

岩手県宮古湾で産卵直後のニシン成魚を採捕し,2年間で合計500尾を標識放流した。放流後3年2ヶ月間で合計114尾の標識魚が再捕され,再捕率は22.8%であった。これらの再捕経過から,宮古湾で産卵を終えたニシンは速やかに産卵場を離れて北上回遊し,夏季には宮古湾の300km北方の北海道噴火湾海域に生息すると考えられた。放流翌年の産卵期には合計32尾が成熟して宮古湾内で再捕され,これらは噴火湾から南下した産卵回帰個体と判断された。本州沿岸で産卵するニシンは,標識魚と同様の回遊生態を持つと考えられた。
著者
呉 泰棋 桜本 和美 長谷川 誠三
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.866-873, 2002-11-15
参考文献数
23
被引用文献数
7 6

日本海北部11海域のスケトウダラの漁獲量変動と表面水温との関係について検討した。30年間の漁獲量と月別水温を用いた相関分析,因子分析を行うことにより,以下の結果を得た。(1)北海道日本海側北部海域の表面水温は日本海北部海域の漁獲量変動と極めて強い負の相関を示した。(2)上記t年の漁獲量は特に,t-τ年(τ=3,4,5)の1月,2月,9月の表面水温と強い負の相関を示した。以上の結果から,水温がスケトウダラの再生産,資源変動などに強く影響している可能性が示唆された。