著者
團 重樹 浜崎 活幸 山下 貴示 岡 雅一 北田 修一
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.615-624, 2008-07-15
被引用文献数
7

アリザリンレッドSで甲を標識したコブシメのふ化イカ2.5〜6.2万個体を石垣島の浦底湾と川平湾に放流し,各湾に設置された小型定置網の漁獲個体と石垣島の5ヵ所の海岸および魚市場で甲を収集し,標識の有無を調べた。放流個体は放流年の秋から翌々年の春にかけて放流点近海で漁獲され,小型定置網での混獲率は4.5〜18.0%に達した。また,標識甲は放流点近辺の海岸で発見された。これらの結果から,回収率は0.02〜0.08%, Yield per releaseは0.24〜1.28gと推定された。
著者
秋山 清二
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.1103-1108, 2007-11-15
被引用文献数
3 4

定置網漁業における漁獲物の投棄実態を明らかにするため,2005 年 1 月~2006 年 12 月に千葉県館山湾の大型定置網で乗船調査を行った。調査の結果,CPUE(1 操業あたり漁獲量)は 1463.2 kg, DPUE(1 操業あたり投棄量)は 123.3 kg となり,投棄率(DPUE/CPUE)は 0.084 となった。主な投棄魚種はカタクチイワシ,ギマ,シマガツオ,シイラ,ネンブツダイであった。漁獲量の増加にともない投棄量も増加する傾向がみられ,両者間には正の相関が認められた(<i>r</i>=0.84, <i>p</i><0.05)。<br>
著者
森岡 克司 堺 周平 竹上 千恵 小畠 渥
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.732-738, 1999-07-15
被引用文献数
9 12

マルソウダ加工処理残滓の有効利用のための基礎的知見を得ることを目的として, 高知県沖で漁獲されたマルソウダの脂質および脂肪酸組成の季節変動を調べた。残滓の約42%を占める頭部および眼窩組織の脂質含量は, 一年を通じてそれぞれ5.2&acd;11.6%および7.0&acd;17.9%の間で変動した。両組織の全脂質の脂肪酸では, 22 : 6n-3(DHA)の組成比が通年最も高く, 頭部で22.7%以上, 眼窩組織で24.5%以上を占めていた。以上の結果から, マルソウダ加工処理残滓のうち, 眼窩組織を含む頭部はDHAの供給源として利用できる可能性が確認された。
著者
藤田 薫 渡部 俊広 北川 大二
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.695-701, 2006-07-15
参考文献数
19
被引用文献数
5 7

調査用トロール網によるズワイガ二類の資源量の推定精度を向上するために,水中ビデオカメラを用いてグランドロープ(GR)に対するズワイガ二類の行動を観察した。2000年と2001年の6月に宮城県沖から茨城県沖において行った合計10回の調査の映像記録から466個体のズワイガ二類の行動を解析した結果,94%が静止したままGRに遭遇した。ズワイガ二類はペンネソトや手綱によって網口へ駆集されることはないと推測した。入網しなかった個体はGRの下方から抜けた。ズワイガ二類の漁獲はGRに大きく影響される。
著者
田子 泰彦
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.44-49, 2000-01-15
被引用文献数
9 10

北陸地方の神通川と庄川において, サクラマス親魚の河川への遡上と滞留状況を1991&acd;1995年に調べた。神通川への遡上は2&acd;6月であり, その盛期は5月にあった。遡上親魚の大きさは尾叉長58.5±4.9cm, 体重2.8kg±0.8kgで, 遡上親魚の74.7%を雌が占めた。庄川中流域における流し網による親魚の捕獲調査では, 96.4%の個体が淵で捕獲された。神通川で4&acd;6月に漁獲された個体の80.2%が空胃であった。これらのことから, サクラマスは河川に遡上後は中流域の淵に滞留し, ほとんど摂餌せずに越夏するものと推測された。サクラマス資源の効率的な増大のためには, 淵の保全・復元が極めて重要であると考えられた。
著者
吉岡 立人 荻野目 望 内田 直行
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.68-73, 2005-01-15
被引用文献数
3 2

一本釣カツオおよびまき網カツオを原料魚として製造したかつお節の品質を,製造中の粉末の発生量,製品の嵩,腰の強さ,およびイノシン酸音量を指標として比較した。また,筋組織を組織化学的に分析した。その結果,一本釣カツオを原料魚とした節は,いずれの品質指標においても有意に優れており,エオシン陽性成分の筋細胞内残留率が有意に高かった。この細胞内残留率と品質指標との間に関連性が認められ,かつお節製品組織の筋細胞内に残留するエオシン陽性成分の存在状態は,かつお節の品質を決定する大きな因子であることが示唆された。
著者
佐藤 良三 鈴木 伸洋 柴田 玲奈 山本 正直
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.689-694, 1999-07-15
被引用文献数
6 10

瀬戸内海・布刈瀬戸の産卵場周辺の三原市幸崎沖で, ディスク標識を装着した197尾のトラフグ親魚を1994年と1995年の5月中旬に放流した。瀬戸内海では放流後6カ月以内に計14尾が再捕されたが, 多くは放流直後に周辺海域で再捕され, 以後西方の海域へ移動した。外海域では放流1&acd;22カ月後に11尾が玄界灘&acd;黄海, 志布志湾などで再捕された。翌年の産卵期に布刈瀬戸の産卵場周辺海域で計10尾が再捕され, 走島沖の2尾を除き, 他の産卵場と関係した再捕報告はなかった。この2尾が備讃瀬戸へ回遊した可能性はあるが, 布刈瀬戸への回帰性も否定できない。以上の結果から, トラフグは産卵場への回帰性を有すると判断された。
著者
中神 正康 高津 哲也 松田 泰平 高橋 豊美
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.818-824, 2000-09-15
被引用文献数
10 8

マコガレイ稚魚の主要餌生物の変化とハルパクチクス目の雄成体に偏った捕食を検討した。1996年5-7月, 1997年5月の岩部漁港ではハルパクチクス目のHarpacticus sp.が多く捕食されていた, 1997年5月の七重浜沖ではHalectinosoma sp.が主に捕食されていた。1996年8月以降体長30mmを超えると主要餌生物は, 小型底生甲殻類や多毛類に変化した。ハルパクチクス目の雄成体に偏った捕食は, サイズ選択ではなく繁殖期に雄の行動が活発化し, 捕食され易くなった結果と考えられた。
著者
藤田 薫 松下 吉樹 本多 直人 山崎 慎太郎 小林 正三
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.495-504, 2007-05-15
被引用文献数
1

現用の小型底びき網のグランドロープをコントロールとして,直径が約2倍のグランドロープを持つ小型底びき網のサイズ選択性を,拡張したSELECTモデルにより評価した。ガンゾウビラメとマトウダイは小型個体ほど,アカシクビラメとクロウシノシタは大型個体ほど選択率が低くなった。ホウボウは全長と選択率の関係に明確な傾向は見られず,漁獲個体数も変わらなかった。種やサイズによって選択性に相違があったことから,グランドロープの太さを選択漁獲に利用できる可能性がある。
著者
岸野 底 四宮 明彦
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.624-631, 2003-07-15
被引用文献数
5 14

絶滅が危惧されるリュウキュウアユの遡上期の生態を明らかにするため,1994年と1996年に鹿児島県大島郡住用村の役勝川で,遡上個体の出現期間,体長,日齢および発育段階を調査した。遡上期間は1月下旬から5月下旬までの4ヶ月間であった。平均体長(±標準偏差)は35.2±3.36mm,平均日齢は83.7±15.4日であった。外部形態は,黒色粗胞の少ないシラス型後期仔魚から,櫛状歯が出現し始めた稚魚まで多様な発育段階を示した。この結果はアユと比較して,より小型,若齢,早い発育段階を示しており,これらの特徴は遡上前の海域生活期間の短さに関連していると考えられた。
著者
阿知波 英明
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.92-93, 2002-01-15
被引用文献数
1

トラフグへの焼き印による標識の可能性について試験を行った。体背面,体腹面などに焼き印したところ,全長38,43mmでは11日目までに3個体とも死亡したが,全長66,70mmについては355日以上にわたり生存し,火傷跡に小棘鱗状突起および鱗が再生しなかったため,焼き印が明瞭に識別できた。このことから,全長66-70mmのトラフグへの焼き印標識方法は,長期間にわたり標識として確認が可能で,さらには標識を付ける作業が容易で,経済的であることなどから有効であると考えられた。
著者
野口 玉雄
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.928-929, 2002-11-15

フグ毒の研究は,1960年代の前半まではフグ毒(tetrodotoxin,TTX)構造の解明に終始した。1964年には,有機化学者の英知を集めた国際天然物会議において3つのグループからTTXに対して同一の絶対構造が提案され,この問題は一段落した。その際にMosher教授によるカリフォルニアイモリからTTXが検出された発表があり,TTXがフグの占有物である神話が崩れた。その後,日本で起きた魚介類自然毒による中毒に際して,いくつかの中毒原因物質がTTXと同定され,TTXの生物界における分布が広かった。これに伴って,これまで神秘と思われていたフグの毒化機構に食物連鎖が浮上するとともに,TTXの生体内における存在形態も論議されるようになった。さらに,抗TTXモノクローナル抗体の開発により,これに関する活発な研究が行われている。これら,最近の発展の著しいTTX研究のハイライトを紹介するとともに,これまでの研究を統括して,将来的なTTX研究の展望を述べたい。
著者
長島 祐二
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.920-921, 2002-11-15

フグが強力な神経毒であるテトロドトキシン(TTX)を持つことは古くから知られているが,その毒化機構については依然不明な点が多い。近年,人工飼育された養殖フグは毒性を示さないこと,無毒のフグにTTXを含む餌を与えると毒を蓄積すること,一方フグ以外の魚では毒が蓄積されないことが明らかにされた。これらのことから,フグには毒を蓄積する特別な働きがあることが予想され,毒と生体内高分子成分の結合を示唆する報告もある。本項ではフグの毒蓄積機構解明に資するため,各種魚類の肝組織切片を用いてin vitroでのTTX蓄積ならびに排出実験を行った。
著者
伊藤 光史 赤羽 義章
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.1051-1058, 2000-11-15
参考文献数
21
被引用文献数
10 24

マサバを1週間塩漬にした後, 7ヶ月間糠床に漬けてへしこを製造し, 工程中の一般成分とエキス成分の変化を調べた。塩漬では, 食塩の急速な浸透に伴い, 魚肉は強く脱水した。この間に一部のタンパク質が流出したが, 脂質は保持, 濃縮された。糠漬中に, 魚肉の水分, 灰分, 脂質はやや減少したが, タンパク質はほとんど減少しなかった。塩漬と糠漬中にヒスチジンは激減したが, 他の遊離アミノ酸と低分子ペプチドが著増し, このことはへしこ特有の呈味に寄与すると考えられた。イノシン酸などのヌクレオチドは塩漬で激減し, 糠漬の初期にはほぼ消失した。有機酸は糠漬の初期まで減少し, その後大きく増加し, それに伴い魚肉のpHが大きく低下した。
著者
高木 修作 細川 秀毅 示野 貞夫 宇川 正治
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.417-427, 2000-05-15
被引用文献数
6 11

マダイ飼料におけるコーングルテンミール(CGM)の配合許容量を, 0歳魚(初期平均体重53g)および1歳魚(初期平均体重280g)を用いて調べた。0歳魚では15%の, 1歳魚では36%以下のCGM配合区は, 無配合区と同等の平均増重量および飼料効率であった。しかし, 0歳魚では26%以上の, 1歳魚では47%以上のCGM高配合区の平均増重量および飼料効率は劣った。試験飼料の見かけのタンパク質消化率はCGM配合率と無関係に90&acd;95%と優れていた。マダイ飼料におけるCGM配合許容量は0歳魚で15%, 1歳魚で36%, 魚粉代替率としてそれぞれ30%および70%と判断された。