著者
今 攸 安達 辰典
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.673-680, 2006-07-15
被引用文献数
3 3

若狭湾沖に生息する最終末成体齢と若い成体(最終脱皮後<4年)のズワイガニが持つ卵巣卵数は,共に甲幅と正の相関にあり,前者の卵数は後者の62.8%と少なかった。これは卵巣発達時における体サイズの違いが原因しているとみられる。初産ガニと若い経産ガニ(1.5〜<4年)が持つ腹肢付着卵数も,共に甲幅と正の相関にあったが,前者の付着卵が末成体の卵巣に,後者の付着卵が若い成体の卵巣に由来していることから,前者は後者の66.3%であった。高齢の経産ガニ(>4年)が持つ両卵数は,甲幅との間に有意な関係が認められないうえ少なかった。
著者
松永 浩昌 中野 秀樹 石橋 陽一郎 中山 健平
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.178-184, 277, 2003-03-15
被引用文献数
1 5

日本におけるサメ類の種別・漁法別水揚量を明らかにする目的で,主要な漁港で市場伝票整理に基づくサメ類の水揚量調査を行なった。製品重量では1992-98年の漁法全体で年平均19,600卜ン,延縄で15,000卜ンの内,ヨシキリザメが11,600トン(59%),11,000卜ン(73%)であった。更に生体重量に換算した結果,全漁法で年平均28,700卜ン,延縄23,400トンとなり,同様にヨシキリザメが18,800卜ン(66%),17,800卜ン(76%)であり,何れの場合も6〜8割程度がヨシキリザメで占められていた。ヨシキリザメ以外ではネズミザメ,アオザメが10%前後,オナガザメ類が5%程度と,比較的多く水揚されていた。また,これら主要種の水揚量が減少しているような傾向は見られなかった。
著者
高橋 鉄美 亀田 佳代子 川村 めぐみ
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.576-578, 2002-07-15
被引用文献数
3 1

琵琶湖産アユとワカサギをカワウの胃内容物から種判別できるようにする目的で尾鰭骨格の観察を行った。両種は尾部棒状骨に下尾骨が癒合せず,2-5個の尾鰭椎前椎体に神経棘が関節することから他の琵琶湖に生息する魚類と区別できた。またアユは尾鰭椎前第3および第4椎体の神経棘が筒状の構造を持ち,先端に軟骨を有すること,そして上尾骨が2本で後方の下端が2叉するか,もしくは3本であることにより,ワカサギと明瞭に識別することが出来た。また両種の尾鰭骨格と体長の関係式も求めた。
著者
渡部 俊広 山崎 慎太郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.503-504, 1999-05-15
被引用文献数
10 8

曳航式深海用ビデオカメラによって, ベニズワイガニの分布を観察し, 生息密度観察法として本装置が有効な機能を有することを確認した。本装置は, バッテリーを内蔵し, タイマーによって作動する水中ビデオカメラ部とライト部, およびソリ型曳航台から構成される。ベニズワイガニの観察を隠岐諸島西側の水深約1000mの海域で, 1997年11月に2回行った。映像記録から観察されたベニズワイガニは, それぞれ25尾, 33尾であった。また, ベニズワイガニの行動に与える照明光の影響は少ないと推察した。
著者
鈴木 たね子
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.732-735, 2008-07-15
著者
林 雅弘 松本 竜一 吉松 隆夫 田中 悟広 清水 昌
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.674-678, 2002-09-15
参考文献数
21
被引用文献数
10 9

フィルター法によって全国各地の海水等からドコサヘキサエン酸(DHA)高蓄積性ラビリンチュラ類の分離を試み,12株の分離株を得た。各分離株の脂質含量,脂肪酸組成を分析したところ,脂質含量は乾燥細胞中13.7-23.0%,総脂肪酸中のDHA含量は21.5-55.4%であった。これら分離株を生物餌料用栄養強化飼料として利用するため,水中分散性と生物餌料への給餌試験を行ったところ,多くの株が水中で凝集性を示し,ワムシやアルテミアの斃死が認められた。しかし,分離株のうちKY-1株については高いDHA蓄積性を示し,水中分散性も良好であった。さらにKY-1細胞中のDHAはワムシ・アルテミアに短時間で移行することが確認され,生物餌料用栄養強化飼料として好適な性質を備えていることが示された。
著者
渡部 俊広 渡辺 一俊 北川 大二
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.620-623, 2003-07-15
参考文献数
14
被引用文献数
5 6

曳航式深海用ビデオカメラを用いて,金華山から小名浜沖の水深約440m〜700mの海域に24箇所の調査点をもうけて,2001年5月から6月の日中にキチジを観察し,生息密度を推定した。合計30回の観察を行い,延べ1,650分の映像記録を得た。総観察面積は86,160m^2,キチジの総観察個体数は253個体であった。それぞれの調査点における1,000m^2当たりの観察個体数は,0〜11個体であった。曳航式深海用ビデオカメラを用いたキチジの観察から生息密度を推定できることを確認した。
著者
山内 悟 澤田 敏雄 河野 澄夫
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.747-752, 1999-07-15
参考文献数
13
被引用文献数
10 8

インタラクタンス方式の光ファイバープローブを用いて, 冷凍カツオの脂肪含量を非破壊的に測定する方法を検討した。スペクトル(400-1100nm)と脂肪含量化学分析値(範囲1-55%)を基に重回帰分析を行い, 表皮から5mmの深さまでの魚肉の化学分析値とスペクトルデータとの間で最も良い結果が得られた。脂肪の吸収バンドである926nmを第1波長とする検量線において良好な結果が得られ, この場合の相関係数は0.91,SECは5.8%であった。検量線評価用試料により得られた検量線の精度を確認した結果, SEPは6.4%, バイアスは-1.0%であった。魚体の解凍に伴い, 表皮に発生する水により推定値に誤差が生じたが, 凍結状態であれば本測定方式は有効であると判断された。
著者
日下部 敬之 中嶋 昌紀 佐野 雅基 渡辺 和夫
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.713-718, 2000-07-15
参考文献数
25
被引用文献数
2 3

大阪湾において, イカナゴ仔魚の日中の鉛直分布を調査したところ, 5m層を極大として, 10m以浅の水深に集中的に分布していた。また, 浅い層の仔魚ほど多く摂餌していた。しかし水温, 塩分, および主餌料であるカイアシ類幼生の鉛直分布からは, これらの事象を説明できなかった。一方, 飼育実験の結果, 平均全長6.8mmのイカナゴ仔魚のワムシ摂餌数は明るいほど多く, 特に10lxと(10)^2lxの間で約3倍の差があった。現場海域で水中照度が(10)^2lxを下回る水深は15&acd;20mであったことから, イカナゴ仔魚が日中この水深帯に分布するのは, 摂餌に適した明るさを得るためであろうと考えられた。
著者
荒川 修
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.918-919, 2002-11-15
被引用文献数
3

高級魚トラフグは,近年天然物の漁獲量減少に伴い,養殖魚の需要が高まっているが,飼育が極めて難しく,魚病や寄生虫の被害に遭い大量死することが少なくない。養殖フグの生産高日本一を誇る長崎県も例外ではなく,養殖業者より,このような被害に対する根本的な対処法の提示を強く求められた。これに対し,筆者らは産学官の共同プロジェクトとして,「毒をもたない養殖フグに本来もつべきフグ毒(TTX)を与え,免疫力を高めて健全化する」という極めてユニークな養殖技術の開発を行ってきた。ここではその概要について述べる。
著者
藤枝 繁 佐々木 和也
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.755-761, 2005-09-15
参考文献数
30
被引用文献数
1 37

カキ養殖が盛んな広島湾江田島・倉橋島において, 海岸に漂着する発泡プラスチック破片とその主な発生源である発泡スチロール製フロートの港内における不適切な使用および海岸漂着後の放置の実態について調査した。34地点から245,656個の漂着物が回収され, そのうち98.6%が発泡プラスチック破片であった。同破片は98.5%が10.0mm未満の微小破片で, 漂着密度は44,521.3個/m^2であった。フロートは58港で6,760個が防舷物として使用されており, 一港あたりの平均使用個数は140.7個/港, 海岸漂着密度は1.1個/kmであり, いずれの値も江田島で高かった。
著者
胡 夫祥 大関 芳沖 東海 正 松田 皎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.846-851, 2000-09-15
参考文献数
5
被引用文献数
8 3

高速曳網が可能な稚魚採集トロール網用の湾曲V型デプレッサーを設計し, 模型実験によりデプレッサーの潜行力, 抗力特性を調べた。実験には翼面積397.7(cm)^2,縦横比6.0,反り比15%および上反角20°の模型を用い, 流速および迎角ごとに各流体力を計測した。また, ヒール角度を30°まで5°間隔に変化させて, 横揺れが生じたときの潜行力特性への影響も調べた, さらに, 同じ上反角を持つ平板型デプレッサーについても同様な実験を行い, 両者の潜行力特性を比較した。湾曲V型デプレッサーは最大潜行力係数が1.57(迎角20°)で, 平板型の値に比べて倍ほど大きいことが分かった。しかし, 最大潜行力係数を得た後に失速が早いことも確認された。また, 湾曲V型デプレッサーでは, 横揺れが生じたときにヒール角度20°までは潜行力特性に及ぼす影響が小さく, 特にヒール角度による圧力中心位置のずれが少なく, 横揺れに対する復元性がよい。
著者
河野 悌昌 銭谷 弘
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.636-644, 2008-07-15
被引用文献数
4 8

1980〜2005年の瀬戸内海におけるカタクチイワシの産卵量を月別海域別に推定した。瀬戸内海の年間産卵量は1993年の153兆粒から2002年の1,146兆粒の間で変動し,主産卵期は5〜9月であった。年間産卵量は伊予灘で最も多く,単位面積当たりの年間産卵量は大阪湾で最も多かった。カタクチイワシ卵は表層水温7.9〜31.7℃の調査点て採集されたが,16.0〜28.9℃の調査点においてより高い頻度で採集された。5〜9月における平均表層水温と合計産卵量の間には有意な正の相関関係が認められた。
著者
上田 祐司 成松 庸二 服部 努 伊藤 正木 北川 大二 富川 なす美 松石 隆
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.201-209, 2006-03-15
被引用文献数
1 7

東北海域におけるマダラ資源にVPAを適用して得られた資源量推定値をもとに,トロール調査に基づく面積密度法による資源量推定に必要な漁獲効率を推定した。1歳と2歳の漁獲効率はそれぞれ0.54,0.12と大きな差がみられた。1歳魚については調査範囲が生息域を網羅していることから,漁獲効率はトロール網の前にいた個体の入網率を反映した値であると考えられる。2歳魚以上では,着底トロール調査が困難な岩礁域等にも生息することから,漁獲効率は入網率に加え,網との遭遇率の影響も受けていることが示唆された。
著者
望月 聡 上野 洋子 佐藤 公一 樋田 宣英
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.495-500, 1999-05-15
被引用文献数
8 11

冬期および夏期に漁獲されたマサバを用い, 死後変化に対する貯蔵温度の影響を検討した。魚体が完全硬直に達するまでの時間は, 冬期夏期ともに5℃で貯蔵したときが最も長かった。背肉中のATP, IMP, イノシン, およびクレアチンリン酸の含量の変化は冬期では5℃で貯蔵したときに最も遅く, 夏期では0℃で貯蔵したときに比較して5℃および10℃で貯蔵したときの方が遅かった。K値は冬期夏期ともに10℃で貯蔵したときの上昇速度が速かった。筋肉破断強度の経時変化は冬期は顕著に, 夏期はわずかではあるが5℃で貯蔵したときに高い値を維持した。以上の結果から, マサバの死後変化を遅くするための貯蔵温度は, 漁期を問わず5℃程度が適当であると考えられた。
著者
中林 信康 谷口 和也
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.659-665, 2002-09-15
被引用文献数
6 4

1993年8月から1994年8月まで,男鹿半島沿岸水深1〜3mにおけるスギモク群落の季節変化と生産力を調べた。スギモクは9月に越年する付着器から細い糸状の葉が発芽し,冬季には緩やかに,春季には急速に生長して翌年6月に全長が52cm,現存量が5,974g湿重/m^2と当歳期での極大に達する。当歳の葉は9月にかけて著しく枯れ,換わって密な鱗片状の葉をもつ枝を12月まで形成する。1月には全長が53cm,現存量が6,503g湿重/m^2と満1歳期での極大に達するとともに,枝の先端に生殖器床を形成する。卵の放出は4月に水温が8℃以上になって行われる。卵放出後,鱗片状の葉をもつ枝は徐々に枯れて,約2年を経た11月にすべて枯死脱落する。スギモク群落の年間純生産量は層別刈り取り法によって10,478.8g湿重/m^2と計算された。
著者
大村 敏昭 濱津 友紀 高橋 豊美
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.584-593, 2005-07-15
被引用文献数
5 8

北海道太平洋沖(水深300〜1,000m)で7〜8月にキチジとベントスを採集した。空胃率からみて, 夏季はキチジの摂餌が活発な時期であると判断された。食物組成は水域や水深帯により大きく変化していたが, 成長に伴ってヨコエビ類・クーマ類から十脚甲殻類, クモヒトデ類へと向かう食性の変化が認められた。キチジは多様な餌を摂食していたが, 成長とともに豊富に存在するクモヒトデ類(主に小型種のホソクシノハクモヒトデ)への捕食割合を高める結果, 餌をめぐる強い種内・種間競争が回避されている可能性があると推察された。
著者
渡部 俊広 北川 大二
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.297-303, 2004-05-15
被引用文献数
4 8

調査用トロール網の漁獲からズワイガニ類(ベニズワイガニとズワイガニ)の現存量を正しく推定するために,袖先間隔を基準とした調査用トロール網の採集効率を推定した。調査は,太平洋東北沖において2000年6月に,曳航式深海用ビデオカメラを用いてズワイガニ類の生息密度を観測後,トロール網の操業を行った。トロール網の採集効率は,生息密度に対するトロール網の掃過面積と漁獲個体数から求めた密度との関係から回帰分析によって求めた。調査用トロール網の採集効率を0.30,その95%信頼区間を0.23〜0.37と推定した。
著者
山本 昌幸 栩野 元秀 山賀 賢一 藤原 宗弘
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.362-367, 2002-05-15
被引用文献数
5 5

1997年4月から1998年9月に瀬戸内海中央部において,たも網により1661塊の流れ藻をすくい,それに随伴していた幼稚魚22科34種10816尾を採集した。流れ藻1塊あたりの幼稚魚の採集尾数と採集された魚類の種数は春に増加し,6月に最高値を示し,秋冬に減少した。春の優占種はクロソイ,メバル,クジメ,夏はアミメハギ,ヨウジウオ,ウマヅラハギ,カワハギ,秋はニジギンポ,アミメハギ,ヨウジウオ,冬はクジメであった。これまでの報告と比較した結果,本海域の幼稚魚相は太平洋より日本海に類似していた。