著者
古賀 稔啓
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.233-236, 2005-06-20

障害者スポーツの代表的なものとして車椅子バスケットボールがあるが, 最近は障害に応じた多種多様なスポーツの選択ができるようになり, 多くの障害をもった人たちが生活の中でスポーツを取り入れ, また日常生活において介助を必要とする重度の障害をもった人たちもスポーツに挑戦できる時代になってきた。重度脳性麻痺者がスポーツをするために必要となる競技用具が研究開発されるようになってきたことが重度障害者がスポーッ参加できるようになった要因である。本稿では, 個々の障害に応じた競技用具の工夫について紹介する。足蹴り用レーシング車椅子 脳性麻痺でも上肢機能が下肢機能よりも劣っている場合に, 下肢で車椅子を駆動させてスポーッを行うための車椅子である。下肢で地面を蹴って駆動させるために, 後ろ向きでの走行になる選手もいる。その場合の車椅子では, キャスター部分が背側に付けられており, ハンドル操作は体側部分に付けられたハンドルレバーの操作で行われ, キャスター部分と連結しており, ダンパーを取り付けることでハンドルレバーを触らない時は直進できるようになっている(図1, 2)。
著者
金谷 さとみ
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.285-287, 2005-06-20

社会情勢と臨床教育 地域で暮らす要介護高齢者, 障害者およびその家族は保健, 医療, 福祉にまたがるサービスニーズを持っており, 地域での関係機関, 職種間の連携は非常に重要なものとなる。介護保険制度の導入で要介護(支援)高齢者におけるものはかなり整備されたが, 介護保険対象外の障害者においても同様の整備がすすんでいる。現在, 保健, 医療, 福祉の方向性は, 入院期間の短縮と在宅ケアの推進へ, そして中央機関から地方機関へと大きく流れを変え, 理学療法は理学療法士の数が圧倒的に少ない現状と, 増加を見込まれる将来を踏まえ, 前述のような社会変化とともに, その役割も少なからず変化していくものと考えられる(図1)。生活支援系での理学療法は, 医療施設で一時的に提供される機能回復とは異なり, 長期的な経過の中で提供される機能回復, 機能維持(または低下の予防), 機能低下への適切な対応と捉えることができる。そして, その目的は対象者の生活全体を支援し, (本人の望む)社会参加や社会活動を促すことにあり, つまり, それは保健, 医療, 福祉のみならず, 教育, 雇用, 都市計画などを包括するノーマライゼーション(normalization)を目的とする考え方に到達する。
著者
西田 裕介 久保 晃 田中 淑子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.29-31, 2002-02-20
被引用文献数
3

日本人の20歳代健常成人105名を対象に, 前腕長および下腿長と身長との関係を検討し, 各肢長と身長との関係を分析した。測定方法は, 身長は, 背臥位にて頭頂から足底までを計測した。前腕長は, 端座位にて上腕骨外側上顆から橈骨茎状突起まで(以下 : 前腕長(1)), 肘頭から橈骨茎状突起まで(以下 : 前腕長(2))を計測した。下腿長は, 背臥位にて膝関節外側裂隙から外果下端まで(以下 : 下腿長(1)), 腓骨小頭から外果下端まで(以下 : 下腿長(2))を計測した。統計学的手法には, 各肢長の測定値と身長においてピアソンの相関係数の検定を用い, また, 目的変数を身長, 説明変数を前腕長(2)・下腿長(2)とする重回帰分析を行った。ピアソンの相関係数の結果より, 全体および男性においては身長と高い相関関係を示した(男性 : r=0.65〜0.85,全体 : r=0.76〜0.86)。一方, 女性では男性および全体と比較すると相関係数が低かった(r=0.57〜0.70)。重回帰分析では, 女性においても高い相関係数が得られ(男性 : r=0.89,女性 : r=0.81,全体 : r=0.92), 重回帰分析より求めた回帰式を用いることで, 身長の推定が可能であると考えられる。このことは, 身体に高度な変形を呈する症例や立位保持が困難で身長の測定が不可能な症例に対して, 栄養状態や体格を把握した上で理学療法を実践する際に有意義であると思われる。
著者
竹澤 実 佐々木 誠
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.128-133, 2002-06-20

今回我々は,高橋らが慢性閉塞性肺疾患患者の評価のために開発した非支持上肢漸増運動負荷試験(Unsupported Incremental Upper Limb eXercise test ; UIULX test)の妥当性と,上肢使用日常生活活動との関連を若年健常女性14名を対象に検討した。UIULX testは高橋らの方法に従って行い,クリアーしたstageを記録した。上肢使用日常生活活動は,「棚に物を載せる」動作,「洗濯物を干す」動作,「食毒動作」,「洗面動作」,「整髪動作」,「更衣動作」の6項目とした。それぞれ呼吸循環反応と上肢,全身の自覚的運動強度を測定した。UIULX testではstageと全てのパラメーター間に有意な正の相関を認め,運動負荷試験としての妥当性の一部が確認された。上肢使用日常生活活動の各項目間では酸素摂取量,酸素脈,上肢・全身の自覚的運動強度は,活動間に有意な差を認め,心拍数,呼吸数,一回換気量では差は有意ではかった。次に,UIULX testの結果から,各パラメーターをUIULX testのstage値に換算した上で,活動内で値を比較したところ,整髪動作はパラメーターに差は認めなかったが,他の活動はパラメーター間に有意な差を認めた。UIULX test使用により上肢使用日常生活活動の運動特性が示され,UIULX testの臨床応用への可能性が示唆されたと考える。
著者
岡西 哲夫 大橋 哲雄 梶原 敏夫 奥村 庄次
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.535-541, 1991-09-10
被引用文献数
2

肘関節拘縮著明な6症例(骨折3例, 授動術3例)に対し, 他動的ROM訓練として徒手による方法と, ターンバックル式肘装具による方法を筋電図学的に検索した。他動的ROMの目的は, 筋の防御的収縮を低下させ, 結合組織の因子まで到達することにある。筋の防御的収縮の因子により制限されたものは徒手の方法であり, 装具による方法は疼痛は少なく, この因子を比較的低下できた。ターンバックル式肘装具は, 徒手では限界である弱い伸張力と長い時間の組み合わせと, ROMの長時間の保持等の利点から, 訓練後のROMのもどりを減少できたものと考える。本装具は開始時期を従来より早め, 使い方をきちんと教育すれば最も理にかなった方法と言える。
著者
池添 冬芽 市橋 則明 羽崎 完 森永 敏博
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.59-63, 2001-03-31
被引用文献数
1

本研究の目的は, 段差昇降動作における昇降動作様式の違いおよび下腿の肢位によって, 膝周囲筋の筋活動がどのように変化するかを明らかにすることである。対象は健常女子学生18名であった。測定筋は右下肢の大腿直筋, 内側広筋, 外側広筋, 半膜様筋, 大腿二頭筋とし, 前方昇降動作と後方昇降動作をそれぞれ下腿中間位, 下腿内旋位, 下腿外旋位で行わせたときの筋電図を分析した。前方昇格および後方昇降動作の筋活動量を比較すると, 大腿直筋, 内側広筋, 外側広筋においては前方昇降動作より後方昇降動作の方が有意に大きな筋活動量を示した。また, 下腿の肢位による変化は, 内側広筋, 半膜様筋, 大腿二頭筋において認められ, 内側広筋, 大腿二頭筋では下腿外旋位, 半膜様筋では下腿内旋位で最も大きな値を示した。これらのことから, 段差昇降訓練を行う場合, 段差昇降様式の違いではハムストリングスに対する負荷は変化しないが, 大腿四頭筋に対しては, 前方昇降より後方昇降させる方が大きな負荷量が得られること, さらに内側広筋をより収縮させたい場合には下腿外旋位で段差昇降を行うことが有効であることが示唆された。
著者
水上 昌文
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.27-33, 2000-03-31
被引用文献数
3

本研究の目的は, 臨床的に確認されている損傷高位で異なる脊髄損傷者のプッシュアップストラテジを運動学的な視点から分類し, その差を明らかにするとともに, 損傷高位との関係を検討することである。43例の脊髄完全損傷者を対象に長坐位でのプッシュアップ動作を2次元ビデオ方式動作解析装置にて解析し, 解析画像よりまず主観的に三つのストラテジに分類したものを目的変数とし, 各ストラテジを判別する動作解析指標を説明変数に判別分析を行った。その結果最終的にプッシュアップストラテジは垂直型, 回転型, 混合型の三つに分類でき, プッシュアップ最大高は垂直型<混合型<回転型であった。垂直型と混合型間の判別ではプッシュアップ開始から最高点までの上肢屈曲角変位及び質量中心前方移動量が, 混合型と回転型の判別では上肢屈曲角変位及び体幹前傾角変位がそれぞれ有意な判別指標であった。損傷高位との関係ではC6では垂直型が55%と最も多く, 損傷高位が下位となるに従って回転型の比率が増加した。以上より脊髄損傷者のプッシュアップストラテジは動作解析指標により三つに分類でき, 損傷高位のみでなく, 身体機能の影響を受けていることが示唆された。