著者
中澤 理恵 坂本 雅昭 中川 和昌 猪股 伸晃 小川 美由紀 武井 健児 坂田 和文 中島 信樹
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0562-C0562, 2008

【目的】<BR> 我々は,応急処置および傷害予防を目的とし,平成16年度から年間4大会開催される群馬県高等学校体育連盟(高体連)サッカー競技大会において,理学療法士(PT)によるメディカルサポートを行ってきた。それらの内容はすでに,第40回・第41回本学会で報告済みである。本研究の目的は,過去3年間の群馬県高体連サッカー競技におけるメディカルサポートの内容を整理し,今後の課題を明らかにすることである。<BR>【対象及び方法】<BR> 対象は平成16年度(H16),平成17年度(H17),平成18年度(H18)に開催された群馬県高体連サッカー競技12大会に出場した544校703試合とした。年間に開催される大会は,群馬県高校総合体育大会,全国高校総合体育大会群馬県予選,全国高校サッカー選手権大会群馬県予選,新人大会兼県高校サッカーリーグの4大会である。PTのボランティア参加の募集は群馬県スポーツリハビリテーション研究会を通じて行い,各会場2名以上常駐するように配置した。また,メディカルサポートの内容は,試合前の傷害予防・リコンディショニング目的のテーピング等のケア,試合中(原則選手交代後)及び試合後の外傷に対する応急処置,ケアの指導とした。<BR>【結果及び考察】<BR> 参加したPTの延べ人数はH16:205名,H17:167名,H18:153名の計525名であった。メディカルサポートで対応した総学校数は延べ343校65%であり,H16:124校68%,H17:115校68%,H18:104校60%と各年とも6割以上の学校がサポートを利用していた。H18の対応校割合の減少は,PTが専属に所属する学校数が増加したことが要因と考える(H16:5校,H17:6校,H18:8校)。また,対応選手数は延べ1355名(H16:514名,H17:481名,H18:360名)であり,対応件数は2461件(H16:847件,H17:938件,H18:676件)であった。その傷害部位の内訳は上肢221件,体幹232件,下肢1944件であり,足関節が753件31%と最も多く,サッカー選手の傷害に関する過去の報告と同様の結果となった。また,サポート内容の内訳はテーピング1327件54%(H16・H17:各54%,H18:53%),アイシング550件23%(H16:23%,H17:22%,H18:21%),ストレッチング266件11%(H16:11%,H17:10%,H18:12%),止血処置31件1%(H16:2%,H17・H18:各1%),傷害確認及び今後のケア指導287件12%(H16:8%,H17・H18:各13%)であり,H17からは傷害確認及び今後のケア指導の割合が増加した。傷害に対するその場での対応のみならず,今後のコンディショニングやリコンディショニングに関する指導技術の向上を図る必要性が示された。
著者
北澤 保之 志賀 典之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0564-C0564, 2008

【はじめに】森川嗣夫らの報告では、サッカーの傷害は特殊なポジションであるゴールキーパーやヘディングでの競り合いの際生じる頭頚部および顔面の傷害を除くと下肢に大半の外傷が発生している。日本サッカー協会の統計からも足関節靭帯損傷、ハムストリングスの肉離れ、膝内障が多く、サッカーチームのメディカルサポートにあたっては外傷発生に関与した下肢の動きの観察と対応が必須となる。今回成人男子及びJr.サッカーチーム選手のメディカルチェックにあたり、外観上の形態観察で回内・外足を分類する木田貴英らの推奨するDr.Anthony Redmondの視覚的足部アライメント測定方法Foot Posture Index(以下FPI法)とダイナミックアライメントの指標とされるKnee in toe out(以下KITO)およびKnee out toe in(以下KOTI)と負傷との関連性について検討した。 <BR><BR>【対象と方法】成人レギュラー選手 15名 30脚 (男性のみ、平均年齢24才)両内果間1グリップ幅の自然立位とし写真撮影を行った。FPI法に基づき8項目を右・左評定し、各素点の合計で+16から-16の範囲で回内・外足の総合判定を行った。また、膝内・外反、下腿内・外旋の程度を膝蓋骨中央よりの垂線の偏移程度で+10から-10の範囲に分類し、静的(static)アライメント(以下sKITO、sKOTI)の素点とし、クロス集計により3×3の9群にカテゴリー分類を行い、シーズン中の足・膝部捻挫、骨折等の怪我の有無と比較検討した。<BR><BR>【結果】負傷選手は3名、受傷率20%であり、FPI法では15脚が回外足でその内、当該負傷脚を含む11脚が「回外足かつsKOTI」のカテゴリーに属した。Yates補正カイ二乗検定で、危険度5%未満で有意差があると判定された。よって今回の評価法及びカテゴリー分類において「回外足かつsKOTI」群は足・膝部捻挫、骨折等の怪我にハイリスクであると言える。<BR><BR>【考察】従来の踵骨角評価では、Rexxamによると日本人の70%は回内足と報告されている。そのためunhappy triad(不幸の3症候)に代表する扁平回内によるKITO過負荷での外傷の注目度が高いが、今回の対象および評価法では足底筋他の筋肉が良く発達し、足部アーチ機能がしっかりしており、総合判定で回外足が多かった。そして「回外足かつsKOTI」の形態的な個体要因は外傷を誘発しやすい原因基盤のひとつとして考えられた。<BR><BR>【まとめ】足部における生体力学作用は非常に複雑で難解である。FPI法は形態観察から足部を総合的に評価でき安全かつ簡便な為、サッカー選手のトレーナー活動として下肢の動きを観察する上での一助として有用性を感じた。また、当該カテゴリー選手の運動量調整に際しては疲労度を含めたより繊細なマネージメントの必要性が確認された。
著者
川口 浩太郎 梶村 政司 門田 正久 金子 文成 佐々木 真 弓削 類 浦辺 幸夫 佐々木 久登 富樫 誠二
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.291-298, 1996-07-31
被引用文献数
1

(社)広島県理学療法士会は,第12回アジア大会組織委員会より依頼を受け,選手村診療所内に理学療法室を設け理学療法サービスを行った。約4週間の開村期間中に延べ541名の理学療法士が参加し,34ケ国の延べ731名の選手が理学療法室を利用した。処方されたスポーツ外傷の内容は筋疲労に対するものが179件(外傷種類別分類の約60%)と圧倒的に多かった。急性外傷後の処置も約27%含まれていた。治療目的は疲労回復,リラクセーション,除痛などが多かった。理学療法の内容はマッサージ,超音波治療,ストレッチングなどの順に多く,総数は1,512件にのぼった。参加した理学療法士の感想では「語学力不足」や「スポーツ理学療法に対する勉強不足」という項目が多くあげられた。これらは,効果をすぐに出すということが期待されるスポーツ選手に対する理学療法を,公用語である英語を用いて行わなければならなかったためであろう。 本大会はわが国における国際的なスポーツ大会で理学療法士の活動が最も大がかりにかつ組織的に行われた最初のものと位置づけられる。
著者
中江 誠 藤本 一美
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.G0553-G0553, 2005

【目的】教員が教授方法について学ぶFaculty Development(以下FD)は臨床経験とともに教員条件としては双璧である。しかしながら厚労省の教員基準は「臨床経験が5年以上」のみであり、本来有する個人の教授能力については未知数である。そういう観点から今回教員一年生として講義を担当し、それが当該科目テスト成績にどう影響するかを見ることで、FDが教育機関としての組織的な戦略上必要な視点となりうるかを検証してみた。<BR>【方法】当学院理学療法学科1年82名を対象とした。方法は「理学療法概論」の講義を通じ、当該テスト終了後に学生に対し無記名設問形式にて全般的な理解度(以下全体)とその講義の構成因子として1)講義中の言語理解(以下言語)2)使用資料の量(以下資料)3)プレゼン方法(以下プレゼン)4)座学と実技の比較(以下実技)5)授業時間(以下時間)6)全体の進捗性(以下進捗性)について10段階評定をチェック形式で行った。記述テスト結果に基づき、Aランク(80点以上:10名)Bランク(70点以上:13名)Cランク(60点以上:19名)Dランク(59点以下:40名)の4段階に層化し、設問により得た構成因子の評定数値と層化した各ランクとの関連をみた。<BR>【結果】ランク別評定値はA 4.35±0.19 B 3.77±0.38 C 3.84±0.26 D 3.67±0.23であり、A-C間(p<0.05)およびA-D間(p<0.01)で有意差を認めた。また各構成因子では、実技および(A-D間p<0.01、A-C間p<0.05)言語(A-C、A-D間p<0.01、A-B間p<0.05)で有意差を認めた。<BR>【考察】入学し最初に接する専門分野科目である理学療法概論の主たる目的は、「理学療法士としてのやりがい感を惹起させる」重要な位置づけにある。その講義形態は主に認知領域教育であるがゆえ、ほぼ一般人と同レベルの時期にある学生への理解度を深めるため、教授方法に工夫を加えることは必須である。同時に教員歴のない理学療法士にとって、如何に講義をシリーズ化していくかという労力は、個人的度量の域を超えるものである。今回、実技と言語に有意差を認めた。これは認知領域にとどまらず、精神運動領域も含めた教育方法に工夫を要することが示唆された。本来、教育は非アルゴリズム性を有するが、単に座学で終始するのではなく、多角的教育の必要性を裏付けていると考える。<BR>【まとめ】FDは理学療法学生教育上、組織的に取り組む必要性を認めた。
著者
山根 裕司 山本 泰雄 菅 靖司 当麻 靖子 鈴木 由紀子 川越 寿織 澤口 悠紀 高橋 聡子 手倉森 勇夫 山村 俊昭 谷 雅彦 中野 和彦
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0010-C0010, 2005

【目的】北海道サッカー協会では、優秀選手の発掘と育成、全道の選手・指導者の交流、選手・指導者のレベルアップ、トレーニングセンター制度の充実・発展を目的に、サッカー北海道選抜U-18合宿を行っている。我々は2001年から合宿に帯同し、メディカルサポートを行っている。今後の合宿におけるサポートの充実のため、4年間の活動内容について発生部位、疾患、処置内容の分析を行った。<BR><BR>【方法】対象は2001~04年に行われたサッカー北海道選抜U-18合宿。参加登録者は4年間で延べ900名(15~18才)であった。毎年7月上旬に4日間にわたって行われた。内容はトレーニング及び1日1~2回の試合を行った。メディカルスタッフは医師2名、理学療法士2名、看護師4名である。合宿初日に医師、理学療法士が講義を行い、傷害予防の啓蒙活動を行った。スタッフは練習中ピッチサイドに待機し、発生した傷害に対して診断や治療、希望者に対するコンディショニング指導を行った。<BR><BR>【結果】4年間で延べ293名(33%)の選手に367件の傷害が発生し、784回の治療を行った。部位は足関節・足部35%、膝関節22%、大腿11%、下腿7%、股関節5%と下肢が8割を占めた。内訳は外傷65%、障害29%、その他6%であった。外傷では打撲38%、捻挫38%、筋腱損傷10%であった。障害では、筋腱炎が57%と最も多く、次いで腰痛13%であった。処置はRICE処置が37%、テーピング24%、ストレッチ指導16%、投薬11%であった。救急車搬送3例(下顎骨骨折1例、熱中症2例)で、1ヶ月以上試合出場不可能な重症例は4例(下顎骨骨折、撓骨遠位端骨折、肘関節脱臼、前十字靭帯損傷各1例)発生した。4日間の期間中、処置件数は3日目が42%と最も多く、2日目30%、1日目と4日目が各14%であった。また各年度別の傷害発生件数は、2001年は外傷51件、傷害24件、2002年は外傷59件、傷害28件、2003年は外傷79件、傷害35件、2004年は外傷47件、傷害22件であった。<BR><BR>【考察】4年間の合宿において、重症例は少なく、傷害悪化例はなかった。これは現場で受傷直後から治療が出来たこと、一日数回の診察と治療を行えたこと、的確な練習復帰の指示が行えたこと、合宿初日に行った傷害予防の講義による啓蒙活動などの効果であると思われた。実際、初期症状のうちに治療に訪れる選手が多く、選手のコンディショニングの意識は高いと感じた。傷害の重症度によっては理学療法士によるテーピングやストレッチ指導などの処置を行ってプレーを続行させた。しかし傷害を悪化させた選手はいなかった。どこまでの時間や負荷の練習が出来るかの傷害レベルについて指導者とうまく連携できたことと、ピッチサイドにてプレーを観察できたことが要因であると考える。
著者
真塩 紀人 平林 弦大 梅津 聡 小山 裕司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.G1148-G1148, 2005

【目的】近年、在宅での吸引に関してヘルパーや家族が医療行為を行う事に対する可否が問われる中、病院の臨床でも我々リハビリスタッフ(以下、スタッフ)は、吸引に限らず日々患者の体調急変などの問題に直面する。そこで今回、医療安全管理の観点から、現場の声として如何にスタッフがこれらの不安要素を感じながら仕事をしているのかに着目し、また他職種への要望を含めアンケート調査を行ったので以下に報告する。<BR>【対象・方法】当院スタッフ50名を対象とし、経験年数も考慮した。無記名選択記述方式にて以下のアンケート調査を実施。1.呼吸リハビリなどをリハ室でも行いたいが、吸引の頻度が多い為病棟で実施している。2.糖尿病患者のリハ中、低血糖症状に遭遇したことがあるか。対応して不安はあるか。3.リハ室でバイタルサインの変化に苦慮したことがあるか。DrやNrsに助けて欲しいと思ったことはあるか。4.講習会など開いて欲しい事。Nrsなど他職種に教えて貰いたい事はあるか。<BR>【結果】有効回答率は96.0%。「はい」と回答した人数は、1.病棟で実施せざるを得ない7名(14.0%)であった。2.低血糖症状に遭遇し、不安はある14名(28.0%)であった。3.バイタルサインへの苦慮は、28名(56.0%)。また、職種別に見てもPT、OTに関しては25名(50.0%)で全体の半数であった。経験別に見ると1年目のスタッフに関して「はい」と回答したものが、1・2の項目で13.3%(2/15)と少数であった。経験2,3年目でも同様に1~2の項目に関して25%以下の結果となった。それに比し、4年目では項目3.で57%。5年目以上では1・2の項目で25%、3.で75%であった。<BR>【考察】日頃のリハビリ業務の中で、スタッフが苦慮している事が前述のアンケート結果から推察される。着目すべき点は、1.に関してはリスクを背負うより、病棟のDrやNrsの元でリハビリを行いたいという意見もあり、現状としてNrsに吸引などの医療処置に関して依頼せざるを得ないことが伺える。また、3.に関してはバイタルサイン(特に血圧)の変化に苦慮した経験があり、DrやNrsの指示を必要としている。また職種・経験年数に関係なく、一応に経験している。結果、全体の半数以上28名(56.0%)であった。一方、項目1・2に関しては経験年数が上がるごとに「はい」の回答が多い。当然、患者に接している期間・人数の差によると考えられる。他職種への要望としては、点滴関連・痰の吸引・人工呼吸器・急変時のリスク管理が主たる要望であった。今回の結果を通して、日常我々は職種・経験を問わず共通する意見や不安を抱えている事が分かる。しかしながら、業務として必要に迫られても施行可能な範囲に限定があるのも事実である。今後、リスク管理も含め知識の習得が必要と思われる。
著者
岡本 恵子 井上 美智子 大政 里美 新井 志津子 山口 美穂 錦織 絵理 川崎 光記
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1171-E1171, 2007

【はじめに】軽度運動機能障害児(以下、軽度児)は、運動制限や学習の遅れに加え、ソーシャルスキル獲得や自我発達の遅れの課題も抱えているが、運動機能以外の課題に対する支援や周囲の障害理解が不足している。この結果、集団の中で自分を認められる経験や達成感を積めず、小学校高学年頃から孤立することが多くなる。当センターでも、学校の中で自己実現できない学童児が多いことが個別治療を通じて見えてきた。<BR> よって今回、軽度児が集団の中で認められる経験を積み、学校の中で主体的な生活を送れるように、「わいわいクラブ」を立ち上げ、集団による生活支援に取り組んだので報告する。<BR>【目的】軽度児同士の仲間を作り、集団の中で自己実現ができるように支援する。集団の中で軽度児の課題を明確化し、主体的に生活する力を蓄えられるように支援する。<BR>【対象】小1~小6の応用歩行から杖歩行可能な軽度運動機能障害児11名。地域の小学校に通い、知的障害の程度も軽度。<BR>【支援内容】月に1回、放課後に1.5時間のクラブを開催。活動は、楽しくて達成感を積めるもの・集団や仲間を意識しやすいものとし、1年目はクッキング、2年目は太鼓の演奏を行った。1回の内容は、ウォーミングアップのゲーム→メインの活動→クールダウンのおやつタイム。支援スタッフは、保育士6名とPT1名。<BR>【支援経過】第1に、環境設定と精神的サポートを支援の土台とした。環境設定として、活動中の姿勢変換を減らし楽な姿勢で活動に集中できるようにした。説明や指示は単純明確にし絵や具体物も提示して、内容を十分に理解した上で活動を開始した。精神的サポートとして、自分なりにやってみることが大事だと伝え、その後に認められる嬉しさを実感できるようにした。これらの結果、苦手意識を持たず十分に達成感を積め、受身ではなく積極的に活動参加できる児が増えた。<BR> 第2に、発表や意見交換の場を設け集団意識が芽生える工夫をした。集団の中で自分について話すことから始め、徐々にクラブの仲間について発表するテーマに変えていった。すると、自分中心の言動が多かった児が、友達にも目を向け周囲の状況に沿った言動をとることが増えた。<BR> 第3に、チーム制の活動を通じ集団の中で主体性を引き出す工夫をした。チームで一人ずつに役割を作り、相談し工夫する場面も設けた。この積み重ねにより、大人の介入が減り児同士で活動を展開することが増えた。<BR>【まとめ】今回の支援を通じて、児が自分を出せる場・自信を持てる場を作ることが必要だと分かった。今後は、低学年児には精神発達のサポート・高学年児にはソーシャルスキル獲得という生活年齢課題別の支援を工夫することが課題である。<BR> また、生活支援をするには個別治療だけでは限界があり集団での取り組みが重要であると実感した。今後も、軽度児に関わることの多いPT自身が広い視点を持ち、集団による生活支援に取り組んでいきたい。
著者
朝山 信司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0630-A0630, 2008

【はじめに】Timed Up & Go(以下TUG)テストは、総合的なバランスを評価するパフォーマンステストとして用いられている。椅子から立ち上がり、前方の目標物まで歩いて回転して戻り、椅子に座るという複合的な動作に要する経過時間で評価されている。多様な要素を簡便に評価できるメリットは大きいが、一連の動作をまとめて評価しているために、それぞれの要因につての検討ができていない。そこで本研究では、このテストにおいて要素の違いにより動作を分け、それぞれにおいて健常者と脳卒中片麻痺者の違いについて検討した。<BR>【対象】脳血管障害による片麻痺者で、独歩にて室内歩行が可能な6名と50歳以上の健常者6名を対象とした。測定に関する指示理解に問題のある者は除外された。<BR>【方法】対象者には本研究の参加において、趣旨および内容について予め説明し同意を得た。TUG テストでは、椅子に座位をとり、「スタート」の合図にて立ち上がり、前方に歩き出し3メートル先に置かれた目標物を回って引き返し、椅子に戻って座るという一連の動作の経過時間を測定した。測定中の様子は側方にDVDカメラを設置して撮影し、測定後、動作を1) 立ち上がり期2) 往路歩行期 3) 回転期 4) 復路歩行期 5) 着座期 の5つの相に細分化し、それぞれの動作にかかった時間について映像をコマ送りして正確に導き出した。<BR>【結果】TUGテストにおける健常者の所要時間は 12.33±1.01秒、一方片麻痺者の所要時間は 15.51±2.52 秒で健常者よりも有意に長くかかっていた(p<0.05)。各相における比較をしたところ、回転期と着座期において片麻痺群が、健常者群より有意に長くかかっていた(p<0.05) 。立ち上がり期、往路歩行期、復路歩行期については片麻痺群が健常者群より時間が長くかかっていたものの有意差はみられなかった。<BR>【考察】本研究に参加した対象者は脳血管障害による片麻痺者であったものの、独歩による室内移動が可能な機能障害は軽い者であった。しかしTUGテストにおける所要時間において健常者よりも有意に長い時間がかかっていたことから総合的なバランス能力は低下していたと考えられる。動作の違いについて検討すると健常者と片麻痺者間で回転期と着座期に結果の有意な違いがみられた。この2つの動作はTUGの一連の流れの中でスピードを減速させて動きをコントロールする要素を含んでいる。一方それ以外の動作においては運動を開始して動きを加速する起立期や安定した移動を続ける往路と復路の歩行期には有意差はみられなかった。これらのことから片麻痺者では、減速して動きをコントロールする要素の強い動作において、その遂行の難易度が増したためにパフォーマンスが低下したのではないかと考えられる。よって片麻痺者は日常動作の中でも歩行時の方向変換や椅子に座るなどの減速しながら動きをコントロールするような動作により注意することが重要と考えられた。<BR><BR><BR>
著者
中西 由起子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.439-444, 1993-11-01
被引用文献数
1

過日の理学療法士学会では, WHOのコンサルタントとしてCBRを推進したパドマニ・メンディス博士と, インドネシアのジャワ島の CBRプロジェクトを成功に導いたハンドヨ・チャンドラクスマ博士を迎えて, 特別シンポウムが開催された。CBRの概念自体が日本であまり知られていないこともあって, シンポジウムは理論の紹介を中心にすすめられた。それ故, ここではシンポジウムで触れることができなかった, アジアの国々を中心とした CBR実践の現状と, 展望とについて述べ, より広範な CBR理解の一助としたい。
著者
山口 雅子 徳永 結
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E0345-E0345, 2007

【はじめに】当院併設老健通所リハビリテーション(以下リハ)では、H15年度より定員100名という大規模事業所ながら、個別リハに特化した体制での運営を行っていた。利用者・家族からの希望に沿った個別リハを提供していた反面、人的・時間的制約により、全ての利用者に対して専門職としての十分な関わりを持つ事は困難な状況であった。H18年4月、通所リハにリハマネージメント加算が新設され、評価・利用者の状態に応じた個別的リハ計画の策定・実施というプロセスに重点が置かれることとなり、当事業所においても、リハマネージメントに重点を置いた体制に変更した。新体制から半年が経過したことから、体制変更に伴う職員の意識や課題を整理し、今後の通所リハにおけるリハスタッフの役割を検討することを目的に調査を行った。<BR>【方法】通所リハに勤務する職員25名に対し、調査趣旨を紙面にて説明し無記名アンケートを実施した。アンケート内容は、H18年度介護保険改定についての理解度、体制変更前後のサービス面での変化、体制変更による業務の変化、リハスタッフ・理学療法士についてなどである。<BR>【結果】職員22名より回答が得られた。介護保険改定については55%が理解していると回答し、65%が体制変更後通所リハサービスは向上したと回答した。自由記載では、サービス面に関して「個別性を重視したケアへの意識が高まった」「プログラムが多様化された」「情報交換が活発になった」「様々なレベルへの対応が困難」など、リハスタッフ・理学療法士に関しては「リハ職による評価が個別ケアに役立つ」「情報交換が活発になった」「介護技術など研修をして欲しい」「体操メニューの多様化を望む」などの意見があった。<BR>【考察】調査結果から、リハマネージメントの積極的導入により、個別的ケアへの意識が高まりサービスに反映されている事がうかがえた。当事業所は大規模事業所であるとともに、利用者のレベルは要支援1から要介護5まで、利用目的は心身機能の維持改善、社会的交流、生活全般の援助などと多岐にわたるため、リハスタッフは、数多くの利用者に対しそれぞれに、生活を見据えニーズに応じたリハ計画を立案し、様々な角度からアプローチを行い、それらをリハマネージメントとして通所リハ全体へ反映させる事が求められる。<BR>【課題とまとめ】H18年度医療保険制度、介護保険制度の同時改定により、高齢者を取り巻く、保健・医療・福祉の環境は著しく急激に変化することとなった。医療保険でのリハには疾患別区分や算定日数上限が設定され、今後、医療保険と介護保険が連携して高齢者を支える仕組みの整備や介護保険分野でのリハサービスのさらなる充実が急がれる。当事業所でも、医療保険でのリハとの連携と利用者全体へのリハサービス向上を目指し、リハマネージメントに加え、短期集中リハとしての個別リハ提供体制の充実・整備を模索している段階である。
著者
榊原 志保 三和 真人 南澤 忠儀 八木 忍
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20
被引用文献数
1

【目的】臨床場面における患者様の履物は裸足やバレーシューズ、スリッパと様々見受けられる。しかし、これら履物の違いが臨床場面に及ぼす影響について着目した研究は散見されない。加えてスリッパは高齢者の転倒要因の一つとして挙げられているが、実際に力学的変化を研究したものは少ない。本研究はステップ昇降における裸足、バレーシューズ、スリッパの力学的変化を解析することによって、スリッパによる力学的特性と転倒要因との関係を明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】対象は本研究の目的に同意の得られた健常女性12名(平均21歳)である。動作課題は、裸足、バレーシューズ、スリッパの3条件における高さ20cmのステップ昇降とし、それぞれ3回ずつ測定した。また動作を一定にするため、メトロノームに合わせて課題を行った。動作解析は三次元動作解析装置と床反力計を用い、関節角度、関節モーメント、第5中足骨床間距離を測定した。赤外線反射マーカーは臨床歩行分析研究会が推奨する10点に貼付した。尚、第5中足骨マーカーはバレーシューズの場合はシューズの上から、スリッパの場合は第5中足骨周囲を切り取り皮膚に貼付した。課題は二足継ぎ足昇降とし、右脚、左脚の順に行った。統計処理はそれぞれ3回のデータの平均値を求め、一元配置反復測定による分散分析を行った。差の検定は多重比較を用い、有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】スリッパの昇段では、右脚は踵離床時の足関節底屈角度(7.4°)が裸足に比べ有意に減少し、最大toe clearance(30.6cm)が裸足に比べ有意に減少した。スリッパの降段では、右脚は床接地時の股関節伸展モーメント(0.2Nm/kg)が裸足、バレーシューズに比べ有意に増加した。同様に足関節背屈角度(10.5°)が2つに比べて有意に減少した。上段左脚支持相の足関節背屈角度(13.6°)と足関節底屈モーメント(1.1Nm/kg)が有意に減少した。<BR>【考察及びまとめ】スリッパによる昇段において右脚の最大toe clearanceが減少したことから、スリッパはつまずき易いことが考えられた。また最大toe clearance時の重心は前方移動するため不安定となり、より転倒しやすいと考えられた。更に踵離床時の足関節底屈角度が減少したことから、スリッパは脱げ易く足先で持ち上げて離床しなければならないと考えられた。しかし各関節モーメントに有意な差は見られず、筋力の差を言及することはできなかった。一方ステップ降段における右脚の接地時に足関節を背屈、膝関節を屈曲することにより衝撃を吸収しているが、スリッパによる降段において足関節背屈角度が減少し、衝撃吸収の役割を果たしていないと考えられた。その代償として股関節伸展モーメントが増加し、衝撃を吸収していると考えられた。上段左脚支持相で足関節背屈角度、足関節底屈モーメントが減少していることから、スリッパは降段制動力を減少させると考えられた。
著者
諏訪 勝志 藤井 亮嗣 井舟 正秀 坂井 志帆 伊達 真弥 川北 慎一郎
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.E0172-E0172, 2005

【はじめに】今回、転倒による入退院を繰り返し、転倒予防を目的に訪問リハを開始し、効果を認めた症例を経験したので、若干の考察を加え報告する。<BR>【症例紹介】女性、83歳。HDS-Rは24点で痴呆は認めないが、性格は、せっかちで他人の言うことはあまり聞き入れない。自分の歩行能力を理解しておらず、転倒に対する認識は低い。歩行能力は、入退院を繰り返したが、毎回退院時にはピックアップ歩行器自立レベルとなっていた。介護度は、要支援である。<BR>【転倒歴】平成9年に転倒により左大腿骨頚部骨折受傷する(他院で治療)。平成14年12月7日自宅にて転倒し、右大腿骨頚部外側骨折のため平成15年4月25日まで入院する。平成15年5月12日自宅トイレにて転倒し、右骨盤骨折のため9月16日まで入院する。平成16年1月1日ポータブルトイレ移乗時に転倒し、左骨盤骨折のため5月1日まで入院する。<BR>【家族構成】息子夫婦と3人暮らし。息子は、住職で日中家にいることは多いが、大学の臨時講師、文化教室などをしており多忙で介護をする気持ちはない。嫁はくも膜下出血後遺症のため、麻痺はないが失語症があり介護は困難な状態である。<BR>【家屋状況】最初の当院退院時(平成14年入院時)に家屋評価を行っている。家屋は、寺に隣接した住居で廊下は広く、敷居が多い。段差解消と手すり設置、家具・テーブルなどの位置変更をすすめるが、家族は拒否する。通所サービスの利用も拒否する。相談の結果、トイレの手すり設置と症例の居室の出入り口のみ段差解消を行う。家内の移動は、ピックアップ歩行器を使用し、夜間はポータブルトイレ使用とした。浴室に手すりはつけず、ホームヘルパーによる介助入浴を行うことになる。<BR>【訪問リハの内容】平成16年5月1日退院時にケアマネージャーと相談し、今後も転倒の危険性が高いことから、訪問リハによる転倒予防指導を家族に提案し、了解を得る。訓練内容は、下肢筋力強化と歩行訓練だが、毎回本人に対する転倒への注意と活動範囲での動作指導を徹底して行った。訪問頻度は、家族より限度額以内にしてほしいとの条件があり、週1回のヘルパー利用があるため、一月に1~2回となる。<BR>【考察】転倒を繰り返した原因として、本人・家族ともに転倒に対する認識が低く、本人のやりたいようにしていたこと、自宅改修による安全性向上ができなかったことが考えられた。その結果、転倒を繰り返したが、本人・家族ともに全く気にしていない状態であった。しかし、訪問リハ導入により、病院ではできなかった実際の生活場面での指導を継続して繰り返し行ったため、特に本人が転倒に少しずつ気をつけるようになってきた。その結果、訪問リハ開始となってから、現在まで転倒はなく、効果はでていると思われる。今後は、訪問リハの内容を検討しながら、フォローしていく必要性を感じています。
著者
荻原 新八郎 長田 勉 立野 勝彦
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.531-538, 1992-09-01

肩関節周囲炎患者にはたいてい鉄亜鈴またはアイロンを持たせ, アイロン体操と称してコドマンの振子運動を行わせている。その理論は, 重りが肩関節の軟部組織を伸張し, その周囲筋の弛緩を助長させると考えられている。しかし, 重りを手で握ることによる手部・前腕の筋群の収縮が肩関節周囲筋の収縮を生じさせ, それが振子運動の目的を損なうのではなかろうか? 右手首に2kgの重錘バンドを巻かせるか, あるいは同じ重さの鉄亜鈴を持たせ, 振子運動時の三角筋および棘下筋の積分筋電図を比較した。また振子運動の方向別, すなわち前後, 左右, および時計回り分回し運動による比較も検討した。被験者は15名の理学療法学科の男子学生で, 被験者自身も対照群とした。その結果, 積分値はすべての筋において重錘バンドを巻いて振子運動を行うよりも鉄亜鈴を持って行う方が有意に大きかった。振子運動の方向別については, 前後方向の動きの場合には三角筋中部線維の積分値が有意に小さく, 左右方向と時計回り分回し運動の場合には三角筋前部線維のそれが有意に小さかった。棘下筋の積分値はすべての方向の動きにおいて有意に大きかった。この実験の結果, 重錘バンド・鉄亜鈴を用いた振子運動ともに肩関節周囲筋の収縮は生じたが, 前者の場合, その程度が小さいことが判った。したがって重錘バンドを用いる方が目的を達するのに適しているのではなかろうか。また振子運動は前後左右の動きのみ行わせ, 分回し運動は避ける方がよいであろう。上肢の末端部に重りをつけない振子運動時の積分筋電図も以上の結果と比較・検討してみる必要がある。
著者
中野 知佳 柴 喜崇 坂本 美喜 佐藤 春彦 三原 直樹
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.21-28, 2007-02-20
被引用文献数
1

本研究の目的は,背臥位からの立ち上がり動作パターンの推移を縦断調査により明らかにすることである。健常な幼稚園児17名を対象とし,年少クラス時(平均年齢3歳9ヶ月±4ヶ月)から2年間継続し,計3回,背臥位からの立ち上がり動作をビデオに記録した。そして,立ち上がり動作中の上肢,頭部・体幹,下肢の3つの部位に着目し動作パターンを分類した。その結果,上肢,頭部・体幹の動作パターンの推移では一定の傾向を示し,下肢の動作パターンの推移では,上肢,頭部・体幹の動作パターンの推移に比べ一定の傾向を示さず多様な動作パターンの推移が観察された。そして,動作パターンの変化は年少クラス時から年中クラス時(平均年齢4歳9ヶ月±4ヶ月)の間に生じていた。上肢では年少クラス時から年中クラス時にかけて,17名中9名が左右どちらか一側の床を両手で押して立ち上がるパターンから,片手,あるいは両手を左右非対称的に使い立ち上がる動作に変化し,頭部・体幹では,17名中6名が同様の時期に回旋の少ない立ち上がり動作を獲得した。これらのことから,発達段階における立ち上がり動作の評価には,上肢,および頭部・体幹の運動に着目し観察することが重要になると思われた。
著者
佐藤 三矢 加藤 茂幸 弓岡 光徳 日高 正巳 小幡 太志 酒井 孝文 仁木 恵子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.E0183-E0183, 2005

【背景】<BR><BR> 痴呆患者に対し、理学療法が移動能力向上に寄与するところは大きく、維持期(慢性期)のリハビリテーションを展開している現場では、下肢筋力増強や立位バランス向上のための運動療法、屋外歩行や階段昇降などの実践的な応用歩行練習が一般的に用いられている。このような運動療法プログラムは全身運動であり、痴呆の中核症状である精神症状や知的障害を予防または改善する効果を指摘する報告は多い。また、痴呆の進行を予防する上で、寝たきりの状態にさせないことを主張している文献も多く、移動能力促進を目的とした理学療法は寝たきり防止の点についても有意義であると考えられる。<BR> このように痴呆性高齢者において、移動能力は重要な意味を持つ行為であり、移動能力向上を目的とした理学療法は、病院や老人保健施設・在宅などで今や普遍的に行われている。<BR> しかし現在、痴呆性高齢者の移動能力とQOLとの関連性について調査している報告は散見する程度である。<BR> よって今回、痴呆性高齢者を対象として「移動能力」と「QOL」を点数化し、相関について調査した。<BR><BR>【方法】<BR><BR> 対象は、介護老人保健施設に入所している痴呆性高齢者85名。本研究は、対象施設の承認を得た後、文書にて家族からの同意が得られた対象者のみに実施した。痴呆性高齢者の移動能力の評価尺度であるSouthampton Mobility Assessment (SMA)日本語版と痴呆性高齢者のQOL評価尺度であるQOL-Dを用いて、対象者の「移動能力」と「QOL」を点数化し、相関関係について調査した。<BR><BR>【結果】<BR><BR> Speamanの順位相関を用いて検索した結果、SMA日本語版とQOL-Dとの間において、有意な相関関係が認められた(r=.471,p>.001)。<BR><BR>【まとめ】<BR><BR> 今回、SMA日本語版とQOL-Dとの間において、有意な相関関係が認められた。よって、痴呆性高齢者の移動能力への理学療法介入がQOL向上につながる可能性がうかがえた。
著者
尾﨑 尚代 千葉 慎一 嘉陽 拓 大野 範夫 筒井 廣明
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C1397-C1397, 2008

【はじめに】肩関節の安定化機構は関節構造および筋機能での関節窩に対する上腕骨頭の求心位保持能力およびショックアブソーバーとしての肩甲骨の動きが必要となるが、これらの中の1つでも問題が生じれば肩に機能障害が生じると考えられる。今回は当院診察時の診断補助として用いられるX線像から得られた情報を基に、肩関節の運動時不安定性の機能的問題点について検討した結果を報告する。<BR>【方法】対象は、肩関節の運動時不安定性を訴え、SLAP損傷またはinternal impingementと診断された40例(男性38名・女性2名、右37名・左3名、年齢21.88歳±5.29)であり、全員投球動作を要するスポーツ愛好者である。これらの症例に対し当院初診時に撮影したX線像のうち、Scapula-45撮影法45度挙上位無負荷像を用いて患側の腱板および肩甲骨機能を、自然下垂位と最大挙上位の前後像を用いて鎖骨および胸郭の運動量を、また、最大挙上位像を用いて上腕骨外転角度(以下、ABD)、関節窩の上方回旋角度(以下、上方回旋)および関節窩に対する上腕骨の外転角度(以下、関節内ABD)について計測した。ABD・鎖骨の運動量の変化・上方回旋・関節内ABDについては健患差を、t検定を用いて比較検討した。また、胸郭の運動量は遠藤ら(1996)の報告に基づいて基準点を20mmとし、また鎖骨の運動量については、Fungら(2001)の報告に基づいて基準点を20度として、符号検定を用いて検討した。<BR>【結果】腱板機能は正常範囲であり(0.32±4.86)、肩甲骨機能は低下していた(5.53±7.52)。ABDは患側(以下、患)165.36度±6.33・健側(以下、健) 167.11度±7.30(p<0.02)、鎖骨の運動量の変化は患25.18度±8.30・健22.60度±8.00(p<0.01)、上方回旋は患54.88度±5.25・健52.02度±5.30(p<0.001)、関節内ABDは患110.60度±7.28・健112.85度±17.12(n.s.)であった。また胸郭の運動量は12.70mm±6.47となり、基準点に対して胸郭は動かず、鎖骨は動く傾向になった(p<0.01)。<BR>【考察】今回の結果から、肩関節の運動時不安定性を呈する症例は、肩甲骨を体幹に固定する機能および胸郭の可動性が低下しており、また、上肢挙上角度を得るために、鎖骨と肩甲骨の運動量が大きくなることから、胸鎖関節と肩鎖関節への負担増大が懸念された。今回はX線像を用いた前額面上のみの調査を若者中心に行ったが、野球やテニスなどのスポーツ愛好家の年齢層は幅広い。また、投球障害を呈する症例は数年前と比較して腱板機能は向上しているが肩甲骨の機能低下を呈する者が多いという報告や、加齢と共に肩甲骨や脊柱の可動性が低下するという報告もあり、胸郭の可動性を引き出すことは、運動時不安定感の改善と共に、障害予防の点からも重要と考える。<BR>