著者
黒木 識敬 安倍 大輔 鈴木 紅 岩間 徹 濱邉 祐一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.617-624, 2016 (Released:2017-06-15)
参考文献数
20

背景 : 本邦におけるマラソン大会中の心肺停止は, 救護の立場からの報告はあるが医療機関搬送後の経過については, いくつか症例報告されているのみである. 目的 : 当院に搬送された心肺停止の患者6,841例からマラソン大会中の心肺停止患者について, 予後を検証するとともにその原因を考察する. 方法 : 2006年1月から2015年10月の当院に搬送された院外心肺停止6,841例のうち, マラソン中に発症した患者を抽出し検討した. 結果 : 心肺停止患者は10歳代から30歳代が4例 (若年群) と, 50歳代から60歳代が4例 (中年群) であり, 社会復帰例5例, 神経学的後遺症1例, 死亡2例であった. 社会復帰例はいずれも目撃あり, 直後からのバイスタンダーによる心肺蘇生があり, 病院到着前に自己心拍再開を認めていた. 心肺停止の原因は, 若年群ではカテコラミン感受性多形心室頻拍, 特発性心室細動など不整脈が主体であった. 中年群ではいずれも心筋虚血であるが, 心電図ではST上昇を認めず, 冠動脈造影では完全閉塞ではなく狭窄病変が主体であった. 結論 : 各大会において短時間で心肺蘇生・除細動を実施できる救護体制を構築する必要がある. また, 原因は年齢層によって異なる. これまで心筋虚血を原因とした心室細動はプラーク破裂を主因とした一般的な急性冠症候群の発症様式が多いとされていたが, それを示唆する所見はなく, 過度な心負荷と冠動脈狭窄による相対的な心筋虚血が原因と考えられた.
著者
清水 渉
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.629-633, 2015 (Released:2016-05-16)
著者
斎藤 聡 八田 光弘 星 浩信 小柳 仁
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.769-776, 1995-09-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
28

近年心臓移植再開の気運が高まり,心臓移植後患者の術後管理を我々が行う日も近い.移植後患者管理のためには,心臓移植後脱神経支配を受けた心臓の生理機能の理解が重要課題である.本論文では心臓移植によって脱神経支配を受けた移植心の安静時および運動負荷時の心機能を中心に考察を加えた.心臓移植によって移植心は自律神経系の調節機構を失っているにもかかわらずほとんどの心臓移植患者は生体の需要に対応できる生理機能が温存されNYHAI度の状態になり社会復帰することができる.移植心の安静時心機能はほぼ正常である.しかし拡張能障害,洞機能不全が認められることがありこれに対する注意が必要である.また移植心は運動負荷に対して正常心と同様心拍出量を増加させることができるが,そのメカニズムは運動初期のFrank-Starling機構,それ以後は血中カテコールアミンの作用という正常心とは異なる機構によって脱神経支配を代償している.また移植心の電気生理,薬理について言及したが,移植心の生理特性を理解すれば移植後の薬物治療も躊躇する必要はない.しかし移植心は脱神経支配に加え,拒絶反応,サイクロスポリン投与による高血圧,冠動脈硬化などによる心筋障害の危機にさらされているためこれらに対する厳重な経過観察が必要である.本論文において著者は,移植心の生理機能を考察し心臓移植は重症心不全患者に対する優れた治療であり,本邦においてはその治療体系において欠損した部分であることを示した.我々は心臓移植を心疾患治療体系の一部として組み込み,一般の理解を得る努力を続けるべきであると考える.
著者
小川 聡
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.112-118, 2018-02-15 (Released:2019-04-01)
参考文献数
18

2 0 0 0 OA HeartMate II

著者
戸田 宏一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.865-870, 2011 (Released:2012-11-15)
参考文献数
6
著者
坂本 二哉
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.3, no.10, pp.1261-1270, 1971-10-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
5
著者
久次米 真吾 野呂 眞人 中島 香織 板倉 英俊 森山 明義 沼田 綾香 熊谷 賢太 酒井 毅 手塚 尚紀 中江 武志 原 久男 坂田 隆夫 杉 薫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.97-107, 2005

<BR>【症例】33歳,女性.<BR>【主訴】動悸.<BR>【経過】生後より,全内蔵逆位・右胸心・右室性単心室・肺動脈弁狭窄症・共通房室弁閉鎖不全症と診断され,3歳時にBlalock-Taussig短絡術を,8歳時にWaterston手術を受けている.23歳時に心房内リエントリーを機序とする心房頻拍(AT)に対してカテーテルアブレーション(CA)を行い,以後,動悸は消失した.最近,週に1回程度の動悸を自覚するようになり来院,Holter心電図でQRS幅の狭い持続性頻拍を認めたため入院した.電気生理学的検査の結果,この頻拍は,前回と類似した房室接合部近傍を起源とするATであり,少量のATPで停止した,AT中の最早期興奮部位に通電したところ,通電中にATは停止し,その後は誘発されなくなった.<BR>【まとめ】成人期まで生存し得た右室性単心室症例に合併した,AT再発例に対するCA成功例を経験したので報告する.
著者
網岡 尚史 渡邊 敦之 大塚 寛昭 赤木 達 麻植 浩樹 中川 晃志 中村 一文 森田 宏 小谷 恭弘 新井 禎彦 笠原 真悟 佐野 俊二 伊藤 浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.49, no.SUPPL.1, pp.S1_110, 2017-08-28 (Released:2018-08-28)

症例は17歳男性.4年前より運動時に胸痛,失神を認め,症状は増悪傾向であった.他院にて電気生理学的検査まで含めた諸検査を施行するも原因不明であり当院に紹介,入院精査となった.入院時に施行したトレッドミル負荷試験にて心電図上,aVRにST上昇が出現,補充調律に移行,また著明な血圧低下,胸部絞扼感,前失神症状を呈した.冠動脈の器質的異常を疑い冠動脈CTおよびCAGを施行したところ左冠動脈は右冠尖起始であり,主幹部は大動脈と肺動脈に挟まれ圧迫,変形していた.失神の原因は左冠動脈圧排による虚血と診断し心臓血管外科に紹介,手術加療の方針となった.冠動脈起始異常は臨床上,しばしば認められる先天的異常であるが,若年者の突然死の原因ともなり得る.若年者における繰り返す失神の一因として冠動脈起始異常は考慮すべきと考えられ,啓蒙的に報告する.
著者
脇本 博文 沖重 薫 畔上 幸司 大庭 景介 倉林 学 上原 裕規 瑞慶覧 貴子 小西 正則 志村 吏左 磯部 光章
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.134-139, 2007

後天性QT延長症候群は種々の原因により発生するが,アルコール離脱により生じる後天性QT延長症候群(LQTS)の認識はうすく,同病態下における多形性心室頻拍(torsades de pointes;TdP)発生の報告も少ない.今回,われわれは失神を主訴としたアルコール離脱期のLQTSに伴うTdPを2例経験した.<BR>症例1:23歳,女性.20歳ころよりビール2L/日,焼酎1L/日の飲酒を繰り返し,アルコール性肝不全にて当院入院となった.失神発作を発症し心電図モニターにてTdPが確認された.基礎心疾患なし.QTc=0.753msecと著明に延長(入院時QTc=0.529msec)し,マグネシウム静注,イソプロテレノール持続投与にてTdPは減少,QTcも徐々に短縮した.<BR>症例2:50歳,男性.48歳ころより飲酒量が増え,日本酒1升/日の飲酒を続けていた.他院にてアルコール依存症と診断され禁酒を指示されたが,その後も不定期に飲酒を繰り返していた.失神発作を発症し救急車にて当院へ搬送された.心電図はQTc=659msecと著明に延長しTdPを繰り返していた.基礎心疾患なし.マグネシウムの静注後TdPは消失し,その後QTcは徐々に短縮した.<BR>2症例とも後日施行した心臓電気生理学検査(EPS),epinephrine負荷試験では有意な所見を認めなかった.
著者
清水 渉
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.15-20, 2014 (Released:2015-03-08)
参考文献数
13
著者
木下 訓光
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.122-126, 2016 (Released:2017-02-15)
参考文献数
30
著者
西﨑 光弘
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.SUPPL.3, pp.S3_5-S3_13, 2014 (Released:2015-10-26)
参考文献数
24

冠攣縮性狭心症患者においては, 院外心肺停止や突然死の主たる原因が心筋虚血発作時に出現する致死的心室性不整脈であることが示されている. 致死的心室性不整脈の予知やリスク評価には冠攣縮発作時と無症候状態における不整脈の発生基質を明らかにすることが重要であり, TWA, J波, QT dispersionによる非侵襲的検査および電気生理学的検査上のVT, VFの誘発性を検討することが有用である. 治療としては, 原則的にCa拮抗薬による内服治療であるが, 突然死の二次予防にICD治療が有効である報告も散見される. 冠攣縮発作に併発するVFが再発する薬物抵抗性の場合や冠攣縮発作に併発するVFを認め, 薬物投与が認容されない場合はICD治療も考慮されるべきである. 一方, VFの初発例の場合は, 発症時の薬物投与の有無や不整脈発生基質を十分に検討し, ICDの適応を慎重に決めていくことが必要である.
著者
宮崎 俊一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.528-531, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
6
著者
井上 博
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.191-201, 1995-03-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
56

QT時間の延長は特発性QT延長症候群や抗不整脈薬によるtorsade de pointes発生との関係で重要視されている.III群薬を使用する機会が増加しつつある今日,QT時間調節の生理的,病理的要因について理解しておくことは大切である.QT時間は心拍数によって変動するが,心拍数を変化させる要因によっても修飾を受ける.このため日常使用されるBazettの式によるQTc時間は,実際の心拍数によるQT時間の変化と一致しないことがしばしば見られる.健常例では自律神経によって心拍数に応じた変化をするとともに,夜間に長いという日内変動を示す.糖尿病,心室頻拍,心筋症,特発性QT延長症候群や抗不整脈薬投与などでは,健常例とは異なったQT時間の変動が観察される.QT時間調節の異常の機序の解明により,このような病態での心室性不整脈の治療が進歩することが期待される.
著者
茂庭 仁人 湯藤 潤 本江 環 進士 靖幸 永原 大五 高橋 亨 林 学 佐藤 直利 鹿野 泰邦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.555-560, 2008-06-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
20

症例は49歳,女性.2006年4月に急性下壁心筋梗塞を発症し右冠動脈(#2)にシロリムス溶出ステントを留置した.術後の抗血小板療法としてアスピリン100mg,チクロピジン200mgを投与開始した.6カ月後の確認冠動脈造影ではステント内再狭窄を認めなかったが,遅発性ステント血栓症予防のため,アスピリン,チクロピジンは継続投与していた.2007年3月,月経による大量出血をきたし,意識障害を主訴に救急外来を受診.Hb 3.5g/dLと高度な貧血を認め頭部MRIでは多発性脳梗塞を認めた.輸血やエダラボン点滴など保存的に治療し,軽度の構音障害が残存したものの軽快退院となった.抗血小板薬投与中の出血性合併症はしばしば経験するが,月経出血による重篤な合併症の報告は稀である.閉経前の女性に対する抗血小板療法中には慎重な観察が重要であると考えられた.
著者
永井 克也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.987-1000, 2000-12-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
35

哺乳類の概日リズムの体内時計は脳視床下部視交叉上核(SCN)に存在する.筆者らはSCNに自律神経と内分泌系を制御して血糖調節に関与するニューロンが存在することを明らかにした.SCNから膵臓,肝臓と副腎へ投射する自律神経経路が存在することを示す結果も得ているので,SCNはこの経路を介して血糖調節を含むエネルギー代謝調節に関与すると考えられる.低血糖状態の体内環境や明暗などの体外環境の情報を得て,体内時計の時刻情報に依存して,SCNニューロンは自律神経系を制御する.筆者らは,阪神大震災の際に体内時計が乱れて,その位相(時刻)が大きく移動すると共に,体外環境の明暗周期による体内時計の同調が起こらなくなる(時差ぼけ時のような)状態にマウスが陥ったことを認めている.したがって,冬季うつ病や不登校などの患者における体内時計の乱れによる時差ぼけ状態が,体内外の環境情報によるストレス刺激によって引き起こされることは十分に考えられる.ヒトの光照射が心拍数を変化させることが報告されているので,自律神経経路を介するSCNによる心臓機能の調節機構の存在も予想される.
著者
松浦 雄一郎 田村 陸奥夫 山科 秀機 肥後 正徳 藤井 隆典
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.1258-1261, 1982

心ペースメーカー植え込みは年々増加し,これに伴い初期には予想もしなかったような合併症がみられるようになった.その中の一つに皮下ポケット内で本体が長軸上に回転し,電極離脱あるいはリードの断裂をきたすという"The Pacemaker Twiddler's Syndrome"がある.これまで私どもは充電型ペースメーカーを19例に植え込んでいるが, そのうちの1 例に本症候群が生じた. すなわち,心筋梗塞後房室ブロックのために充電型ペースメーカーが植え込まれた57歳女性に,本合併症が発生,充電ができなくなるという事態が発生した.非観血的に用手整復は容易であったが,再発を繰り返し,大胸筋膜下に本体を植え換え,再手術後5年の現在,再発なく経過している.これまで充電不能を呈したというPacemaker Twiddier's Syndromeの報告はみあたらないので,ここに報告した.