著者
栗栖 智
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.451-457, 2010 (Released:2012-01-31)
参考文献数
28
被引用文献数
1 3
著者
岡 隆治 印鑰 史衛 森 善樹 伊藤 真也 沖 潤一 長谷川 浩 吉岡 一 平田 哲 片桐 一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.597-603, 1984-06-25 (Released:2013-05-24)
参考文献数
26

10歳時に心臓カテーテル造影検査にて原発性肺高血圧症と診断した症例が経過中に,血小板減少,血管内溶血などのまれな合併症状を呈し,診断確定後2年8カ月の経過でうっ血性心不全のため死亡した1例を経験した.病理組織学的には,肺小動脈の内膜の肥厚が著明でありPlexiform lesionも認められた.肝臓ではうっ血とグリソン鞘および中心静脈を中心とする線維症を認めた.これまで原発性肺高血圧症に血小板減少症を合併したという報告はあるが,血管内溶血や肝線維症を合併した症例はほとんどなくきわめて貴重な症例と考えられ報告した.
著者
千葉 義郎 遠田 譲 海老原 至 福永 博 大平 晃司 山下 文男 会澤 彰 村田 実 倉岡 節夫 篠永 真弓 上原 彰史
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.896-900, 2011 (Released:2012-11-15)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

症例は, 20歳代, 男性. 2日前に職場でロッカー移動などの作業を行った. その後, 左上肢に腫脹·疼痛を自覚するようになり, 当院に紹介受診. 血管エコーで左鎖骨下静脈から左腋窩静脈にかけての血栓閉塞を認め, パジェット·シュロッター症候群(Paget-Schroetter syndrome; PSS)と診断した. 抗凝固療法を開始するとともに, ただちに静脈造影を行い, 引き続きカテーテル血栓溶解療法(catheter directed thrombolysis; CDT)およびバルーン拡張術を行った. 2回のCDTで良好な左上肢血流の改善が得られ, 軽快退院となった. PSSに対して早期のCDTが奏功した症例を経験したので報告する.
著者
古川 陽介 仲村 尚崇 深田 光敬 中司 元 安田 潮人 小田代 敬太 丸山 徹 赤司 浩一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.1515-1520, 2011 (Released:2013-02-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

目的: 近年, ワルファリン(warfarin; WFN) とプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor; PPI)の併用による薬物相互作用が指摘されている. 今回, ラベプラゾールとランソプラゾールの抗凝固療法に対する影響を後ろ向きに検討した.対象と方法: 外来で安定した抗凝固療法が確認されておりPPIを追加投与された例をPPI投与群(n=19), PPIを併用せずにWFNの維持量を半年以上固定している例を対照群(n=12)とし, PT-INR値とその変化率, PT-INRをWFNの用量で補正した値(INR/WFN)および出血性イベントを評価した.結果: 対照群とPPI投与前のラベプラゾール群およびランソプラゾール群でWFNの維持量, 平均PT-INR値, INR/WFNに有意差はなかった. PPI投与前後の平均PT-INR値はラベプラゾール群で変化なく(p=0.137), ランソプラゾール群で増加した(p=0.002). この増加は対照群のINRの自然変動より有意に大きかった(p<0.001). INR/WFNはラベプラゾールの投与では変化なく, ランソプラゾールの投与で増大した(p=0.011). 臨床的にいずれのPPIも出血性イベントは起こさなかった. ランソプラゾール群の2名でWFNを減量した.結語: 今回, ラベプラゾールはランソプラゾールに比べて抗凝固療法下でのPT-INR値に影響を与えにくいことが明らかとなった.
著者
高橋 怜嗣 峰 隆直 蘆田 健毅 貴島 秀行 石原 正治 増山 理
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SUPPL.1, pp.S1_110-S1_116, 2016 (Released:2017-11-15)
参考文献数
7

症例は65歳女性. 11年前より透析導入となり, 腎移植されたが再度透析導入となったためシャント造設術を施行された. 導入2週間後, 透析中に頻回のTorsade de Pointes (以下TdP) を認めた. このときQTc延長 (660ms), 巨大陰性T波を認め, 心エコーでは左室心尖部はakinesisであり, たこつぼ心筋症様であった. 低カリウム血症 (3.2mEq/L) 補正を行うとTdPは認めず, 経過中にたこつぼ心筋症は軽快した. 4カ月後透析中にTdPを認めた. 心エコーでは左室収縮能は改善しており, 正常カリウム値を示し原因不明の繰り返すVFのため植込み型除細動器 (以下ICD) を植込んだ. 以降, 厳正なカリウム調節を行うことで, TdPを認めなかった. 今回我々は, たこつぼ心筋症, 低カリウム血症を契機にTdPを発症した透析患者の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加え報告する.
著者
杉浦 徹 成味 純 宮澤 総介 宮田 晴夫 林 淳一郎 香坂 茂美 滝浪 實 原田 幸雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.155-160, 1997-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
9

症例は53歳の男性で,農作業中に足底に釘を刺し,抜去しないで放置した.約1週間後に39度台に発熱したが,右肩関節炎と診断されて整形外科にて洗浄術を施行,排出された膿からは黄色ブドウ球菌が検出された.胸部X線像で心胸郭比の拡大,心電図で広範囲の誘導におけるST上昇,心エコー図で左室後壁側の心嚢液貯留が認められ,入院となった.発熱後の6日頃より収縮期雑音が聴取され,胸部X線像で肺うっ血が生じ,心エコー図で僧帽弁に逸脱と疣贅と思われる異常エコーが認められた.血液培養では黄色ブドウ球菌が検出され,感染性心内膜炎と診断された.緊急手術では,化膿性心膜炎と膿性心膜液貯留,さらには前後尖上の疣贅を伴う僧帽弁閉鎖不全が認められ,弁置換術が施行された.心嚢液からは黄色ブドウ球菌が検出され,抗生剤による治療を加えたが,術後2週間で多臓器不全(MOF)で死亡した.本例は日常的な外傷を放置したことによって化膿性肩鎖関節炎および化膿性心膜炎をきたし,さらには抗生剤治療法の発達した最近ではまれな感染性心内膜炎を併発した症例であり,報告する.
著者
宮本 翔伍 杉野 浩 重原 幹生 兵頭 洋平 下永 貴司 木下 晴之 市川 織絵 岡 俊治
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.444-451, 2020-04-15 (Released:2021-04-24)
参考文献数
10

症例は21歳男性.就寝前に突然の胸痛を自覚し,当院を受診.来院時は明らかな心電図変化を認めなかったが,症状残存を認めたため経過観察目的に入院となった.その後胸部症状は消失したものの,翌夕方に再度突然の胸痛を認め,心電図にて下壁誘導の著明なST上昇を認めた.心臓超音波検査では下壁の壁運動低下を認め,急性下壁心筋梗塞が疑われたため,冠動脈評価のため緊急冠動脈造影を施行したが,有意狭窄を認めなかった.ニトログリセリン・ニコランジル冠注にてST変化は少しずつ改善を認めた.同時に施行した左室造影では下壁から心尖部にかけて壁運動低下を認め,たこつぼ症候群も否定できない所見であった.ニコランジル持続静注と硝酸イソソルビド貼付剤にて経過観察したが,翌朝再度心電図でST上昇を伴う胸痛発作を認めた.ジルチアゼム塩酸塩投与後は症状は軽快した.冠攣縮性狭心症と診断して同日よりカルシウム拮抗薬の内服を開始し,その後胸痛発作なく経過された.状態が落ち着いた段階でカルシウム拮抗薬内服下での冠攣縮誘発を行ったが,攣縮は誘発されなかった.たこつぼ症候群合併の可能性も考慮して二核種シンチグラフィも施行したが,たこつぼ症候群は否定的と判断した.退院後,現在まで胸痛の再発は認めていない. 若年の冠攣縮性狭心症は非常に稀であるため,若干の文献的考察を踏まえて報告する.
著者
星野 智 大川 真一郎 今井 保 久保木 謙二 千田 宏司 前田 茂 渡辺 千鶴子 嶋田 裕之 大坪 浩一郎 杉浦 昌也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.130-135, 1992-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
17

悪性腫瘍の心転移はまれでないが生前診断は困難なことが多い.今回剖検例にて発見された転移性心腫瘍につき臨床病理学的検討を行った.1980年から1987年の連続剖検2,061例のうち肉眼的に転移性心腫瘍の認められた64例を対象とした.年齢は55歳から93歳(平均76.6歳),男39例,女25例であった.全悪性腫瘍は845例であり,心転移率は7.6%であった.原発巣は肺癌34例が最も多かった.心転移率は肺癌,胃癌などが高かったが,消化器癌では低かった.転移部位は心膜81.3%が最も多く,心内膜へ単独に転移した例はなかった.心膜へはリンパ行性転移が多く,心筋へは血行性転移が多かった.特に肺癌は心膜の転移,心房への転移が多い傾向にあった.心単独の転移はまれで55例は他の臓器へ転移が認められ,肺,肝,胸膜,骨に多かった.心電図異常所見は95%にみられたが,転移部位による特異性は認められなかった.しかし心膜転移例で心膜液量増加に伴い低電位差と洞頻脈が高率に出現してきた.悪性腫瘍を有する患者では常に心転移を念頭におき,注意深い臨床観察が必要である.
著者
堀 正二
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.124-129, 2015 (Released:2016-02-15)
参考文献数
15
著者
野々木 宏 安田 康晴 今井 寛 太田 祥一 小澤 和弘 木下 順弘 小林 誠人 高階 謙一郎 森村 尚登 山野上 敬夫 山村 仁 脇田 佳典 横田 順一朗
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.800-805, 2019-08-15 (Released:2020-10-26)
参考文献数
15

ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)の発症から再灌流療法までの時間を短縮するためには,病院前12誘導心電図記録の病院への事前伝達が有効であり,ガイドライン勧告がなされている.ガイドライン勧告の実践がなされているか救急隊による12誘導心電図記録と伝送の実態を把握するため,全国地域メディカルコントロール(MC)協議会251団体へのアンケート調査を実施した.回答率は96%で救急隊による12誘導心電計を搭載しているのは82%と高率であったが,全車両に搭載しているのは28%と低率であった.12誘導心電計を搭載している196団体のうち,電話による病院への事前伝達を行っているのは88%と高率であったが,伝送しているのは27%と低率であった.本アンケート結果から,ガイドライン勧告の実践を実現するためには,12誘導心電計の搭載とともに,地域MC協議会を中心とした救急隊と病院群との連携,プロトコル作成や心電図検証が必要であり,それには救急医とともに循環器医の地域MC協議会への関与が必要であると考えられる.
著者
杉浦 伸也 藤井 英太郎 藤田 聡 中村 真潮 伊藤 正明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.SUPPL.3, pp.S3_86-S3_91, 2013 (Released:2015-01-09)
参考文献数
9

症例は36歳, 男性. 動悸を主訴に近医を受診した. 12誘導心電図にデルタ波はなく, ホルター心電図で心拍数150/分のlong RP'頻拍を認めた. 心臓電気生理学的検査で再現性をもって周期454msの頻拍が誘発された. 頻拍中の心房最早期興奮部位は左側壁で, 頻拍中にヒス束が不応期の時相に右室から加えた期外刺激にて早期心房補足現象が認められた. 頻拍中の室房伝導時間は220msと長く, 頻拍中の右室頻回刺激 (周期400ms) にて, 室房伝導にWenckebach blockを認めた. 以上の所見から本頻拍は左側壁に存在するslow Kent束を逆行性伝導とする房室回帰性頻拍と診断した. 同部位に対する通電にて副伝導路の離断に成功した. Slow Kentを介した房室回帰性頻拍の 1例を経験したため報告する.
著者
住吉 啓伸 吉岡 賢二 三島 修治 廣木 次郎 竜 彰 黒田 俊介 岩塚 良太 植島 大輔 水上 暁 林 達哉 木村 茂樹 松村 昭彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.344-350, 2020-03-15 (Released:2021-04-23)
参考文献数
14

Paget-Schroetter症候群は特発性鎖骨下静脈血栓症および付随する静脈性胸郭出口症候群を特徴とした疾患である.当院で異なる治療方針を選択した2例のPaget-Schroetter症候群を経験した.2例ともに右鎖骨下静脈の血栓閉塞に伴う右上腕の浮腫および肺血栓塞栓症を認め,1例は患者の意思から直接経口抗凝固薬による保存加療を選択し,もう1例は右第一肋骨部分切除術,右鎖骨下静脈内血栓摘除術,右鎖骨下静脈形成術を施行した.両症例とも治療後経過は良好である.本疾患はワルファリンによる抗凝固療法では再発が多いことが報告されており,根治的な手術療法が第一選択と考えられるが,本保存加療例は抗凝固薬に直接経口抗凝固薬を用い,再発なく経過している.Paget-Schroetter症候群に対する直接経口抗凝固薬による保存加療に関する報告は乏しく,その有効性を今後検証してゆく必要があると考えられる.
著者
河田 正仁 岡田 敏男 清水 雅俊 高田 幸浩 下川 泰史 五十嵐 宣明 岡嶋 克則 宮武 博明 水谷 哲郎 中村 哲也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.337-343, 1999-05-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
9

くも膜下出血や手術後などのストレス状態におかれると急性心筋梗塞類似の病態となり,冠動脈に器質的狭窄がなくても広範な左室壁運動障害を引き起こすことが知られている.症例は81歳の女性で,当初は右下肺野の陰影で入院した.次第に陰影が広がり,呼吸困難を呈した.第10病日に突然呼吸困難が増悪し,心電図上胸部誘導で高度のST上昇をきたし,ショック状態となった.挿管の上,緊急冠動脈造影を施行した.冠動脈の器質的狭窄はなかったが,左室造影上前壁,心尖部,下壁にわたり広範な無収縮を認め,心基部のみ正常収縮をしていた.患者はその2日後に肺炎陰影が両肺に広がり呼吸不全で死亡したが,血清の最大CKは296U/lであった.病理解剖における心筋組織には壊死,炎症細胞浸潤などを認めなかった.本症例は重症肺炎を契機にstunned myocardiumが疑われる病態が引き起こされ,原因として冠攣縮やカテコールアミン心筋障害などが推定された.まれではあるが,ストレスを伴った低酸素血症がstunned myocardium様の心機能低下の誘因となった重要な病態であると考えられ報告する.
著者
馬渡 耕史
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1185-1192, 2021-11-15 (Released:2022-11-22)
参考文献数
14

これまで心房細動の急性期心拍数調節薬として,ジギタリス製剤,Caチャネル遮断薬,β遮断薬が使用されてきた.最新の不整脈ガイドライン(2020年改訂版)では,心機能低下例では第1選択にβ遮断薬,第2選択にジゴキシンと記載されている.この点についてこれまでのガイドラインを概括し実際の使用法を検討した. 2004年の不整脈薬物治療ガイドラインでは,心機能低下例にジゴキシンの使用が推奨されているが,2009年改訂版でも同様である.心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)において,はじめて心不全例へのクラスⅠの扱いで,静脈内投与のβ遮断薬としてランジオロールが登場している. ランジオロールとジゴキシンを比較したJ-Land Studyの結果では,治療開始2時間以内の心拍数抑制効果はランジオロールが勝っているとされているが,この研究でのプロトコールのジゴキシン投与量が,通常の臨床の現場と比べて少ないと感じる. 2017年の急性・慢性心不全診療ガイドラインでは両者ともⅡaの扱いとなり,2020年の不整脈薬物治療ガイドラインでもそれを踏襲している.ただ本文中でも治療指針の図でもジゴキシンは追加使用となっているが,血行動態への影響や外来での使用も考えて,症例毎に病態と薬理作用を考慮し適切に使用することが重要と考える.
著者
圷 宏一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.1078-1084, 2014 (Released:2014-09-17)
参考文献数
34
著者
木村 彰方
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.438-449, 2018-04-15 (Released:2019-05-09)
参考文献数
10
著者
岡田 薫 草間 芳樹 小谷 英太郎 石井 健輔 宮地 秀樹 時田 祐吉 田寺 長 中込 明裕 新 博次
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.373-378, 2008-04-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

症例は66歳,女性.既往に胆石症あり.呼吸困難を主訴に当科を受診.低酸素血症(PaO2 61mmHg),血清Dダイマー高値(10.35μg/mL),心臓超音波検査で右心室の拡大,胸部造影CTにて両側肺動脈に血栓を認め,肺血栓塞栓症と診断.ウロキナーゼ240,000単位/日,ヘパリン12,000単位/日の持続静注を開始.翌日の肺動脈造影検査にて両側肺動脈に血栓を認め,血栓溶解療法,血栓破砕,吸引術を施行し,右下肢深部静脈血栓に対して一時的下大静脈フィルターを挿入した.ヘパリン持続静注により第12病日に血小板数が11.9×104/μLに減少,Dダイマーが124.4μg/mLまで上昇し,下大静脈造影検査でフィルター遠位部が血栓により完全閉塞していた.ウロキナーゼを増量しても改善せず,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)に伴う血栓症を疑い,第18病日にヘパリンを中止したところ,血小板数31.9×104/μL,Dダイマー1.54μg/mLに改善し,フィルター内の血栓は消失した.抗ヘパリン第4因子複合体抗体が陽性であり,血栓症を伴ったHITと診断した.ヘパリンは循環器疾患の診療において広く使われているが,重大な合供症であるHITに関してはいまだ十分に周知されていない.ヘパリンの使用中には,血小板数の推移を観察し,HITが疑われた場合,直ちに適切な対応を行うことが必要である.